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481.元気な少年
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「はい、じゃあこれうけとって!」
にっこりと笑った少年は大事にしてねと言いながら、カゴの中から慎重な手つきでリボン付きのトリクの造花を取り出した。
「ああ、ありがとう」
めいっぱい伸ばされた小さな手から二つのトリクの花を受け取ったハルは、そのうちの一つを迷いなく俺の胸元のポケットに差し込んだ。下を向くとちょうど視界に入ってくる位置だ。
うーん、それにしても見れば見るほど本物みたいに見えるな。リボン付きだから俺が付けるにはちょっと可愛らしすぎるような気もするけど、お祭りだから気にしなくて良いかな。
もう一つはどうするんだろうとじっと見つめていると、ハルはニコリと俺に笑いかけてから自分の胸ポケットにすっと差し込んだ。
うわぁ、似合う。すっごく似合う。可愛らしすぎるかなーとか心配してたあのリボンまで、ハルが付けるると完璧に溶け込んで見えるんだから不思議だ。王子様顔だからなのかな?それとも格好良い人は何を付けても格好良いのか?
ハルは俺の胸元のトリクの造花をちらりと見ると、ふわりと笑みを浮かべた。
「アキト、すごく似合ってるよ」
いやいや、俺よりも絶対にハルの方が似合ってるよ。そう思ったけど、言葉にはしなかった。せっかくハルが褒めてくれてるんだから、否定したくないしね。俺も笑みを浮かべると、そっと口を開いた。
「ありがと、ハルもすっごく似合ってる!」
「そうかな?」
「うん、似合ってる」
俺達のやりとりを満足気に見守っていた少年は、控えめにじゃあと声を上げた。
「ぼくいくね。かってくれてありがとー、おにーさんたち!」
「あ、ちょっと待って」
ハルがそう声をかけると、少年は不思議そうな表情を浮かべたまま立ち止まった。ハルはそっと顔を寄せてくると、俺の耳元で囁いた。
「ごめん、アキト。さっき買った果物飴の袋一つ使っても良い?」
「あ、うん!もちろん」
俺は慌てて魔道収納鞄から、果物飴の袋を取り出した。色んな種類の入ったカラフルな袋を受け取ったハルは、その袋をそっと少年の目の前に差し出した。
「これ、受け取ってくれるかな?」
「え、いや、こんなのもらえないよ?」
少年は眉を下げた表情のまま続けた。
「おかねはもうもらったし、これってたかいやつでしょ?」
やったーとすぐに受け取らないあたりしっかりしてるな。感心しながら少年の返事を聞いていると、ハルはそっとその場にしゃがみこみ少年の目をしっかりと覗き込んだ。
あ、視線の高さを合わせるんだなと、俺も後ろで一緒になってしゃがみこむ。
「いや、これはこの素敵な花へのお礼の品なんだ。だからぜひ受け取って欲しい」
「おれい?」
「ああ、この特別なトリクの花を売って貰ったからね」
「でも…」
おかねはもらったしと呟く少年に、ハルは優しい声で語りかける。
「実は俺達はついこのまえ、伴侶候補になったばかりなんだ」
「え、そうなの?」
「だから少年に特別な花をお勧めしてもらえて…すごく嬉しかった」
「そっか、おにーさんも嬉しかった?」
ちらりと俺を見つめて尋ねた少年に、慌てて頷きを返す。
「うん、すごく嬉しかったよ」
「だから、これはお姉さんと一緒に食べて」
お姉さんと一緒にと言われて、躊躇していた少年はようやく手を開いてくれた。ハルがすかさずその小さな手の上に果物飴の袋を乗せた。
「っ!ありがとー!」
キラキラした目で手の上の果物飴を見つめる少年に、自然と笑顔になってしまう。
「こちらこそありがとう」
「うん、綺麗なお花ありがとう。お姉さんにもお礼言っておいてくれる?」
俺とハルのお礼の言葉に、少年は照れくさそうな笑みをこぼした。
「うん、ちゃんというね!」
「よろしくね」
「頼んだ」
「うん、じゃあまたねーきれーなおにーさんたち!」
あ、なるほど。ハルもきれーなおにーさん扱いだったんだななんて考えている内に、少年は元気に駆け出した。
さっきよりも人が増えたような気がする道に、少年はすこしの躊躇もなく突っ込んでいく。
大丈夫かなとハラハラしながら見守っていたんだけど、俺なんかよりもよっぽど慣れた様子で、少年は人混みの中に消えて行った。
「わー俺より人混みに慣れてる…」
思わずそう呟いた俺の言葉に、ハルはブハッと思いっきり噴き出した。
にっこりと笑った少年は大事にしてねと言いながら、カゴの中から慎重な手つきでリボン付きのトリクの造花を取り出した。
「ああ、ありがとう」
めいっぱい伸ばされた小さな手から二つのトリクの花を受け取ったハルは、そのうちの一つを迷いなく俺の胸元のポケットに差し込んだ。下を向くとちょうど視界に入ってくる位置だ。
うーん、それにしても見れば見るほど本物みたいに見えるな。リボン付きだから俺が付けるにはちょっと可愛らしすぎるような気もするけど、お祭りだから気にしなくて良いかな。
もう一つはどうするんだろうとじっと見つめていると、ハルはニコリと俺に笑いかけてから自分の胸ポケットにすっと差し込んだ。
うわぁ、似合う。すっごく似合う。可愛らしすぎるかなーとか心配してたあのリボンまで、ハルが付けるると完璧に溶け込んで見えるんだから不思議だ。王子様顔だからなのかな?それとも格好良い人は何を付けても格好良いのか?
ハルは俺の胸元のトリクの造花をちらりと見ると、ふわりと笑みを浮かべた。
「アキト、すごく似合ってるよ」
いやいや、俺よりも絶対にハルの方が似合ってるよ。そう思ったけど、言葉にはしなかった。せっかくハルが褒めてくれてるんだから、否定したくないしね。俺も笑みを浮かべると、そっと口を開いた。
「ありがと、ハルもすっごく似合ってる!」
「そうかな?」
「うん、似合ってる」
俺達のやりとりを満足気に見守っていた少年は、控えめにじゃあと声を上げた。
「ぼくいくね。かってくれてありがとー、おにーさんたち!」
「あ、ちょっと待って」
ハルがそう声をかけると、少年は不思議そうな表情を浮かべたまま立ち止まった。ハルはそっと顔を寄せてくると、俺の耳元で囁いた。
「ごめん、アキト。さっき買った果物飴の袋一つ使っても良い?」
「あ、うん!もちろん」
俺は慌てて魔道収納鞄から、果物飴の袋を取り出した。色んな種類の入ったカラフルな袋を受け取ったハルは、その袋をそっと少年の目の前に差し出した。
「これ、受け取ってくれるかな?」
「え、いや、こんなのもらえないよ?」
少年は眉を下げた表情のまま続けた。
「おかねはもうもらったし、これってたかいやつでしょ?」
やったーとすぐに受け取らないあたりしっかりしてるな。感心しながら少年の返事を聞いていると、ハルはそっとその場にしゃがみこみ少年の目をしっかりと覗き込んだ。
あ、視線の高さを合わせるんだなと、俺も後ろで一緒になってしゃがみこむ。
「いや、これはこの素敵な花へのお礼の品なんだ。だからぜひ受け取って欲しい」
「おれい?」
「ああ、この特別なトリクの花を売って貰ったからね」
「でも…」
おかねはもらったしと呟く少年に、ハルは優しい声で語りかける。
「実は俺達はついこのまえ、伴侶候補になったばかりなんだ」
「え、そうなの?」
「だから少年に特別な花をお勧めしてもらえて…すごく嬉しかった」
「そっか、おにーさんも嬉しかった?」
ちらりと俺を見つめて尋ねた少年に、慌てて頷きを返す。
「うん、すごく嬉しかったよ」
「だから、これはお姉さんと一緒に食べて」
お姉さんと一緒にと言われて、躊躇していた少年はようやく手を開いてくれた。ハルがすかさずその小さな手の上に果物飴の袋を乗せた。
「っ!ありがとー!」
キラキラした目で手の上の果物飴を見つめる少年に、自然と笑顔になってしまう。
「こちらこそありがとう」
「うん、綺麗なお花ありがとう。お姉さんにもお礼言っておいてくれる?」
俺とハルのお礼の言葉に、少年は照れくさそうな笑みをこぼした。
「うん、ちゃんというね!」
「よろしくね」
「頼んだ」
「うん、じゃあまたねーきれーなおにーさんたち!」
あ、なるほど。ハルもきれーなおにーさん扱いだったんだななんて考えている内に、少年は元気に駆け出した。
さっきよりも人が増えたような気がする道に、少年はすこしの躊躇もなく突っ込んでいく。
大丈夫かなとハラハラしながら見守っていたんだけど、俺なんかよりもよっぽど慣れた様子で、少年は人混みの中に消えて行った。
「わー俺より人混みに慣れてる…」
思わずそう呟いた俺の言葉に、ハルはブハッと思いっきり噴き出した。
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