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672.【ハル視点】ローガン到着
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「それにしても、ローガンのやつ今日はやけに遅いな」
レーブンはそう言いながら、壁に掛けてある魔道具をちらりと見上げた。
そっと魔道具に視線を向けて時間を確認してみれば、確かに待ち合わせ時間は既にかなり前に過ぎているな。
「ああ、本当だな」
「そろそろ来ても良い頃なんだが…あいつはいつも時間よりも早く来るから珍しいな」
何かあったかなと、レーブンはぽつりとそう呟いた。
「俺が探しに行って来ようか?」
柄にもなく思わずそう声をかけたのは、アキトがあまりにも心配そうな顔をしていたからだ。ローガンの強さは知ってるからそういう意味での心配はしていないんだが、俺が探しに行った方がアキトが安心するかなと思っての提案だった。
レーブンは少し考えてからフルフルと首を振った。
「いや、どこの道を通るかも分からないからすれ違いになりそうだし…ここで待ってた方が良いだろうな」
冷静にそう断言したレーブンは、次の瞬間ニヤリと悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「それにローガンは間違いなく強いからな、もし何かが起きていて巻き込まれていたとしても…何の心配もいらないさ」
ああ、これは間違いなくアキトのための説明だな。
「まあ確かに、ローガンだからなぁ…街中で危険も何も無いか」
頷きながら俺もそう言葉を添えれば、アキトはようやくいつも通りの表情に戻った。どうやら無事に、心配しなくても大丈夫だと思わせられたらしい。
ちらりと視線を向ければ、レーブンはよくやったと言いたげにひとつだけ頷いた。
「まあ…とりあえずあいつが来るまでは茶でも飲んでようか」
「ああ、そうだな」
「いただきます」
そうして温かいお茶を飲みながらのんびりと話していると、不意にガチャリと部屋の扉が開いた。
ああ、やっと来たか。
「すまん、遅れた」
いつも通りのぶっきらぼうな声と無表情な顔だが、なんだか疲れているように見えるな。
「おう、遅かったな」
「あー…うん、色々あってな…」
軽く片手を上げたローガンに、レーブンも軽い調子で手をあげて応えている。この二人の関係はいつ見ても変わらないな。もしこれが数年ぶりの再会だとしても、きっとこうやって挨拶するだろう。
ローガンはそのままレーブン近づくと、手に載せていた真っ青な丸い石をぐいっと差し出した。ああ、ローガンも鍵を預かっていたのか。
「レーブン、返す」
アキトの視線は、その石に釘付けになっている。あれは何だろうって気になってる顔だな。そんなに気になるなら折角だし説明しておこうかと、俺はアキトの耳元にそっと顔を寄せた。
「レーブンの私室であるこの部屋には、高度な防音の結界と侵入禁止の結界が同時にかけられるようになっているんだ。普通は騎士団とか公共の設備、または貴族の邸宅とかにしかないレベルのものすごく高度なものなんだけどね」
そんなにすごいものなのかと、アキトは素直に驚いている。
確かにすごく高度なものだが、利点ばかりというわけでもないんだよな。
「…ただ、これを使うと外の声も物音も一切聞こえなくなるから、普段は仕事に支障をきたすからってあまり使わないんだ」
いや、使わないというよりも使えないかな。
「えっと…防音結界って俺たちの部屋のとは違うの?」
「ああ、あれも生活音とか物音は防げるけど、さすがに爆発音とかは聞こえるからね」
この部屋の防音結界の規模なら、おそらく爆発音も聞こえないだろう。試した事は無いから憶測だけどな。
「すごい」
アキトの可愛らしい感想に、俺はふふと笑って続けた。
「あの石はその二重の結界を通り抜けるための鍵、いわば許可証みたいなものなんだ」
「へー許可証かぁ!」
「魔道具と対になってるから、他の防音結界にはもちろん効かないんだけどね。ああ、俺も一応預かってはいたんだよ」
そう言いながら、俺は海のような色をした丸い石をつまむと、アキトの目の前に差し出した。アキトはうわーと感嘆の声を上げながら、まじまじと石を見つめた。
「すごく綺麗だけど、普通の宝石みたいに見えるね」
「ああ、多分そう思わせるためにあえて宝石みたいに加工してあるんだろうな」
この見た目なら宝石の中に紛れ込ませれば、どれが鍵かなんて分からなくなるからな。わざとそうして隠せるようにしているんだろう。もしくはただの魔道具技師の遊び心かな。
「ハル、見せてくれてありがとう」
「もう良いのか?」
「うん、満足したよ」
「そうか、じゃあ俺も返しておこう」
俺は丸い石を指先でつまんだまま、レーブンの方へと近づいて行った。
レーブンはそう言いながら、壁に掛けてある魔道具をちらりと見上げた。
そっと魔道具に視線を向けて時間を確認してみれば、確かに待ち合わせ時間は既にかなり前に過ぎているな。
「ああ、本当だな」
「そろそろ来ても良い頃なんだが…あいつはいつも時間よりも早く来るから珍しいな」
何かあったかなと、レーブンはぽつりとそう呟いた。
「俺が探しに行って来ようか?」
柄にもなく思わずそう声をかけたのは、アキトがあまりにも心配そうな顔をしていたからだ。ローガンの強さは知ってるからそういう意味での心配はしていないんだが、俺が探しに行った方がアキトが安心するかなと思っての提案だった。
レーブンは少し考えてからフルフルと首を振った。
「いや、どこの道を通るかも分からないからすれ違いになりそうだし…ここで待ってた方が良いだろうな」
冷静にそう断言したレーブンは、次の瞬間ニヤリと悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「それにローガンは間違いなく強いからな、もし何かが起きていて巻き込まれていたとしても…何の心配もいらないさ」
ああ、これは間違いなくアキトのための説明だな。
「まあ確かに、ローガンだからなぁ…街中で危険も何も無いか」
頷きながら俺もそう言葉を添えれば、アキトはようやくいつも通りの表情に戻った。どうやら無事に、心配しなくても大丈夫だと思わせられたらしい。
ちらりと視線を向ければ、レーブンはよくやったと言いたげにひとつだけ頷いた。
「まあ…とりあえずあいつが来るまでは茶でも飲んでようか」
「ああ、そうだな」
「いただきます」
そうして温かいお茶を飲みながらのんびりと話していると、不意にガチャリと部屋の扉が開いた。
ああ、やっと来たか。
「すまん、遅れた」
いつも通りのぶっきらぼうな声と無表情な顔だが、なんだか疲れているように見えるな。
「おう、遅かったな」
「あー…うん、色々あってな…」
軽く片手を上げたローガンに、レーブンも軽い調子で手をあげて応えている。この二人の関係はいつ見ても変わらないな。もしこれが数年ぶりの再会だとしても、きっとこうやって挨拶するだろう。
ローガンはそのままレーブン近づくと、手に載せていた真っ青な丸い石をぐいっと差し出した。ああ、ローガンも鍵を預かっていたのか。
「レーブン、返す」
アキトの視線は、その石に釘付けになっている。あれは何だろうって気になってる顔だな。そんなに気になるなら折角だし説明しておこうかと、俺はアキトの耳元にそっと顔を寄せた。
「レーブンの私室であるこの部屋には、高度な防音の結界と侵入禁止の結界が同時にかけられるようになっているんだ。普通は騎士団とか公共の設備、または貴族の邸宅とかにしかないレベルのものすごく高度なものなんだけどね」
そんなにすごいものなのかと、アキトは素直に驚いている。
確かにすごく高度なものだが、利点ばかりというわけでもないんだよな。
「…ただ、これを使うと外の声も物音も一切聞こえなくなるから、普段は仕事に支障をきたすからってあまり使わないんだ」
いや、使わないというよりも使えないかな。
「えっと…防音結界って俺たちの部屋のとは違うの?」
「ああ、あれも生活音とか物音は防げるけど、さすがに爆発音とかは聞こえるからね」
この部屋の防音結界の規模なら、おそらく爆発音も聞こえないだろう。試した事は無いから憶測だけどな。
「すごい」
アキトの可愛らしい感想に、俺はふふと笑って続けた。
「あの石はその二重の結界を通り抜けるための鍵、いわば許可証みたいなものなんだ」
「へー許可証かぁ!」
「魔道具と対になってるから、他の防音結界にはもちろん効かないんだけどね。ああ、俺も一応預かってはいたんだよ」
そう言いながら、俺は海のような色をした丸い石をつまむと、アキトの目の前に差し出した。アキトはうわーと感嘆の声を上げながら、まじまじと石を見つめた。
「すごく綺麗だけど、普通の宝石みたいに見えるね」
「ああ、多分そう思わせるためにあえて宝石みたいに加工してあるんだろうな」
この見た目なら宝石の中に紛れ込ませれば、どれが鍵かなんて分からなくなるからな。わざとそうして隠せるようにしているんだろう。もしくはただの魔道具技師の遊び心かな。
「ハル、見せてくれてありがとう」
「もう良いのか?」
「うん、満足したよ」
「そうか、じゃあ俺も返しておこう」
俺は丸い石を指先でつまんだまま、レーブンの方へと近づいて行った。
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