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517.【ハル視点】ダンゴ
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「無事にこれからの予定も決まったことですし、そろそろこれの出番でしょうか」
クリスはそう言うと、持ち込んでいた魔道収納鞄の中から小ぶりな木箱を取り出した。
テーブルに載せられたその木箱の蓋には、美しい花の模様が小さく描かれていた。繊細な細い線だけで描かれた花の中には、俺も知らない見慣れない花がいくつか混じっているようだ。
話の流れ的にこの中身が菓子なんだろうが…菓子を入れるためだけにしてはかなり凝った作りだな。
「この箱の中身が…さっき言ってた珍しい甘い物なのか?」
俺は興味深く箱を観察しながら、クリスにそう尋ねた。
「ええ、箱にもこだわってるらしいんです。綺麗な箱でしょう?」
「ああ、確かにこれは綺麗だな。これなら手土産や贈り物にも良さそうだ」
今は黒一色で描かれている花に色でも付ければ、もっと価値があがりそうだな。
「それでは、開けますよ」
「おおー面白い見た目だな」
楽し気なカーディさんの声を聞きながら覗き込んだ木箱の中は、真ん中で二つに分かれていた。どうやら半分ずつ種類が違うようだが、どちらも見た目の形は似たような雰囲気だな。
丸い形の物が三つずつ串に刺さっていて、片方はとろみのある茶色いソースがかけられている。残りの半分にはソースは無く、ピンクと白と緑色の丸い物が刺さっている。
ふと視線を向ければ、アキトは驚いた顔でぴたりと固まってしまっていた。どうしたんだろう、この菓子に何かあるんだろうかと考えながらも、俺はあえて明るく声を上げた。
「へえ、確かにこれは面白いし、かなり変わった見た目だな。俺も見た事がないよ」
アキトは俺の声にハッと顔を上げると、うんうんと小さく頷いてくれた。とりあえず今は困った様子は無いから、後でどうして固まっていたのか聞いてみよう。
「クリス、これって…なんていう菓子なんだ?…というかこれは本当に菓子なのか?」
見た目は串焼きみたいだよなと尋ねたカーディさんに、クリスは箱に添えられていた紙を見ながら答えた。
「えーと、ダンゴという名前で、れっきとした菓子だそうですよ?」
「ダンゴ?ダンゴかー。聞きなれない名前だな」
カーディさんはダンゴという聞きなれない名前の響きが気に入ったのか、楽し気に何度も何度も繰り返している。
「まあ、まずは食べてみませんか?」
「そうだな」
「ああ」
「そうですね」
カートから取り出したお皿に二種類のダンゴを並べたクリスは、それぞれの前にそっと差し出してくれた。お礼を言って受け取った俺達は、まじまじと目の前のダンゴという菓子を観察した。
「さあ、どうぞ」
「「いただきます」」
「んっ!これ、もちもちして美味いな!」
「ああ、確かにこれは…初めて食べる食感ですね」
カーディさんとクリスが口をつけて感想を言うのを待ってから、アキトはそっとダンゴを取り上げた。嬉しそうな表情をしているからこの菓子に何かがあるってわけじゃないのか。
あーんと口を開いたアキトを横目で見ながら、俺もダンゴを口に運んだ。もちもちしていると言っていたが、これは想像以上にもちもちしているな。そう思った瞬間、アキトがしみじみと呟いた。
「みたらし、うま…」
ぽつりとこぼれたそのミタラシという言葉は、今までに一度も聞いた事のない聞きなれない単語だった。不思議なその響きからして、おそらく異世界の言葉なんだろう。
つまりこのダンゴとやらは異世界の菓子で、それが出てきたから動揺してたのか。一瞬でそこまで理解した俺は、すぐにアキトに話しかけた。
「うん、これは美味しいね、アキト」
「あ、うん、もちもちですごく美味しい!」
幸せそうに笑っているアキトはすごく可愛い。いつまででも見つめていたくなる可愛らしさだが、俺はちらりと目線だけをクリスとカーディさんの方へと向けた。
今のミタラシという単語は、はたして二人の耳に届いていただろうか。
様子を伺う俺に気づかずに、カーディさんとクリスはもう一種類のダンゴに齧りついていた。
「ああ、こっちも美味い!」
「ええ、こちらは三色で味が違うんですね」
二人の感想を聞いたアキトも、三色のダンゴを口に運んだ。途端にパァッと笑顔になったアキトは、興奮した様子で俺の方を見つめてくる。
「わ、本当に味が違うんだ!」
ハルも早く食べてと訴えてくるアキトの視線に負けて口に運べば、確かに味が少しずつ違っているみたいだ。
「これは楽しいな」
「ね、美味しいね」
「ああ、美味しいな」
「うーん、見た目は串焼きっぽいと思ったけど、これはちゃんと菓子だな」
カーディさんもダンゴの味が気に入ったのか、満足そうに頷きながら食べ進めている。
「クリス、ダンゴ気に入った!」
「ハルとアキトさんも気に入りました?」
「はいっ」
「ああ、好きな味だな」
「それは良かったです」
クリスはそう答えると、嬉しそうな笑みを浮かべてみせた。
クリスはそう言うと、持ち込んでいた魔道収納鞄の中から小ぶりな木箱を取り出した。
テーブルに載せられたその木箱の蓋には、美しい花の模様が小さく描かれていた。繊細な細い線だけで描かれた花の中には、俺も知らない見慣れない花がいくつか混じっているようだ。
話の流れ的にこの中身が菓子なんだろうが…菓子を入れるためだけにしてはかなり凝った作りだな。
「この箱の中身が…さっき言ってた珍しい甘い物なのか?」
俺は興味深く箱を観察しながら、クリスにそう尋ねた。
「ええ、箱にもこだわってるらしいんです。綺麗な箱でしょう?」
「ああ、確かにこれは綺麗だな。これなら手土産や贈り物にも良さそうだ」
今は黒一色で描かれている花に色でも付ければ、もっと価値があがりそうだな。
「それでは、開けますよ」
「おおー面白い見た目だな」
楽し気なカーディさんの声を聞きながら覗き込んだ木箱の中は、真ん中で二つに分かれていた。どうやら半分ずつ種類が違うようだが、どちらも見た目の形は似たような雰囲気だな。
丸い形の物が三つずつ串に刺さっていて、片方はとろみのある茶色いソースがかけられている。残りの半分にはソースは無く、ピンクと白と緑色の丸い物が刺さっている。
ふと視線を向ければ、アキトは驚いた顔でぴたりと固まってしまっていた。どうしたんだろう、この菓子に何かあるんだろうかと考えながらも、俺はあえて明るく声を上げた。
「へえ、確かにこれは面白いし、かなり変わった見た目だな。俺も見た事がないよ」
アキトは俺の声にハッと顔を上げると、うんうんと小さく頷いてくれた。とりあえず今は困った様子は無いから、後でどうして固まっていたのか聞いてみよう。
「クリス、これって…なんていう菓子なんだ?…というかこれは本当に菓子なのか?」
見た目は串焼きみたいだよなと尋ねたカーディさんに、クリスは箱に添えられていた紙を見ながら答えた。
「えーと、ダンゴという名前で、れっきとした菓子だそうですよ?」
「ダンゴ?ダンゴかー。聞きなれない名前だな」
カーディさんはダンゴという聞きなれない名前の響きが気に入ったのか、楽し気に何度も何度も繰り返している。
「まあ、まずは食べてみませんか?」
「そうだな」
「ああ」
「そうですね」
カートから取り出したお皿に二種類のダンゴを並べたクリスは、それぞれの前にそっと差し出してくれた。お礼を言って受け取った俺達は、まじまじと目の前のダンゴという菓子を観察した。
「さあ、どうぞ」
「「いただきます」」
「んっ!これ、もちもちして美味いな!」
「ああ、確かにこれは…初めて食べる食感ですね」
カーディさんとクリスが口をつけて感想を言うのを待ってから、アキトはそっとダンゴを取り上げた。嬉しそうな表情をしているからこの菓子に何かがあるってわけじゃないのか。
あーんと口を開いたアキトを横目で見ながら、俺もダンゴを口に運んだ。もちもちしていると言っていたが、これは想像以上にもちもちしているな。そう思った瞬間、アキトがしみじみと呟いた。
「みたらし、うま…」
ぽつりとこぼれたそのミタラシという言葉は、今までに一度も聞いた事のない聞きなれない単語だった。不思議なその響きからして、おそらく異世界の言葉なんだろう。
つまりこのダンゴとやらは異世界の菓子で、それが出てきたから動揺してたのか。一瞬でそこまで理解した俺は、すぐにアキトに話しかけた。
「うん、これは美味しいね、アキト」
「あ、うん、もちもちですごく美味しい!」
幸せそうに笑っているアキトはすごく可愛い。いつまででも見つめていたくなる可愛らしさだが、俺はちらりと目線だけをクリスとカーディさんの方へと向けた。
今のミタラシという単語は、はたして二人の耳に届いていただろうか。
様子を伺う俺に気づかずに、カーディさんとクリスはもう一種類のダンゴに齧りついていた。
「ああ、こっちも美味い!」
「ええ、こちらは三色で味が違うんですね」
二人の感想を聞いたアキトも、三色のダンゴを口に運んだ。途端にパァッと笑顔になったアキトは、興奮した様子で俺の方を見つめてくる。
「わ、本当に味が違うんだ!」
ハルも早く食べてと訴えてくるアキトの視線に負けて口に運べば、確かに味が少しずつ違っているみたいだ。
「これは楽しいな」
「ね、美味しいね」
「ああ、美味しいな」
「うーん、見た目は串焼きっぽいと思ったけど、これはちゃんと菓子だな」
カーディさんもダンゴの味が気に入ったのか、満足そうに頷きながら食べ進めている。
「クリス、ダンゴ気に入った!」
「ハルとアキトさんも気に入りました?」
「はいっ」
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「それは良かったです」
クリスはそう答えると、嬉しそうな笑みを浮かべてみせた。
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