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507.のんびり帰ろう
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ゆっくりと食事を楽しんだ俺達がお店を出る頃には、辺りはもうすっかり夜になっていた。魔道具の灯りが灯って街を彩る時間帯になっても、トリク祭りはまだまだ終わらないみたいだ。いや、むしろこれから始まるって感じなのかもしれないな。
楽し気な恋人同士や伴侶たちが買い物を楽しんでいるのを横目に見ながら、俺とハルは手をつないだままのんびりと街中を歩いていた。
「あれ…ハル、なんか露店増えてない?」
「ああ、そういえば増えてるな」
来た時は露店も屋台も何も無い道だったのにとぽそりと呟けば、ハルも確かにと答えてくれた。
「ここはイーシャルだから、夜だけ増える店もあるんだろうな」
「ああ、そっか」
元々夜の方が人が多い街だからこそ、お祭りの日も夜だけ開くっていうお店もあるのか。
「何か良いものがあるかもしれないけど…見にいく?」
優しい笑みでそう聞いてくれたハルに、俺は少し考えてからゆるりと首を振って答えた。
「ううん、俺はもう満足したかな」
夜の露店には昼とは何か違う物が売ってたりするのかなーって、気にはなってるんだけどね。でも正直昼頃からずっとお祭りを楽しんできたから、ちょっと疲れてる気がする。祭りって高揚感で気づきにくいけど、結構体力がいるんだよね。
ハルが見に行きたいって言うなら話は変わってくるけどと、俺はハルの目をじっと見つめて尋ねた。
「ハルは?」
「うん、俺も今日はもう良いかな。何なら明日もトリク祭りはやってるからね」
「あ、そっか!」
そういえばトリク祭りは二日間やるって言ってたな。
「じゃあそろそろ宿に帰ろうか?」
「うん、そうだね。のんびり帰ろう」
「ああ、のんびりね」
ハルはそう言うと優しい笑みを浮かべてから、俺の手を引いて歩き出した。
大通りへ出て歩いていた俺達は、不意に後ろからかけられた聞きなれた声に揃って振り返った。
「あ、アキト!」
そこにいたのは俺達と同じく手を繋いだまま歩いていた、クリスさんとカーディだった。
「え、カーディ?クリスさんも?」
「こんばんはー!こんな所で会えるなんてなー」
「うん、こんばんは。偶然だね…ってあれ?今日は宿に帰れないかもって言ってなかった?」
たしか近くの街の親戚に馬車に乗って会いに行くんだって言ってたよね。だから帰ってくるのは数日後になるかもしれないけど、心配しないでって言われてたんだ。
ゆるりと首を傾げて尋ねた俺の疑問に、クリスさんは笑顔で答えてくれた。
「その予定だったんですが…トリク祭りで色々と予定が狂ったんですよ」
「トリク祭りで?」
「ええ、良い方にですけどね」
「そうそう、クリスの親戚がみーんなトリク祭り目当てでイーシャルに来てたからさ、俺との顔合わせも一瞬で終わったんだ」
本来なら護衛付きの貸し切り馬車に乗っていくつかの街を巡る予定だったらしいんだけど、それが一瞬で終わってしまったらしい。
「ああ、そういう事か。それは幸運だったな」
ハルが笑って話しかければ、クリスさんも満足そうに笑って答えた。
「そうですね、かなり運が良かったです」
「ほんとになー」
ニコニコと笑い合うカーディとクリスに、俺とハルも思わず笑みを浮かべた。
「ところで、お二人はもう夕食は済んでるんですか?」
「ああ、俺達はもう済ませたよ。そっちは?」
「俺達も、もう食事は済ませたぞ」
屋台でいっぱい買って食べたんだと笑って教えてくれるカーディを、クリスさんは優しい笑みを浮かべて見守っている。
「それで…お二人のこれからの予定は?」
「もうそろそろ黄昏の館に戻ろうかって話してた所だけど」
「ああ、それならちょうど良かった。甘い物があるんですが宿で一緒にいかがですか?」
「いいのか?」
「ええ、もしハルとアキトさんさえ良ければぜひ。ちょっと珍しいものなんですよ」
悪戯っぽく続けたクリスさんの言葉に、ハルはちらりと俺の方へと視線を向けた。どうする?と俺に判断を委ねてくれたのは分かったけれど、俺は返事に詰まってしまった。お誘いは嬉しいけど二人の邪魔になるんじゃないかなと考えてしまった。
「アキト、俺達と一緒にまったり過ごすのは…嫌か?」
しょんぼりとしたカーディに寂しそうにそう聞かれた俺は、大慌てでブンブンと首を振った。
「嫌じゃないよ!」
「よし、じゃあ決まりだなー」
カーディは悪戯っぽく笑ってそう宣言した。一瞬で満面の笑みになったあたり、さっきの表情はわざと作ったものだったのか。いや、まあ俺の背中を押してくれたんだから良いんだけどさ。
「決まりは良いんだが…、どこで食べるんだ?」
どちらかの部屋に行くにしても椅子の数が足りないだろうと、ハルはクリスさんにそう話しかけている。
「それは大丈夫ですよ。黄昏の館には商談用の部屋がありますから、そこを借りれば良いかと」
「ああ、それもそうか」
「賛成ー!」
俺からしたらただ揃って甘い物を食べるためだけに、商談用の部屋を使って良いんだろうか?とちょっとだけ疑問だったけど、どうやら俺以外の三人にとってもは有りみたいだ。
うーん、異世界ギャップだな。
楽し気な恋人同士や伴侶たちが買い物を楽しんでいるのを横目に見ながら、俺とハルは手をつないだままのんびりと街中を歩いていた。
「あれ…ハル、なんか露店増えてない?」
「ああ、そういえば増えてるな」
来た時は露店も屋台も何も無い道だったのにとぽそりと呟けば、ハルも確かにと答えてくれた。
「ここはイーシャルだから、夜だけ増える店もあるんだろうな」
「ああ、そっか」
元々夜の方が人が多い街だからこそ、お祭りの日も夜だけ開くっていうお店もあるのか。
「何か良いものがあるかもしれないけど…見にいく?」
優しい笑みでそう聞いてくれたハルに、俺は少し考えてからゆるりと首を振って答えた。
「ううん、俺はもう満足したかな」
夜の露店には昼とは何か違う物が売ってたりするのかなーって、気にはなってるんだけどね。でも正直昼頃からずっとお祭りを楽しんできたから、ちょっと疲れてる気がする。祭りって高揚感で気づきにくいけど、結構体力がいるんだよね。
ハルが見に行きたいって言うなら話は変わってくるけどと、俺はハルの目をじっと見つめて尋ねた。
「ハルは?」
「うん、俺も今日はもう良いかな。何なら明日もトリク祭りはやってるからね」
「あ、そっか!」
そういえばトリク祭りは二日間やるって言ってたな。
「じゃあそろそろ宿に帰ろうか?」
「うん、そうだね。のんびり帰ろう」
「ああ、のんびりね」
ハルはそう言うと優しい笑みを浮かべてから、俺の手を引いて歩き出した。
大通りへ出て歩いていた俺達は、不意に後ろからかけられた聞きなれた声に揃って振り返った。
「あ、アキト!」
そこにいたのは俺達と同じく手を繋いだまま歩いていた、クリスさんとカーディだった。
「え、カーディ?クリスさんも?」
「こんばんはー!こんな所で会えるなんてなー」
「うん、こんばんは。偶然だね…ってあれ?今日は宿に帰れないかもって言ってなかった?」
たしか近くの街の親戚に馬車に乗って会いに行くんだって言ってたよね。だから帰ってくるのは数日後になるかもしれないけど、心配しないでって言われてたんだ。
ゆるりと首を傾げて尋ねた俺の疑問に、クリスさんは笑顔で答えてくれた。
「その予定だったんですが…トリク祭りで色々と予定が狂ったんですよ」
「トリク祭りで?」
「ええ、良い方にですけどね」
「そうそう、クリスの親戚がみーんなトリク祭り目当てでイーシャルに来てたからさ、俺との顔合わせも一瞬で終わったんだ」
本来なら護衛付きの貸し切り馬車に乗っていくつかの街を巡る予定だったらしいんだけど、それが一瞬で終わってしまったらしい。
「ああ、そういう事か。それは幸運だったな」
ハルが笑って話しかければ、クリスさんも満足そうに笑って答えた。
「そうですね、かなり運が良かったです」
「ほんとになー」
ニコニコと笑い合うカーディとクリスに、俺とハルも思わず笑みを浮かべた。
「ところで、お二人はもう夕食は済んでるんですか?」
「ああ、俺達はもう済ませたよ。そっちは?」
「俺達も、もう食事は済ませたぞ」
屋台でいっぱい買って食べたんだと笑って教えてくれるカーディを、クリスさんは優しい笑みを浮かべて見守っている。
「それで…お二人のこれからの予定は?」
「もうそろそろ黄昏の館に戻ろうかって話してた所だけど」
「ああ、それならちょうど良かった。甘い物があるんですが宿で一緒にいかがですか?」
「いいのか?」
「ええ、もしハルとアキトさんさえ良ければぜひ。ちょっと珍しいものなんですよ」
悪戯っぽく続けたクリスさんの言葉に、ハルはちらりと俺の方へと視線を向けた。どうする?と俺に判断を委ねてくれたのは分かったけれど、俺は返事に詰まってしまった。お誘いは嬉しいけど二人の邪魔になるんじゃないかなと考えてしまった。
「アキト、俺達と一緒にまったり過ごすのは…嫌か?」
しょんぼりとしたカーディに寂しそうにそう聞かれた俺は、大慌てでブンブンと首を振った。
「嫌じゃないよ!」
「よし、じゃあ決まりだなー」
カーディは悪戯っぽく笑ってそう宣言した。一瞬で満面の笑みになったあたり、さっきの表情はわざと作ったものだったのか。いや、まあ俺の背中を押してくれたんだから良いんだけどさ。
「決まりは良いんだが…、どこで食べるんだ?」
どちらかの部屋に行くにしても椅子の数が足りないだろうと、ハルはクリスさんにそう話しかけている。
「それは大丈夫ですよ。黄昏の館には商談用の部屋がありますから、そこを借りれば良いかと」
「ああ、それもそうか」
「賛成ー!」
俺からしたらただ揃って甘い物を食べるためだけに、商談用の部屋を使って良いんだろうか?とちょっとだけ疑問だったけど、どうやら俺以外の三人にとってもは有りみたいだ。
うーん、異世界ギャップだな。
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