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653.楽しい本選び
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「おまたせしました」
ジェイデンさんは柔らかい笑みを浮かべながら、俺達の待つ部屋へと戻ってきた。
まださっきのやり取りの余韻を引きずっていた俺は真っ赤なままだったしハルは嬉しそうに笑ってたけど、ジェイデンさんはちゃんとスルーしてくれたよ。うう、指摘しないでいてくれてありがとうございます。
ジェイデンさんの両手には、以前と同じく真っ赤な布のかかったトレイがおさまっている。あの布の下に新しい本があるんだよね。
「本日はこちらをお持ちしました」
布をどければそこには比較的薄めの本が四冊と、図鑑みたいな分厚い本が一冊、更にその上を行くまるで分厚い辞書のような本が二冊並んでいた。
「まずこちらがアキト様のご希望の料理本です。比較的説明が細かくて初心者でも作りやすいものだけを選んでいます」
説明をしながら、ジェイデンさんはテーブルの上に薄めの本を四冊並べてくれた。
「こちらは雪深い北部の料理、こちらは逆に南国の料理が主ですね」
手のひらで示すようにして教えてくれたのは、白と水色でデザインされた見るからに涼し気な表紙の本と、驚くほどカラフルな色合いをした表紙の本だった。
「こちらは魚の料理が主で、こちらは幅広い地域の家庭料理を集めたものです」
魚料理の本は、ちゃんと表紙に魚の絵が描かれてるのか。うん、分かりやすくて良いな。ちなみに幅広い地域の家庭料理が載ってると言われた本は、美味しそうなスープの絵が表紙だった。
「こちらはセスミアの旅行記の続編です」
予想通りだったけど、あの図鑑みたいなのがセスミアの旅行記の続編なのか。すっかりあの姉弟のファンになっている俺としては、正直言って分厚ければ分厚いほど嬉しい。
「続きまして、こちらがハル様ご希望の魔物の研究書ですね。こちらは上下巻のロサダールの魔物研究書です。ロサダール自身は最近になって初めて本を出した方ではありますが、その知識量は一線を画しています」
「ロサダール…か」
興味深そうに身を乗り出したハルが見ているのは、あの分厚い辞書レベルの二冊の本だ。見た目も重厚そうな装丁でかなりの迫力だ。もし魔導収納鞄が無かったら、持ち帰るだけでも苦労しそうな重そうな本だ。
「上巻が小型及び中型の魔物、下巻が大型の魔物を対象としていますので、どちらかを選んで購入される方も多いです」
ジェイデンさんいわく、そこが作者の人のこだわりポイントらしく、興味がある分野で買う本を選べるるようにってわざとそうやって分けてあるらしい。両方買ってもらった方が儲かるとかそういう考え方じゃないんだな。
「それでは、どうぞご自由にご覧になってください」
俺とハルはジェイデンさんの言葉にそっと本に手を伸ばした。パラパラとページを捲ってみたけど、料理の本は詳しい作り方はもちろんちょっとしたコツや料理の絵までしっかりと載っていた。
初心者でも分かりやすい本を選んだって言ってたけど、これなら俺でも見ながら作れそうだなとホッと胸を撫で下ろした。
面白かったのは、北国のメニューはシチューとかスープ、チーズを使った料理が多くて、南国のメニューはスパイスを効かせた料理が多かった事かな。地域によって色々違うんだな。魚料理も色々な地域の家庭料理も興味深かったので、これは買いたいな。
よし、決めたと思いながら本を閉じる。
「アキトさん、セスミアの旅行記の続編もよろしければご確認くださいね」
「えっと…そっちはゆっくり中身を読みたいので、確認は大丈夫です」
パラパラと流し見るんじゃなくて、じっくり腰を据えて読みたいから。そんな気持ちで答えれば、ジェイデンさんはふわりと柔らかい笑みを浮かべた。
「好きな本はそうなりますよね」
分かりますと言いたげな表情からして、ジェイデンさんも本が好きなんだろうな。というか本が好きじゃなかったら、こんな風にお勧めの本を選んでくる店員さんなんてできないか。
「はいっ!」
ジェイデンさんとニコニコ笑い合っていると、静かに本に目を通していたハルが顔を上げた。
「俺も確認は終わったよ。上下巻、両方とも貰っていこう」
「気に入って頂けましたか?」
「ああ。以前に読んだ魔物研究書よりも、更に一歩踏み込んだ情報が入っていて面白い」
そう言ってハルは本当に嬉しそうに笑っていたから、どうやら期待以上の物だったみたいだ。
「アキトはどうする?」
「俺も、これ全部欲しいです!」
即答した俺にジェイデンさんは驚いたみたいだったけど、どれも欲しい本だから仕方ないよね。
ジェイデンさんは柔らかい笑みを浮かべながら、俺達の待つ部屋へと戻ってきた。
まださっきのやり取りの余韻を引きずっていた俺は真っ赤なままだったしハルは嬉しそうに笑ってたけど、ジェイデンさんはちゃんとスルーしてくれたよ。うう、指摘しないでいてくれてありがとうございます。
ジェイデンさんの両手には、以前と同じく真っ赤な布のかかったトレイがおさまっている。あの布の下に新しい本があるんだよね。
「本日はこちらをお持ちしました」
布をどければそこには比較的薄めの本が四冊と、図鑑みたいな分厚い本が一冊、更にその上を行くまるで分厚い辞書のような本が二冊並んでいた。
「まずこちらがアキト様のご希望の料理本です。比較的説明が細かくて初心者でも作りやすいものだけを選んでいます」
説明をしながら、ジェイデンさんはテーブルの上に薄めの本を四冊並べてくれた。
「こちらは雪深い北部の料理、こちらは逆に南国の料理が主ですね」
手のひらで示すようにして教えてくれたのは、白と水色でデザインされた見るからに涼し気な表紙の本と、驚くほどカラフルな色合いをした表紙の本だった。
「こちらは魚の料理が主で、こちらは幅広い地域の家庭料理を集めたものです」
魚料理の本は、ちゃんと表紙に魚の絵が描かれてるのか。うん、分かりやすくて良いな。ちなみに幅広い地域の家庭料理が載ってると言われた本は、美味しそうなスープの絵が表紙だった。
「こちらはセスミアの旅行記の続編です」
予想通りだったけど、あの図鑑みたいなのがセスミアの旅行記の続編なのか。すっかりあの姉弟のファンになっている俺としては、正直言って分厚ければ分厚いほど嬉しい。
「続きまして、こちらがハル様ご希望の魔物の研究書ですね。こちらは上下巻のロサダールの魔物研究書です。ロサダール自身は最近になって初めて本を出した方ではありますが、その知識量は一線を画しています」
「ロサダール…か」
興味深そうに身を乗り出したハルが見ているのは、あの分厚い辞書レベルの二冊の本だ。見た目も重厚そうな装丁でかなりの迫力だ。もし魔導収納鞄が無かったら、持ち帰るだけでも苦労しそうな重そうな本だ。
「上巻が小型及び中型の魔物、下巻が大型の魔物を対象としていますので、どちらかを選んで購入される方も多いです」
ジェイデンさんいわく、そこが作者の人のこだわりポイントらしく、興味がある分野で買う本を選べるるようにってわざとそうやって分けてあるらしい。両方買ってもらった方が儲かるとかそういう考え方じゃないんだな。
「それでは、どうぞご自由にご覧になってください」
俺とハルはジェイデンさんの言葉にそっと本に手を伸ばした。パラパラとページを捲ってみたけど、料理の本は詳しい作り方はもちろんちょっとしたコツや料理の絵までしっかりと載っていた。
初心者でも分かりやすい本を選んだって言ってたけど、これなら俺でも見ながら作れそうだなとホッと胸を撫で下ろした。
面白かったのは、北国のメニューはシチューとかスープ、チーズを使った料理が多くて、南国のメニューはスパイスを効かせた料理が多かった事かな。地域によって色々違うんだな。魚料理も色々な地域の家庭料理も興味深かったので、これは買いたいな。
よし、決めたと思いながら本を閉じる。
「アキトさん、セスミアの旅行記の続編もよろしければご確認くださいね」
「えっと…そっちはゆっくり中身を読みたいので、確認は大丈夫です」
パラパラと流し見るんじゃなくて、じっくり腰を据えて読みたいから。そんな気持ちで答えれば、ジェイデンさんはふわりと柔らかい笑みを浮かべた。
「好きな本はそうなりますよね」
分かりますと言いたげな表情からして、ジェイデンさんも本が好きなんだろうな。というか本が好きじゃなかったら、こんな風にお勧めの本を選んでくる店員さんなんてできないか。
「はいっ!」
ジェイデンさんとニコニコ笑い合っていると、静かに本に目を通していたハルが顔を上げた。
「俺も確認は終わったよ。上下巻、両方とも貰っていこう」
「気に入って頂けましたか?」
「ああ。以前に読んだ魔物研究書よりも、更に一歩踏み込んだ情報が入っていて面白い」
そう言ってハルは本当に嬉しそうに笑っていたから、どうやら期待以上の物だったみたいだ。
「アキトはどうする?」
「俺も、これ全部欲しいです!」
即答した俺にジェイデンさんは驚いたみたいだったけど、どれも欲しい本だから仕方ないよね。
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