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523.噂話と俺の決意
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ハルは俺よりもよっぽど冷静だよと、笑いながら続けた。
「クリスは、ミタラシって呼び方を広めるように親戚に言っておくから、広まるまでは注意してくれって言ってたよ」
「え、広めてくれるんだ?」
「ああ、その方が咄嗟に出た言葉が問題にならないだろうからって。あと広まる前にもし誰かに聞きとがめられたら、クリスと一緒に食べた時に聞いたんだって言えって忠告まで貰ったよ」
ハルは何て事のない口調でさらりと続けたけど、口元は嬉しそうに緩んでいた。友人であるクリスさんの気づかいが、嬉しかったんだろうな。
俺もクリスさんに感謝しないとな。
「そこまでしてくれるなんて…有難いね」
「ああ、本当に有難いよ」
しみじみとそう呟いたハルは、真剣な表情を浮かべてまっすぐ俺を見つめてきた。
「もう一つ…俺とアキトが知っておいた方が良いって情報もくれたんだ」
「情報?」
「ああ…異世界人についての話なんだけど…」
言い難そうにしながらもハルが教えてくれたのは、どこかの国に異世界人を召喚したという貴族がいるという情報だった。
「異世界人を召喚…」
そもそも異世界人って、召喚されて来るものなの?
俺はなんだか知らないけど何かの弾みで移動してきた――みたいな印象だったんだけどな。自販機前からいきなり異世界だったし、移動して来たときも足元に分かりやすい召喚陣みたいなのは無かったから。
「クリスも最初にその話を聞いた時ははただの噂話なんだと思っていたらしいが…最近になってその国の貴族が今も異世界人を探していると知ったそうだ」
ああ、なるほど。つまりその探されている異世界人が、もしかしたら俺って可能性もあるって事か。
「俺が探されてるって可能性があるって事だよね?」
「ああ、でもアキト以外の異世界人を探してるって可能性もあるよ」
アキト以外にも異世界から渡ってきた人はいるんだからとハルは言ってくれたけど、これは多分俺の気持ちを落ち着けるための優しい嘘だよな。
「でも自分が探されてるって思っていた方が良いよね」
「うん、そうだね。知らないよりは知っていた方が警戒できるだろうからって、クリスもそう言ってたよ」
「そっか、本当に俺達のために教えてくれたんだね」
「ああ、クリスは本当に打算無く教えてくれたみたいだな。アキトの知識を利用するつもりかと、俺は殺気まで飛ばしてしまったんだけどな…」
え、殺気飛ばしたの?クリスさんに?思わず大きく目を見開いてハルを見つめれば、ハルは慌てて言葉を重ねた。
「わざとじゃないんだ!無意識のうちに…つい…うっかり…」
どんどん勢いをなくしていくハルの言葉に、俺はそっと手を伸ばすとテーブルの上に載せられていたハルの手をきゅっと握った。弾かれるように視線を上げてくれたハルに、俺は優しく笑って声をかける。
「クリスさんには申し訳ないけど、ハルは俺のために怒ってくれたんでしょ?」
「…でも」
「俺は、ハルが俺のために怒ってくれたっていうその気持ちが嬉しいよ」
「アキト…」
ハルはしょんぼりと肩を落として俺を見つめてくる。滅多に見せないさびしそうな表情をしていても、格好良いんだから困るよね。
「それに、クリスさんは許してくれたんでしょう?」
そうじゃないとさっきの情報を教えてくれたりしないよねと尋ねれば、ハルはすぐに頷いてくれた。
「ああ、謝罪をしたら受け入れてくれた」
「それなら良かった」
「無意識のうちに殺気を飛ばす奴なんて嫌じゃないのか?」
「嫌なわけないよ。それに俺だってハルの意思を無視してハルが誰かに利用されるなんて事になったら、無意識のうちに殺気ぐらい飛ばすかもしれないし…」
そう口にしてから、果たして俺に殺気なんてものが飛ばせるるのかなと不安になってしまった。だって意識して殺気を飛ばした事なんて一度もないからね。これでも平和な異世界出身なので。
「あ、やっぱり訂正」
「訂正?」
「うん、俺に殺気が飛ばせるか分からないから、もしその時が来たら代わりに魔法飛ばすね!」
そう断言した俺を呆然と見つめていたハルは、次の瞬間声をあげて笑いだした。
「そんなに笑わなくても良いだろ?」
しょんぼりしてるよりも、そうやって笑ってくれてる方が嬉しいんだけどさ。
「殺気よりも魔法を出すって言われたら、そりゃあ笑うよ。先手必勝で攻撃してるじゃないか」
楽し気に笑い続けていたハルは、でも確かにこれは嬉しいかもしれないなと笑って同意してくれた。俺の気持ちが分かって貰えたみたいでよかったよ。
「クリスは、ミタラシって呼び方を広めるように親戚に言っておくから、広まるまでは注意してくれって言ってたよ」
「え、広めてくれるんだ?」
「ああ、その方が咄嗟に出た言葉が問題にならないだろうからって。あと広まる前にもし誰かに聞きとがめられたら、クリスと一緒に食べた時に聞いたんだって言えって忠告まで貰ったよ」
ハルは何て事のない口調でさらりと続けたけど、口元は嬉しそうに緩んでいた。友人であるクリスさんの気づかいが、嬉しかったんだろうな。
俺もクリスさんに感謝しないとな。
「そこまでしてくれるなんて…有難いね」
「ああ、本当に有難いよ」
しみじみとそう呟いたハルは、真剣な表情を浮かべてまっすぐ俺を見つめてきた。
「もう一つ…俺とアキトが知っておいた方が良いって情報もくれたんだ」
「情報?」
「ああ…異世界人についての話なんだけど…」
言い難そうにしながらもハルが教えてくれたのは、どこかの国に異世界人を召喚したという貴族がいるという情報だった。
「異世界人を召喚…」
そもそも異世界人って、召喚されて来るものなの?
俺はなんだか知らないけど何かの弾みで移動してきた――みたいな印象だったんだけどな。自販機前からいきなり異世界だったし、移動して来たときも足元に分かりやすい召喚陣みたいなのは無かったから。
「クリスも最初にその話を聞いた時ははただの噂話なんだと思っていたらしいが…最近になってその国の貴族が今も異世界人を探していると知ったそうだ」
ああ、なるほど。つまりその探されている異世界人が、もしかしたら俺って可能性もあるって事か。
「俺が探されてるって可能性があるって事だよね?」
「ああ、でもアキト以外の異世界人を探してるって可能性もあるよ」
アキト以外にも異世界から渡ってきた人はいるんだからとハルは言ってくれたけど、これは多分俺の気持ちを落ち着けるための優しい嘘だよな。
「でも自分が探されてるって思っていた方が良いよね」
「うん、そうだね。知らないよりは知っていた方が警戒できるだろうからって、クリスもそう言ってたよ」
「そっか、本当に俺達のために教えてくれたんだね」
「ああ、クリスは本当に打算無く教えてくれたみたいだな。アキトの知識を利用するつもりかと、俺は殺気まで飛ばしてしまったんだけどな…」
え、殺気飛ばしたの?クリスさんに?思わず大きく目を見開いてハルを見つめれば、ハルは慌てて言葉を重ねた。
「わざとじゃないんだ!無意識のうちに…つい…うっかり…」
どんどん勢いをなくしていくハルの言葉に、俺はそっと手を伸ばすとテーブルの上に載せられていたハルの手をきゅっと握った。弾かれるように視線を上げてくれたハルに、俺は優しく笑って声をかける。
「クリスさんには申し訳ないけど、ハルは俺のために怒ってくれたんでしょ?」
「…でも」
「俺は、ハルが俺のために怒ってくれたっていうその気持ちが嬉しいよ」
「アキト…」
ハルはしょんぼりと肩を落として俺を見つめてくる。滅多に見せないさびしそうな表情をしていても、格好良いんだから困るよね。
「それに、クリスさんは許してくれたんでしょう?」
そうじゃないとさっきの情報を教えてくれたりしないよねと尋ねれば、ハルはすぐに頷いてくれた。
「ああ、謝罪をしたら受け入れてくれた」
「それなら良かった」
「無意識のうちに殺気を飛ばす奴なんて嫌じゃないのか?」
「嫌なわけないよ。それに俺だってハルの意思を無視してハルが誰かに利用されるなんて事になったら、無意識のうちに殺気ぐらい飛ばすかもしれないし…」
そう口にしてから、果たして俺に殺気なんてものが飛ばせるるのかなと不安になってしまった。だって意識して殺気を飛ばした事なんて一度もないからね。これでも平和な異世界出身なので。
「あ、やっぱり訂正」
「訂正?」
「うん、俺に殺気が飛ばせるか分からないから、もしその時が来たら代わりに魔法飛ばすね!」
そう断言した俺を呆然と見つめていたハルは、次の瞬間声をあげて笑いだした。
「そんなに笑わなくても良いだろ?」
しょんぼりしてるよりも、そうやって笑ってくれてる方が嬉しいんだけどさ。
「殺気よりも魔法を出すって言われたら、そりゃあ笑うよ。先手必勝で攻撃してるじゃないか」
楽し気に笑い続けていたハルは、でも確かにこれは嬉しいかもしれないなと笑って同意してくれた。俺の気持ちが分かって貰えたみたいでよかったよ。
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