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534.納得するルセフさん
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ブレイズの勘違いを最初から知ってた俺は、ハルは精霊じゃないって事が無事に伝わって良かったなと喜んだ。ちらっと視線を向けたハルも、分かってくれたみたいだねと俺に向かって柔らかい笑みと優しい言葉をくれた。
でもブレイズの勘違いを全く知らなかった皆は、あまりに予想外の言葉に心底驚いたみたいだ。俺とハル、ブレイズ以外の全員が、大きく目を見開いたまま固まっていた。
いち早く我に返ったのは、やっぱりパーティーのリーダーであるルセフさんだった。
「あーブレイズ、なぜそんな発想が出てきたのか説明してくれるか?」
「えっと…アキトの通り名…から想像して?」
「おい、嘘吐くなよ、ブレイズ。お前そんなに想像力豊かな奴じゃないだろ」
ばっさりとウォルターさんにそう断言されてしまったブレイズは、ウォルター兄ちゃんがひどいと拗ねた声で呟いた。
「だからお前の兄ちゃんじゃないっての」
じゃれ合う二人のやりとりをじっと見ていた俺は、そっと手を挙げた。多分ブレイズはまだ俺との約束を守ろうとしてくれてるんだって、理解したから。
「あの…実は俺一緒にパーティー依頼を受けてたあの時に、ハルと話してるところをブレイズに聞かれたんです」
「ああ、なんだ、そうなのか?」
ルセフさんの言葉に、ブレイズはしぶしぶと口を開いた。
「アキト、良かったの?…秘密にするって約束したのに」
「うん、約束守ってくれてありがとう。でもここにいる人達には話して大丈夫だよ、ブレイズ。だってハルは精霊じゃないんだからね!」
念押しの用にハルは精霊じゃないともう一度宣言すれば、ブレイズはそっかぁと呟いてからふうと肩の力を抜いた。
この前はすぐに否定できなくてごめんねと伝えれば、俺も勘違いしてごめんねと謝罪が返ってきた。
「それで?ブレイズは二人の会話を聞いただけで、精霊だーって思ったのか?」
揶揄うように尋ねるウォルターさんの隣で、ルセフさんはぼそりとなるほどと呟いた。
「なるほど…?って事は、ルセフは今の説明で納得できるわけ?」
不思議そうに尋ねたファリーマさんに、ルセフさんはああ俺は納得できたなとあっさりと返した。え、納得できるんだ?
「えーと、どの辺が納得できたんですか…?」
予想外の誤解だと思ってたけど、ルセフさんも納得するような理由があるなら聞いてみたい。ただの興味本位の質問に、ルセフさんは嫌な顔一つせずにすぐに答えてくれた。
「まずアキトの通り名は精霊の守り人で、精霊の声が聞こえるのかもしれないって噂になってた…のは知ってるのか?」
「はい、もちろん知ってます」
「そうか。最初はすぐに信じる奴の方が少ない噂だったが、話す所を見たって冒険者が何人か現れてからはどんどん信じる奴も増えていったんだ」
うん、あの頃はハルが通り名を広めようと頑張ってくれてたからね。主に人がいる前で俺に話しかけたりって方向だったけど。あれは通り名の力で俺を守るためだったって知ってるから文句は全く無いけど、本当にあっという間に広がっていったのをよく覚えてる。
「あ、俺はアキトに会う前から、そういう奴もいるかもなーって思ってたぞ」
ウォルターさんがそう言えば、ブレイズもうんうんと頷いている。二人は元々精霊が見える人もいるかもしれない派だったのか。
「ちなみに俺は信じなかった派だな」
アキトがどうこうって話じゃなくてなとルセフさんは続けた。
自称・他称を問わず、通り名が本人と完全に一致する事なんて滅多に無い。だからルセフさんは、通り名をただの情報の一部としか思わないようにしてるんだって。自分の目で見たものしか信じないんだと教えてくれたけど、それをしっかり説明してくれる所も含めて、なんだかルセフさんらしいなと納得してしまった。
「あー、うん。俺も実際にアキトに会うまでは、精霊が見えるって話は信じてなかったよ」
苦笑しながらごめんなと謝ったファリーマさんは、急に視線をあげるとまっすぐに俺を見つめて口を開いた。
「でもなアキトの魔法の実力を知って、もしかしたら本当に精霊が見えててもおかしくないんじゃないか――と思うようになったんだ。精霊の声が聞こえたら魔法の威力が上がるという説は、遥か昔から存在してたからな。ただ遥か昔過ぎて真偽の程は定かでは無いなんて言われていたんだが、アキトの魔…」
「はい、そこまでなー」
スイッチの入ったファリーマさんの口を、ウォルターさんが手のひらで抑え込む。精霊の声が聞こえたら魔法の威力が上がるなんて説もあるんだ。
「あー…すまんな」
「いえ、ファリーマさんと話すのは楽しいので」
「ありがとう、本当にありがとう」
ファリーマさんはとにかく魔法が大好きなだけなんだよね。魔法の話になると今みたいに暴走する事もよくあるけど、専門家でも無い俺の知識不足に文句を言ったりはしない。むしろ丁寧に教えてくれたりもするんだ。あと説明も上手だから、ファリーマさんと話すのは楽しい。
でもブレイズの勘違いを全く知らなかった皆は、あまりに予想外の言葉に心底驚いたみたいだ。俺とハル、ブレイズ以外の全員が、大きく目を見開いたまま固まっていた。
いち早く我に返ったのは、やっぱりパーティーのリーダーであるルセフさんだった。
「あーブレイズ、なぜそんな発想が出てきたのか説明してくれるか?」
「えっと…アキトの通り名…から想像して?」
「おい、嘘吐くなよ、ブレイズ。お前そんなに想像力豊かな奴じゃないだろ」
ばっさりとウォルターさんにそう断言されてしまったブレイズは、ウォルター兄ちゃんがひどいと拗ねた声で呟いた。
「だからお前の兄ちゃんじゃないっての」
じゃれ合う二人のやりとりをじっと見ていた俺は、そっと手を挙げた。多分ブレイズはまだ俺との約束を守ろうとしてくれてるんだって、理解したから。
「あの…実は俺一緒にパーティー依頼を受けてたあの時に、ハルと話してるところをブレイズに聞かれたんです」
「ああ、なんだ、そうなのか?」
ルセフさんの言葉に、ブレイズはしぶしぶと口を開いた。
「アキト、良かったの?…秘密にするって約束したのに」
「うん、約束守ってくれてありがとう。でもここにいる人達には話して大丈夫だよ、ブレイズ。だってハルは精霊じゃないんだからね!」
念押しの用にハルは精霊じゃないともう一度宣言すれば、ブレイズはそっかぁと呟いてからふうと肩の力を抜いた。
この前はすぐに否定できなくてごめんねと伝えれば、俺も勘違いしてごめんねと謝罪が返ってきた。
「それで?ブレイズは二人の会話を聞いただけで、精霊だーって思ったのか?」
揶揄うように尋ねるウォルターさんの隣で、ルセフさんはぼそりとなるほどと呟いた。
「なるほど…?って事は、ルセフは今の説明で納得できるわけ?」
不思議そうに尋ねたファリーマさんに、ルセフさんはああ俺は納得できたなとあっさりと返した。え、納得できるんだ?
「えーと、どの辺が納得できたんですか…?」
予想外の誤解だと思ってたけど、ルセフさんも納得するような理由があるなら聞いてみたい。ただの興味本位の質問に、ルセフさんは嫌な顔一つせずにすぐに答えてくれた。
「まずアキトの通り名は精霊の守り人で、精霊の声が聞こえるのかもしれないって噂になってた…のは知ってるのか?」
「はい、もちろん知ってます」
「そうか。最初はすぐに信じる奴の方が少ない噂だったが、話す所を見たって冒険者が何人か現れてからはどんどん信じる奴も増えていったんだ」
うん、あの頃はハルが通り名を広めようと頑張ってくれてたからね。主に人がいる前で俺に話しかけたりって方向だったけど。あれは通り名の力で俺を守るためだったって知ってるから文句は全く無いけど、本当にあっという間に広がっていったのをよく覚えてる。
「あ、俺はアキトに会う前から、そういう奴もいるかもなーって思ってたぞ」
ウォルターさんがそう言えば、ブレイズもうんうんと頷いている。二人は元々精霊が見える人もいるかもしれない派だったのか。
「ちなみに俺は信じなかった派だな」
アキトがどうこうって話じゃなくてなとルセフさんは続けた。
自称・他称を問わず、通り名が本人と完全に一致する事なんて滅多に無い。だからルセフさんは、通り名をただの情報の一部としか思わないようにしてるんだって。自分の目で見たものしか信じないんだと教えてくれたけど、それをしっかり説明してくれる所も含めて、なんだかルセフさんらしいなと納得してしまった。
「あー、うん。俺も実際にアキトに会うまでは、精霊が見えるって話は信じてなかったよ」
苦笑しながらごめんなと謝ったファリーマさんは、急に視線をあげるとまっすぐに俺を見つめて口を開いた。
「でもなアキトの魔法の実力を知って、もしかしたら本当に精霊が見えててもおかしくないんじゃないか――と思うようになったんだ。精霊の声が聞こえたら魔法の威力が上がるという説は、遥か昔から存在してたからな。ただ遥か昔過ぎて真偽の程は定かでは無いなんて言われていたんだが、アキトの魔…」
「はい、そこまでなー」
スイッチの入ったファリーマさんの口を、ウォルターさんが手のひらで抑え込む。精霊の声が聞こえたら魔法の威力が上がるなんて説もあるんだ。
「あー…すまんな」
「いえ、ファリーマさんと話すのは楽しいので」
「ありがとう、本当にありがとう」
ファリーマさんはとにかく魔法が大好きなだけなんだよね。魔法の話になると今みたいに暴走する事もよくあるけど、専門家でも無い俺の知識不足に文句を言ったりはしない。むしろ丁寧に教えてくれたりもするんだ。あと説明も上手だから、ファリーマさんと話すのは楽しい。
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