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499.それぞれの好物
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俺の大好物のジューシーな鶏肉に似たマルックスのグリルは、期待値を遥かに超えてくる美味しさだった。美味しいーと喜ぶよりも何よりも先に口から飛び出したのは、え、予想以上だという呟きだった。
「確かにこれは美味しいな」
「美味しすぎるよね」
「焼き方がうまいのか、素材が良いのか…いや、それともこの珍しい食べさせ方か?」
自分の分を食べ終えて真剣な顔で分析しているハルの隣で、俺は大き目に切ってもらったマルックスを頬張るともぐもぐと口を動かした。本当に美味しいな。これはお酒にも合いそうだなと思った瞬間、ハルが口を開いた。
「ね、これってお酒にも合いそうだね?」
ハルって心を読む能力とか持ってたっけと聞きたくなる、そんなタイミングでの一言だった。優しいハルの質問に、俺は慌てて手を振った。
「昨日運んでもらっちゃったから、今日はさすがにやめとくよ」
酔っぱらって恋人抱きで運ばれたんだから、さすがにね。
「気にしなくて良いのに」
「え、でも…」
迷惑かけたしと続けた俺に、ハルは優しく笑って首を振った。
「酔ったアキトを運べるのは、俺の特権だろう?俺の伴侶候補様?」
特権って嬉しい事にだけ使う言葉じゃなかったっけ。そう思った俺は、思わずハルの顔をまじまじと見つめてしまった。
「えー…特権って本気でそう思ってる?」
「アキトに嘘は吐かないよ?」
もし他の人に恋人抱きで運ばれたら、絶対に嫉妬するけどねとハルは笑って続ける。
「いやいや、もしハルがいなかったらあそこまで油断して飲まないよ」
だって元の世界でも俺は結構酒に強かったし、酔いつぶれたのなんて実家で家族と飲んだ時ぐらいだ。そう答えれば、ハルの笑みは更に深くなった。
「よし、次に店員が来たらお酒も頼もう、ね?」
「うん、ありがと…でも昨日みたいには酔わないように気をつける!」
「だから別に気にしなくて良いのに」
お酒以外にも色んな種類の野菜串や川魚串を挟んで、次に店員さんが運んできてくれたのはハル待望のウカのステーキ串だった。
「ウカのステーキ串だ、いるか?」
「ああ、大きめで頼む」
即答したハルの気持ちは、俺にもよくわかる。だってどの串を食べてもこんなに美味しいんだから、ウカのステーキ串も絶対に美味しいよね。
でもまだ果物串を食べたい俺は、視線で促してきた店員さんに元気に答えた。
「俺は普通でお願いします」
「分かった」
二人分のお皿に切り取ったステーキ肉を盛り付けると、店員さんはすぐに部屋から去っていった。
「ハル、食べないの?」
思わず尋ねてしまったのは、まじまじとハルがステーキを見つめていたからだ。
「あ、いや、美味しそうだなと見惚れてた」
恥ずかしそうに苦笑を浮かべたハルの姿に、俺は思わず微笑んだ。ごまかしたりせずに見惚れてたって教えてくれるのも嬉しいし、好物を前にちょっとワクワクしてる様子なのも可愛い。
「食べよ」
「ああ、そうだな」
二人揃ってステーキを切り分けて口に運べば、一気にじゅわりと肉汁があふれ出てくる。しっかりと濃いめに味付けがされているのが、肉の味を引き立てていて本当に美味しい。
「美味しいっ!」
「……」
思わず叫んだ俺と違って、ハルは何故か無言のままだった。あれ?と思ってちらりと視線を向けると、ハルは目をキラキラと輝かせながら嬉しそうな笑みを浮かべていた。うん、その笑顔だけですっごい美味しかったんだなってすぐに伝わってくるよ。
「味付けが濃いのがお肉に合ってるね」
「ああ…これは、すごいな」
もっと食べたいなと呟いたハルは、串丸ごとだとどれぐらいの大きさなんだろうなと呟いている。うんうん、ハルが美味しそうに食べてる所は俺もぜひ見たいから、串ごとお代わりしてくれて良いんだよ。
「後で店員さんに聞いてみたら?」
「ああ、そうだな」
串を片手に店員さんが来てくれるのは、もう何度目かな。回数も途中までは数えてたんだけど、もう何度目かはよく分からない。
肉の種類はもちろん部位まで全然違う物があったし、でっかい川魚から小さい貝まで海鮮も種類豊富だった。結局ハルは途中でステーキ串を追加したけど、普通のお店の二人前ぐらいの大きさがあったのにペロッと完食してたよ。
今は二人揃って焼いた果物を食べてるんだけど、これがもう予想以上の美味しさで驚きしかなかった。普通に焼いてない状態でなら食べたことのある果物なのに、全くの別物だと思うぐらいに進化してたんだ。
「焼いた果物ってこんなに美味しいんだ」
「ああ、さすがにこれは驚いたな」
「でもどれも美味しかったね」
「ああ、アッシュには感謝しないとな」
俺達はちらりと視線を交わしてから、そっと口を開いた。
「「ごちそうさまでした」」
いただきますと同じく、二人の声は綺麗に重なった。
「確かにこれは美味しいな」
「美味しすぎるよね」
「焼き方がうまいのか、素材が良いのか…いや、それともこの珍しい食べさせ方か?」
自分の分を食べ終えて真剣な顔で分析しているハルの隣で、俺は大き目に切ってもらったマルックスを頬張るともぐもぐと口を動かした。本当に美味しいな。これはお酒にも合いそうだなと思った瞬間、ハルが口を開いた。
「ね、これってお酒にも合いそうだね?」
ハルって心を読む能力とか持ってたっけと聞きたくなる、そんなタイミングでの一言だった。優しいハルの質問に、俺は慌てて手を振った。
「昨日運んでもらっちゃったから、今日はさすがにやめとくよ」
酔っぱらって恋人抱きで運ばれたんだから、さすがにね。
「気にしなくて良いのに」
「え、でも…」
迷惑かけたしと続けた俺に、ハルは優しく笑って首を振った。
「酔ったアキトを運べるのは、俺の特権だろう?俺の伴侶候補様?」
特権って嬉しい事にだけ使う言葉じゃなかったっけ。そう思った俺は、思わずハルの顔をまじまじと見つめてしまった。
「えー…特権って本気でそう思ってる?」
「アキトに嘘は吐かないよ?」
もし他の人に恋人抱きで運ばれたら、絶対に嫉妬するけどねとハルは笑って続ける。
「いやいや、もしハルがいなかったらあそこまで油断して飲まないよ」
だって元の世界でも俺は結構酒に強かったし、酔いつぶれたのなんて実家で家族と飲んだ時ぐらいだ。そう答えれば、ハルの笑みは更に深くなった。
「よし、次に店員が来たらお酒も頼もう、ね?」
「うん、ありがと…でも昨日みたいには酔わないように気をつける!」
「だから別に気にしなくて良いのに」
お酒以外にも色んな種類の野菜串や川魚串を挟んで、次に店員さんが運んできてくれたのはハル待望のウカのステーキ串だった。
「ウカのステーキ串だ、いるか?」
「ああ、大きめで頼む」
即答したハルの気持ちは、俺にもよくわかる。だってどの串を食べてもこんなに美味しいんだから、ウカのステーキ串も絶対に美味しいよね。
でもまだ果物串を食べたい俺は、視線で促してきた店員さんに元気に答えた。
「俺は普通でお願いします」
「分かった」
二人分のお皿に切り取ったステーキ肉を盛り付けると、店員さんはすぐに部屋から去っていった。
「ハル、食べないの?」
思わず尋ねてしまったのは、まじまじとハルがステーキを見つめていたからだ。
「あ、いや、美味しそうだなと見惚れてた」
恥ずかしそうに苦笑を浮かべたハルの姿に、俺は思わず微笑んだ。ごまかしたりせずに見惚れてたって教えてくれるのも嬉しいし、好物を前にちょっとワクワクしてる様子なのも可愛い。
「食べよ」
「ああ、そうだな」
二人揃ってステーキを切り分けて口に運べば、一気にじゅわりと肉汁があふれ出てくる。しっかりと濃いめに味付けがされているのが、肉の味を引き立てていて本当に美味しい。
「美味しいっ!」
「……」
思わず叫んだ俺と違って、ハルは何故か無言のままだった。あれ?と思ってちらりと視線を向けると、ハルは目をキラキラと輝かせながら嬉しそうな笑みを浮かべていた。うん、その笑顔だけですっごい美味しかったんだなってすぐに伝わってくるよ。
「味付けが濃いのがお肉に合ってるね」
「ああ…これは、すごいな」
もっと食べたいなと呟いたハルは、串丸ごとだとどれぐらいの大きさなんだろうなと呟いている。うんうん、ハルが美味しそうに食べてる所は俺もぜひ見たいから、串ごとお代わりしてくれて良いんだよ。
「後で店員さんに聞いてみたら?」
「ああ、そうだな」
串を片手に店員さんが来てくれるのは、もう何度目かな。回数も途中までは数えてたんだけど、もう何度目かはよく分からない。
肉の種類はもちろん部位まで全然違う物があったし、でっかい川魚から小さい貝まで海鮮も種類豊富だった。結局ハルは途中でステーキ串を追加したけど、普通のお店の二人前ぐらいの大きさがあったのにペロッと完食してたよ。
今は二人揃って焼いた果物を食べてるんだけど、これがもう予想以上の美味しさで驚きしかなかった。普通に焼いてない状態でなら食べたことのある果物なのに、全くの別物だと思うぐらいに進化してたんだ。
「焼いた果物ってこんなに美味しいんだ」
「ああ、さすがにこれは驚いたな」
「でもどれも美味しかったね」
「ああ、アッシュには感謝しないとな」
俺達はちらりと視線を交わしてから、そっと口を開いた。
「「ごちそうさまでした」」
いただきますと同じく、二人の声は綺麗に重なった。
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