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583.【ハル視点】盾使いの攻撃方法
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それにしても筋肉があるかどうかなんて聞いて一体どうするのかと思ったが、ウォルターにとっては意味がある質問だったらしい。
「俺はさ、盾を上手く使うために身体を鍛えてきたんだけど、最近ちょっと伸び悩んでるんだよ」
「そうなのか?」
とてもそうは見えなかったけどなと、過去に見た戦闘を思い浮かべてみる。身軽で素早いルセフよりも前に出て、しっかりと攻撃を受け止めていたと思うんだが。
「ウォルターは十分強いって、俺はいつも言ってるんだがな…信じてくれないんだよ」
苦笑を浮かべたルセフの言葉を聞いて、ウォルターは真剣な表情のままゆるりと首を振った。
「ルセフの言葉は嬉しいけど、それはただの慰めだろう」
「だから違うって言ってるだろ?」
「あー…ウォルター、特に戦闘面で伸び悩んでるってのは、例えばどんな所なんだ?」
このままだと口論でも始まってしまいそうだなと、俺はあえて空気は読まずにそう尋ねた。ルセフはもの言いたげに俺をちらりと見たが、結局は何も言わずに口を閉ざした。ここで騒いで他の奴らに迷惑はかけたくないんだろうな。
「うーん、そうだな…例えば、盾を維持したまま攻撃にも参加したい時とかだな」
盾を維持したままで攻撃か。それは確かに慣れが必要だろうなと聞いていると、ウォルターは苦笑しながら続けた。
「どうしても武器を取り出すのに手間取るんだ…。武器に気を取られたら盾を維持できないし」
何だか今気になる言葉が出てきたな。あれは難しいと思うよと、ルセフはウォルターを慰め始めた。
「えーっとさ、さっき言ってた…武器を取り出すってのは?」
「そのままの意味だぞ?一応、盾の裏側に短刀をしこんであるんだが…」
あーやっぱりさっきのは俺の聞き間違いってわけじゃないのか。
落ち着いてよくよく思いだしてみれば、確かに冒険者が盾だけを使って戦っているのはあまり見た事が無いかもしれない。追い詰められて偶然ってのは見た事があるが、それ以外は思いだせないな。冒険者の盾使いは基本的には盾と同時に、短剣や剣を振り回してるやつが多い。あいつらにとって盾は、ただの防具って事なのか。
これをディエゴが知ったら怒り出しそうだな。――いや、怒り出しそうじゃなくて、確実に、間違いなく怒るだろうな。
言うべきか言わざるべきかと悩んだのは一瞬だけだった。騎士団の評判なんかよりも、怒るディエゴの相手をする方が絶対に大変だからな。。
「あー…ちょっと…いやすごく言い難いんだが…」
「ん?言い難い?」
「一体どうしたんだ、ハル?」
不思議そうに揃って尋ねてく二人に、俺は申し訳なく思いながらも口を開いた。
「俺の元職場のイメージが変わるかもしれないんだが…俺が知ってる盾使いは基本的に盾しか使わない」
「…って事は、盾使いは攻撃には一切参加しないって事か?」
分かりやすく不服そうな表情になったウォルターとルセフに、俺はぶんぶんと慌てて首を振って否定を返す。ウォルターもルセフも、じゃあどうするんだと言いたげに首を傾げている。
「盾を、武器にしてるんだ」
「「は?盾を武器にしてる?」」
ぴったりと言葉を重ねた二人は無言のまま、ただひたすらに俺を見つめてくる。突き刺さりそうな視線が痛いぐらいだな。盾を武器にするというのは、本当にそのままの意味なんだが…。
さてどこから説明すれば良いのかと悩んでいると、不意にウォルターが尋ねてきた。
「盾を武器にって…どうやって?」
「あー…えっとな、盾を使って思いっきりぶん殴ったり」
「「は?」」
理解できないって顔の二人に、俺は騎士団の盾使い達の戦い方を説明し始めた。
もちろん防御のためにも使っているんだが、わざわざ武器を取り出したりする奴はいない。持っている盾でそのままぶん殴ったり、盾を使って吹き飛ばしたりとやりたい放題だ。
「ハルの古巣の戦闘訓練は何度も見学した事があるのに、そもそも俺は盾使いがいる事すら知らなかったんだが…?」
ルセフのこぼした疑問も最もだと思うが、あれには盾使い達が盾使いとして参加していないからな。
外部に公開されるような戦闘訓練の際には、盾使い達は揃って剣を使用する。とはいっても、別に騎士団から強要されているとか、明確な規則があるわけじゃない。
誰かに聞かれても大丈夫なように言葉を選びながらそう伝えると、二人は意味が分からないと更に首を傾げる。
「あーえっとな…想像してみてくれるか?」
「想像ですか?」
「俺の古巣の奴らが、急に盾で敵をぶん殴るところを…だ」
規則を守り、街を守り、国を守る。人の模範となれと言われ、優しい騎士様と周りからも尊敬を受けている。そんな騎士達が、盾で敵をぶん殴る所なんて見せたくないだろう。
「あー…うん…」
「想像できたわ…それは駄目だな」
「理解してくれて良かったよ…」
まあ、非公開の戦闘訓練の時には思いっきり盾でぶん殴りにくるんだけどなと、俺は思わず遠い目をしてしまった。
「俺はさ、盾を上手く使うために身体を鍛えてきたんだけど、最近ちょっと伸び悩んでるんだよ」
「そうなのか?」
とてもそうは見えなかったけどなと、過去に見た戦闘を思い浮かべてみる。身軽で素早いルセフよりも前に出て、しっかりと攻撃を受け止めていたと思うんだが。
「ウォルターは十分強いって、俺はいつも言ってるんだがな…信じてくれないんだよ」
苦笑を浮かべたルセフの言葉を聞いて、ウォルターは真剣な表情のままゆるりと首を振った。
「ルセフの言葉は嬉しいけど、それはただの慰めだろう」
「だから違うって言ってるだろ?」
「あー…ウォルター、特に戦闘面で伸び悩んでるってのは、例えばどんな所なんだ?」
このままだと口論でも始まってしまいそうだなと、俺はあえて空気は読まずにそう尋ねた。ルセフはもの言いたげに俺をちらりと見たが、結局は何も言わずに口を閉ざした。ここで騒いで他の奴らに迷惑はかけたくないんだろうな。
「うーん、そうだな…例えば、盾を維持したまま攻撃にも参加したい時とかだな」
盾を維持したままで攻撃か。それは確かに慣れが必要だろうなと聞いていると、ウォルターは苦笑しながら続けた。
「どうしても武器を取り出すのに手間取るんだ…。武器に気を取られたら盾を維持できないし」
何だか今気になる言葉が出てきたな。あれは難しいと思うよと、ルセフはウォルターを慰め始めた。
「えーっとさ、さっき言ってた…武器を取り出すってのは?」
「そのままの意味だぞ?一応、盾の裏側に短刀をしこんであるんだが…」
あーやっぱりさっきのは俺の聞き間違いってわけじゃないのか。
落ち着いてよくよく思いだしてみれば、確かに冒険者が盾だけを使って戦っているのはあまり見た事が無いかもしれない。追い詰められて偶然ってのは見た事があるが、それ以外は思いだせないな。冒険者の盾使いは基本的には盾と同時に、短剣や剣を振り回してるやつが多い。あいつらにとって盾は、ただの防具って事なのか。
これをディエゴが知ったら怒り出しそうだな。――いや、怒り出しそうじゃなくて、確実に、間違いなく怒るだろうな。
言うべきか言わざるべきかと悩んだのは一瞬だけだった。騎士団の評判なんかよりも、怒るディエゴの相手をする方が絶対に大変だからな。。
「あー…ちょっと…いやすごく言い難いんだが…」
「ん?言い難い?」
「一体どうしたんだ、ハル?」
不思議そうに揃って尋ねてく二人に、俺は申し訳なく思いながらも口を開いた。
「俺の元職場のイメージが変わるかもしれないんだが…俺が知ってる盾使いは基本的に盾しか使わない」
「…って事は、盾使いは攻撃には一切参加しないって事か?」
分かりやすく不服そうな表情になったウォルターとルセフに、俺はぶんぶんと慌てて首を振って否定を返す。ウォルターもルセフも、じゃあどうするんだと言いたげに首を傾げている。
「盾を、武器にしてるんだ」
「「は?盾を武器にしてる?」」
ぴったりと言葉を重ねた二人は無言のまま、ただひたすらに俺を見つめてくる。突き刺さりそうな視線が痛いぐらいだな。盾を武器にするというのは、本当にそのままの意味なんだが…。
さてどこから説明すれば良いのかと悩んでいると、不意にウォルターが尋ねてきた。
「盾を武器にって…どうやって?」
「あー…えっとな、盾を使って思いっきりぶん殴ったり」
「「は?」」
理解できないって顔の二人に、俺は騎士団の盾使い達の戦い方を説明し始めた。
もちろん防御のためにも使っているんだが、わざわざ武器を取り出したりする奴はいない。持っている盾でそのままぶん殴ったり、盾を使って吹き飛ばしたりとやりたい放題だ。
「ハルの古巣の戦闘訓練は何度も見学した事があるのに、そもそも俺は盾使いがいる事すら知らなかったんだが…?」
ルセフのこぼした疑問も最もだと思うが、あれには盾使い達が盾使いとして参加していないからな。
外部に公開されるような戦闘訓練の際には、盾使い達は揃って剣を使用する。とはいっても、別に騎士団から強要されているとか、明確な規則があるわけじゃない。
誰かに聞かれても大丈夫なように言葉を選びながらそう伝えると、二人は意味が分からないと更に首を傾げる。
「あーえっとな…想像してみてくれるか?」
「想像ですか?」
「俺の古巣の奴らが、急に盾で敵をぶん殴るところを…だ」
規則を守り、街を守り、国を守る。人の模範となれと言われ、優しい騎士様と周りからも尊敬を受けている。そんな騎士達が、盾で敵をぶん殴る所なんて見せたくないだろう。
「あー…うん…」
「想像できたわ…それは駄目だな」
「理解してくれて良かったよ…」
まあ、非公開の戦闘訓練の時には思いっきり盾でぶん殴りにくるんだけどなと、俺は思わず遠い目をしてしまった。
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