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543.【ハル視点】アキトが嬉しそうだと俺も嬉しい
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「あーすまん。和んでるとこ悪いんだが、俺のためにもう一回だけ自己紹介してもらっても良いか?」
申し訳なさそうにカーディさんが口にした言葉に、クリスはハッと顔をあげた。私とした事が愛しの伴侶にこんな事を言わせてしまってと思ってるんだろうな。しょんぼりと肩を落としたクリスの頭を、カーディさんの手がくしゃりと撫でた。
うん、あっさりと復活したな。
「こちらこそ気が付かなくてすまないな」
すぐにそう答えたリーダーのルセフが言葉を続ける前に、カーディさんはそっと手をあげた。
「まずは俺から自己紹介するな。俺の名前はカーディ。元C級の冒険者で今はストファー魔道具店で働いてる、よろしくな」
護衛に対して自分から挨拶をするカーディさんに、ルセフ達は少し驚いたみたいだ。
「ちなみに彼が、私の最愛の伴侶です」
大事な事だからときっちりそう付け加えたクリスに、その場にいた全員が思わず苦笑を浮かべた。この反応、多分別行動中にカーディさんの事話してたんだろうな。
「丁寧にありがとう。俺がこのパーティーのリーダーをやってる、前衛で剣士のルセフだ。よろしくな」
そう口にしたルセフの視線が、ちらりとウォルターに向かう。
「俺は前衛、盾使いのウォルターだ。頑丈さには自信があるぜ」
にやりと笑ったウォルターは、隣のファリーマへとひらりと手を揺らめかせる。
「後衛の魔法使い、ファリーマだ。アキトがいるなら、もし時間があればぜひとも俺に魔法の話をさせて欲し…」
「ファリーマ?」
低い声でルセフに名前を呼ばれたファリーマは、軽く肩をすくめるとちらりとブレイズの方へと視線を向けた。
「俺は後衛、弓使いのブレイズ。命中力には自信があるよ!よろしくお願いしまーす!」
明るく自己紹介をしたブレイズは、ニコニコと満面の笑みを浮かべている。うん、今日もブレイズは元気だな。高速で振られてる犬の尻尾が見える気がする。
自己紹介と挨拶が無事にが終わると、クリスとカーディさんは馬車の中へと消えていった。今から積み込んである荷物の最終確認をするんだそうだ。
本来なら俺とアキトも一緒に馬車の中へ行くべきなんだが、クリスが折角友人に会えたんだからお話して待ってて下さいと言ってくれたんだ。これは明らかにアキトへの優しさだよな。こういう気づかいが、本当にありがたい。
「まさか二人がここにいるとは思わなかったよ、元気だったか?」
ルセフにそう話しかけられた俺は、笑顔で答えた。
「ああ、二人とも体調には問題なかったよ。そっちは?」
「全員元気だし、依頼も順調だったよ」
「それは何よりだな」
「最近は何を倒したんだ?」
笑顔で情報交換を呼びかけてくるルセフに、俺は少し考えてから答えた。
「一番最近は…ファーレスウルフだな」
「は?ファーレスウルフ?差し支えなければ聞きたいんだが…一体どこに出たんだ?」
「ああ、船着き場からイーシャルまで徒歩で向かう道の…」
このパーティー相手に情報提供を惜しむつもりなんて欠片も無い俺は、すぐにそう答えた。アキトの事を評価してくれた信頼できる相手だからな。
「そうなのか…俺達は南に行ってたんだが、あの辺りは今年はやけに雨が多くてな」
ルセフも自分の知っている情報を、すぐに教えてくれる。なるほど例年よりもかなり雨が多いのか。という事は水系統の魔物が増えるかもしれないって事だ。
そんな風に情報交換をしながら視線だけを向けて見れば、アキトはブレイズと二人だけで向き合ってた。
二人だけなのか?と不思議に思って周りを見回せば、ファリーマがウォルターに捕まっているのが見えた。ああ、魔法の話をって言って、捕まったのか。
「なあ、アキトはトリク祭りだって知ってて来たのか?」
「ううん、お祭りの前日にイーシャルに着いてね、来てから知ったんだ。ブレイズは?」
「俺達も知らなかったよ。もう少し南で依頼があってさ、その依頼を受けようとしたらメロウさんからこの護衛の話を聞いたんだ」
「そうなんだ」
「折角だから受けるべきだってルセフさんが言うから受けたんだけど…受けて良かったなーアキトと一緒にトライプールに戻れるなんて!」
そう言ったブレイズの目はキラキラと輝いていた。本当にアキトの事が大好きなんだなと分かるが、そこに恋愛感情なんて微塵もない。うん、この二人の事は安心して見ていられるな。
「俺も嬉しいよ」
「あーそれにしてもまさかこっちに来てるとは思ってなかったからさ。俺、アキトにお土産買っちゃったんだけどなー」
ちょっと残念そうにそう口にしたブレイズに、アキトは驚きつつもすぐに答えた。
「あ、俺もブレイズにお土産買ったよ!」
「え、本当に?」
「うん、パーティーの皆の分もあるよ」
「えーそうなのか?」
びっくり顔をしていたブレイズは、次の瞬間ふにゃりと笑った。
「俺さ、誰かからお土産貰うのって滅多に無いんだ」
パーティーメンバーとは常に一緒に行動してるから、お土産の必要なんて無いからなとブレイズは笑って続けた。地元の村ならともかく、トライプールには友人と呼べる人もそんなにいないようだ。
「だからさ、アキトが俺のためにお土産買ってくれてるのすごい嬉しい」
選ぶのも楽しかったけど選んでもらうのも嬉しいもんなんだなーと照れ笑いを浮かべたブレイズに、アキトは嬉しそうに笑って答える。
「ね、ブレイズ。そのお土産さ、後で交換しない?」
「ああ、良いな」
「どこで買ったんだとかいっぱい話しながら交換したら、それも楽しそうだよね」
「うん、やろうやろう!」
アキトとブレイズが楽しそうだなと笑い合っている間に、クリスとカーディさんは馬車の中からひょこっと顔を出した。
「荷物に問題は無かったです。それじゃあ、そろそろ出発しますか」
「はい」
「はーい!」
「分かった」
「御者は予定通り俺がやるな」
「ああ、頼んだぞ、リーダー」
御者はルセフがやるのか。それなら安心だな。
申し訳なさそうにカーディさんが口にした言葉に、クリスはハッと顔をあげた。私とした事が愛しの伴侶にこんな事を言わせてしまってと思ってるんだろうな。しょんぼりと肩を落としたクリスの頭を、カーディさんの手がくしゃりと撫でた。
うん、あっさりと復活したな。
「こちらこそ気が付かなくてすまないな」
すぐにそう答えたリーダーのルセフが言葉を続ける前に、カーディさんはそっと手をあげた。
「まずは俺から自己紹介するな。俺の名前はカーディ。元C級の冒険者で今はストファー魔道具店で働いてる、よろしくな」
護衛に対して自分から挨拶をするカーディさんに、ルセフ達は少し驚いたみたいだ。
「ちなみに彼が、私の最愛の伴侶です」
大事な事だからときっちりそう付け加えたクリスに、その場にいた全員が思わず苦笑を浮かべた。この反応、多分別行動中にカーディさんの事話してたんだろうな。
「丁寧にありがとう。俺がこのパーティーのリーダーをやってる、前衛で剣士のルセフだ。よろしくな」
そう口にしたルセフの視線が、ちらりとウォルターに向かう。
「俺は前衛、盾使いのウォルターだ。頑丈さには自信があるぜ」
にやりと笑ったウォルターは、隣のファリーマへとひらりと手を揺らめかせる。
「後衛の魔法使い、ファリーマだ。アキトがいるなら、もし時間があればぜひとも俺に魔法の話をさせて欲し…」
「ファリーマ?」
低い声でルセフに名前を呼ばれたファリーマは、軽く肩をすくめるとちらりとブレイズの方へと視線を向けた。
「俺は後衛、弓使いのブレイズ。命中力には自信があるよ!よろしくお願いしまーす!」
明るく自己紹介をしたブレイズは、ニコニコと満面の笑みを浮かべている。うん、今日もブレイズは元気だな。高速で振られてる犬の尻尾が見える気がする。
自己紹介と挨拶が無事にが終わると、クリスとカーディさんは馬車の中へと消えていった。今から積み込んである荷物の最終確認をするんだそうだ。
本来なら俺とアキトも一緒に馬車の中へ行くべきなんだが、クリスが折角友人に会えたんだからお話して待ってて下さいと言ってくれたんだ。これは明らかにアキトへの優しさだよな。こういう気づかいが、本当にありがたい。
「まさか二人がここにいるとは思わなかったよ、元気だったか?」
ルセフにそう話しかけられた俺は、笑顔で答えた。
「ああ、二人とも体調には問題なかったよ。そっちは?」
「全員元気だし、依頼も順調だったよ」
「それは何よりだな」
「最近は何を倒したんだ?」
笑顔で情報交換を呼びかけてくるルセフに、俺は少し考えてから答えた。
「一番最近は…ファーレスウルフだな」
「は?ファーレスウルフ?差し支えなければ聞きたいんだが…一体どこに出たんだ?」
「ああ、船着き場からイーシャルまで徒歩で向かう道の…」
このパーティー相手に情報提供を惜しむつもりなんて欠片も無い俺は、すぐにそう答えた。アキトの事を評価してくれた信頼できる相手だからな。
「そうなのか…俺達は南に行ってたんだが、あの辺りは今年はやけに雨が多くてな」
ルセフも自分の知っている情報を、すぐに教えてくれる。なるほど例年よりもかなり雨が多いのか。という事は水系統の魔物が増えるかもしれないって事だ。
そんな風に情報交換をしながら視線だけを向けて見れば、アキトはブレイズと二人だけで向き合ってた。
二人だけなのか?と不思議に思って周りを見回せば、ファリーマがウォルターに捕まっているのが見えた。ああ、魔法の話をって言って、捕まったのか。
「なあ、アキトはトリク祭りだって知ってて来たのか?」
「ううん、お祭りの前日にイーシャルに着いてね、来てから知ったんだ。ブレイズは?」
「俺達も知らなかったよ。もう少し南で依頼があってさ、その依頼を受けようとしたらメロウさんからこの護衛の話を聞いたんだ」
「そうなんだ」
「折角だから受けるべきだってルセフさんが言うから受けたんだけど…受けて良かったなーアキトと一緒にトライプールに戻れるなんて!」
そう言ったブレイズの目はキラキラと輝いていた。本当にアキトの事が大好きなんだなと分かるが、そこに恋愛感情なんて微塵もない。うん、この二人の事は安心して見ていられるな。
「俺も嬉しいよ」
「あーそれにしてもまさかこっちに来てるとは思ってなかったからさ。俺、アキトにお土産買っちゃったんだけどなー」
ちょっと残念そうにそう口にしたブレイズに、アキトは驚きつつもすぐに答えた。
「あ、俺もブレイズにお土産買ったよ!」
「え、本当に?」
「うん、パーティーの皆の分もあるよ」
「えーそうなのか?」
びっくり顔をしていたブレイズは、次の瞬間ふにゃりと笑った。
「俺さ、誰かからお土産貰うのって滅多に無いんだ」
パーティーメンバーとは常に一緒に行動してるから、お土産の必要なんて無いからなとブレイズは笑って続けた。地元の村ならともかく、トライプールには友人と呼べる人もそんなにいないようだ。
「だからさ、アキトが俺のためにお土産買ってくれてるのすごい嬉しい」
選ぶのも楽しかったけど選んでもらうのも嬉しいもんなんだなーと照れ笑いを浮かべたブレイズに、アキトは嬉しそうに笑って答える。
「ね、ブレイズ。そのお土産さ、後で交換しない?」
「ああ、良いな」
「どこで買ったんだとかいっぱい話しながら交換したら、それも楽しそうだよね」
「うん、やろうやろう!」
アキトとブレイズが楽しそうだなと笑い合っている間に、クリスとカーディさんは馬車の中からひょこっと顔を出した。
「荷物に問題は無かったです。それじゃあ、そろそろ出発しますか」
「はい」
「はーい!」
「分かった」
「御者は予定通り俺がやるな」
「ああ、頼んだぞ、リーダー」
御者はルセフがやるのか。それなら安心だな。
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