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589.原因は
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最後はただの訓練みたいになってたけど、無事に全ての実験を終えた頃、クリスさん達が揃って帰ってきた。
「アキト、すごかったな」
「ああ、護衛のやつらも魔法制御の上手さに感心してたぞ」
そんな風に笑って褒めてくれたのは、カーディとウォルターさんだ。
「ええ、それに何故かウマも楽しそうに眺めてましたよ」
クリスさんは、ふふと笑ってそう教えてくれた。魔法の方に集中してたから、馬の方は全然見れてなかったな。嫌がらずに楽しんでもらえてたなら嬉しいけど。
ルセフさんはと言うと、俺とファリーマさんの前に立ってから疲れた顔で口を開いた。
「ファリーマ、アキト、ちょっとやりすぎじゃないか…?」
「あ、待って待って、リーダー。俺ちゃんとハルに許可を貰ったからな?」
慌てて口を挟んだファリーマさんをちらりと見てから、ルセフさんはハルに視線を向けた。
「そうなのか?ハル?」
「ああ、アキトが練習したいって言ってたし、ちょうど良いかなと」
にっこりと笑って答えたハルに、ルセフさんはまかせる相手を間違えたなと苦笑いだ。
「まあ、あちらの依頼人も護衛のやつらも感心してたから良いけどな」
言い訳をしても怒られる覚悟はしていたのか、ファリーマさんは驚いた様子でルセフさんを見かえした。
「ファリーマ、アキト。実験の成功おめでとう」
「っ!ありがとう!」
「ありがとうございます」
「意外だな。ルセフはもっと怒るかと思ってたぞ」
さすがにやりすぎだろうとは俺でも思ったしなと、ウォルターさんが口を開いた。やっぱりやりすぎだったんだ。ごめんなさい。ルセフさんはまあ確かにと口にしてから、続けた。
「ただまあ、前にアキトに会ってから、ずーっと考えてたのを知ってるからな。成功して良かったよ」
「ルセフー!ありがとう!」
「あれ?泣いてる?」
クスクスと笑いながらブレイズが顔を覗き込む。
「泣いてないっ!」
わーわーと盛り上がる四人のやりとりはいつも通りで、自然と笑みがこぼれてくる。相変わらず仲が良いんだなぁと、ほっこりしてしまったよ。
後片づけを終えた俺達は、停留場を後にし領都トライプールに向けて出発した。
クリスさんとカーディ、ハルと俺は馬車に戻り、ルセフさんが御者。ウォルターさんとブレイズとファリーマさんは騎乗というさっきと変わらないスタイルだ。
クリスさんの分析では、このままの速度でいけば夜までにはトライプールに着くという事だった。このままの速度でいけば…ね。
「…クリスさん」
「はい、どうしましたか、アキトさん」
「これ明らかに昨日よりも速くないですか?」
俺は窓の外の景色をぼんやりと眺めながら尋ねる。昨日は外を走ってるブレイズを見たり景色を見たりできてたのに、今はできないんだよね。のんびり景色を楽しむとかそういう速さじゃない。昨日とは段違いに速くなってる。
「…ええ、明らかに速いですね」
「ここまで速いウマとか初めて乗るな?」
カーディは遠い目をしながらぼそりと呟いた。
「ゆっくり休んで元気になった…とか?」
そんなわけは無いだろうと思いつつも口にすれば、皆が苦笑するのが分かった。うん、やっぱり違うよね。知ってた。
「実は俺は…これぐらい速いウマにも乗った事があるんだけど…」
ハルの言葉に、俺達はバッと視線を向けた。さすがハル。急に馬が速くなった理由を知ってるのか。ワクワクしながら見つめる先で、ハルは苦笑しながら続けた。
「よほどの緊急事態だけなんだけどね、ウマに魔力を提供して速度を上げる事があるんだ」
馬に魔力を提供?そんな事誰もしてないよねと疑問に思ったのは俺だけみたいだ。
「あー…そういう事か」
「ええ、そういう事でしょうね」
カーディもクリスさんも納得してるけど俺には分からない。じっとハルを見つめれば、ハルは言い難そうに口を開いた。
「多分あの実験から漏れ出た魔力を、馬が吸収したんだと思うよ」
あ、そういう意味か。まさかの馬が速くなった原因は、俺の魔力だったみたい。やりすぎてすみませんでした。
「アキト、すごかったな」
「ああ、護衛のやつらも魔法制御の上手さに感心してたぞ」
そんな風に笑って褒めてくれたのは、カーディとウォルターさんだ。
「ええ、それに何故かウマも楽しそうに眺めてましたよ」
クリスさんは、ふふと笑ってそう教えてくれた。魔法の方に集中してたから、馬の方は全然見れてなかったな。嫌がらずに楽しんでもらえてたなら嬉しいけど。
ルセフさんはと言うと、俺とファリーマさんの前に立ってから疲れた顔で口を開いた。
「ファリーマ、アキト、ちょっとやりすぎじゃないか…?」
「あ、待って待って、リーダー。俺ちゃんとハルに許可を貰ったからな?」
慌てて口を挟んだファリーマさんをちらりと見てから、ルセフさんはハルに視線を向けた。
「そうなのか?ハル?」
「ああ、アキトが練習したいって言ってたし、ちょうど良いかなと」
にっこりと笑って答えたハルに、ルセフさんはまかせる相手を間違えたなと苦笑いだ。
「まあ、あちらの依頼人も護衛のやつらも感心してたから良いけどな」
言い訳をしても怒られる覚悟はしていたのか、ファリーマさんは驚いた様子でルセフさんを見かえした。
「ファリーマ、アキト。実験の成功おめでとう」
「っ!ありがとう!」
「ありがとうございます」
「意外だな。ルセフはもっと怒るかと思ってたぞ」
さすがにやりすぎだろうとは俺でも思ったしなと、ウォルターさんが口を開いた。やっぱりやりすぎだったんだ。ごめんなさい。ルセフさんはまあ確かにと口にしてから、続けた。
「ただまあ、前にアキトに会ってから、ずーっと考えてたのを知ってるからな。成功して良かったよ」
「ルセフー!ありがとう!」
「あれ?泣いてる?」
クスクスと笑いながらブレイズが顔を覗き込む。
「泣いてないっ!」
わーわーと盛り上がる四人のやりとりはいつも通りで、自然と笑みがこぼれてくる。相変わらず仲が良いんだなぁと、ほっこりしてしまったよ。
後片づけを終えた俺達は、停留場を後にし領都トライプールに向けて出発した。
クリスさんとカーディ、ハルと俺は馬車に戻り、ルセフさんが御者。ウォルターさんとブレイズとファリーマさんは騎乗というさっきと変わらないスタイルだ。
クリスさんの分析では、このままの速度でいけば夜までにはトライプールに着くという事だった。このままの速度でいけば…ね。
「…クリスさん」
「はい、どうしましたか、アキトさん」
「これ明らかに昨日よりも速くないですか?」
俺は窓の外の景色をぼんやりと眺めながら尋ねる。昨日は外を走ってるブレイズを見たり景色を見たりできてたのに、今はできないんだよね。のんびり景色を楽しむとかそういう速さじゃない。昨日とは段違いに速くなってる。
「…ええ、明らかに速いですね」
「ここまで速いウマとか初めて乗るな?」
カーディは遠い目をしながらぼそりと呟いた。
「ゆっくり休んで元気になった…とか?」
そんなわけは無いだろうと思いつつも口にすれば、皆が苦笑するのが分かった。うん、やっぱり違うよね。知ってた。
「実は俺は…これぐらい速いウマにも乗った事があるんだけど…」
ハルの言葉に、俺達はバッと視線を向けた。さすがハル。急に馬が速くなった理由を知ってるのか。ワクワクしながら見つめる先で、ハルは苦笑しながら続けた。
「よほどの緊急事態だけなんだけどね、ウマに魔力を提供して速度を上げる事があるんだ」
馬に魔力を提供?そんな事誰もしてないよねと疑問に思ったのは俺だけみたいだ。
「あー…そういう事か」
「ええ、そういう事でしょうね」
カーディもクリスさんも納得してるけど俺には分からない。じっとハルを見つめれば、ハルは言い難そうに口を開いた。
「多分あの実験から漏れ出た魔力を、馬が吸収したんだと思うよ」
あ、そういう意味か。まさかの馬が速くなった原因は、俺の魔力だったみたい。やりすぎてすみませんでした。
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