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533.体質の話
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「えーと、まずはみなさん、防音結界を許してくれてありがとうございます」
お礼の言葉から始めた俺に、周りの皆も笑みを返してくれる。ウォルターさんからは硬くならなくて良いぞーと声がかかった。
「ブレイズの元気が無いように見える理由はもしかして俺の秘密のせいかなと思ったので、話を聞いてもらおうと思いました」
うーん、ちゃんと順序だてて説明しなきゃなって思ったら、なんだか急に小学生の作文みたいになってる気がする。
「うまく説明できるか分からないけど、聞いてください」
とは言ったものも、やっぱり自分の体質の話をするのはちょっと勇気がいるんだよな。自分から誰かに言ったのなんて、まだ数回しかないし。どう説明しようと悩んだ俺に気づいたのか、ハルはにっこりと笑って手を上げた。
「じゃあまずは前提から話そうか。俺はちょっと前まで魔物から食らった毒のせいで意識がなくてね」
「「「は?」」」
ウォルターさんとファリーマさん、ブレイズの声が綺麗に重なった。クリスさんとルセフさん、それにカーディはその話かと納得してるみたいだ。カーディもハルが眠ってた事、知ってたんだな。
「まあ正確に言うと意識が無いというより…身体をベッドの中に置いたまま、俺は幽霊になってたんだよ」
あっさりとそう続けたハルの説明に、さっきは驚いていなかった三人も大きく目を見開いている。まあ、びっくりするよね。
「原因は俺も分からないんだ。何かの奇跡なのか、それともあの毒の副作用なのかは――とにかく俺は幽霊になって一人で色んな場所を旅してたんだ」
そこまで話したハルが、俺の方へと視線を向けた。優しい目で促された俺は、ぐっと手を握りしめてから口を開いた。
「えっと、俺は生まれつき不思議なスキルを持っていて、幽霊が見えるんです」
「そんなスキルが…あるのか?」
ルセフさんの口にした当然の疑問に、俺は思ったよりも冷静に答えられた。
「俺の父親も同じスキルを持っていました。幽霊が見えるし、声が聞こえるスキルです」
「あ、いや否定に聞こえたならすまない。知らないスキルがまだまだたくさん存在してる事は知ってるし、アキトとハルがこんな嘘を言うとは思ってないよ」
そう言ったルセフさんは以前と何も変わらない温かい目で俺を見ると、ニコリと笑みを浮かべた。幽霊を見た事が無い人にはにわかには信じがたい話だと思うんだけど、そっか信じてくれるんだ。
ルセフさんだけじゃない。他の皆も普通の顔で話の続きを待ってくれてる。じわりと胸が温かくなった。
「もう予想は付いてると思うけど、俺は幽霊の状態でアキトにあったんだ」
「ああ、なるほど。そんな出会いだったんですね」
「あー、一応言っておくけど、アキトは両親以外にはこのスキルの事は隠して暮らしてきたらしい。だからこの前は適当な出会いを話したんだ、悪かったな」
頭を下げて謝罪するハルに、俺は慌てて口を開いた。
「待って、ハルが謝る事じゃないよ…みんな、ごめんね」
みんなは口々に気にするなと言ってくれた。
そもそもスキルは秘匿するものだからそれで正しいって慰められたし、クリスさんは出会った時が幽霊だったってだけで全部が嘘でも無いんでしょう?と笑っている。
「ああ、出会った時が幽霊だったってだけでそこは嘘じゃない。俺はアキトに出会うまでは一人でふらふらしてたんだが、アキトに出会ってからはいつも一緒にいたんだ」
「は?いつも?」
「ああ、だから俺はカーディさんが黒鷹亭で働いてたのも知ってるし、その後のクリスとカーディとアキトの飲み会も知ってる」
クリスさんとカーディはびっくり顔でハルを見つめている。
「ブレイズとアキトが昇級試験を受けた時も、ルセフたちのパーティーとの冒険もな」
「あー…俺のあの失態もか」
ルセフさんは苦い顔でぽつりとそう呟いた。あの毒キノコの事だなとすぐに分かったけど、あれはルセフさんの失態ってわけじゃないと思うんだけどな。あれは避けられない事故だと思う。
「あれは仕方ないさ」
「あ、もしかしてあの時の薬って…?」
ハッと顔を上げたファリーマさんの質問をハルは笑って流そうとしたけれど、俺は声をあげた。
「うん、ハルが教えてくれたんです!」
「あーそうか…あの時はありがとうな」
「いや、アキトがいなかったら、対処法を伝える事すら出来なかったんだからな」
それでも助かったよと笑ったルセフさんは、アキトもありがとうなと言葉を重ねた。あの時はこんな事があったななんて話をし始めていたその瞬間、ブレイズがいきなり叫んだ。
「え…待って!じゃあもしかしてハルさんは…ハルさんは、精霊じゃないって事!?」
しんと静まり返った中、全員の視線がブレイズに集中した。
お礼の言葉から始めた俺に、周りの皆も笑みを返してくれる。ウォルターさんからは硬くならなくて良いぞーと声がかかった。
「ブレイズの元気が無いように見える理由はもしかして俺の秘密のせいかなと思ったので、話を聞いてもらおうと思いました」
うーん、ちゃんと順序だてて説明しなきゃなって思ったら、なんだか急に小学生の作文みたいになってる気がする。
「うまく説明できるか分からないけど、聞いてください」
とは言ったものも、やっぱり自分の体質の話をするのはちょっと勇気がいるんだよな。自分から誰かに言ったのなんて、まだ数回しかないし。どう説明しようと悩んだ俺に気づいたのか、ハルはにっこりと笑って手を上げた。
「じゃあまずは前提から話そうか。俺はちょっと前まで魔物から食らった毒のせいで意識がなくてね」
「「「は?」」」
ウォルターさんとファリーマさん、ブレイズの声が綺麗に重なった。クリスさんとルセフさん、それにカーディはその話かと納得してるみたいだ。カーディもハルが眠ってた事、知ってたんだな。
「まあ正確に言うと意識が無いというより…身体をベッドの中に置いたまま、俺は幽霊になってたんだよ」
あっさりとそう続けたハルの説明に、さっきは驚いていなかった三人も大きく目を見開いている。まあ、びっくりするよね。
「原因は俺も分からないんだ。何かの奇跡なのか、それともあの毒の副作用なのかは――とにかく俺は幽霊になって一人で色んな場所を旅してたんだ」
そこまで話したハルが、俺の方へと視線を向けた。優しい目で促された俺は、ぐっと手を握りしめてから口を開いた。
「えっと、俺は生まれつき不思議なスキルを持っていて、幽霊が見えるんです」
「そんなスキルが…あるのか?」
ルセフさんの口にした当然の疑問に、俺は思ったよりも冷静に答えられた。
「俺の父親も同じスキルを持っていました。幽霊が見えるし、声が聞こえるスキルです」
「あ、いや否定に聞こえたならすまない。知らないスキルがまだまだたくさん存在してる事は知ってるし、アキトとハルがこんな嘘を言うとは思ってないよ」
そう言ったルセフさんは以前と何も変わらない温かい目で俺を見ると、ニコリと笑みを浮かべた。幽霊を見た事が無い人にはにわかには信じがたい話だと思うんだけど、そっか信じてくれるんだ。
ルセフさんだけじゃない。他の皆も普通の顔で話の続きを待ってくれてる。じわりと胸が温かくなった。
「もう予想は付いてると思うけど、俺は幽霊の状態でアキトにあったんだ」
「ああ、なるほど。そんな出会いだったんですね」
「あー、一応言っておくけど、アキトは両親以外にはこのスキルの事は隠して暮らしてきたらしい。だからこの前は適当な出会いを話したんだ、悪かったな」
頭を下げて謝罪するハルに、俺は慌てて口を開いた。
「待って、ハルが謝る事じゃないよ…みんな、ごめんね」
みんなは口々に気にするなと言ってくれた。
そもそもスキルは秘匿するものだからそれで正しいって慰められたし、クリスさんは出会った時が幽霊だったってだけで全部が嘘でも無いんでしょう?と笑っている。
「ああ、出会った時が幽霊だったってだけでそこは嘘じゃない。俺はアキトに出会うまでは一人でふらふらしてたんだが、アキトに出会ってからはいつも一緒にいたんだ」
「は?いつも?」
「ああ、だから俺はカーディさんが黒鷹亭で働いてたのも知ってるし、その後のクリスとカーディとアキトの飲み会も知ってる」
クリスさんとカーディはびっくり顔でハルを見つめている。
「ブレイズとアキトが昇級試験を受けた時も、ルセフたちのパーティーとの冒険もな」
「あー…俺のあの失態もか」
ルセフさんは苦い顔でぽつりとそう呟いた。あの毒キノコの事だなとすぐに分かったけど、あれはルセフさんの失態ってわけじゃないと思うんだけどな。あれは避けられない事故だと思う。
「あれは仕方ないさ」
「あ、もしかしてあの時の薬って…?」
ハッと顔を上げたファリーマさんの質問をハルは笑って流そうとしたけれど、俺は声をあげた。
「うん、ハルが教えてくれたんです!」
「あーそうか…あの時はありがとうな」
「いや、アキトがいなかったら、対処法を伝える事すら出来なかったんだからな」
それでも助かったよと笑ったルセフさんは、アキトもありがとうなと言葉を重ねた。あの時はこんな事があったななんて話をし始めていたその瞬間、ブレイズがいきなり叫んだ。
「え…待って!じゃあもしかしてハルさんは…ハルさんは、精霊じゃないって事!?」
しんと静まり返った中、全員の視線がブレイズに集中した。
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