生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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「え……?」

 酔っ払いの世話が大変だったとか、さすがにあれは迷惑だったとか、似合わない誘惑に呆れたとか。

 そういう感想じゃなくて…いま、嬉しかったって言った?

「あの…ハルは、昨日のあれ、嬉しかった…の?」

 もしかしたら俺の聞き間違いか何かなのかなーと疑って、もう一度ハルに確認してみたけど、ハルはやっぱり楽しそうな笑顔でこくりと頷いただけだった。

 聞き間違いじゃなかったのか。

「うん。酔っていたとはいえ、アキトが俺を誘惑しようとしてくれたのがまず嬉しかったんだ」

 うーん、確かに例えどれだけ酔ってても他の人を誘惑しようとはしないし、そんな事をするのはハルだけだって断言はできる。できるけど、これってそういう問題なのか?

 責められる覚悟をしてたのに、まさかの嬉しかったと言われるなんて想像もしていなかった。どうしてそうなったのか理解ができない。

 ゆるりと首を傾げた俺が全然納得できずにいる事に、ハルは気が付いたらしい。苦笑しながらも、うーんと考えつつ続けた。

「あー、それじゃあ、そうだな…嬉しいと言うよりも楽しい…かな?」

 ありがとう、ハル。

 俺のために気を使ってわざわざ言い直してくれたんだよね。その気づかいはすっごく嬉しいしやっぱりハルは優しいなーと思うんだけど、それでもやっぱり理解はできそうにない。

「えっと、嬉しいもよく分からないけど、楽しくは…ないんじゃないかな?」
「…うーん、言葉だけじゃ分かってもらえないか。あ、それじゃあ、アキトも見てみたら分かるかな?」

 良い案が浮かんだだと言いたげなハルの口から放たれた、そのあまりにも予想外な言葉に、俺は大きく目を見開いたまま固まった。

 え、俺も見てみたら分かるるって何…???何をするつもりなの?

 そう思った次の瞬間には、俺の頬に触れていた手がすっと離れていった。そのままベッドのある方へと歩き出したハルは、何の迷いもなくまっすぐ進んでいく。

 ちょっと待って、どういう意味?

 そう言いたいぐらいだったけど頭の中は大混乱で、咄嗟に言葉なんて出てこなかった。

 それでも視線だけは反らさずに、ハルの背中をじっと目で追い続ける。ベッドの横まで辿り着くと、ハルはくるりと俺の方へと身体ごと向き直った。

「ハル…?」

 何とか口を動かしてハルの名前だけを呼べば、ふふと悪戯っぽい笑みが返ってきた。

「アキト、ちゃんと見ててね」

 小さな声でそう告げたハルは、まっすぐに俺の目を見つめながら少しだけ開いていた自分の服の胸元をくいっと指先で開いてみせた。普段とくらべてもほんの少し大きく開いただけなのに、普段はあまり見えない鎖骨がちらりと見えた。

 もしかして、いやもしかしなくても、見ててっいうのはハルがストリップするから見ててって意味なの!?え、どうしてそうなった???

 俺がどれだけ内心で慌てていても、ハルの動きは止まらない。

 今度は見せつけるようにゆっくりと、シャツのボタンを一つずつ外していく。その指の動きにすら色気を感じて、ついつい見惚れてしまった。

 ハルが服を脱ぐ所は何度も見た事があるから、もうちょっとぐらい耐えられるかなと思ってたんだけど、うん、これは明らかに無理そうだね。

 だっていつものハルの脱ぎ方とは、全然違うんだよ。

 いつものハルならボタンやタイなんてさっさと全部外しちゃうし、どちらかというとバサバサと無造作に服を脱いでいくことが多いんだ。

 まあそんな脱ぎ方をしてても、大人の色気が至る所から漏れ出てるんだけどさ。

 そんなハルがだよ?わざわざ色気を増して、俺を誘惑するつもりで、一枚ずつゆっくりと服を脱いでいくんだ。

 しかもその身体はしっかりと実用的な筋肉に覆われていて、見惚れずにいれないぐらいの肉体美を誇ってるんだ。

 今はまだ鎖骨と胸元ぐらいしか見えていないのに、すでにその破壊力はすさまじい。

 俺がちゃんとハルを見つめている事を確認して、ハルは満足そうにひとつ頷いた。

 そのままスルリと上の服を脱ぎ落としたハルは、しなやかな筋肉に覆われた上半身を惜しげも無くさらしている。

 たぶん昨夜のやらかしを思い出した時よりも、今の俺は真っ赤だと思う。

 ハルはふわりと嬉しそうに笑みを浮かべると、自身の下半身に向けてゆっくりと手を伸ばした。
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