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634.ハーレの屋台
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北大門前の広場まで到着すると、そこには一定の間隔を空けていくつもの屋台が並んでいた。
お昼時を少し超えたせいか客足はまばらだけど、人がいなくて活気が無いって程でもない。ゆっくり見て回れそうで、なかなかに良い時間帯みたいだ。
「とりあえず見て回ろうか」
「そうだね」
ハルと手を繋いだまま、少し離れた所から色々な屋台をのぞいていく。
広場の入口近くにあったパンの屋台は、野菜や果物でも練りこんであるのか驚くほどカラフルなパンがずらりと並んでいた。
その隣には、これまらカラフルな果物を冷やして販売しているフルーツの屋台、さらにその隣には香ばしく焼けた焼き魚串の屋台があった。
焼き魚串は見るからに美味しそうなんだけど、この前の船着き場の焼き魚串と比べちゃいそうだから今日はやめとこうかな。ちらとハルを見上げれば、ハルも口の端だけに笑みを浮かべて次に行こうと俺を促してきた。
ハルも同じ事を考えてたんだ。そう思うだけでなんだか嬉しくて、自然と笑みがこぼれてしまった。
よし、次の屋台は…と視線を向けると、そこには山の様に一種類の野菜だけが積み上げられていた。しかも積み上げられているのが真っ黒で見た目も地味なハーレっていうのが、逆に人目を引いている。
へぇ、ここはハーレがメインの屋台なのか。珍しいな。
「アキト、あの店、気になってるよね?」
「うん!どんな料理になるんだろう?」
さすがに生で出される事はないだろうしとワクワクしながら答えれば、ハルはふふと楽し気に笑った。
ハーレは元々俺の好きな野菜のうちの一つなんだよね。味で言うと一番近いのは茄子がかな。焼くと中がトロッとするんだけど、それがまた美味しいんだよね。
「よう綺麗な兄ちゃん達、どうだい?食ってかないか?」
そう声をかけてきたのは、筋肉質な強面のおじいさん店員さんだった。まっすぐに俺達を見つめてなかったら、自分たちが呼ばれてる事にすら気づかなかったかもしれない。
「アキトはともかく俺も綺麗な兄ちゃんなのか?」
ハルは苦笑しながらそう尋ねているけど、俺はともかくって何だよ。というか俺よりハルの方がかなり綺麗な顔だと思うんだけど?あーまあ、どちらかと言うと王子様っぽいとか格好良いとかの方が強いけどさ。
「内緒の話をするとな…?」
強面なおじいさんはそう前置きをすると、くしゃりと笑みを浮かべた。途端に人懐こいこどものような雰囲気に変わった事に、少しだけ驚いた。
「こうやって声かけすると、みんなひとしきり笑ってから買ってくれるんだよ。俺より年下なら全員が綺麗な兄ちゃんと姉ちゃんさ」
はははっと明るく笑ったおじいさんの種明かしに、俺とハルも思わず笑ってしまった。なるほど、つまりこの人は全員に同じように声をかけてるのか。誰が相手でも全員が綺麗な兄ちゃんと姉ちゃんだと。
「なあ、素朴な疑問なんだが…もし自分より年上が相手ならどうするんだ?」
楽し気に笑いながらハルが尋ねると、おじいさんはニヤリと悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「そりゃあ、優しそうな姉さんとか、強そうな兄さんとかだな」
なるほど、年上が相手なら兄さん姉さんと呼びかけるのか、この人こう見えて商売上手なのかもしれない。
「それでどうだい?うちはハーレの店なんだが」
「あの、俺ハーレ好きなんですけど、ここではどうやって食べさせてくれるんですか?」
「お、ハーレ好きとは!それならうちの屋台にきてもらって正解だぜ」
おじいさんはそう言うと、串に刺さって焼き色のついたハーレを取り出してみせてくれた。見た目はそのままハーレの串焼きって感じだな。
そのまま焼いただけでも美味しいだろうとは思うけど、味付けはどうなるんだろう。
「これはな、見た目はただの丸焼きに見えるだろう?でもな、中には特製のタレとチーズを入れて焼いてあるんだ」
手招きしてくれたおじいさんの手元を覗き込むと、おじいさんはハーレの真ん中を専用の刃物らしきものでくりぬいた。できた穴に手早くタレとチーズを詰め込んでいくと、最後に切り落としたへたの部分を戻して串で固定すれば完成だ。
「これをじっくり焼いてあるんだ。自分で言うのも何だがうまいぞ?」
うわぁ、こんなの絶対美味しいやつだ。俺はこれが食べたいなとハルを伺えば、ハルも重々しく頷いてくれた。うん、ハルもこれは食べるよね。
「二本ください」
「はいよ、まいどあり」
焼きなおしてくれたハーレ串を受け取って、俺達は屋台の横に移動した。広場の屋台が一定の間隔を空けている理由は、ここで食べたい人に場所を提供するためなんだって。
「「いただきます」」
二人で声を揃えてからハーレに齧りつけば、まずとろけたチーズがビロンと伸びた。じっくり焼かれたハーレのとろけるような食感と甘みに、チーズのまろやかさとタレの風味が一体になって口の中に広がった。
「んーおいしいっ!」
「ああ、これはうまいな!」
思わず声が出てしまうぐらい美味しかった。しかもさ、おじいさんの特製のタレっていうのが、トマトソース系の味付けだったから余計に美味しいんだよ。茄子とトマトソースとチーズなんて絶対合うに決まってる組み合わせだ。
「はは、本当にうまそうに食ってくれるな、あんたら」
「本当に美味しいです!じっくり焼かれたハーレのとろけるような食感と甘み、とろけてるチーズのまろやかさと特製のタレの風味が一体になってて…!」
思わずハーレ串の美味しさを熱く語ってしまったら、気づけば屋台の前に人だかりが出来てしまっていた。うう、恥ずかしい。次来たらサービスするからなとおじいさんは嬉しそうだったから、まあ良いか。
お昼時を少し超えたせいか客足はまばらだけど、人がいなくて活気が無いって程でもない。ゆっくり見て回れそうで、なかなかに良い時間帯みたいだ。
「とりあえず見て回ろうか」
「そうだね」
ハルと手を繋いだまま、少し離れた所から色々な屋台をのぞいていく。
広場の入口近くにあったパンの屋台は、野菜や果物でも練りこんであるのか驚くほどカラフルなパンがずらりと並んでいた。
その隣には、これまらカラフルな果物を冷やして販売しているフルーツの屋台、さらにその隣には香ばしく焼けた焼き魚串の屋台があった。
焼き魚串は見るからに美味しそうなんだけど、この前の船着き場の焼き魚串と比べちゃいそうだから今日はやめとこうかな。ちらとハルを見上げれば、ハルも口の端だけに笑みを浮かべて次に行こうと俺を促してきた。
ハルも同じ事を考えてたんだ。そう思うだけでなんだか嬉しくて、自然と笑みがこぼれてしまった。
よし、次の屋台は…と視線を向けると、そこには山の様に一種類の野菜だけが積み上げられていた。しかも積み上げられているのが真っ黒で見た目も地味なハーレっていうのが、逆に人目を引いている。
へぇ、ここはハーレがメインの屋台なのか。珍しいな。
「アキト、あの店、気になってるよね?」
「うん!どんな料理になるんだろう?」
さすがに生で出される事はないだろうしとワクワクしながら答えれば、ハルはふふと楽し気に笑った。
ハーレは元々俺の好きな野菜のうちの一つなんだよね。味で言うと一番近いのは茄子がかな。焼くと中がトロッとするんだけど、それがまた美味しいんだよね。
「よう綺麗な兄ちゃん達、どうだい?食ってかないか?」
そう声をかけてきたのは、筋肉質な強面のおじいさん店員さんだった。まっすぐに俺達を見つめてなかったら、自分たちが呼ばれてる事にすら気づかなかったかもしれない。
「アキトはともかく俺も綺麗な兄ちゃんなのか?」
ハルは苦笑しながらそう尋ねているけど、俺はともかくって何だよ。というか俺よりハルの方がかなり綺麗な顔だと思うんだけど?あーまあ、どちらかと言うと王子様っぽいとか格好良いとかの方が強いけどさ。
「内緒の話をするとな…?」
強面なおじいさんはそう前置きをすると、くしゃりと笑みを浮かべた。途端に人懐こいこどものような雰囲気に変わった事に、少しだけ驚いた。
「こうやって声かけすると、みんなひとしきり笑ってから買ってくれるんだよ。俺より年下なら全員が綺麗な兄ちゃんと姉ちゃんさ」
はははっと明るく笑ったおじいさんの種明かしに、俺とハルも思わず笑ってしまった。なるほど、つまりこの人は全員に同じように声をかけてるのか。誰が相手でも全員が綺麗な兄ちゃんと姉ちゃんだと。
「なあ、素朴な疑問なんだが…もし自分より年上が相手ならどうするんだ?」
楽し気に笑いながらハルが尋ねると、おじいさんはニヤリと悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「そりゃあ、優しそうな姉さんとか、強そうな兄さんとかだな」
なるほど、年上が相手なら兄さん姉さんと呼びかけるのか、この人こう見えて商売上手なのかもしれない。
「それでどうだい?うちはハーレの店なんだが」
「あの、俺ハーレ好きなんですけど、ここではどうやって食べさせてくれるんですか?」
「お、ハーレ好きとは!それならうちの屋台にきてもらって正解だぜ」
おじいさんはそう言うと、串に刺さって焼き色のついたハーレを取り出してみせてくれた。見た目はそのままハーレの串焼きって感じだな。
そのまま焼いただけでも美味しいだろうとは思うけど、味付けはどうなるんだろう。
「これはな、見た目はただの丸焼きに見えるだろう?でもな、中には特製のタレとチーズを入れて焼いてあるんだ」
手招きしてくれたおじいさんの手元を覗き込むと、おじいさんはハーレの真ん中を専用の刃物らしきものでくりぬいた。できた穴に手早くタレとチーズを詰め込んでいくと、最後に切り落としたへたの部分を戻して串で固定すれば完成だ。
「これをじっくり焼いてあるんだ。自分で言うのも何だがうまいぞ?」
うわぁ、こんなの絶対美味しいやつだ。俺はこれが食べたいなとハルを伺えば、ハルも重々しく頷いてくれた。うん、ハルもこれは食べるよね。
「二本ください」
「はいよ、まいどあり」
焼きなおしてくれたハーレ串を受け取って、俺達は屋台の横に移動した。広場の屋台が一定の間隔を空けている理由は、ここで食べたい人に場所を提供するためなんだって。
「「いただきます」」
二人で声を揃えてからハーレに齧りつけば、まずとろけたチーズがビロンと伸びた。じっくり焼かれたハーレのとろけるような食感と甘みに、チーズのまろやかさとタレの風味が一体になって口の中に広がった。
「んーおいしいっ!」
「ああ、これはうまいな!」
思わず声が出てしまうぐらい美味しかった。しかもさ、おじいさんの特製のタレっていうのが、トマトソース系の味付けだったから余計に美味しいんだよ。茄子とトマトソースとチーズなんて絶対合うに決まってる組み合わせだ。
「はは、本当にうまそうに食ってくれるな、あんたら」
「本当に美味しいです!じっくり焼かれたハーレのとろけるような食感と甘み、とろけてるチーズのまろやかさと特製のタレの風味が一体になってて…!」
思わずハーレ串の美味しさを熱く語ってしまったら、気づけば屋台の前に人だかりが出来てしまっていた。うう、恥ずかしい。次来たらサービスするからなとおじいさんは嬉しそうだったから、まあ良いか。
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