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525.イーシャルから出発
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穏やかで幸せな二人だけの時間は、あっという間に過ぎてしまった。
そろそろ出ないと間に合わないという時間までまったりいちゃいちゃしてから、慌てて用意を終えた俺達は二人揃って階下の受付へと向かった。
楽しいお祭りが開催中なのにこんな時間まで宿に残っている人はさすがに少ないみたいで、無人の受付はガランとしていた。人がいないけどこういう時ってどうするんだろう?と思いながら受付のカウンターの前に立ったら、それだけですぐに係の人が出てきてくれたのには正直ちょっと驚いた。
「ご出立ですね」
「ああ、そうだ。支払いは?」
「お支払いは既に済んでおりますので」
鍵を渡したり書類に書き込んだりと宿を引き払うための手続きをしてくれているるハルと係の人のやりとりを聞きながら、俺はそわそわと身体を揺らしていた。
「アキト、どうしたの?」
よほど不審な動きをしていたのか、不意にそう話を振ってくれたハルに今がチャンスだと俺は口を開いた。
「あの、噴水広場の公演、教えてくれてありがとうございました!」
びっくり顔のお兄さんとハルに見つめられながら、俺は言葉を続ける。
「教えてもらってなかったら、あんなにすごい公演を見れなかったかもしれないので、お礼が言いたかったんです…けど…」
見事にびっくり顔の二人に、どんどん語尾が小さくなっていく。ハルはそういえばお礼を言いたいって言ってたなって顔になったけど、お兄さんはまだびっくり顔のままだ。うーん、この空気どうしようと思った次の瞬間、お兄さんはふわりと満面の笑みを浮かべた。
「お誉めの言葉、ありがとうございます。お二人のお役に立てたなら何よりです」
「本当に良いものを見させてもらったよ、俺からも感謝を」
本当に良い思い出になったと笑うハルにも、お兄さんは心底嬉しそうに笑ってくれた。
「またのお越しをお待ちしております」
にこやかな笑顔で見送られて、俺達は黄昏の館を後にした。
街は昨日よりもさらに混雑していたけれど、ハルが空いている道に案内してくれたから思ったよりも時間はかからなかった。待ち合わせ時間よりも少し前に、俺達は問題なく待ち合わせ場所の階段まで辿り着いた。
昨日も空いてたからとクリスさんとハルで相談して決めたらしいんだけど、ここは本当にお祭り中?と聞きたくなるぐらい人が少ない。穴場なんだな。
パラパラとしかいない人を順番に確認してみたけど、まだクリスさんとカーディの姿は無いみたいだ。
「まだ来てないみたいだね」
「ああ。とりあえず座って待とうか?」
「そうだね」
階段の端っこに腰を下ろしてぽつぽつと話しながらのんびりと待っていると、カーディが手を振りながら駆け寄ってきた。
「すまん、ちょっと遅れた!」
「いや、祭りの混雑の中を抜けてくるんだから、多少の遅れは仕方ないさ」
「でも遅れたのは事実だしな」
「俺は気にしてないぞ?アキトもな」
「うん、すっごい遅刻したってわけじゃないんだし気にしないで」
「なあ、カーディさん、それより気になってたんだけどクリスは?」
ハルの投げかけた質問に、俺もコクコクと頷いた。さっきから俺もすごく気になってたんだよね。カーディが一人だけで歩いてる所なんて、もしかしたら初めて見たかもしれない。それぐらいクリスさんと二人で一組なイメージだから、ちょっとびっくりしたんだ。
「ああ、クリスは時間ギリギリになるからって、先に馬車乗り場の方へ行かせたよ」
「よく一人で向かったな?」
「そこはほら、俺がうまく誘導したから?」
自慢げなカーディの言葉に、俺とハルは思わず笑ってしまった。カーディにうまく誘導されて、嬉しそうに馬車乗り場に向かうクリスさんの姿がはっきりと見えた気がした。
三人で連れだって、すぐにイーシャルの大門へと向かう。もうお昼を過ぎたぐらいの時間なのに、街の中へと進む道は驚くほどの大混雑だった。
「うわぁ…すごい人」
「トリク祭りは夜が本番だって噂もあるぐらいだからなぁ」
カーディはあっさりとそう答えた。想定内って感じの返事だ。
「アキト、きっとまだまだ人は増えるよ」
「そっか…想像できないな」
そんな事を話しながら、俺達は何の問題も無く大門を通過した。入るのは大混雑だけど、出るのは空いてて助かったよ。
実はこっそり衛兵さんに注目しながら歩いてたんけど、残念ながらティーさんとアッシュさんの姿は見つけられなかった。もし見つけられたとしても、仕事の邪魔はできないから手を振るぐらいしかできないんだけどね。また会えたら、今度こそハルの師匠時代の話をもっと詳しく教えてもらおう。
密かにそんな事を決意しながら、俺は前を歩くカーディの背中を追いかけた。
そろそろ出ないと間に合わないという時間までまったりいちゃいちゃしてから、慌てて用意を終えた俺達は二人揃って階下の受付へと向かった。
楽しいお祭りが開催中なのにこんな時間まで宿に残っている人はさすがに少ないみたいで、無人の受付はガランとしていた。人がいないけどこういう時ってどうするんだろう?と思いながら受付のカウンターの前に立ったら、それだけですぐに係の人が出てきてくれたのには正直ちょっと驚いた。
「ご出立ですね」
「ああ、そうだ。支払いは?」
「お支払いは既に済んでおりますので」
鍵を渡したり書類に書き込んだりと宿を引き払うための手続きをしてくれているるハルと係の人のやりとりを聞きながら、俺はそわそわと身体を揺らしていた。
「アキト、どうしたの?」
よほど不審な動きをしていたのか、不意にそう話を振ってくれたハルに今がチャンスだと俺は口を開いた。
「あの、噴水広場の公演、教えてくれてありがとうございました!」
びっくり顔のお兄さんとハルに見つめられながら、俺は言葉を続ける。
「教えてもらってなかったら、あんなにすごい公演を見れなかったかもしれないので、お礼が言いたかったんです…けど…」
見事にびっくり顔の二人に、どんどん語尾が小さくなっていく。ハルはそういえばお礼を言いたいって言ってたなって顔になったけど、お兄さんはまだびっくり顔のままだ。うーん、この空気どうしようと思った次の瞬間、お兄さんはふわりと満面の笑みを浮かべた。
「お誉めの言葉、ありがとうございます。お二人のお役に立てたなら何よりです」
「本当に良いものを見させてもらったよ、俺からも感謝を」
本当に良い思い出になったと笑うハルにも、お兄さんは心底嬉しそうに笑ってくれた。
「またのお越しをお待ちしております」
にこやかな笑顔で見送られて、俺達は黄昏の館を後にした。
街は昨日よりもさらに混雑していたけれど、ハルが空いている道に案内してくれたから思ったよりも時間はかからなかった。待ち合わせ時間よりも少し前に、俺達は問題なく待ち合わせ場所の階段まで辿り着いた。
昨日も空いてたからとクリスさんとハルで相談して決めたらしいんだけど、ここは本当にお祭り中?と聞きたくなるぐらい人が少ない。穴場なんだな。
パラパラとしかいない人を順番に確認してみたけど、まだクリスさんとカーディの姿は無いみたいだ。
「まだ来てないみたいだね」
「ああ。とりあえず座って待とうか?」
「そうだね」
階段の端っこに腰を下ろしてぽつぽつと話しながらのんびりと待っていると、カーディが手を振りながら駆け寄ってきた。
「すまん、ちょっと遅れた!」
「いや、祭りの混雑の中を抜けてくるんだから、多少の遅れは仕方ないさ」
「でも遅れたのは事実だしな」
「俺は気にしてないぞ?アキトもな」
「うん、すっごい遅刻したってわけじゃないんだし気にしないで」
「なあ、カーディさん、それより気になってたんだけどクリスは?」
ハルの投げかけた質問に、俺もコクコクと頷いた。さっきから俺もすごく気になってたんだよね。カーディが一人だけで歩いてる所なんて、もしかしたら初めて見たかもしれない。それぐらいクリスさんと二人で一組なイメージだから、ちょっとびっくりしたんだ。
「ああ、クリスは時間ギリギリになるからって、先に馬車乗り場の方へ行かせたよ」
「よく一人で向かったな?」
「そこはほら、俺がうまく誘導したから?」
自慢げなカーディの言葉に、俺とハルは思わず笑ってしまった。カーディにうまく誘導されて、嬉しそうに馬車乗り場に向かうクリスさんの姿がはっきりと見えた気がした。
三人で連れだって、すぐにイーシャルの大門へと向かう。もうお昼を過ぎたぐらいの時間なのに、街の中へと進む道は驚くほどの大混雑だった。
「うわぁ…すごい人」
「トリク祭りは夜が本番だって噂もあるぐらいだからなぁ」
カーディはあっさりとそう答えた。想定内って感じの返事だ。
「アキト、きっとまだまだ人は増えるよ」
「そっか…想像できないな」
そんな事を話しながら、俺達は何の問題も無く大門を通過した。入るのは大混雑だけど、出るのは空いてて助かったよ。
実はこっそり衛兵さんに注目しながら歩いてたんけど、残念ながらティーさんとアッシュさんの姿は見つけられなかった。もし見つけられたとしても、仕事の邪魔はできないから手を振るぐらいしかできないんだけどね。また会えたら、今度こそハルの師匠時代の話をもっと詳しく教えてもらおう。
密かにそんな事を決意しながら、俺は前を歩くカーディの背中を追いかけた。
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