616 / 1,112
615.食事会の場所
しおりを挟む
起きだすなり大急ぎで身支度を整えた俺達は、食堂の朝食時間内にギリギリの所で間に合った。折角ならレーブンさんのご飯を食べて帰って来たなって実感したかったから、間に合って良かったよ。
久しぶりに食べるレーブンさんが作ってくれた朝食は、やっぱりすごくおいしかった。
レーブンさんの作る朝食って野菜もお肉もたっぷり使われてて、朝から元気が出る料理って感じがするんだよね。宿泊客には冒険者稼業の人が多いから、そういう人が動けるようにってメニューを考えてるのかな。レーブンさんならそういう事も考えて作ってくれてそうだよね。本当に優しい人だから。
「「ごちそうさまでした」」
食事を終えて声を揃えた俺達に、ようやく厨房での仕事がひと段落したのかレーブンさんがふらりと近づいてきた。レーブンさんの料理に夢中になっている間に、みんなは食事を終えていたらしい。周りをぐるりと見回してみれば、食堂内にはもう数人しか人が残っていなかった。
「おはようございます、レーブンさん!」
「おはよう、レーブン」
俺たちからの朝の挨拶に、レーブンさんはニッと口の端だけを上げて答えた。
「おう、二人ともおはよう」
「わざわざどうしたんだ?」
自分の隣の椅子を勧めつつ用事があって来たんだろう?とハルが尋ねれば、レーブンさんはすぐに腰を下ろしてから笑って頷いた。
「今日の夜なんだが、場所はここじゃなくて俺の部屋にするつもりだって、一応先に言っておこうと思ってな」
「レーブンさんの部屋――ですか?」
「ああ、あっちの受付の裏に俺の私室があるんだよ」
いつ誰が受付に来ても良いようにって、あえてそこに自分の部屋を作ってあるんだそうだ。レーブンさんらしい気づかいだ。
「レーブンの私室か」
「そういえば、ハルも入った事は無かったか?」
「ああ、確かに無かったな」
ハルも入った事は無いのかと思いながら二人のやりとりを見守っていると、人がいない時を狙って食堂で話してたからねとハルが教えてくれた。
ああ、そっか。ハルがいなくなっちゃって、俺が団長と話したあの時と同じか。あの時も話をしたのは食堂で、防音結界の魔道具を使ってた。
懐かしい気持ちで思いだしていると、ハルはレーブンさんに尋ねた。
「私室でするのは良いんだが…夜の受付はどうするんだ?」
「ああ、受付は信頼できる冒険者にちゃんと依頼を出してあるからな。今日は宿の事は何も気にしなくて大丈夫だ」
「そうか。それは良かった。それならレーブンも思いっきり酒を楽しめそうだな?」
揶揄うようにそう口にしたハルに、レーブンさんはすぐに答えた。
「ああ、受付業務なんて挟んでたら、気持ちよく酔えないからなぁ」
「レーブン…本気で飲む気だな?」
「当然だろう。北ノールの酒だぞ?」
「まあそうだな」
「あの酒に合いそうな料理を、色々考えてる。楽しみにしててくれ」
レーブンさんはそう言いながら、すぐに立ち上がった。
「それじゃあな。今日の夜は、直接俺の部屋まで来てくれ」
「はい、楽しみにしてます!」
「俺も楽しみだよ」
俺達の答えを聞くなりふわりと笑ったレーブンさんは、笑顔を浮かべたままで食堂から出ていった。まだ座って喋りこんでいた冒険者達が、すっごく驚いた顔でレーブンさんを見つめてたけど何かあったのかな。
不思議には思ったけれど、俺がその疑問を口にするよりも前に、ハルが笑顔で口を開いた。
「それじゃあ今日は、食事会のための差し入れを買いに行こうか」
「うん、そうだね」
「ついでにしておきたい事とかある?」
しておきたい事か。一つだけあるんだけど、これって迷惑にはならないのかな。
「あ、えーっと…」
今の所、伴侶候補になったって報告をしたのは、クリスさん、カーディ、ハルの兄であるウィリアムさん、ルセフさん達4人とレーブンさんだ。でももう一人、俺の口から報告したい人がいるんだよね。
「アキトのしたい事、ちゃんと教えて欲しいな」
優しい声に誘われるように、俺はそっと口を開いた。
「ハルと伴侶候補になれた事を、俺の口から報告したい人が…いるんだ」
ハルは一瞬だけ驚いた様子だったけれど、次の瞬間とろりと蕩けるような笑みを浮かべた。
久しぶりに食べるレーブンさんが作ってくれた朝食は、やっぱりすごくおいしかった。
レーブンさんの作る朝食って野菜もお肉もたっぷり使われてて、朝から元気が出る料理って感じがするんだよね。宿泊客には冒険者稼業の人が多いから、そういう人が動けるようにってメニューを考えてるのかな。レーブンさんならそういう事も考えて作ってくれてそうだよね。本当に優しい人だから。
「「ごちそうさまでした」」
食事を終えて声を揃えた俺達に、ようやく厨房での仕事がひと段落したのかレーブンさんがふらりと近づいてきた。レーブンさんの料理に夢中になっている間に、みんなは食事を終えていたらしい。周りをぐるりと見回してみれば、食堂内にはもう数人しか人が残っていなかった。
「おはようございます、レーブンさん!」
「おはよう、レーブン」
俺たちからの朝の挨拶に、レーブンさんはニッと口の端だけを上げて答えた。
「おう、二人ともおはよう」
「わざわざどうしたんだ?」
自分の隣の椅子を勧めつつ用事があって来たんだろう?とハルが尋ねれば、レーブンさんはすぐに腰を下ろしてから笑って頷いた。
「今日の夜なんだが、場所はここじゃなくて俺の部屋にするつもりだって、一応先に言っておこうと思ってな」
「レーブンさんの部屋――ですか?」
「ああ、あっちの受付の裏に俺の私室があるんだよ」
いつ誰が受付に来ても良いようにって、あえてそこに自分の部屋を作ってあるんだそうだ。レーブンさんらしい気づかいだ。
「レーブンの私室か」
「そういえば、ハルも入った事は無かったか?」
「ああ、確かに無かったな」
ハルも入った事は無いのかと思いながら二人のやりとりを見守っていると、人がいない時を狙って食堂で話してたからねとハルが教えてくれた。
ああ、そっか。ハルがいなくなっちゃって、俺が団長と話したあの時と同じか。あの時も話をしたのは食堂で、防音結界の魔道具を使ってた。
懐かしい気持ちで思いだしていると、ハルはレーブンさんに尋ねた。
「私室でするのは良いんだが…夜の受付はどうするんだ?」
「ああ、受付は信頼できる冒険者にちゃんと依頼を出してあるからな。今日は宿の事は何も気にしなくて大丈夫だ」
「そうか。それは良かった。それならレーブンも思いっきり酒を楽しめそうだな?」
揶揄うようにそう口にしたハルに、レーブンさんはすぐに答えた。
「ああ、受付業務なんて挟んでたら、気持ちよく酔えないからなぁ」
「レーブン…本気で飲む気だな?」
「当然だろう。北ノールの酒だぞ?」
「まあそうだな」
「あの酒に合いそうな料理を、色々考えてる。楽しみにしててくれ」
レーブンさんはそう言いながら、すぐに立ち上がった。
「それじゃあな。今日の夜は、直接俺の部屋まで来てくれ」
「はい、楽しみにしてます!」
「俺も楽しみだよ」
俺達の答えを聞くなりふわりと笑ったレーブンさんは、笑顔を浮かべたままで食堂から出ていった。まだ座って喋りこんでいた冒険者達が、すっごく驚いた顔でレーブンさんを見つめてたけど何かあったのかな。
不思議には思ったけれど、俺がその疑問を口にするよりも前に、ハルが笑顔で口を開いた。
「それじゃあ今日は、食事会のための差し入れを買いに行こうか」
「うん、そうだね」
「ついでにしておきたい事とかある?」
しておきたい事か。一つだけあるんだけど、これって迷惑にはならないのかな。
「あ、えーっと…」
今の所、伴侶候補になったって報告をしたのは、クリスさん、カーディ、ハルの兄であるウィリアムさん、ルセフさん達4人とレーブンさんだ。でももう一人、俺の口から報告したい人がいるんだよね。
「アキトのしたい事、ちゃんと教えて欲しいな」
優しい声に誘われるように、俺はそっと口を開いた。
「ハルと伴侶候補になれた事を、俺の口から報告したい人が…いるんだ」
ハルは一瞬だけ驚いた様子だったけれど、次の瞬間とろりと蕩けるような笑みを浮かべた。
154
お気に入りに追加
4,145
あなたにおすすめの小説
【第1章完結】悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼第2章2025年1月18日より投稿予定
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
自己評価下の下のオレは、血筋がチートだった!?
トール
BL
一般家庭に生まれ、ごく普通の人生を歩んで16年。凡庸な容姿に特出した才もない平凡な少年ディークは、その容姿に負けない平凡な毎日を送っている。と思っていたのに、周りから見れば全然平凡じゃなかった!?
実はこの世界の創造主(神王)を母に持ち、騎士団の師団長(鬼神)を父に持つ尊い血筋!? 両親の素性を知らされていない世間知らずな少年が巻き起こすドタバタBLコメディー。
※「異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ」の主人公の息子の話になります。
こちらを読んでいなくても楽しめるように作っておりますが、親の話に興味がある方はぜひズボラライフも読んでいただければ、より楽しめる作品です。
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
突然異世界転移させられたと思ったら騎士に拾われて執事にされて愛されています
ブラフ
BL
学校からの帰宅中、突然マンホールが光って知らない場所にいた神田伊織は森の中を彷徨っていた
魔獣に襲われ通りかかった騎士に助けてもらったところ、なぜだか騎士にいたく気に入られて屋敷に連れて帰られて執事となった。
そこまではよかったがなぜだか騎士に別の意味で気に入られていたのだった。
だがその騎士にも秘密があった―――。
その秘密を知り、伊織はどう決断していくのか。
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
*
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
本編完結しました!
時々おまけを更新しています。
【完結】僕の異世界転生先は卵で生まれて捨てられた竜でした
エウラ
BL
どうしてこうなったのか。
僕は今、卵の中。ここに生まれる前の記憶がある。
なんとなく異世界転生したんだと思うけど、捨てられたっぽい?
孵る前に死んじゃうよ!と思ったら誰かに助けられたみたい。
僕、頑張って大きくなって恩返しするからね!
天然記念物的な竜に転生した僕が、助けて育ててくれたエルフなお兄さんと旅をしながらのんびり過ごす話になる予定。
突発的に書き出したので先は分かりませんが短い予定です。
不定期投稿です。
本編完結で、番外編を更新予定です。不定期です。
ハッピーエンドのために妹に代わって惚れ薬を飲んだ悪役兄の101回目
カギカッコ「」
BL
ヤられて不幸になる妹のハッピーエンドのため、リバース転生し続けている兄は我が身を犠牲にする。妹が飲むはずだった惚れ薬を代わりに飲んで。
もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」
授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。
途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。
ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。
駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。
しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。
毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。
翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。
使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった!
一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。
その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。
この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。
次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。
悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。
ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった!
<第一部:疫病編>
一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24
二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29
三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31
四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4
五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8
六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11
七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる