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540.【ハル視点】待ち合わせと合流
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約束の時間よりも少し前に、俺達は待ち合わせ場所である階段前に辿り着いた。
待ち合わせ場所をどこにするかはクリスと二人で酒を飲みながら相談したんだが、実はなかなか決まらなかった。分かりやすい待ち合わせ場所はどこも混んでいるだろうし、かといって分かり難い場所だと人混みをかき分けて辿り着けるかが心配になる。
最終的にはトリク祭り一日目でも意外に空いていたからと、俺が押し切る形でここに決まった。
もしこれで二日目は混雑していたら謝るしかないなと思っていたんだが、二日目も驚くほど人がいないな。
パラパラとしかいない人を順番に確認してみたが、二人の姿はまだ無いな。
「まだ来てないみたいだね」
「ああ。とりあえず座って待とうか?」
「そうだね」
イーシャルに来た時の同じように階段の端に腰を下ろしてのんびりと待っていると、カーディさんが手を振りながら駆け寄ってきた。
「すまん、ちょっと遅れたな」
「祭りの混雑の中を抜けてくるんだから、多少の遅れは仕方ないさ」
「いや、でも遅れたのは事実だからな」
世の中にはふんぞり返って護衛なんて待たせて当たり前なんて依頼人もいるんだがな。
「俺は気にしてないぞ?アキトもな」
「うん、すっごい遅刻じゃないんだし気にしないで」
ああ、ありがとうとお礼を言うカーディさんに、俺は控え目に尋ねた。
「なあ、カーディさん、それよりクリスは?」
待ち合わせに間に合わないと慌て過ぎてどこかに置いてきたなんて事になったら、クリスは思いっきり拗ねるだろうな。
「ああ、クリスは時間ギリギリになるからって、先に馬車乗り場の方へ行かせたよ」
「よく一人で向かったな?」
「そこはほら、俺がうまく誘導したからだな」
自慢げなカーディさんの言葉に、俺とアキトは思わず顔を見合わせてから笑ってしまった。カーディさんにうまく誘導されて、嬉しそうに馬車乗り場に向かうクリスの姿がくっきりと見えたな。
三人で連れだって、俺達はすぐにイーシャルの大門へと向かった。もうお昼を過ぎるというのに、街の中へと進む道はまだまだ大混雑だった。
「うわぁ…すごい人」
「トリク祭りは夜が本番だって噂もあるぐらいだからなぁ」
カーディさんはあっさりとそう答えた。まあ、そうだよな。
「きっとまだまだ人は増えるんだろうな」
「そっか」
そんな事を話しながら、俺達は何の問題も無く大門を通過した。イーシャルへの入口は見ているだけでも疲れるぐらいの大混雑だが、出口はまだ空いていて助かったな。これが夜を超えたら、今度は一気に出る方が混むんだろうな。
馬車乗り場を目指して歩いていると、不意に顔をあげたアキトが俺を見上げて口を開いた。
「ねえ、ハル」
「ん?どうしたの?アキト」
「あのさ、馬車の護衛をする時に特に気を付けないといけない事――って何かある?」
そういえばその話をしてなかったな。アキトと一緒にトリク祭りという状況に、ちょっと浮かれていたみたいだ。反省しながら俺が口を開くよりも前に、カーディさんが代わりに答えた。
「ああ、アキト。帰りの馬車の護衛は、別の冒険者を雇ってるぞ?」
「…え?」
俺とハルがいるのになんで?と言いたげに目を見開いて固まってしまったアキトの反応に、カーディさんは不思議そうに首を傾げた。
「あーアキトは馬車の護衛をした事ないからね」
アキトの反応の理由を告げれば、カーディさんは二人パーティーだもんなと納得してくれたみたいだ。
「馬車の護衛っていうのはね、最低でも四人か…それ以上でするものなんだ」
「へーそういうものなの?」
「例えそれがA級の冒険者であっても、基本的には四人でするものだよ」
途中で護衛が減ったとか、どうしようもない事態でも無い限りとは言わなかった。どうせ俺とアキトの二人パーティーでは馬車の護衛任務は受けないからな。
「アキトとハルの腕は信じてるけど、馬車は死角ができないようにしたいからな。決して二人を軽んじてるわけじゃないからな?」
「分かってるよ、大丈夫だ。アキトも良いよな?」
誤解されないためにと言葉を尽くしてくれるカーディさんはやっぱり良い人だな。
「うん、なんで?って思っただけだか…」
「カーディー!」
アキトの言葉は、元気過ぎるクリスの叫び声で遮られてしまった。
「クリス、無事に護衛と合流できたか?」
「ええ、馬車の用意ももう万端でずよ」
出発しやすいようにあえて一番端に用意してもらったんですよと自慢げに話すクリスに、カーディさんは笑ってありがとなと答えている。
「あーカーディに労って貰えるなら、一人寂しく別行動をして良かったです」
「おおげさだな」
思わずそうこぼした俺に、クリスはムッとしてからちらりと視線を向けた。
「ハル、そう言うなら、ちょっと想像してみて下さいね。お祭りで人がいっぱいいる街中に、アキトさんを置いて別行動をする事になりました」
「あー俺が悪かった…うん、想像するだけでも嫌だな」
思わずよく耐えたなと答えれば、クリスは仕方ないなと苦笑するだけで許してくれた。
待ち合わせ場所をどこにするかはクリスと二人で酒を飲みながら相談したんだが、実はなかなか決まらなかった。分かりやすい待ち合わせ場所はどこも混んでいるだろうし、かといって分かり難い場所だと人混みをかき分けて辿り着けるかが心配になる。
最終的にはトリク祭り一日目でも意外に空いていたからと、俺が押し切る形でここに決まった。
もしこれで二日目は混雑していたら謝るしかないなと思っていたんだが、二日目も驚くほど人がいないな。
パラパラとしかいない人を順番に確認してみたが、二人の姿はまだ無いな。
「まだ来てないみたいだね」
「ああ。とりあえず座って待とうか?」
「そうだね」
イーシャルに来た時の同じように階段の端に腰を下ろしてのんびりと待っていると、カーディさんが手を振りながら駆け寄ってきた。
「すまん、ちょっと遅れたな」
「祭りの混雑の中を抜けてくるんだから、多少の遅れは仕方ないさ」
「いや、でも遅れたのは事実だからな」
世の中にはふんぞり返って護衛なんて待たせて当たり前なんて依頼人もいるんだがな。
「俺は気にしてないぞ?アキトもな」
「うん、すっごい遅刻じゃないんだし気にしないで」
ああ、ありがとうとお礼を言うカーディさんに、俺は控え目に尋ねた。
「なあ、カーディさん、それよりクリスは?」
待ち合わせに間に合わないと慌て過ぎてどこかに置いてきたなんて事になったら、クリスは思いっきり拗ねるだろうな。
「ああ、クリスは時間ギリギリになるからって、先に馬車乗り場の方へ行かせたよ」
「よく一人で向かったな?」
「そこはほら、俺がうまく誘導したからだな」
自慢げなカーディさんの言葉に、俺とアキトは思わず顔を見合わせてから笑ってしまった。カーディさんにうまく誘導されて、嬉しそうに馬車乗り場に向かうクリスの姿がくっきりと見えたな。
三人で連れだって、俺達はすぐにイーシャルの大門へと向かった。もうお昼を過ぎるというのに、街の中へと進む道はまだまだ大混雑だった。
「うわぁ…すごい人」
「トリク祭りは夜が本番だって噂もあるぐらいだからなぁ」
カーディさんはあっさりとそう答えた。まあ、そうだよな。
「きっとまだまだ人は増えるんだろうな」
「そっか」
そんな事を話しながら、俺達は何の問題も無く大門を通過した。イーシャルへの入口は見ているだけでも疲れるぐらいの大混雑だが、出口はまだ空いていて助かったな。これが夜を超えたら、今度は一気に出る方が混むんだろうな。
馬車乗り場を目指して歩いていると、不意に顔をあげたアキトが俺を見上げて口を開いた。
「ねえ、ハル」
「ん?どうしたの?アキト」
「あのさ、馬車の護衛をする時に特に気を付けないといけない事――って何かある?」
そういえばその話をしてなかったな。アキトと一緒にトリク祭りという状況に、ちょっと浮かれていたみたいだ。反省しながら俺が口を開くよりも前に、カーディさんが代わりに答えた。
「ああ、アキト。帰りの馬車の護衛は、別の冒険者を雇ってるぞ?」
「…え?」
俺とハルがいるのになんで?と言いたげに目を見開いて固まってしまったアキトの反応に、カーディさんは不思議そうに首を傾げた。
「あーアキトは馬車の護衛をした事ないからね」
アキトの反応の理由を告げれば、カーディさんは二人パーティーだもんなと納得してくれたみたいだ。
「馬車の護衛っていうのはね、最低でも四人か…それ以上でするものなんだ」
「へーそういうものなの?」
「例えそれがA級の冒険者であっても、基本的には四人でするものだよ」
途中で護衛が減ったとか、どうしようもない事態でも無い限りとは言わなかった。どうせ俺とアキトの二人パーティーでは馬車の護衛任務は受けないからな。
「アキトとハルの腕は信じてるけど、馬車は死角ができないようにしたいからな。決して二人を軽んじてるわけじゃないからな?」
「分かってるよ、大丈夫だ。アキトも良いよな?」
誤解されないためにと言葉を尽くしてくれるカーディさんはやっぱり良い人だな。
「うん、なんで?って思っただけだか…」
「カーディー!」
アキトの言葉は、元気過ぎるクリスの叫び声で遮られてしまった。
「クリス、無事に護衛と合流できたか?」
「ええ、馬車の用意ももう万端でずよ」
出発しやすいようにあえて一番端に用意してもらったんですよと自慢げに話すクリスに、カーディさんは笑ってありがとなと答えている。
「あーカーディに労って貰えるなら、一人寂しく別行動をして良かったです」
「おおげさだな」
思わずそうこぼした俺に、クリスはムッとしてからちらりと視線を向けた。
「ハル、そう言うなら、ちょっと想像してみて下さいね。お祭りで人がいっぱいいる街中に、アキトさんを置いて別行動をする事になりました」
「あー俺が悪かった…うん、想像するだけでも嫌だな」
思わずよく耐えたなと答えれば、クリスは仕方ないなと苦笑するだけで許してくれた。
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