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691.【ハル視点】レーブンの料理と今日の予定
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早起きしたレーブンが作った今朝の朝食は、料理がしたくてたまらなかったというだけあって、普段とはまた一味違う美味しさだった。
本人にはあまり言った事は無いが、レーブンの料理は普段から文句なしに美味い。運動量の多い冒険者や旅人向けに肉や魚をたっぷり使ってあるし、さりげなく取り入れられている野菜も種類が豊富だ。
騎士団の料理を作って欲しい。いっそ騎士団の専属料理人にならないかなんて話もあったぐらいの腕前だからな。まあ、打診された本人は、これからも黒鷹亭を続けたいからと即答で断っていたが。
それにしても今朝の料理は本当にすごかった。
レーブンはスープの作り方を変えたなんて言っていたが、他の料理も全てにしっかりと手が加えられていた。以前食べた料理と同じに見えるのに味は全く違うというのには正直すこし戸惑ったが、それも文句なしに美味かった。
さりげなく付け合わせの野菜にアキトが好きだと言った味付けを取り入れていたのには、少しだけ笑ってしまった。
アキトは昨日好きだと言った味付けだと気づいているのかいないのか、美味しいと笑顔で口に運んでいた。
うん、今日もアキトは可愛いな。
アキトと二人で美味しい美味しいと言い合いながら朝食を完食した俺達は、そのまま食堂を出るとすぐに受付へと向かった。
カウンターの中に立っていたレーブンは、近づいてくる俺達に気づくなり口を開いた。
「アキト、ハル。今朝の朝食はどうだった?」
ワクワクした様子で尋ねてきたレーブンに、アキトは元気に笑って答える。
「すっっっっっごく美味しかったです!」
「ああ…今日はいつもとはまた一味違う美味しさだったな」
アキトの感想に釣られるようにして俺も素直に感想を伝えれば、レーブンは嬉しそうに笑みを浮かべた。その瞬間、またしても背後でどよめきが起きた。
「本当に笑ってる…」
「しかも満面の笑みだよ」
「食事会の翌日でも、今まではあんなに嬉しそうな事ってなかったよな…」
「ハッ!すごいレアなものを見れた…って事は、もしかして今日は採取も普段よりも上手くいくんじゃないか!?」
「よし、依頼を受けにいくぞ!」
こそこそとひそめた声で喋ってはいるんだが、俺達に聞こえてるという事は間違いなくレーブンにも聞こえてるよな。アキトと揃ってちらりと視線を向けてみたが、レーブンは苦笑するだけで何も言わなかった。
まあここで怒るような奴じゃないか。
珍しいものを見たから良い事があるかもという考え方自体は分からないでも無いが、それが滅多に笑わない奴の笑顔ってのはどうなんだろうな。
「ちなみにどれが気に入ったか、教えてくれるか?」
走り去っていく冒険者達を綺麗に無視して、レーブンは俺達に向かって尋ねた。
「えっと…俺は一番気に入ったのはサラダかな。初めて食べるドレッシングだったけど、濃厚な風味ですごく美味しかったです」
アキトが答えれば、レーブンは気に入ってくれたかと嬉しそうに笑っている。
「ああ、確かにサラダも美味かったな。ただ俺はやっぱりスープかな」
朝に飲むと元気が出る味だったと俺が続ければ、レーブンは真剣な表情で頷いた。
「お前たちの舌は確かだからな…また味見してくれ」
「それは光栄だな」
ふふと笑って答えた俺の横で、アキトも笑顔で答えを返した。
「レーブンさんの料理なら、いつでも!」
「ありがとな」
やる気が湧いてきたよとつぶやいたレーブンは、これから更に料理の改良に励むそうだ。相変わらずの研究熱心だな。この向上心があるからこそ、料理人として一流になれるんだろうか。
「お前らは今日はどうするんだ?」
このままでかけるのか?と軽く聞かれて、俺達は思わず顔を見合わせた。今日は珍しく何をしようかと相談もせずに部屋を出てきたからな。
「アキトは何かしたいことある?」
「えーっと…ハルが良ければなんだけど…何か依頼受けたいな」
アキトの予想外の発言に、俺とレーブンはまじまじとアキトを見つめてしまった。
どこかに行きたいとか、何が食べたいとかが返ってくるかと思っていたのに、まさかの依頼を受けたいと来たか。
基本的に冒険者は護衛依頼のような大きな依頼が終われば、数日は休みにする事が多い。移動の疲れを抜いて万全な状態で次の依頼に向いたいという奴もいれば、金が入ったから休みにしようという奴もいるから理由は様々なんだが。
「アキト、もうすこし休んでも良いんだぞ?」
心配そうなレーブンは、アキトの顔をひょいっと覗き込んだ。ちょっと距離が近くないか?咄嗟にそう思ってしまったが、俺は何も言わなかった。レーブンは父親枠だからな。これは仕方ない。
「そうだよ。護衛依頼が終わったばかりなんだし」
「そうなんだけど…駄目?」
「駄目ってわけじゃないんだけど…」
本当に疲れてない?と重ねて尋ねようとした瞬間、レーブンが口を開いた。
「あーまあ、良い依頼があるかどうかも分からないし、とりあえずギルドに行ってみたらどうだ?」
レーブンの口にしたそんな提案に、アキトはバッと俺の顔を見た。お願いと言いたげなアキトのその視線に、俺は弱いんだよなぁ。
うん、そうだな。アキトが行きたいと言うのに否定するのも嫌だし、ギルドに行ってから考えるか。
「難しい依頼とか遠い場所の依頼は受けないけど、それで良い…?」
「うん、約束する!」
即答で答えてくれたアキトに、俺は苦笑しながらもそっと手を差し出した。
本人にはあまり言った事は無いが、レーブンの料理は普段から文句なしに美味い。運動量の多い冒険者や旅人向けに肉や魚をたっぷり使ってあるし、さりげなく取り入れられている野菜も種類が豊富だ。
騎士団の料理を作って欲しい。いっそ騎士団の専属料理人にならないかなんて話もあったぐらいの腕前だからな。まあ、打診された本人は、これからも黒鷹亭を続けたいからと即答で断っていたが。
それにしても今朝の料理は本当にすごかった。
レーブンはスープの作り方を変えたなんて言っていたが、他の料理も全てにしっかりと手が加えられていた。以前食べた料理と同じに見えるのに味は全く違うというのには正直すこし戸惑ったが、それも文句なしに美味かった。
さりげなく付け合わせの野菜にアキトが好きだと言った味付けを取り入れていたのには、少しだけ笑ってしまった。
アキトは昨日好きだと言った味付けだと気づいているのかいないのか、美味しいと笑顔で口に運んでいた。
うん、今日もアキトは可愛いな。
アキトと二人で美味しい美味しいと言い合いながら朝食を完食した俺達は、そのまま食堂を出るとすぐに受付へと向かった。
カウンターの中に立っていたレーブンは、近づいてくる俺達に気づくなり口を開いた。
「アキト、ハル。今朝の朝食はどうだった?」
ワクワクした様子で尋ねてきたレーブンに、アキトは元気に笑って答える。
「すっっっっっごく美味しかったです!」
「ああ…今日はいつもとはまた一味違う美味しさだったな」
アキトの感想に釣られるようにして俺も素直に感想を伝えれば、レーブンは嬉しそうに笑みを浮かべた。その瞬間、またしても背後でどよめきが起きた。
「本当に笑ってる…」
「しかも満面の笑みだよ」
「食事会の翌日でも、今まではあんなに嬉しそうな事ってなかったよな…」
「ハッ!すごいレアなものを見れた…って事は、もしかして今日は採取も普段よりも上手くいくんじゃないか!?」
「よし、依頼を受けにいくぞ!」
こそこそとひそめた声で喋ってはいるんだが、俺達に聞こえてるという事は間違いなくレーブンにも聞こえてるよな。アキトと揃ってちらりと視線を向けてみたが、レーブンは苦笑するだけで何も言わなかった。
まあここで怒るような奴じゃないか。
珍しいものを見たから良い事があるかもという考え方自体は分からないでも無いが、それが滅多に笑わない奴の笑顔ってのはどうなんだろうな。
「ちなみにどれが気に入ったか、教えてくれるか?」
走り去っていく冒険者達を綺麗に無視して、レーブンは俺達に向かって尋ねた。
「えっと…俺は一番気に入ったのはサラダかな。初めて食べるドレッシングだったけど、濃厚な風味ですごく美味しかったです」
アキトが答えれば、レーブンは気に入ってくれたかと嬉しそうに笑っている。
「ああ、確かにサラダも美味かったな。ただ俺はやっぱりスープかな」
朝に飲むと元気が出る味だったと俺が続ければ、レーブンは真剣な表情で頷いた。
「お前たちの舌は確かだからな…また味見してくれ」
「それは光栄だな」
ふふと笑って答えた俺の横で、アキトも笑顔で答えを返した。
「レーブンさんの料理なら、いつでも!」
「ありがとな」
やる気が湧いてきたよとつぶやいたレーブンは、これから更に料理の改良に励むそうだ。相変わらずの研究熱心だな。この向上心があるからこそ、料理人として一流になれるんだろうか。
「お前らは今日はどうするんだ?」
このままでかけるのか?と軽く聞かれて、俺達は思わず顔を見合わせた。今日は珍しく何をしようかと相談もせずに部屋を出てきたからな。
「アキトは何かしたいことある?」
「えーっと…ハルが良ければなんだけど…何か依頼受けたいな」
アキトの予想外の発言に、俺とレーブンはまじまじとアキトを見つめてしまった。
どこかに行きたいとか、何が食べたいとかが返ってくるかと思っていたのに、まさかの依頼を受けたいと来たか。
基本的に冒険者は護衛依頼のような大きな依頼が終われば、数日は休みにする事が多い。移動の疲れを抜いて万全な状態で次の依頼に向いたいという奴もいれば、金が入ったから休みにしようという奴もいるから理由は様々なんだが。
「アキト、もうすこし休んでも良いんだぞ?」
心配そうなレーブンは、アキトの顔をひょいっと覗き込んだ。ちょっと距離が近くないか?咄嗟にそう思ってしまったが、俺は何も言わなかった。レーブンは父親枠だからな。これは仕方ない。
「そうだよ。護衛依頼が終わったばかりなんだし」
「そうなんだけど…駄目?」
「駄目ってわけじゃないんだけど…」
本当に疲れてない?と重ねて尋ねようとした瞬間、レーブンが口を開いた。
「あーまあ、良い依頼があるかどうかも分からないし、とりあえずギルドに行ってみたらどうだ?」
レーブンの口にしたそんな提案に、アキトはバッと俺の顔を見た。お願いと言いたげなアキトのその視線に、俺は弱いんだよなぁ。
うん、そうだな。アキトが行きたいと言うのに否定するのも嫌だし、ギルドに行ってから考えるか。
「難しい依頼とか遠い場所の依頼は受けないけど、それで良い…?」
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即答で答えてくれたアキトに、俺は苦笑しながらもそっと手を差し出した。
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