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639.フライドチキンは
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しばらく行列に並んだ末にようやく買う事が出来たフライドチキンは、食べやすい大きさに切り分けられた後、大きな葉っぱに載せて提供されていた。ちょこんと竹串みたいなものが刺さってるから、どうやらこれで食べるみたいだ。
「あ、俺は二人分持ちかえりで頼む」
注文時にさらりとそう頼んでいたカーディの分は、お皿代わりの大きな葉っぱを折りたたんで器用に包みこまれていた。何か異国感あって良いなーあの包み方と見つめていると、カーディはすぐに自分の魔道収納鞄へと包みをしまいこんだ。
「あー…俺はクリスと食べるからここでは食べられないんだが、アキトとハルはすぐに食べるんだよな?」
「ああ、そうだな」
「うん、早く食べたいっ!」
うっかりぽろりと本音がこぼれおちてしまった。だって明らかに出来立てなんだよ。出来立ての揚げ物は熱いうちに食べたい。
「よし、それじゃあこっち来て」
笑顔で歩き出したカーディの案内で辿り着いたのは、ずらりと椅子が並んだ一画だった。
広場の中でも特に奥まったこの辺りには、こうやって椅子を設置する事も許可されてるんだって。ちなみにこれはこの屋台だけのためにあるものじゃなくて、何を食べても良いってものらしい。
並んでいる椅子の造りや種類がバラバラなのは、屋台や近所の人の寄付で集まったものだからなんだって。それが逆にお洒落に見えるんだから、ちょっと不思議だ。
ハルとカーディから椅子についての説明を聞きながら、俺はそっと周りを見回してみた。
茄子に似たハーレの串焼きを食べてる人、魚の串焼きを食べている人、パンのような物に齧りついている人、それに魔道収納鞄からお弁当を取り出している人までいるみたいだ。
みんな自由に食事と会話を楽しんでいて、なんだかフードコートみたいだ。
「ほら、二人ともここ座って」
ニコニコ笑顔で椅子の前に立ったカーディの言葉に甘えて、俺とハルは空いている椅子に腰かけた。
「じゃあ遠慮なく」
「ああ!」
「「いただきます!」」
俺とハルは二人で声を揃えてから、それぞれ竹串へと手を伸ばした。
結構大きめにカットされているらしいフライドチキンをそっと持ち上げてみれば、まだ揚げたてで熱々だった。ふーふーと息を吹きかけて軽く冷ましてから、俺は大きく口を開いてがぶりと齧りついた。
こういうのは豪快に食べた方が絶対美味しいんだよね。
ちらりとそんな俺の行動を見たハルも、真似をするように大きく口を開いて齧りついた。あ、想像以上に熱かったのか、ハフハフと息を逃してる。ごめん、ちょっと可愛いとか思ってしまった。
薄い衣に歯が入った途端、サクリと軽い音が響いた。あーこれ、衣がサクサクのタイプなのか。俺こういう食感好きなんだよねと考えていると、ぶわりとジューシーな肉汁と旨味が一気に口内に広がった。
「ーっ!」
異世界のフライドチキンは、俺の知ってる中では塩味の唐揚げが一番近いかな。
元々ジューシーで美味しいマルックスと唐揚げの相性は抜群みたいだ。あ、こういう時に唐揚げって思ってると、うっかり口にしちゃうかもしれないよね。こういう所から異世界人バレが起こるのかもしれないんだから、油断は禁物だ。
これは塩唐揚げじゃなくてフライドチキン。これは塩唐揚げじゃなくてフライドチキンっと。頭の中でそう繰り返しながら、ゆっくりと口を動かす。
じっくりとフライドチキンと呼ばれるマルックスの料理を堪能する俺とハルを、カーディは何も言わずにただじっと待っていた。俺達の感想が気になるから、それを聞いてからクリスさんに届けに行くらしい。
「これがフライドチキンか!これはうまいな!」
先に食べ終えたハルは、ひどく興奮した様子でそう声を上げた。明らかに目を輝かせてるから、お肉が大好きなハルの好みにぴったりだったらしい。
「うん、これは美味しいね!」
そう素直な感想を口にすれば、カーディは嬉しそうにニッコリと笑みを浮かべてみせた。
「俺のお気に入りの料理が二人にも気に入ってもらえて良かったよ!それじゃあ、俺はそろそろクリスにこれを食べさせてくるわ」
自分の魔道収納鞄をポンポンと軽く叩いたカーディは、俺とハルに別れを告げると手を振りながら去っていった。
「アキト、これ本当に美味しいね」
「うん、このフライドチキンは、また食べに来たいな」
「ああ、もちろん。また来ようね」
ハルの優しい笑顔に、俺も満面の笑みを返した。
「あ、俺は二人分持ちかえりで頼む」
注文時にさらりとそう頼んでいたカーディの分は、お皿代わりの大きな葉っぱを折りたたんで器用に包みこまれていた。何か異国感あって良いなーあの包み方と見つめていると、カーディはすぐに自分の魔道収納鞄へと包みをしまいこんだ。
「あー…俺はクリスと食べるからここでは食べられないんだが、アキトとハルはすぐに食べるんだよな?」
「ああ、そうだな」
「うん、早く食べたいっ!」
うっかりぽろりと本音がこぼれおちてしまった。だって明らかに出来立てなんだよ。出来立ての揚げ物は熱いうちに食べたい。
「よし、それじゃあこっち来て」
笑顔で歩き出したカーディの案内で辿り着いたのは、ずらりと椅子が並んだ一画だった。
広場の中でも特に奥まったこの辺りには、こうやって椅子を設置する事も許可されてるんだって。ちなみにこれはこの屋台だけのためにあるものじゃなくて、何を食べても良いってものらしい。
並んでいる椅子の造りや種類がバラバラなのは、屋台や近所の人の寄付で集まったものだからなんだって。それが逆にお洒落に見えるんだから、ちょっと不思議だ。
ハルとカーディから椅子についての説明を聞きながら、俺はそっと周りを見回してみた。
茄子に似たハーレの串焼きを食べてる人、魚の串焼きを食べている人、パンのような物に齧りついている人、それに魔道収納鞄からお弁当を取り出している人までいるみたいだ。
みんな自由に食事と会話を楽しんでいて、なんだかフードコートみたいだ。
「ほら、二人ともここ座って」
ニコニコ笑顔で椅子の前に立ったカーディの言葉に甘えて、俺とハルは空いている椅子に腰かけた。
「じゃあ遠慮なく」
「ああ!」
「「いただきます!」」
俺とハルは二人で声を揃えてから、それぞれ竹串へと手を伸ばした。
結構大きめにカットされているらしいフライドチキンをそっと持ち上げてみれば、まだ揚げたてで熱々だった。ふーふーと息を吹きかけて軽く冷ましてから、俺は大きく口を開いてがぶりと齧りついた。
こういうのは豪快に食べた方が絶対美味しいんだよね。
ちらりとそんな俺の行動を見たハルも、真似をするように大きく口を開いて齧りついた。あ、想像以上に熱かったのか、ハフハフと息を逃してる。ごめん、ちょっと可愛いとか思ってしまった。
薄い衣に歯が入った途端、サクリと軽い音が響いた。あーこれ、衣がサクサクのタイプなのか。俺こういう食感好きなんだよねと考えていると、ぶわりとジューシーな肉汁と旨味が一気に口内に広がった。
「ーっ!」
異世界のフライドチキンは、俺の知ってる中では塩味の唐揚げが一番近いかな。
元々ジューシーで美味しいマルックスと唐揚げの相性は抜群みたいだ。あ、こういう時に唐揚げって思ってると、うっかり口にしちゃうかもしれないよね。こういう所から異世界人バレが起こるのかもしれないんだから、油断は禁物だ。
これは塩唐揚げじゃなくてフライドチキン。これは塩唐揚げじゃなくてフライドチキンっと。頭の中でそう繰り返しながら、ゆっくりと口を動かす。
じっくりとフライドチキンと呼ばれるマルックスの料理を堪能する俺とハルを、カーディは何も言わずにただじっと待っていた。俺達の感想が気になるから、それを聞いてからクリスさんに届けに行くらしい。
「これがフライドチキンか!これはうまいな!」
先に食べ終えたハルは、ひどく興奮した様子でそう声を上げた。明らかに目を輝かせてるから、お肉が大好きなハルの好みにぴったりだったらしい。
「うん、これは美味しいね!」
そう素直な感想を口にすれば、カーディは嬉しそうにニッコリと笑みを浮かべてみせた。
「俺のお気に入りの料理が二人にも気に入ってもらえて良かったよ!それじゃあ、俺はそろそろクリスにこれを食べさせてくるわ」
自分の魔道収納鞄をポンポンと軽く叩いたカーディは、俺とハルに別れを告げると手を振りながら去っていった。
「アキト、これ本当に美味しいね」
「うん、このフライドチキンは、また食べに来たいな」
「ああ、もちろん。また来ようね」
ハルの優しい笑顔に、俺も満面の笑みを返した。
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