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579.【ハル視点】特別な笑顔
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伴侶候補が相手だと違うのかな?と、ブレイズとファリーマは楽しそうに揶揄ってくる。まあアキトに対しての笑顔や態度が、その他を相手にする時とは違っていて当然だ。揶揄われても特に何とも思わないな。
はいはいと返しながらふと視線を動かすと、頬を真っ赤に染めたアキトが視界に飛び込んできた。
「アキト…?」
「…あ、えっと…」
気づかれたと言いたげに真っ赤な顔のまま視線をうろうろと彷徨わせる姿も、可愛すぎるから困ってしまう。
「アキト、真っ赤だ」
「ああ、これ以上ないってぐらい真っ赤だな」
ブレイズとファリーマの一言に、アキトはああーと声を上げた。
「俺、そんなに恥ずかしい事言ったかな?」
「いや、ハルじゃなくて…」
口ごもるアキトをじっと見つめた俺は、すこし寂しそうな表情を作ってから尋ねた。
「教えてくれないの?」
卑怯な聞き方かもしれないけれど、アキトにはこういう尋ね方が一番答えてもらいやすいんだよな。それに何がそんなに恥ずかしかったのかは、今後のためにもぜひ知りたい。
「うう…ハルずるい…」
「ずるい?」
「そんな聞き方されたら、拒絶できない!」
俺がわざと寂しそうな顔を作ってるのはきちんと理解してるのに、それでもちゃんと答えてくれるんだな。やっぱりアキトは優しいな。
「ハルのあの蕩けるような笑顔は、俺だけが独り占めできるのかーってしみじみ思っちゃって…」
「え、それだけであんなに真っ赤になったの?伴侶候補なら当然じゃない?」
ブレイズの無邪気な質問に、アキトはうっと言葉に詰まった。俺とブレイズ、ファリーマ、三人のまっすぐな視線に耐えかねたのか、アキトは小さな声でぽつりと続けた。
「そんな風に考えて嬉しくなった自分が恥ずかしかったんだよ…」
俺がアキトだけに向ける笑顔を独り占めできるんだと思って、そう考えて嬉しくなった自分が恥ずかしかった?
どうしよう。アキトが可愛すぎてつらい。俺の伴侶候補が、こんなにも可愛いと叫びだしたくなる。実行したらアキトが怖がるかもしれないから、絶対にしないけど。脳内で大騒ぎしながら、俺は表面上はにっこりと優しい笑みを浮かべた。
「アキト、教えてくれてありがとう」
「…どういたしまして」
「これからも俺の特別な笑顔はアキトだけのものだからね」
「う…うん」
恥ずかしそうにうつむいてしまったアキトの頭を、伸ばした手でそっと撫でる。
俺達のやりとりを黙って見守っていたブレイズとファリーマは、今は俺に向かってニヤニヤと笑っている。揶揄いの言葉を口にしないのは、アキトが余計に恥ずかしがるって分かってるからだろうな。アキトへの気づかいをありがとう。
「おはよう、みんな」
背後からかけられたのは、こんな時間でも爽やかな声だった。
「おはよう、ルセフ」
挨拶を返しながら魔道具を取り出してみれば、交代の時間はもうすぐだ。
「あ、おはよ」
「おはようございます」
「おはよう、ルセフさん」
それぞれの挨拶が終わる頃、ファリーマは魔道具を見てぽつりと呟いた。
「あ、もうこんな時間か。ブレイズ、今日も頼めるか?」
ファリーマの口したお願いに、ブレイズはまかせてと答えるとウォルターのテントの中へと消えていった。先客の馬車に気を使ってかかなり小声ではあるが、ブレイズがウォルターにひっきりなしに話しかけているのがうっすらと聞こえてくる。
「ああ、そういえばウォルターは朝に弱いんだったな」
「なんでって…そっか、知ってるんだったな」
悪いと言いたげに苦笑したファリーマに、俺は気にするなと笑顔だけを返した。
「ブレイズが起こすの担当なんですか?」
「ああ。ウォルターは、本っっっ当に!起きないからな!……俺は我慢できなくてついつい手が出るし、ファリーマにいたっては水魔法をぶちかました事もあるよ」
目覚めさせるために水魔法とは、かなり過激だな。
「そこまでやっても、それでもウォルターは寝てるんだよ……」
「それなのに、魔物が来た時は飛び起きるんだよな」
「いっそ魔物を連れてくるべきなのかって考えた事があるよ」
「ああ、俺もあるな…」
遠い目で言い合う二人に、俺とアキトは顔を見合わせてから笑ってしまった。
「ブレイズがいーっぱい話しかけるのが一番早いって分かってからは、ずっとブレイズが担当してくれてるよ」
ルセフが本当に感謝してると言った瞬間、ブレイズはまだ眠そうなウォルターを引きずってテントから出てきた。
はいはいと返しながらふと視線を動かすと、頬を真っ赤に染めたアキトが視界に飛び込んできた。
「アキト…?」
「…あ、えっと…」
気づかれたと言いたげに真っ赤な顔のまま視線をうろうろと彷徨わせる姿も、可愛すぎるから困ってしまう。
「アキト、真っ赤だ」
「ああ、これ以上ないってぐらい真っ赤だな」
ブレイズとファリーマの一言に、アキトはああーと声を上げた。
「俺、そんなに恥ずかしい事言ったかな?」
「いや、ハルじゃなくて…」
口ごもるアキトをじっと見つめた俺は、すこし寂しそうな表情を作ってから尋ねた。
「教えてくれないの?」
卑怯な聞き方かもしれないけれど、アキトにはこういう尋ね方が一番答えてもらいやすいんだよな。それに何がそんなに恥ずかしかったのかは、今後のためにもぜひ知りたい。
「うう…ハルずるい…」
「ずるい?」
「そんな聞き方されたら、拒絶できない!」
俺がわざと寂しそうな顔を作ってるのはきちんと理解してるのに、それでもちゃんと答えてくれるんだな。やっぱりアキトは優しいな。
「ハルのあの蕩けるような笑顔は、俺だけが独り占めできるのかーってしみじみ思っちゃって…」
「え、それだけであんなに真っ赤になったの?伴侶候補なら当然じゃない?」
ブレイズの無邪気な質問に、アキトはうっと言葉に詰まった。俺とブレイズ、ファリーマ、三人のまっすぐな視線に耐えかねたのか、アキトは小さな声でぽつりと続けた。
「そんな風に考えて嬉しくなった自分が恥ずかしかったんだよ…」
俺がアキトだけに向ける笑顔を独り占めできるんだと思って、そう考えて嬉しくなった自分が恥ずかしかった?
どうしよう。アキトが可愛すぎてつらい。俺の伴侶候補が、こんなにも可愛いと叫びだしたくなる。実行したらアキトが怖がるかもしれないから、絶対にしないけど。脳内で大騒ぎしながら、俺は表面上はにっこりと優しい笑みを浮かべた。
「アキト、教えてくれてありがとう」
「…どういたしまして」
「これからも俺の特別な笑顔はアキトだけのものだからね」
「う…うん」
恥ずかしそうにうつむいてしまったアキトの頭を、伸ばした手でそっと撫でる。
俺達のやりとりを黙って見守っていたブレイズとファリーマは、今は俺に向かってニヤニヤと笑っている。揶揄いの言葉を口にしないのは、アキトが余計に恥ずかしがるって分かってるからだろうな。アキトへの気づかいをありがとう。
「おはよう、みんな」
背後からかけられたのは、こんな時間でも爽やかな声だった。
「おはよう、ルセフ」
挨拶を返しながら魔道具を取り出してみれば、交代の時間はもうすぐだ。
「あ、おはよ」
「おはようございます」
「おはよう、ルセフさん」
それぞれの挨拶が終わる頃、ファリーマは魔道具を見てぽつりと呟いた。
「あ、もうこんな時間か。ブレイズ、今日も頼めるか?」
ファリーマの口したお願いに、ブレイズはまかせてと答えるとウォルターのテントの中へと消えていった。先客の馬車に気を使ってかかなり小声ではあるが、ブレイズがウォルターにひっきりなしに話しかけているのがうっすらと聞こえてくる。
「ああ、そういえばウォルターは朝に弱いんだったな」
「なんでって…そっか、知ってるんだったな」
悪いと言いたげに苦笑したファリーマに、俺は気にするなと笑顔だけを返した。
「ブレイズが起こすの担当なんですか?」
「ああ。ウォルターは、本っっっ当に!起きないからな!……俺は我慢できなくてついつい手が出るし、ファリーマにいたっては水魔法をぶちかました事もあるよ」
目覚めさせるために水魔法とは、かなり過激だな。
「そこまでやっても、それでもウォルターは寝てるんだよ……」
「それなのに、魔物が来た時は飛び起きるんだよな」
「いっそ魔物を連れてくるべきなのかって考えた事があるよ」
「ああ、俺もあるな…」
遠い目で言い合う二人に、俺とアキトは顔を見合わせてから笑ってしまった。
「ブレイズがいーっぱい話しかけるのが一番早いって分かってからは、ずっとブレイズが担当してくれてるよ」
ルセフが本当に感謝してると言った瞬間、ブレイズはまだ眠そうなウォルターを引きずってテントから出てきた。
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