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678.天井の木目
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うっすらと目を開いたら、視界に飛び込んできたのは見たことのある天井だった。
あ、この特徴的な木目は、黒鷹亭の俺とハルの部屋の天井だな。壁紙とか張られてないから、天井の木目もよく見えるんだよね。
まだ寝起きでぼんやりとした頭で、俺はそんな事を考えていた。
あれ?でも俺達の部屋の天井っておかしくない?いつの間に移動したんだろう。
ふんわりと寝心地の良いベッドに転がったまま、俺は記憶を探り始めた。
えーっと…???
すっきりした後味の北ノールの酒とつまみを皆で楽しんだ後で、たまたまハルの話題に出てきた黒酒を飲んだところまではちゃんと覚えてるんだけど…それから俺、どうしたんだっけ?
あ、なんか虹色に輝くお酒も出てきたな。あれはあまりに見た目に驚いたから覚えてる。だいぶ酔いが回ってた俺は、こんなに色とりどりなお酒初めてみたと大喜びではしゃいでしまったんだよね。俺以外の三人は優しい笑顔でそんな俺を見つめていた筈。
その後…?ううん、全く覚えてないな。なんなら虹色のお酒の味も覚えてない。
かと言って寝た瞬間の記憶も無いんだけどね。でもこうして自分達の部屋のベッドで寝てたって事は、多分、いやまず間違いなくあの場所で寝落ちしたって事だよね。
しかも、レーブンさんの部屋にあった来客用のベッドじゃないって事は、ハルがわざわざ俺をここまで運んでくれたって事になる。
あー、ハルに迷惑かけちゃったみたいだ…ちゃんと謝らないとな。
俺はふわあとひとつ大きなあくびをすると、目を擦りながら起き上がった。上半身だけを上げて部屋の中を見渡せば、窓辺のテーブルに座って本を読んでいたらしいハルが視線をあげた。
「あ、アキト起きたの?」
読んでいた魔物研究の本を置いてベッドに近づいて来たハルは、そう言いながら心配そうな表情で俺の顔を覗き込んできた。
「うん、おきた…おはよ、ハル」
しっかり謝る前にとまずはいつもの挨拶を口にすれば、ハルはホッとした様子で笑って答えてくれた。
「おはよう、アキト。はい、まずは水分補給ね。これ飲んで」
そう言いながらさっと差し出された果実水を、俺は遠慮なく受け取ると一気に飲み干した。これ、俺が好きなレモンみたいな風味の果実水だ。朝一にはこれが一番すっきりするんだよね。
掠れていた喉と寝起きの身体に染みわたる美味しさに、一気に目が覚めた。
「美味しい!ハル、ありがと」
「どういたしまして…それで、アキト体調はどう?」
「えーっと…うん、大丈夫そうだよ」
特に目立った問題は無さそうだとちゃんと確認してから答えれば、ハルはふうと肩の力を抜いた。
「一応ポーションも用意してあったんだけど、大丈夫そうだね」
そう言って手に握りしめていた瓶を揺らしながら笑ったハルを見つめながら、俺はポーションって二日酔いにも効くんだなんてズレた事を考えていた。
あ、今はそんな事考えてる場合じゃないんだった。ハルに、謝罪とお礼を言わないと。
「きのうは迷惑かけてごめんね、ハル」
小さくなりながら告げた謝罪に、ハルはきょとんと俺を見つめてからゆっくりと口を開いた。
「…アキト、昨日の事…覚えてるの?」
「それが色とりどりのお酒を飲んだところまでは覚えてるんだけど…それ以降は全く覚えてないんだ…」
色んなお酒を混ぜたせいか、かなり酔ってたんだな。不甲斐ない。
「でも、寝落ちしたのにこの部屋で寝てるって事は、ここまでハルに運んでもらったって事でしょう?」
だからごめんなさいともう一度謝れば、ハルはふわりと笑みを浮かべた。
「アキトを運ぶのは全然苦じゃないから、気にしなくて良いよ」
あっさりとそう答えてくれたハルだけど、その後ぼそりと覚えてなくて良かったと呟いた。聞こえてしまったその言葉に、俺は慌てて尋ねる。
「え、ハルが覚えてなくて良かったって言っちゃうぐらい、俺、何かひどい事しちゃった?」
「いや、そうじゃないよ」
「でも、覚えてなくて良かったって」
「あーうん、ごめん。そういう意味じゃないから、お願いだから忘れて!」
困り顔でお願いだから忘れてとまで言われてしまえば、迷惑をかけた側の俺に言える言葉は無い。
「じゃあ、もうひとつだけ言わせて」
「うん、何?」
「運んでくれてありがとう」
「どういたしまして」
あ、この特徴的な木目は、黒鷹亭の俺とハルの部屋の天井だな。壁紙とか張られてないから、天井の木目もよく見えるんだよね。
まだ寝起きでぼんやりとした頭で、俺はそんな事を考えていた。
あれ?でも俺達の部屋の天井っておかしくない?いつの間に移動したんだろう。
ふんわりと寝心地の良いベッドに転がったまま、俺は記憶を探り始めた。
えーっと…???
すっきりした後味の北ノールの酒とつまみを皆で楽しんだ後で、たまたまハルの話題に出てきた黒酒を飲んだところまではちゃんと覚えてるんだけど…それから俺、どうしたんだっけ?
あ、なんか虹色に輝くお酒も出てきたな。あれはあまりに見た目に驚いたから覚えてる。だいぶ酔いが回ってた俺は、こんなに色とりどりなお酒初めてみたと大喜びではしゃいでしまったんだよね。俺以外の三人は優しい笑顔でそんな俺を見つめていた筈。
その後…?ううん、全く覚えてないな。なんなら虹色のお酒の味も覚えてない。
かと言って寝た瞬間の記憶も無いんだけどね。でもこうして自分達の部屋のベッドで寝てたって事は、多分、いやまず間違いなくあの場所で寝落ちしたって事だよね。
しかも、レーブンさんの部屋にあった来客用のベッドじゃないって事は、ハルがわざわざ俺をここまで運んでくれたって事になる。
あー、ハルに迷惑かけちゃったみたいだ…ちゃんと謝らないとな。
俺はふわあとひとつ大きなあくびをすると、目を擦りながら起き上がった。上半身だけを上げて部屋の中を見渡せば、窓辺のテーブルに座って本を読んでいたらしいハルが視線をあげた。
「あ、アキト起きたの?」
読んでいた魔物研究の本を置いてベッドに近づいて来たハルは、そう言いながら心配そうな表情で俺の顔を覗き込んできた。
「うん、おきた…おはよ、ハル」
しっかり謝る前にとまずはいつもの挨拶を口にすれば、ハルはホッとした様子で笑って答えてくれた。
「おはよう、アキト。はい、まずは水分補給ね。これ飲んで」
そう言いながらさっと差し出された果実水を、俺は遠慮なく受け取ると一気に飲み干した。これ、俺が好きなレモンみたいな風味の果実水だ。朝一にはこれが一番すっきりするんだよね。
掠れていた喉と寝起きの身体に染みわたる美味しさに、一気に目が覚めた。
「美味しい!ハル、ありがと」
「どういたしまして…それで、アキト体調はどう?」
「えーっと…うん、大丈夫そうだよ」
特に目立った問題は無さそうだとちゃんと確認してから答えれば、ハルはふうと肩の力を抜いた。
「一応ポーションも用意してあったんだけど、大丈夫そうだね」
そう言って手に握りしめていた瓶を揺らしながら笑ったハルを見つめながら、俺はポーションって二日酔いにも効くんだなんてズレた事を考えていた。
あ、今はそんな事考えてる場合じゃないんだった。ハルに、謝罪とお礼を言わないと。
「きのうは迷惑かけてごめんね、ハル」
小さくなりながら告げた謝罪に、ハルはきょとんと俺を見つめてからゆっくりと口を開いた。
「…アキト、昨日の事…覚えてるの?」
「それが色とりどりのお酒を飲んだところまでは覚えてるんだけど…それ以降は全く覚えてないんだ…」
色んなお酒を混ぜたせいか、かなり酔ってたんだな。不甲斐ない。
「でも、寝落ちしたのにこの部屋で寝てるって事は、ここまでハルに運んでもらったって事でしょう?」
だからごめんなさいともう一度謝れば、ハルはふわりと笑みを浮かべた。
「アキトを運ぶのは全然苦じゃないから、気にしなくて良いよ」
あっさりとそう答えてくれたハルだけど、その後ぼそりと覚えてなくて良かったと呟いた。聞こえてしまったその言葉に、俺は慌てて尋ねる。
「え、ハルが覚えてなくて良かったって言っちゃうぐらい、俺、何かひどい事しちゃった?」
「いや、そうじゃないよ」
「でも、覚えてなくて良かったって」
「あーうん、ごめん。そういう意味じゃないから、お願いだから忘れて!」
困り顔でお願いだから忘れてとまで言われてしまえば、迷惑をかけた側の俺に言える言葉は無い。
「じゃあ、もうひとつだけ言わせて」
「うん、何?」
「運んでくれてありがとう」
「どういたしまして」
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