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559.【ハル視点】ルセフとの会話
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俺たちの馬車を目指してルセフと二人で並んで歩いていると、不意にルセフが口を開いた。
「ハルがいてくれて助かったよ」
「そうか?」
正直ルセフだけでも、何の問題もなくしっかり挨拶は出来ていたと思う。
初対面の冒険者を相手にする時に大事なのは、距離を詰めるための砕けた口調と気安い態度だ。どうしてもお互いが本当に同業者かどうかを探りながらの会話になるからな。
だがそのままの口調で相手の依頼人に話しかけるのは、あまり良くないんだよな。まあ、まったく気にしない依頼人も冒険者もいるんだが、気にする相手だった場合色々と面倒な事になる。
「特にルセフの対応に問題があるとは思わなかったよ。むしろ途中で勝手に口を挟んで悪かったな」
あまりにあの革の鞄が見事だったせいで、クリスとカーディさんが縁を繋いでおきたいというかもしれないなと思ったら、ついつい口を出してしまった。
「いや、謝らないでくれ。あそこで口を挟んでくれて俺は助かったよ」
こちらから探りを入れる前に自分から自己紹介をしてくれる依頼人なんて、初めて会ったから実はかなり戸惑ってたんだとルセフは続けた。
「確かにああいう反応をする人はそう多くないよな」
「でも、ハルは全然動揺してなかっただろ?」
「まあその辺りは単に慣れの問題だと思う。あ、そうそう、さっきの男性は嘘を吐いてなかったから良いんだが、自主的に嘘の自己紹介をするなんて奴もいるからな?」
一応言っておくべきかと続ければ、ルセフは真剣な表情でまっすぐ俺を見つめながら尋ねた。
「相手が嘘を吐いているかどうかを…ハルがどうやって判断してるのかって、聞いても良いか?」
「うーん、俺は目の動きと、身なり、立ち方と声の抑揚、最後は勘だな」
あの男性はたくさんの革の小物を身に着けていたが、そのどれもが見たことの無い意匠だった。おそらくあれは自分たちの腕を見せるために、わざわざ身につけているこだわりの品だと思う。それに職人らしく使い込まれた手をしていたから、少なくとも何らかの職人というのは嘘じゃない。目の動きにも違和感は無かった。つらつらとそう指折り数えていく俺を、ルセフは興味深そうに見つめている。
「こんな所かな」
「思った以上に詳しい説明をありがとう」
「どういたしまして」
「……それにしても、ハルは、こういう大事な情報もあっさり教えてくれるんだな」
「誰にでもって訳じゃないぞ?お前たちは、アキトにとって大切な存在だからな」
「あーなるほど」
苦笑しながらも、ルセフはそれ以上突っ込んでは聞いてこなかった。俺の判断基準はアキトが中心だからな。アキトに失礼な態度を取る奴が相手なら、どんな些細な情報だって絶対に与えるつもりは無い。
「ハル、依頼人のお二人への説明は頼んでも良いか?」
「ああ、もちろん」
「じゃあ、頼んだ」
ルセフはそう言って外から小窓をそっと閉めると、そのまま自分のパーティーメンバーの方へと歩いていった。ん?ブレイズがいないみたいだが、一体どこに行ったんだろうと一瞬だけ思ったが、まあ良いかと俺はすぐに切り替えた。
扉を開けて馬車の中に乗り込めば、三人から笑顔で迎え入れられた。
「ハル、おかえり」
「ただいま、アキト」
「それで、どうでした?」
「ああ、問題は無さそうだ。王都の職人一家と、護衛の冒険者だった」
「王都の職人ですか…」
「ああ、革製品を作ってるそうだぞ」
クリスは興味深そうに笑みを浮かべた。やっぱりそうなるよな。
「名前はもちろん言ってないが、こちらの護衛対象が魔道具技師だとはさっき伝えてきた」
あちらはご挨拶できると良いのですがと言ってたぞと前向きだった事を伝えれば、クリスとカーディさんが嬉しそうに笑みを浮かべる。
「さすがハルですね。後でご挨拶に行きましょうか、カーディ」
「ああ、人脈は大事だからなぁ」
ふふと楽し気に笑い合う二人を眺めていると、不意に外からブレイズがアキトを呼ぶ声が聞こえてきた。
「アキトー下りてこいよ!」
「あ、うん、すぐ行く!」
「ハルがいてくれて助かったよ」
「そうか?」
正直ルセフだけでも、何の問題もなくしっかり挨拶は出来ていたと思う。
初対面の冒険者を相手にする時に大事なのは、距離を詰めるための砕けた口調と気安い態度だ。どうしてもお互いが本当に同業者かどうかを探りながらの会話になるからな。
だがそのままの口調で相手の依頼人に話しかけるのは、あまり良くないんだよな。まあ、まったく気にしない依頼人も冒険者もいるんだが、気にする相手だった場合色々と面倒な事になる。
「特にルセフの対応に問題があるとは思わなかったよ。むしろ途中で勝手に口を挟んで悪かったな」
あまりにあの革の鞄が見事だったせいで、クリスとカーディさんが縁を繋いでおきたいというかもしれないなと思ったら、ついつい口を出してしまった。
「いや、謝らないでくれ。あそこで口を挟んでくれて俺は助かったよ」
こちらから探りを入れる前に自分から自己紹介をしてくれる依頼人なんて、初めて会ったから実はかなり戸惑ってたんだとルセフは続けた。
「確かにああいう反応をする人はそう多くないよな」
「でも、ハルは全然動揺してなかっただろ?」
「まあその辺りは単に慣れの問題だと思う。あ、そうそう、さっきの男性は嘘を吐いてなかったから良いんだが、自主的に嘘の自己紹介をするなんて奴もいるからな?」
一応言っておくべきかと続ければ、ルセフは真剣な表情でまっすぐ俺を見つめながら尋ねた。
「相手が嘘を吐いているかどうかを…ハルがどうやって判断してるのかって、聞いても良いか?」
「うーん、俺は目の動きと、身なり、立ち方と声の抑揚、最後は勘だな」
あの男性はたくさんの革の小物を身に着けていたが、そのどれもが見たことの無い意匠だった。おそらくあれは自分たちの腕を見せるために、わざわざ身につけているこだわりの品だと思う。それに職人らしく使い込まれた手をしていたから、少なくとも何らかの職人というのは嘘じゃない。目の動きにも違和感は無かった。つらつらとそう指折り数えていく俺を、ルセフは興味深そうに見つめている。
「こんな所かな」
「思った以上に詳しい説明をありがとう」
「どういたしまして」
「……それにしても、ハルは、こういう大事な情報もあっさり教えてくれるんだな」
「誰にでもって訳じゃないぞ?お前たちは、アキトにとって大切な存在だからな」
「あーなるほど」
苦笑しながらも、ルセフはそれ以上突っ込んでは聞いてこなかった。俺の判断基準はアキトが中心だからな。アキトに失礼な態度を取る奴が相手なら、どんな些細な情報だって絶対に与えるつもりは無い。
「ハル、依頼人のお二人への説明は頼んでも良いか?」
「ああ、もちろん」
「じゃあ、頼んだ」
ルセフはそう言って外から小窓をそっと閉めると、そのまま自分のパーティーメンバーの方へと歩いていった。ん?ブレイズがいないみたいだが、一体どこに行ったんだろうと一瞬だけ思ったが、まあ良いかと俺はすぐに切り替えた。
扉を開けて馬車の中に乗り込めば、三人から笑顔で迎え入れられた。
「ハル、おかえり」
「ただいま、アキト」
「それで、どうでした?」
「ああ、問題は無さそうだ。王都の職人一家と、護衛の冒険者だった」
「王都の職人ですか…」
「ああ、革製品を作ってるそうだぞ」
クリスは興味深そうに笑みを浮かべた。やっぱりそうなるよな。
「名前はもちろん言ってないが、こちらの護衛対象が魔道具技師だとはさっき伝えてきた」
あちらはご挨拶できると良いのですがと言ってたぞと前向きだった事を伝えれば、クリスとカーディさんが嬉しそうに笑みを浮かべる。
「さすがハルですね。後でご挨拶に行きましょうか、カーディ」
「ああ、人脈は大事だからなぁ」
ふふと楽し気に笑い合う二人を眺めていると、不意に外からブレイズがアキトを呼ぶ声が聞こえてきた。
「アキトー下りてこいよ!」
「あ、うん、すぐ行く!」
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