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527.馬車の護衛の冒険者

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 馬車乗り場に辿り着くと、職員さん達と御者さん、それにたくさんの馬の視線が一気に俺達に集まってきた。どの馬も威圧感を感じそうなぐらい立派な体つきなんだけど、目が好奇心でキラキラしているのがすごく可愛い。

「うわーどの馬もすっごく可愛い」

 ぽつりと言った俺に、ハルはふふと楽し気に笑った。

「アキトは本当にウマが好きだね」
「うん。あの綺麗な目も好きだし、サラサラのたてがみも好きだなー」

 あと走ってる姿も大好き!ついつい見惚れちゃうぐらい綺麗だよね!と主張する俺に、ハルはそうだねとすぐに同意してくれた。

 クリスさんとカーディは、そんな俺達のやりとりをきょとんと見つめていた。俺がこんなに馬が好きだって知らなかったから、びっくりしたのかな。

「クリス、案内してくれるんだろう?」

 ハルがそう尋ねれば、クリスさんはハッと顔を上げた。

「ええ、こちらです」
「ああ、端って言ってたけど、入口の方なんだな」
「ええ、出来るだけ早く出たいと交渉しましたから」
「さすがクリスだな」
「それほどでもないですよ」

 カーディに褒められて満面の笑みを浮かべたクリスさんの案内で、俺達は一番端に止められている馬車へと近づいて行った。その大きな馬車の横には、三頭の馬が悠然と佇んでいる。

「ハル、この馬車って三頭でひくの?」

 今まで乗った馬車はずっと一頭でひいていたからそう尋ねたんだけど、ハルはフルフルと首を振った。

「あれは護衛が乗る馬だよ。一人は御者をして、他の三人は馬車の両隣と後ろを走るんだ」

 護衛が乗る馬って事は、つまり騎乗が出来ないと馬車の護衛任務は受けられないって事か。しかもただ乗るんじゃなくて、魔物に襲われてもすぐに対処できるぐらい乗りこなさないといけない。

「はーすごいな…俺も練習していつか乗れるようにならないと…かな?」

 一人で馬に乗れるって格好良いよね。憧れる気持ちはあるけど、きっと難しいんだろう。それでも冒険者には必須って言われたら、頑張るしかないんだけど。

「二人パーティーだとどうせ馬車の護衛任務は受けれないし、世間一般的には乗れない冒険者も多いから必須ってわけじゃないけど…」
「…けど?」
「アキトはウマが好きだから、乗れたら楽しいかなとは思うね。もちろん一人で乗らなくても、俺と一緒に乗ってくれても良いんだけどね」

 俺は騎乗は得意だし怖い思いはさせないよと笑うハルに、俺はちょっと考えてから答えた。

「いつかは自分でも乗れるようになりたいけど、ハルと一緒に乗るのもやりたいな」

 そんなの絶対楽しいと思うからと続ければ、ハルはふわりと笑みを浮かべた。

「それは光栄だな。今度相談して詳しい予定を決めようか」
「うん、そうだね」

 いつになるかは分からないけど、ハルと一緒に馬に乗る日が楽しみだ。



 近づいてよくよく見てみると、あの大きな馬車には巨大な窓がついていた。外の景色を楽しむためなのだろうその窓は、今は分厚いカーテンで覆われている。

「では、呼んできますね」

 そう言い置いたクリスさんは、馬車に近づくと木製のドアをココンッとリズミカルに軽く叩いてからそっとドアを開いた。

「全員到着しました。紹介しますので、出てきて頂けますか?」

 中に向かって声をかけたクリスさんが戻ってくると、馬車のドアがゆっくりと開いた。

「こんにちは、俺がこのパーティーのリー…は…?」
「リー…はってなんだよ、リー…はって」

 戸惑う声も遠慮なく揶揄う声も聞き覚えのある声で、俺は思わず口を開いた。

「え、ルセフさん…?ウォルターさんも!」
「は?アキトか?」

 馬車から飛び出してきたウォルターさんの後ろから、ひょこっとファリーマさんが顔を出した。

「何?アキトだって?」
「あ、ファリーマさん」
「あ、本当にアキトじゃないか!あれから新しい魔法は覚えたか?」
「ファリーマさん!早く下りて!」

 流れるように魔法の話に持っていこうとするファリーマさんを押しのけるようにして、一番最後に下りてきたのはブレイズだった。

「ブレイズ!」
「わー本物のアキトだー!」

 嬉しそうに駆け寄ってきたブレイズとニコニコと笑い合っていると、あっけにとられていたクリスさんとカーディが声を上げて笑いだした。

「どうやらお互いの自己紹介の必要は無さそうですね」
「ああ、アキトとハルなら俺達も安心だよ」

 そう言いきったルセフさんは、楽しそうな笑みを浮かべた。
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