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526.馬車の護衛
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馬車乗り場を目指して街道を歩きながら、ふと思いついた俺は隣を歩くハルに尋ねた。街から出ちゃったからもう手を繋いで歩けないのが、ちょっとだけ残念だ。
「ねえ、ハル」
「ん?どうしたの?アキト」
「あのさ、馬車の護衛をする時に特に気を付けないといけない事――って何かある?」
当然俺は馬車の護衛なんてした事が無いんだけど、ハルならきっと詳しいと思ったんだ。だから今のうちに聞いておこうと思ったんだけど、ハルが口を開くよりも先にカーディがあっさりと答えた。
「ああ、アキト。帰りの馬車の護衛は、別の冒険者を雇ってるぞ?」
「…え?」
俺とハルも護衛として雇われてる筈なのに、わざわざ別の冒険者を雇うの?
びっくりした俺は、思わずまじまじとカーディを見つめてしまった。カーディは何でそんなに驚いてるんだと言いたげに、ゆるりと首を傾げた。
「アキトは馬車の護衛をした事ないからね」
カーディに向かって俺の反応の理由を告げたハルは、すぐに詳しい説明をしてくれた。
「馬車の護衛っていうのはね、最低でも四人か…それ以上でするものなんだ」
「へーそういうものなの?」
「例えそれがA級の冒険者であっても、基本的には四人でするものだよ」
ハルの説明にそうなのとか納得していると、カーディが口を開いた。
「アキトとハルの腕は信じてるけど、馬車は死角ができないようにしたいからな」
決して二人を軽んじてるわけじゃないからな?とカーディは真剣な顔でそう続けた。
「分かってるよ、大丈夫だ。アキトも良いよな?」
「うん、なんで?って思っただけだか…」
「カーディー!」
俺の言葉は元気なクリスさんの叫び声で、遮られてしまった。
「クリス、無事に護衛と合流できたか?」
「ええ、馬車の用意ももう万端でずよ」
出発しやすいようにあえて一番端に用意してもらったんですよと自慢げに話すクリスさんに、カーディは笑ってありがとなと答えている。
「あーカーディに労って貰えるなら、一人寂しく別行動をして良かったです」
「おおげさだな」
ぼそりとそう呟いたハルに、クリスさんはちらりと視線を向けた。
「ハル、そう言うなら、ちょっと想像してみて下さいね。お祭りで人がいっぱいいる街中に、アキトさんを置いて別行動をする事になりました」
「俺が悪かった…うん、想像するだけでも嫌だな」
驚くほどの即答で謝ったハルを、クリスさんは仕方ないなと苦笑するだけで許してくれたみたいだ。
「あ、クリス、一つだけ質問があるんだ。馬車の護衛なんだが…」
「先ほど私との顔合わせは済ませていますよ」
「顔合わせと言うって事は、馴染みの冒険者ってわけじゃないのか…」
「ええ、まあ」
「クリスの目から見て、相手はどの程度信頼できる?」
もし馬車の護衛をする冒険者が頼れないと思ったのなら、そういうものとして警戒度を上げたいとハルはそう言いきった。真剣に護衛をこなそうとするハルも、格好良いな。俺も頑張らないと。
「人を見る目には自信がありますが、彼らは大丈夫だと思いますよ。人柄も腕前も」
「そうか」
「ああ、それに彼らもメロウさんのお勧めなんです。だからそういう意味でも信頼できると思いますよ」
「なんだメロウの紹介なのか、それなら大丈夫そうだな」
そう言うなり、ハルはふうと肩の力を抜いた。口では色々言うけど、ハルはメロウさんの事は信頼してるんだよな。俺もメロウさんの事は好きだし信頼してるんだけどね。
「そういえば、トリクの花は見つかったのか?」
「ああ、これ!見てくれ!」
カーディが魔道収納鞄から取り出したのは、俺達の持っているものとそっくりな白いリボンのトリクの造花だった。
「あれ、リボンの色が違う?」
「ええ、何でも作り手が他の人とお揃いになるのは嫌でしょう?とリボンの色を変えているらしいですよ」
一度のお祭りで同じ色のリボンは使わないように、きっちりとこだわって作っているらしい。あの少年のお姉さん、そんな事までこだわってくれてたのか。
「すごいな…」
「ええ、すごいですよね」
「手に入って良かったね、カーディ」
「ああ、大事にしないとな。家に帰ったら壁にでも飾ろうかな」
ふふと嬉しそうに笑ったカーディに、クリスさんはとろけるような笑顔を浮かべた。
「ええ、二つ並べて飾りましょうか」
「…それ良いな。アキト、俺達も飾ろうか」
「うん、飾りたいな」
「ねえ、ハル」
「ん?どうしたの?アキト」
「あのさ、馬車の護衛をする時に特に気を付けないといけない事――って何かある?」
当然俺は馬車の護衛なんてした事が無いんだけど、ハルならきっと詳しいと思ったんだ。だから今のうちに聞いておこうと思ったんだけど、ハルが口を開くよりも先にカーディがあっさりと答えた。
「ああ、アキト。帰りの馬車の護衛は、別の冒険者を雇ってるぞ?」
「…え?」
俺とハルも護衛として雇われてる筈なのに、わざわざ別の冒険者を雇うの?
びっくりした俺は、思わずまじまじとカーディを見つめてしまった。カーディは何でそんなに驚いてるんだと言いたげに、ゆるりと首を傾げた。
「アキトは馬車の護衛をした事ないからね」
カーディに向かって俺の反応の理由を告げたハルは、すぐに詳しい説明をしてくれた。
「馬車の護衛っていうのはね、最低でも四人か…それ以上でするものなんだ」
「へーそういうものなの?」
「例えそれがA級の冒険者であっても、基本的には四人でするものだよ」
ハルの説明にそうなのとか納得していると、カーディが口を開いた。
「アキトとハルの腕は信じてるけど、馬車は死角ができないようにしたいからな」
決して二人を軽んじてるわけじゃないからな?とカーディは真剣な顔でそう続けた。
「分かってるよ、大丈夫だ。アキトも良いよな?」
「うん、なんで?って思っただけだか…」
「カーディー!」
俺の言葉は元気なクリスさんの叫び声で、遮られてしまった。
「クリス、無事に護衛と合流できたか?」
「ええ、馬車の用意ももう万端でずよ」
出発しやすいようにあえて一番端に用意してもらったんですよと自慢げに話すクリスさんに、カーディは笑ってありがとなと答えている。
「あーカーディに労って貰えるなら、一人寂しく別行動をして良かったです」
「おおげさだな」
ぼそりとそう呟いたハルに、クリスさんはちらりと視線を向けた。
「ハル、そう言うなら、ちょっと想像してみて下さいね。お祭りで人がいっぱいいる街中に、アキトさんを置いて別行動をする事になりました」
「俺が悪かった…うん、想像するだけでも嫌だな」
驚くほどの即答で謝ったハルを、クリスさんは仕方ないなと苦笑するだけで許してくれたみたいだ。
「あ、クリス、一つだけ質問があるんだ。馬車の護衛なんだが…」
「先ほど私との顔合わせは済ませていますよ」
「顔合わせと言うって事は、馴染みの冒険者ってわけじゃないのか…」
「ええ、まあ」
「クリスの目から見て、相手はどの程度信頼できる?」
もし馬車の護衛をする冒険者が頼れないと思ったのなら、そういうものとして警戒度を上げたいとハルはそう言いきった。真剣に護衛をこなそうとするハルも、格好良いな。俺も頑張らないと。
「人を見る目には自信がありますが、彼らは大丈夫だと思いますよ。人柄も腕前も」
「そうか」
「ああ、それに彼らもメロウさんのお勧めなんです。だからそういう意味でも信頼できると思いますよ」
「なんだメロウの紹介なのか、それなら大丈夫そうだな」
そう言うなり、ハルはふうと肩の力を抜いた。口では色々言うけど、ハルはメロウさんの事は信頼してるんだよな。俺もメロウさんの事は好きだし信頼してるんだけどね。
「そういえば、トリクの花は見つかったのか?」
「ああ、これ!見てくれ!」
カーディが魔道収納鞄から取り出したのは、俺達の持っているものとそっくりな白いリボンのトリクの造花だった。
「あれ、リボンの色が違う?」
「ええ、何でも作り手が他の人とお揃いになるのは嫌でしょう?とリボンの色を変えているらしいですよ」
一度のお祭りで同じ色のリボンは使わないように、きっちりとこだわって作っているらしい。あの少年のお姉さん、そんな事までこだわってくれてたのか。
「すごいな…」
「ええ、すごいですよね」
「手に入って良かったね、カーディ」
「ああ、大事にしないとな。家に帰ったら壁にでも飾ろうかな」
ふふと嬉しそうに笑ったカーディに、クリスさんはとろけるような笑顔を浮かべた。
「ええ、二つ並べて飾りましょうか」
「…それ良いな。アキト、俺達も飾ろうか」
「うん、飾りたいな」
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