511 / 1,103
510.これからの予定
しおりを挟む
「あーつまりもう予定は全部終わったって事だよな?」
カーディの発言にすっかり浮かれていたクリスさんが落ち着くのを待ってから、ハルはそう切り出した。
「ええ、そうですね」
「そうか。トライプールへの帰りは、いつ出発にするつもりだ?」
唐突なハルの質問に、クリスさんは少し困った顔で考え込んだ。
「まだ未定なら未定でも良いんだが…」
「あ、いえ、すみません。今考えているのは…そうですね、二つの案があります」
まず一つ目は明日の昼までトリク祭りを楽しんで、そのまま馬車に乗ってトライプールに向けての移動を開始するという案。
もう一つは明日のトリク祭りをたっぷり一日満喫、その後数日はイーシャルでのんびりと過ごしてから移動を開始するという案らしい。
え、予定が終わったって言ってたのになんで数日のんびりするの?そう思いながらぐるりと周りを見渡してみれば、ハルは納得した顔で頷いてたけどカーディは俺と同じくらい不思議そうな顔だった。
「あー…なるほど。トリク祭りが終わると一気に混みあうから…か」
「ええ、今はイーシャルにはトリク祭りのためにたくさんの人が集まってますからね」
「え、そんなに混むのか?」
「そうなんです。多分カーディが今想像してる以上の混み具合ですよ」
そう言って笑ったクリスさんによると、トリク祭りにはかなり遠方の人まで集まってきているらしい。クリスさんも親戚が勢ぞろいしたって言ってたぐらいだから、そういう感じで家族が集まってたりするんだろうか。
その結果、祭りが終わると普段とは比べ物にならないほどの人数が、一気にイーシャルから各地へ出発する事になるんだって。
「ですから、祭りが終わる前に早めに出発するか、それとも数日経ち落ち着いてから出発するかの実質二択になるんです」
「混雑の中で帰るのは駄目なのか?」
カーディが不思議そうに尋ねれば、ハルが困った顔で口を挟んだ。
「混雑の中での移動は、とにかく警戒対象が増えるんだ」
ハルによると、わざわざ盗難目的で人混みにまぎれてる人もいるらしい。楽しいお祭り帰りを狙って盗みに来るなんて、嫌な話だな。
「あーそれは困るな」
「もちろんそれでもどうしても移動すると言うなら、依頼だから護衛はするが…」
そこで言葉を切ったハルに、クリスさんは笑って答えた。
「まともな依頼人ならそんな無理はさせないんですよ。あ、当然ですが、私たちはまともな依頼人ですよ?」
「ああ、そういう理由なら納得だし、無理は言わないぞ」
元冒険者だけあって、カーディはまあそういう依頼人もいるよなと苦笑を洩らしている。
「では二つの案から選ぶという事で。アキトさんとカーディは、どちらの案が良いと思いますか?」
「うーん…俺は夕方から色々見て回れたし、もう結構満足してるかな」
カーディは一つ目の案に一票と軽く答えた。三人の視線が集まってきたのを感じて、俺も手をあげてから口を開く。
「今日一日ハルと一緒にお祭りを満喫したので、俺も一つ目の案に一票でお願いします」
そう答えた俺の言葉を聞くなり、ハルとクリスさんは顔を見合わせた。
「二人がこう言ってるなら、予定は決まりだな」
「そうですね」
あまりにあっさりとそう言いきった二人に、俺は驚いて声をあげた。
「え、まだ二票なのに!?」
「そうだよ。クリスとハルがゆっくりしたいなら、俺達はそれでも良いんだぞ?」
慌ててカーディがそう声をかける。
「いや、二人の意見を聞く前から、俺は早めの出発の方が良いと思ってたから問題無いよ」
クリスとカーディさんは仕事もしてたけど、俺とアキトは一日休みだったからなとハルは笑って続けた。
「クリスは?クリスも明日帰るって案で良いのか?」
「ええ、私もその案の方が良いと思ってましたから」
「本当に?」
まっすぐカーディに見つめられたクリスさんは、困ったように視線を反らした。
「自分の意見をちゃんと言ってくれないと、拗ねるぞ?」
怒るとかじゃなくて拗ねるって辺りがカーディらしいな。まあクリスさんには効果は抜群みたいだけど。クリスさんはふうと一つ息を吐いてから、苦笑しながら口を開いた。
「本当にそう思ってますよ。正直に言うとですね…私は早くトライプールに帰って、やっと手に入ったあの竜種の魔石を加工したいんです」
手に入った素材にワクワクして早く帰りたいなんて子どもみたいだから言うつもりは無かったのにと、クリスさんは恥ずかしそうに頬を染めながらそう続けた。
「あー…そうか、そうだな。クリスならそう言うわ」
「分かってくれて何よりです」
「アキトとハルも本当に良いんだよな?」
もう一度確認してきたカーディに、俺とハルはすぐに返事を返した。
「うん」
「ああ、問題ない」
「よし。じゃあ明日出発って事で頼む」
「「分かった」」
カーディの発言にすっかり浮かれていたクリスさんが落ち着くのを待ってから、ハルはそう切り出した。
「ええ、そうですね」
「そうか。トライプールへの帰りは、いつ出発にするつもりだ?」
唐突なハルの質問に、クリスさんは少し困った顔で考え込んだ。
「まだ未定なら未定でも良いんだが…」
「あ、いえ、すみません。今考えているのは…そうですね、二つの案があります」
まず一つ目は明日の昼までトリク祭りを楽しんで、そのまま馬車に乗ってトライプールに向けての移動を開始するという案。
もう一つは明日のトリク祭りをたっぷり一日満喫、その後数日はイーシャルでのんびりと過ごしてから移動を開始するという案らしい。
え、予定が終わったって言ってたのになんで数日のんびりするの?そう思いながらぐるりと周りを見渡してみれば、ハルは納得した顔で頷いてたけどカーディは俺と同じくらい不思議そうな顔だった。
「あー…なるほど。トリク祭りが終わると一気に混みあうから…か」
「ええ、今はイーシャルにはトリク祭りのためにたくさんの人が集まってますからね」
「え、そんなに混むのか?」
「そうなんです。多分カーディが今想像してる以上の混み具合ですよ」
そう言って笑ったクリスさんによると、トリク祭りにはかなり遠方の人まで集まってきているらしい。クリスさんも親戚が勢ぞろいしたって言ってたぐらいだから、そういう感じで家族が集まってたりするんだろうか。
その結果、祭りが終わると普段とは比べ物にならないほどの人数が、一気にイーシャルから各地へ出発する事になるんだって。
「ですから、祭りが終わる前に早めに出発するか、それとも数日経ち落ち着いてから出発するかの実質二択になるんです」
「混雑の中で帰るのは駄目なのか?」
カーディが不思議そうに尋ねれば、ハルが困った顔で口を挟んだ。
「混雑の中での移動は、とにかく警戒対象が増えるんだ」
ハルによると、わざわざ盗難目的で人混みにまぎれてる人もいるらしい。楽しいお祭り帰りを狙って盗みに来るなんて、嫌な話だな。
「あーそれは困るな」
「もちろんそれでもどうしても移動すると言うなら、依頼だから護衛はするが…」
そこで言葉を切ったハルに、クリスさんは笑って答えた。
「まともな依頼人ならそんな無理はさせないんですよ。あ、当然ですが、私たちはまともな依頼人ですよ?」
「ああ、そういう理由なら納得だし、無理は言わないぞ」
元冒険者だけあって、カーディはまあそういう依頼人もいるよなと苦笑を洩らしている。
「では二つの案から選ぶという事で。アキトさんとカーディは、どちらの案が良いと思いますか?」
「うーん…俺は夕方から色々見て回れたし、もう結構満足してるかな」
カーディは一つ目の案に一票と軽く答えた。三人の視線が集まってきたのを感じて、俺も手をあげてから口を開く。
「今日一日ハルと一緒にお祭りを満喫したので、俺も一つ目の案に一票でお願いします」
そう答えた俺の言葉を聞くなり、ハルとクリスさんは顔を見合わせた。
「二人がこう言ってるなら、予定は決まりだな」
「そうですね」
あまりにあっさりとそう言いきった二人に、俺は驚いて声をあげた。
「え、まだ二票なのに!?」
「そうだよ。クリスとハルがゆっくりしたいなら、俺達はそれでも良いんだぞ?」
慌ててカーディがそう声をかける。
「いや、二人の意見を聞く前から、俺は早めの出発の方が良いと思ってたから問題無いよ」
クリスとカーディさんは仕事もしてたけど、俺とアキトは一日休みだったからなとハルは笑って続けた。
「クリスは?クリスも明日帰るって案で良いのか?」
「ええ、私もその案の方が良いと思ってましたから」
「本当に?」
まっすぐカーディに見つめられたクリスさんは、困ったように視線を反らした。
「自分の意見をちゃんと言ってくれないと、拗ねるぞ?」
怒るとかじゃなくて拗ねるって辺りがカーディらしいな。まあクリスさんには効果は抜群みたいだけど。クリスさんはふうと一つ息を吐いてから、苦笑しながら口を開いた。
「本当にそう思ってますよ。正直に言うとですね…私は早くトライプールに帰って、やっと手に入ったあの竜種の魔石を加工したいんです」
手に入った素材にワクワクして早く帰りたいなんて子どもみたいだから言うつもりは無かったのにと、クリスさんは恥ずかしそうに頬を染めながらそう続けた。
「あー…そうか、そうだな。クリスならそう言うわ」
「分かってくれて何よりです」
「アキトとハルも本当に良いんだよな?」
もう一度確認してきたカーディに、俺とハルはすぐに返事を返した。
「うん」
「ああ、問題ない」
「よし。じゃあ明日出発って事で頼む」
「「分かった」」
142
お気に入りに追加
4,148
あなたにおすすめの小説
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。
主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
氷の華を溶かしたら
こむぎダック
BL
ラリス王国。
男女問わず、子供を産む事ができる世界。
前世の記憶を残したまま、転生を繰り返して来たキャニス。何度生まれ変わっても、誰からも愛されず、裏切られることに疲れ切ってしまったキャニスは、今世では、誰も愛さず何も期待しないと心に決め、笑わない氷華の貴公子と言われる様になった。
ラリス王国の第一王子ナリウスの婚約者として、王子妃教育を受けて居たが、手癖の悪い第一王子から、冷たい態度を取られ続け、とうとう婚約破棄に。
そして、密かにキャニスに、想いを寄せて居た第二王子カリストが、キャニスへの贖罪と初恋を実らせる為に奔走し始める。
その頃、母国の騒ぎから逃れ、隣国に滞在していたキャニスは、隣国の王子シェルビーからの熱烈な求愛を受けることに。
初恋を拗らせたカリストとシェルビー。
キャニスの氷った心を溶かす事ができるのは、どちらか?
【完結】別れ……ますよね?
325号室の住人
BL
☆全3話、完結済
僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。
ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる