生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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557.揃いの食器自慢

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 仮とはいえパーティーに入れてもらったあの時から、ルセフさんが料理上手だって事は俺も知ってた。繊細な味付けに感動したりもしたよ。したけど、まさか美味しすぎて涙が滲むほどのライス料理を食べさせてもらえるとは予想してなかった。

 うーん、やっぱりルセフさんはライス料理の天才なのでは?冒険者だからって断ってたけど、もしお店をするなんて事になったら俺は絶対に足しげく通う。

 そんな事をつらつらと考えながら、俺はしっかりとおかわりまでして完食してしまった。

「はーほんっとうに美味しそうに食べるな、アキトは」

 ルセフさんは、まあ調理した者としては嬉しいけどなと笑ってくれた。呆れられなくて良かった。

「アキト、ちょっとの間、これ持ってて貰っても良いかな?」
「うん、もちろん」
「ルセフ!」

 ハルは俺にお皿を渡すと、回り込むようにしてルセフさんの方へと歩いていった。何か話し込んでいる二人の姿を、なんとなく見つめていると不意に隣から声がかかった。

「なあ、アキト?」
「ん?」

 呼びかけに隣を振り向けば、カーディの視線は俺が持つ二組のお皿とフォークに向けられていた。繊細なツタ模様が入った、俺とハルのお揃いの食器だ。

「さっきから気になってたんだけど、その食器って…もしかして揃いなのか?」
「うん、ハルとお揃いだよ」
「え、お揃いの食器…ですか?」

 興味が湧いたのかカーディの隣から、ひょこりとクリスさんが身を乗り出してきた。

「冒険者用の食器にそんな柄入りのなんてあるんだな?」
「うん、ハルと二人で探し回ったんだー」

 興味深そうに見つめてくる二人に、俺は他にも一式あるんだよと答えた。

「そうなのか?」

 うんと頷いた俺の後ろから、いつの間に戻ってきたのか嬉しそうなハルの声が聞こえてきた。元の位置に腰を下ろすなり、ごそごそと鞄に手を入れている。

「ああ、良いだろう?皿とフォークだけじゃなくてコップとスープ皿、スプーンもあるぞ」

 わざわざ鞄から取り出した食器を自分のマントの上に並べて見せるハルは、それはもう嬉しそうな良い笑顔を浮かべている。

「探し回ったと先ほどアキトさんに聞きましたが…」
「ああ、何軒も店を回って、最終的には店主の紹介でなんとかって感じだな」

 そうそう、これは何軒も回って探した結果やっと手に入れたんだよね。もし弟子が作ってるって教えてくれたあの人に出会えてなかったら、もっと時間をかけて探し回る事になったかもしれない。

「しかもこれは、アキトが買ってくれたんだよ」

 愛おしそうに笑って食器を見つめながらそう言ったハルに、クリスさんは心底驚いたようだった。えっと声をあげたクリスさんは、嘘だろうと言いたげにハルを見つめた。

「アキトさんにお金を出させたんですか?ハルが?」
「ああ、まあ…アキトの主張と店主の説得に負けてだけどな」
「なるほど、そういう事ですか」
「でも、そのおかげで、この食器は俺とアキトがお互いに贈り合った、記念の品になったって事だ」

 つまりアキトの贈り物なんだぞ、羨ましいだろう?とここぞとばかりに自慢するハルは、クリスさん相手だとちょっとこどもっぽくて可愛い。言ったら気にするだろうから、言わないんだけどね。

「アキト、その店ってトライプールにあるのか?」
「うん、そうだよ」
「…また聞いたら、怒るか?」
「え、いや怒らないし教えるけど…またって?」

 カーディの言葉に違和感を覚えてそう尋ねれば、カーディは苦笑しながら続けた。

「あのトリクの造花の店、教えて貰っただろ?真似されてばかりじゃ嫌かと思ってな」
「ううん、俺は全然気にしないよ?わざわざ柄まで一緒にしないでしょ?」

 というか、もし万が一カーディがこの柄を欲しいと思うぐらい気に入っていたとしても、俺とハルともお揃いになるなんてクリスさんが許さないと思うんだよね。ああ見えてクリスさんってかなり嫉妬深そうだよね。これも言うつもりはないけどさ。

「ああ、もちろん違うのを選ぶけど…」
「じゃあ問題ないよ、ハルは?」

 まだクリスさんに自慢を続けていたらしいハルは、俺も気にしないよとあっさりと答えてくれた。

「じゃあクリスには後で教えておくよ」
「ああ、ハル、頼む」
「まかせてくれ」

 まだ自慢を続けるハルと羨ましそうな表情を浮かべたクリスさんのやりとりを眺めながら、俺とカーディは食器を買ったら見せてねと平和な約束を取り付けた。
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