691 / 1,179
690.【ハル視点】今朝の料理も
しおりを挟む
二人で身支度を整えてから、俺達は揃って部屋を出た。
そのまま階下の食堂へと向かえば、優しい笑顔を浮かべたルタスが出迎えてくれた。レーブンの代わりに受付をするって言ってたが、今朝の食堂も担当だったのか。
「おっ、おはよう。ハルにアキト!」
「おはよう、ルタス」
「おはようございます」
二人して笑顔でそう答えれば、ルタスはじーっと俺達の顔を観察してから、おもむろに口を開いた。
「うん、二人とも特に問題なく元気そうだな」
「ああ、まあな」
「はい、元気ですよ…?」
「いやだってお前ら、昨日かなり飲んだんだろ?しかもレーブンさんとローガンさんと一緒にさ」
こそりとそう囁いてきたルタスに、俺は苦笑しながら確かに人生で一番飲んだかもしれないよと答えた。あの二人の酒豪っぷりを知っているからこそ、俺達の事を本気で心配してくれたんだろう。
「それでもう動けるってすげぇな…レーブンさんもさ、朝早くから起きてきて元気いっぱいで食堂の朝食仕込んでたぜ」
「え…?」
今朝の料理もレーブンが作ったのかと言いたげなびっくり顔でアキトがじっと見つめれば、ルタスはなーびっくりだよなーと軽い言葉を返した。全然びっくりしてるようには感じないんだが。
「そんなに早くから起きてきたのか…ルタスの依頼では食堂もまかせるって言われてなかったか?」
「依頼の上ではそうなんだけどな。何かやる気が湧いてきて仕方なくて、色々試したいんだーってすごい勢いだったからさ」
ああ、なるほど。自分で出した依頼の内容を変更してしまうぐらい、思いついた料理を試したくてたまらなかったんだろうな。まあレーブンなら依頼料を値切る心配は無いだろうが。
「あれだけ飲んだのにか…すごいな」
「な、俺もあれぐらい酒に強くなりたいわ」
思いっきり飲めるの羨ましいと笑い混じりで呟いたルタスは、酒自体は好きそうだが、たぶんそれほど酒に強くは無いんだろうな。
そんな風に会話を交わしていると、不意にハッとした様子でルタスが顔をあげた。
「悪い、引き留めちゃったな。二人分の朝食持って来るよ」
適当に座っててくれと言い置いて、ルタスはすぐに食堂の奥へと消えていった。
「行っちゃったね」
「ああ、お言葉に甘えて座って待とうか」
「そうだね」
今日も明るく挨拶してくる給仕役の冒険者に挨拶を返しつつ、俺達は食堂の奥へと足を向けた。
ここ黒鷹亭の食堂はささっと食べて出ていく奴が多いから、入口近くの席が人気だ。だからいつも奥の方が空いているんだよな。
すっかり定位置になってきた一番奥の席に、俺達は向かい合って腰を下ろした。
「それにしてもレーブン…すごいな」
俺は感心半分呆れ半分でそう呟いた。
「うん、すごいね!」
アキトのは感心と尊敬が半分ずつだな。まあアキトらしいけど。
「ああ、何が恐ろしいって、俺達が部屋に戻る時もまだ飲んでたんだよな…」
しかもレーブンとローガンは、気に入った酒があるとぐいぐいと何杯も勝手におかわりして飲んでいたからな。確実に俺とアキトの比じゃない量を飲んでいる。もしかして先祖に酒飲みで有名なドワーフの血でも混ざってるんだろうか。
その時、がやがやと賑わっていた食堂が、何の前触れもなく急にしんと静まり返った。
嫌な予感がするなと入口の方へと恐る恐る視線を向ければ、そこには満面の笑みを浮かべたレーブンが立っていた。朗らかな笑みを浮かべたレーブンの両手には、二人分の朝食の載ったトレイがある。
あれはたぶん俺達の朝食なんだろうな。
しんと静まり返った食堂の中を気にもかけず、レーブンはすたすたと俺達の方へと近づいてきた。
「アキト、ハル、おはよう!」
心なしか声まで普段よりも明るく元気だな。珍しすぎる姿に、油断すると笑ってしまいそうになる。
「おはようございます」
「おはよう」
「うん、二人とも元気そうだな!」
「レーブンさんも…」
「ああ、まあな。料理がしたくて目が覚めたんだ!」
いつになく興奮状態だし、やっぱり顔には満面の笑みが浮かんでいる。
「特にこのスープはな、昨日思いついた作り方に変えてみたんだ。良ければ感想を教えてくれ」
そう言うと、レーブンは俺達の前にトレイを並べて颯爽と去っていった。うん、美味しそうな香りはしているんだが、レーブンが気になって香りに集中できないな。
「あの笑顔…やっぱり天変地異の前触れじゃないか?」
「いや、あれは毒キノコを食べたのかもしれん」
「よりによってあのレーブンが、毒キノコに気づかないなんて事があるかよ!」
「でもいつも以上に朝食はうまかったぞ?」
「「「ああ、確かにそうだな」」」
そんな会話が後ろの方から漏れ聞こえてくる。
「あいつらはもうちょっとレーブンの笑顔に慣れるべきだな」
笑いながらこそりとアキトにそう声をかければ、アキトも笑いながらコクコクと頷いてくれた。
そのまま階下の食堂へと向かえば、優しい笑顔を浮かべたルタスが出迎えてくれた。レーブンの代わりに受付をするって言ってたが、今朝の食堂も担当だったのか。
「おっ、おはよう。ハルにアキト!」
「おはよう、ルタス」
「おはようございます」
二人して笑顔でそう答えれば、ルタスはじーっと俺達の顔を観察してから、おもむろに口を開いた。
「うん、二人とも特に問題なく元気そうだな」
「ああ、まあな」
「はい、元気ですよ…?」
「いやだってお前ら、昨日かなり飲んだんだろ?しかもレーブンさんとローガンさんと一緒にさ」
こそりとそう囁いてきたルタスに、俺は苦笑しながら確かに人生で一番飲んだかもしれないよと答えた。あの二人の酒豪っぷりを知っているからこそ、俺達の事を本気で心配してくれたんだろう。
「それでもう動けるってすげぇな…レーブンさんもさ、朝早くから起きてきて元気いっぱいで食堂の朝食仕込んでたぜ」
「え…?」
今朝の料理もレーブンが作ったのかと言いたげなびっくり顔でアキトがじっと見つめれば、ルタスはなーびっくりだよなーと軽い言葉を返した。全然びっくりしてるようには感じないんだが。
「そんなに早くから起きてきたのか…ルタスの依頼では食堂もまかせるって言われてなかったか?」
「依頼の上ではそうなんだけどな。何かやる気が湧いてきて仕方なくて、色々試したいんだーってすごい勢いだったからさ」
ああ、なるほど。自分で出した依頼の内容を変更してしまうぐらい、思いついた料理を試したくてたまらなかったんだろうな。まあレーブンなら依頼料を値切る心配は無いだろうが。
「あれだけ飲んだのにか…すごいな」
「な、俺もあれぐらい酒に強くなりたいわ」
思いっきり飲めるの羨ましいと笑い混じりで呟いたルタスは、酒自体は好きそうだが、たぶんそれほど酒に強くは無いんだろうな。
そんな風に会話を交わしていると、不意にハッとした様子でルタスが顔をあげた。
「悪い、引き留めちゃったな。二人分の朝食持って来るよ」
適当に座っててくれと言い置いて、ルタスはすぐに食堂の奥へと消えていった。
「行っちゃったね」
「ああ、お言葉に甘えて座って待とうか」
「そうだね」
今日も明るく挨拶してくる給仕役の冒険者に挨拶を返しつつ、俺達は食堂の奥へと足を向けた。
ここ黒鷹亭の食堂はささっと食べて出ていく奴が多いから、入口近くの席が人気だ。だからいつも奥の方が空いているんだよな。
すっかり定位置になってきた一番奥の席に、俺達は向かい合って腰を下ろした。
「それにしてもレーブン…すごいな」
俺は感心半分呆れ半分でそう呟いた。
「うん、すごいね!」
アキトのは感心と尊敬が半分ずつだな。まあアキトらしいけど。
「ああ、何が恐ろしいって、俺達が部屋に戻る時もまだ飲んでたんだよな…」
しかもレーブンとローガンは、気に入った酒があるとぐいぐいと何杯も勝手におかわりして飲んでいたからな。確実に俺とアキトの比じゃない量を飲んでいる。もしかして先祖に酒飲みで有名なドワーフの血でも混ざってるんだろうか。
その時、がやがやと賑わっていた食堂が、何の前触れもなく急にしんと静まり返った。
嫌な予感がするなと入口の方へと恐る恐る視線を向ければ、そこには満面の笑みを浮かべたレーブンが立っていた。朗らかな笑みを浮かべたレーブンの両手には、二人分の朝食の載ったトレイがある。
あれはたぶん俺達の朝食なんだろうな。
しんと静まり返った食堂の中を気にもかけず、レーブンはすたすたと俺達の方へと近づいてきた。
「アキト、ハル、おはよう!」
心なしか声まで普段よりも明るく元気だな。珍しすぎる姿に、油断すると笑ってしまいそうになる。
「おはようございます」
「おはよう」
「うん、二人とも元気そうだな!」
「レーブンさんも…」
「ああ、まあな。料理がしたくて目が覚めたんだ!」
いつになく興奮状態だし、やっぱり顔には満面の笑みが浮かんでいる。
「特にこのスープはな、昨日思いついた作り方に変えてみたんだ。良ければ感想を教えてくれ」
そう言うと、レーブンは俺達の前にトレイを並べて颯爽と去っていった。うん、美味しそうな香りはしているんだが、レーブンが気になって香りに集中できないな。
「あの笑顔…やっぱり天変地異の前触れじゃないか?」
「いや、あれは毒キノコを食べたのかもしれん」
「よりによってあのレーブンが、毒キノコに気づかないなんて事があるかよ!」
「でもいつも以上に朝食はうまかったぞ?」
「「「ああ、確かにそうだな」」」
そんな会話が後ろの方から漏れ聞こえてくる。
「あいつらはもうちょっとレーブンの笑顔に慣れるべきだな」
笑いながらこそりとアキトにそう声をかければ、アキトも笑いながらコクコクと頷いてくれた。
141
お気に入りに追加
4,204
あなたにおすすめの小説
悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
*
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。
桜月夜
BL
前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。
思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。

その捕虜は牢屋から離れたくない
さいはて旅行社
BL
敵国の牢獄看守や軍人たちが大好きなのは、鍛え上げられた筋肉だった。
というわけで、剣や体術の訓練なんか大嫌いな魔導士で細身の主人公は、同僚の脳筋騎士たちとは違い、敵国の捕虜となっても平穏無事な牢屋生活を満喫するのであった。

不遇聖女様(男)は、国を捨てて闇落ちする覚悟を決めました!
ミクリ21
BL
聖女様(男)は、理不尽な不遇を受けていました。
その不遇は、聖女になった7歳から始まり、現在の15歳まで続きました。
しかし、聖女ラウロはとうとう国を捨てるようです。
何故なら、この世界の成人年齢は15歳だから。
聖女ラウロは、これからは闇落ちをして自由に生きるのだ!!(闇落ちは自称)

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

婚約破棄されたショックで前世の記憶&猫集めの能力をゲットしたモブ顔の僕!
ミクリ21 (新)
BL
婚約者シルベスター・モンローに婚約破棄されたら、そのショックで前世の記憶を思い出したモブ顔の主人公エレン・ニャンゴローの話。
竜王陛下、番う相手、間違えてますよ
てんつぶ
BL
大陸の支配者は竜人であるこの世界。
『我が国に暮らすサネリという夫婦から生まれしその長子は、竜王陛下の番いである』―――これが俺たちサネリ
姉弟が生まれたる数日前に、竜王を神と抱く神殿から発表されたお触れだ。
俺の双子の姉、ナージュは生まれる瞬間から竜王妃決定。すなわち勝ち組人生決定。 弟の俺はいつかかわいい奥さんをもらう日を夢みて、平凡な毎日を過ごしていた。 姉の嫁入りである18歳の誕生日、何故か俺のもとに竜王陛下がやってきた!? 王道ストーリー。竜王×凡人。
20230805 完結しましたので全て公開していきます。
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる