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641.【ハル視点】アキトの好きなハーレ
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「次に行こうか」
「うん、そうだね」
そう言って笑ったアキトは、一つの屋台に視線を向けるとぴたりと立ち止まった。気になる物があったのかと視線を向ければ、そこには地味な見た目のハーレという野菜だけが山のように積み上げられていた。
ああ、アキトが好きなハーレの屋台か。
「アキト、あの店、気になってるよね?」
「うん!どんな料理になるんだろう?…さすがに生で出される事はないよね」
少しだけ心配そうに小声で尋ねてきたアキトに、俺は思わずふふと笑ってしまった。さすがに生のハーレの屋台は無いと思う。
「よう綺麗な兄ちゃん達、どうだい?食ってかないか?」
そう声をかけてきたのは、筋肉質な強面の老人だった。もしこの店員がまっすぐに俺達を見つめてなかったら、自分たちが呼ばれてる事にすら気づかなかっただろうな。
「アキトはともかく俺も綺麗な兄ちゃんなのか?」
思わず苦笑しながら尋ねてしまった俺は、悪くないと思う。アキトは文句なしに綺麗なという言葉が似合うからな。
「内緒の話をするとな…?」
強面な老人はそう前置きをすると、くしゃりと笑みを浮かべた。途端に人懐こいこどものような雰囲気に変わるのに、すこしだけ驚いた。
「こうやって声かけすると、みんなひとしきり笑ってから買ってくれるんだよ。俺より年下なら全員が綺麗な兄ちゃんと姉ちゃんさ」
はははっと明るく笑った店員の種明かしに、アキトと俺も思わず笑ってしまった。年下なら全員か。なかなかに分かりやすい商売の仕方だが、それを誤魔化そうとも隠そうともしない所に逆に好感が持てた。
「なあ、素朴な疑問なんだが…もし自分より年上が相手ならどうするんだ?」
楽し気に笑いながら俺がそう尋ねると、店員はニヤリと悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「そりゃあ、優しそうな姉さんとか、強そうな兄さんとかだな」
なるほど、年上が相手なら兄さん姉さん呼びなのか。疑問が解消されて良かったよ。
「それでどうだい?うちはハーレの店なんだが」
「あの、俺ハーレ好きなんですけど、ここではどうやって食べさせてくれるんですか?」
「お、ハーレ好きとは!それならうちの屋台にきてもらって正解だぜ」
老人はそう言うと、串に刺さって焼き色のついたハーレを取り出してアキトの前に差し出した。見た目はそのままハーレの串焼きって感じだな。
「これはな、見た目はただの丸焼きに見えるだろう?でもな、中には特製のタレとチーズを入れて焼いてあるんだ」
更に手招きした店員の手元をアキトと二人揃って覗き込むと、店員はハーレの真ん中を専用の刃物らしきものでくりぬいた。できた穴に手早くタレとチーズを詰め込んでいくと、最後に切り落としたへたの部分を戻して串で固定すれば完成らしい。
「これをじっくり焼いてあるんだ。自分で言うのも何だがうまいぞ?」
ああ、これはうまいだろうな。思ったよりも手がかかっているみたいだ。俺は買うけどハルはどうすると言いたげなアキトの視線に、俺もすぐに頷いた。
「二本ください」
「はいよ、まいどあり」
焼きなおしてくれたハーレ串を受け取って、俺達は揃って屋台の横へと移動した。広場の屋台が一定の間隔を空けている理由は、ここで食べたい人に場所を提供するためだからな。
「「いただきます」」
二人で声を揃えてからハーレに齧りつけば、まずとろけたチーズが糸のように長く伸びた。じっくり焼かれたハーレのとろけるような食感と甘みに、チーズのまろやかさとタレの風味が一体になって口の中に広がる。
「んーおいしいっ!」
「ああ、これはうまいな!」
食べ慣れない味だが、特製のタレというのが予想以上にハーレとチーズに合っている。
「はは、本当にうまそうに食ってくれるな、あんたら」
嬉しそうな老人に、アキトは目を輝かせて答えた。
「本当に美味しいです!」
明るいアキトの声に、たまたま近くを通っていた奴らの視線がチラリとこちらを向いた。一体何を食べているんだろうと気になるらしい。
ただここの屋台の料理は地味な見た目のハーレを使っている上に、遠目から見ればただのハーレの丸焼きにしかみえない。そんな串焼きがそんなに美味しいのか?と言いたげな視線が向けられているが、アキトは全く気付かずに続けた。
「じっくり焼かれたハーレのとろけるような食感と甘み、とろけてるチーズのまろやかさと特製のタレの風味が一体になってて…!」
疑いの目を向けていた奴らが、アキトの説明を聞いてゴクリとつばを飲んだのが分かった。目を輝かせながら感想を熱く語るアキトのおかげで、屋台の前には人が集まり始めている。
こんなにうっとりと幸せそうに感想を言われれば、気になるのも仕方ないか。アキト本人に見惚れている数人を牽制するように睨みながら、俺は手の中のハーレに齧りついた。
「俺、これ大好きです。絶対にまた食べにきますね!」
元気にアキトがそう宣言した頃には、屋台の前にはしっかり人だかりが出来ていた。
思わぬ客寄せ効果に満面の笑みを浮かべた老人は、忙しそうにハーレ串を温めながらも口を開いた。
「兄ちゃん、ありがとうな!次来たらサービスするからな!」
アキトは周りから見つめられていた事に気づくと、恥ずかしそうに頬を赤くして視線を反らした。
恥ずかしがるアキトも可愛いな。
「うん、そうだね」
そう言って笑ったアキトは、一つの屋台に視線を向けるとぴたりと立ち止まった。気になる物があったのかと視線を向ければ、そこには地味な見た目のハーレという野菜だけが山のように積み上げられていた。
ああ、アキトが好きなハーレの屋台か。
「アキト、あの店、気になってるよね?」
「うん!どんな料理になるんだろう?…さすがに生で出される事はないよね」
少しだけ心配そうに小声で尋ねてきたアキトに、俺は思わずふふと笑ってしまった。さすがに生のハーレの屋台は無いと思う。
「よう綺麗な兄ちゃん達、どうだい?食ってかないか?」
そう声をかけてきたのは、筋肉質な強面の老人だった。もしこの店員がまっすぐに俺達を見つめてなかったら、自分たちが呼ばれてる事にすら気づかなかっただろうな。
「アキトはともかく俺も綺麗な兄ちゃんなのか?」
思わず苦笑しながら尋ねてしまった俺は、悪くないと思う。アキトは文句なしに綺麗なという言葉が似合うからな。
「内緒の話をするとな…?」
強面な老人はそう前置きをすると、くしゃりと笑みを浮かべた。途端に人懐こいこどものような雰囲気に変わるのに、すこしだけ驚いた。
「こうやって声かけすると、みんなひとしきり笑ってから買ってくれるんだよ。俺より年下なら全員が綺麗な兄ちゃんと姉ちゃんさ」
はははっと明るく笑った店員の種明かしに、アキトと俺も思わず笑ってしまった。年下なら全員か。なかなかに分かりやすい商売の仕方だが、それを誤魔化そうとも隠そうともしない所に逆に好感が持てた。
「なあ、素朴な疑問なんだが…もし自分より年上が相手ならどうするんだ?」
楽し気に笑いながら俺がそう尋ねると、店員はニヤリと悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「そりゃあ、優しそうな姉さんとか、強そうな兄さんとかだな」
なるほど、年上が相手なら兄さん姉さん呼びなのか。疑問が解消されて良かったよ。
「それでどうだい?うちはハーレの店なんだが」
「あの、俺ハーレ好きなんですけど、ここではどうやって食べさせてくれるんですか?」
「お、ハーレ好きとは!それならうちの屋台にきてもらって正解だぜ」
老人はそう言うと、串に刺さって焼き色のついたハーレを取り出してアキトの前に差し出した。見た目はそのままハーレの串焼きって感じだな。
「これはな、見た目はただの丸焼きに見えるだろう?でもな、中には特製のタレとチーズを入れて焼いてあるんだ」
更に手招きした店員の手元をアキトと二人揃って覗き込むと、店員はハーレの真ん中を専用の刃物らしきものでくりぬいた。できた穴に手早くタレとチーズを詰め込んでいくと、最後に切り落としたへたの部分を戻して串で固定すれば完成らしい。
「これをじっくり焼いてあるんだ。自分で言うのも何だがうまいぞ?」
ああ、これはうまいだろうな。思ったよりも手がかかっているみたいだ。俺は買うけどハルはどうすると言いたげなアキトの視線に、俺もすぐに頷いた。
「二本ください」
「はいよ、まいどあり」
焼きなおしてくれたハーレ串を受け取って、俺達は揃って屋台の横へと移動した。広場の屋台が一定の間隔を空けている理由は、ここで食べたい人に場所を提供するためだからな。
「「いただきます」」
二人で声を揃えてからハーレに齧りつけば、まずとろけたチーズが糸のように長く伸びた。じっくり焼かれたハーレのとろけるような食感と甘みに、チーズのまろやかさとタレの風味が一体になって口の中に広がる。
「んーおいしいっ!」
「ああ、これはうまいな!」
食べ慣れない味だが、特製のタレというのが予想以上にハーレとチーズに合っている。
「はは、本当にうまそうに食ってくれるな、あんたら」
嬉しそうな老人に、アキトは目を輝かせて答えた。
「本当に美味しいです!」
明るいアキトの声に、たまたま近くを通っていた奴らの視線がチラリとこちらを向いた。一体何を食べているんだろうと気になるらしい。
ただここの屋台の料理は地味な見た目のハーレを使っている上に、遠目から見ればただのハーレの丸焼きにしかみえない。そんな串焼きがそんなに美味しいのか?と言いたげな視線が向けられているが、アキトは全く気付かずに続けた。
「じっくり焼かれたハーレのとろけるような食感と甘み、とろけてるチーズのまろやかさと特製のタレの風味が一体になってて…!」
疑いの目を向けていた奴らが、アキトの説明を聞いてゴクリとつばを飲んだのが分かった。目を輝かせながら感想を熱く語るアキトのおかげで、屋台の前には人が集まり始めている。
こんなにうっとりと幸せそうに感想を言われれば、気になるのも仕方ないか。アキト本人に見惚れている数人を牽制するように睨みながら、俺は手の中のハーレに齧りついた。
「俺、これ大好きです。絶対にまた食べにきますね!」
元気にアキトがそう宣言した頃には、屋台の前にはしっかり人だかりが出来ていた。
思わぬ客寄せ効果に満面の笑みを浮かべた老人は、忙しそうにハーレ串を温めながらも口を開いた。
「兄ちゃん、ありがとうな!次来たらサービスするからな!」
アキトは周りから見つめられていた事に気づくと、恥ずかしそうに頬を赤くして視線を反らした。
恥ずかしがるアキトも可愛いな。
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