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629.【ハル視点】カルツさんの意外な答え
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じっくりと考えながら買うものを選んだ俺達は、先ほど無事に会計を終わらせた。
アキトと俺用には木の実のケーキと、白と茶色、それに黒のキャラメルを購入した。
俺が黒を選んだ理由を知ってから、アキトは明らかに黒いキャラメルを選ばないように誘導しようとしてきた。恥ずかしそうに頬を染めて必死になっているアキトは可愛すぎて、ついつい言う事を聞きたくなってしまった。
「黒は駄目なのか…?」
これで駄目と言われたら諦めようと思いながらも肩を落としながらそう尋ねれば、アキトはうと声をもらした。
「…やっぱり買っていいよ」
ああ、やっぱりアキトは優しいな。なかば無理やりではあったが、許可を得られた俺は笑顔で黒のキャラメルを注文した。
今夜のレーブンとローガンとの食事会のための、差し入れ用の菓子ももちろん選んで購入した。
このあたりがしっかり甘い菓子だと指定だけは俺がしたんだが、選んだのはアキトだ。俺が選ぶよりもその方がレーブンとローガンも喜ぶだろうしな。
アキトはかなり悩んだけれど、最終的には淡いピンク色の生地を真っ白な砂糖の層で覆った細長いケーキを選んだ。
このケーキはかなり甘めだが、このお店で一二を争うぐらい人気の商品だ。薄く切って食べるのがお勧めの食べ方ではあるが、あの二人ならきっと大きく切るだろうな。さすがに齧りつきはしないと思いたい。
そんな事を考えながら、俺は店員から購入した商品を受け取った。
「ありがとうございました、またお待ちしております」
店員の声に見送られながら店を出れば、ドアの横には遠くからでも目につくだろう派手な看板がどんっと立っていた。
「あ、看板出てるね」
アキトにそう声をかければ、アキトはまじまじと看板を観察し始めた。
「うわー看板でちゃったよ…俺の木の実のケーキ」
「いや、まだだ。まだ諦めないぞ」
「今日は無理だな」
「また明日来よう」
ちょうど今看板が出されたばかりなのか、並んでいる客の反応が聞こえてくる。それでも買えるかもしれないと望みをかけて並び続ける客もいれば、今日は無理だったかとあっさりと帰っていく客もいる。
おかげで列の人数はかなり減っているな。
「これがさっき言ってたやつ?」
「そうそう、今日は早く来て良かったね」
アキトとそんな話をしながら、それぞれの魔導収納鞄へと手分けして荷物を押し込んだ。全部俺が持ちたい所だが、アキトも持ちたいと言うから邪魔はできない。
「よし、差し入れも買えたし、次行こうか?」
「うん、行こう!」
手を繋いで俺達はまた歩き出した。
次の目的地は、スラテール商会のカルツさんの所だ。
街の北側に位置するスラテール商会に向かうには、いくつかの路地を通る必要がある。もちろん大通りから向かう事もできるが、そっちはかなりの遠回りになる。
そんな説明をしながら、俺はアキトと一緒に狭い路地を歩いていった。
いくつもの路地を通りぬけて、ようやくスラテール商会の横にある小道が見えてきた。店の前に出る道もあったんだが、今日はあえてこの小道を目指して来た。
まあ、もしここにいなかったらスラテール商会の中に買い物に行くしか無いなとアキトとは話してたんだが、その心配は必要なかったらしい。
カルツさんは小道の隅にぽつりと佇んでいた。
声をかけて良いかなと視線だけで尋ねてきたアキトに、ずっと気配を探っていた俺は笑って頷いた。周囲に人の気配は無いから問題なしだ。
「こんにちは、カルツさん」
アキトが小声で声をかけると、カルツさんはバッとこちらを振り返った。
「おや、ハルさん、アキトさん。お久しぶりですね」
「お久しぶりです」
ぺこりと目礼した俺に、カルツさんも同じように目礼を返してくれる。
「カルツさんは何してたんですか?」
「つい先ほどまで息子のネオルがここで商品の仕分けをしていたんですよ」
スラテール商会の製品は、太陽の光の下で仕分けをする方が違いが分かりやすいらしい。そういえば騎士団の薬品整理の時にも、スラテール商会のポーションは太陽の下で仕分けしていたな。あれはそういう理由だったのか。
「今日は何か用事があってこられたんですか?それとも通りすがりでしょうか?」
どこまでも穏やかな声で、カルツさんはそう尋ねてきた。
「今日はカルツさんに用事があって来ました」
「私に用でしたか…お聞きしますよ?」
柔らかい笑顔を浮かべたカルツさんに、アキトはすこし照れながらもそっと口を開いた。
「あの、俺とハルが…伴侶候補になった事を報告したくて…」
「これが証拠だ」
俺はアキトとつないだままの手を、カルツさんが見えやすいようにとくいっと持ち上げてみせた。
「おめでとうございます、お二人とも」
「あまり驚いていないな」
「ええ、お二人ならいずれと思っていましたから…それに…」
ふわりと笑ったカルツさんは、次の瞬間少し困ったように眉を下げた。
「すみません。実はお二人が伴侶候補になった事は既に知っていたんです」
予想外の答えに、俺は思わず目を見開いた。
アキトと俺用には木の実のケーキと、白と茶色、それに黒のキャラメルを購入した。
俺が黒を選んだ理由を知ってから、アキトは明らかに黒いキャラメルを選ばないように誘導しようとしてきた。恥ずかしそうに頬を染めて必死になっているアキトは可愛すぎて、ついつい言う事を聞きたくなってしまった。
「黒は駄目なのか…?」
これで駄目と言われたら諦めようと思いながらも肩を落としながらそう尋ねれば、アキトはうと声をもらした。
「…やっぱり買っていいよ」
ああ、やっぱりアキトは優しいな。なかば無理やりではあったが、許可を得られた俺は笑顔で黒のキャラメルを注文した。
今夜のレーブンとローガンとの食事会のための、差し入れ用の菓子ももちろん選んで購入した。
このあたりがしっかり甘い菓子だと指定だけは俺がしたんだが、選んだのはアキトだ。俺が選ぶよりもその方がレーブンとローガンも喜ぶだろうしな。
アキトはかなり悩んだけれど、最終的には淡いピンク色の生地を真っ白な砂糖の層で覆った細長いケーキを選んだ。
このケーキはかなり甘めだが、このお店で一二を争うぐらい人気の商品だ。薄く切って食べるのがお勧めの食べ方ではあるが、あの二人ならきっと大きく切るだろうな。さすがに齧りつきはしないと思いたい。
そんな事を考えながら、俺は店員から購入した商品を受け取った。
「ありがとうございました、またお待ちしております」
店員の声に見送られながら店を出れば、ドアの横には遠くからでも目につくだろう派手な看板がどんっと立っていた。
「あ、看板出てるね」
アキトにそう声をかければ、アキトはまじまじと看板を観察し始めた。
「うわー看板でちゃったよ…俺の木の実のケーキ」
「いや、まだだ。まだ諦めないぞ」
「今日は無理だな」
「また明日来よう」
ちょうど今看板が出されたばかりなのか、並んでいる客の反応が聞こえてくる。それでも買えるかもしれないと望みをかけて並び続ける客もいれば、今日は無理だったかとあっさりと帰っていく客もいる。
おかげで列の人数はかなり減っているな。
「これがさっき言ってたやつ?」
「そうそう、今日は早く来て良かったね」
アキトとそんな話をしながら、それぞれの魔導収納鞄へと手分けして荷物を押し込んだ。全部俺が持ちたい所だが、アキトも持ちたいと言うから邪魔はできない。
「よし、差し入れも買えたし、次行こうか?」
「うん、行こう!」
手を繋いで俺達はまた歩き出した。
次の目的地は、スラテール商会のカルツさんの所だ。
街の北側に位置するスラテール商会に向かうには、いくつかの路地を通る必要がある。もちろん大通りから向かう事もできるが、そっちはかなりの遠回りになる。
そんな説明をしながら、俺はアキトと一緒に狭い路地を歩いていった。
いくつもの路地を通りぬけて、ようやくスラテール商会の横にある小道が見えてきた。店の前に出る道もあったんだが、今日はあえてこの小道を目指して来た。
まあ、もしここにいなかったらスラテール商会の中に買い物に行くしか無いなとアキトとは話してたんだが、その心配は必要なかったらしい。
カルツさんは小道の隅にぽつりと佇んでいた。
声をかけて良いかなと視線だけで尋ねてきたアキトに、ずっと気配を探っていた俺は笑って頷いた。周囲に人の気配は無いから問題なしだ。
「こんにちは、カルツさん」
アキトが小声で声をかけると、カルツさんはバッとこちらを振り返った。
「おや、ハルさん、アキトさん。お久しぶりですね」
「お久しぶりです」
ぺこりと目礼した俺に、カルツさんも同じように目礼を返してくれる。
「カルツさんは何してたんですか?」
「つい先ほどまで息子のネオルがここで商品の仕分けをしていたんですよ」
スラテール商会の製品は、太陽の光の下で仕分けをする方が違いが分かりやすいらしい。そういえば騎士団の薬品整理の時にも、スラテール商会のポーションは太陽の下で仕分けしていたな。あれはそういう理由だったのか。
「今日は何か用事があってこられたんですか?それとも通りすがりでしょうか?」
どこまでも穏やかな声で、カルツさんはそう尋ねてきた。
「今日はカルツさんに用事があって来ました」
「私に用でしたか…お聞きしますよ?」
柔らかい笑顔を浮かべたカルツさんに、アキトはすこし照れながらもそっと口を開いた。
「あの、俺とハルが…伴侶候補になった事を報告したくて…」
「これが証拠だ」
俺はアキトとつないだままの手を、カルツさんが見えやすいようにとくいっと持ち上げてみせた。
「おめでとうございます、お二人とも」
「あまり驚いていないな」
「ええ、お二人ならいずれと思っていましたから…それに…」
ふわりと笑ったカルツさんは、次の瞬間少し困ったように眉を下げた。
「すみません。実はお二人が伴侶候補になった事は既に知っていたんです」
予想外の答えに、俺は思わず目を見開いた。
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