480 / 1,179
479.果物飴
しおりを挟む
まだ幽霊だった頃から、ハルは俺の食の好みをしっかりと把握してくれてた。今までハルにお勧めされたもので、これはちょっと合わないかもってなった事なんてただの一度も無いんだよね。
そのハルがここまで言うんだよ?
果物飴を買う事は、俺の中では既に決定事項だ。
「ハル、行こう!お勧めの味があったら教えてね」
「うん、分かった」
ハルに手を引かれて、俺はゆっくりと賑わっている屋台の方へと近づいて行った。
「ねーこれいくらー?」
「それは500グルだよ」
「こっちのは?」
「それは750グル」
「じゃあこれはー?」
「そっちは1000グルだね」
はしゃぐ子どもたちの質問に優しく答えていた女性は、俺たちに気づくとすぐに柔らかい笑みを浮かべた。
「いらっしゃい、ゆっくり選んでね」
子どもたち以外にもたくさんのお客さんがいるのに、ちゃんと全員を見てるんだな。この人すごいな。
感心しながらぺこりと会釈を返した俺は、遠慮なく目の前の飴へと視線を向けた。
遠くから見た時は全くの正体不明だったあの謎の四角は、近くで見ると薄い飴でコーティングされている事がようやく分かった。それぞれの飴の色も違うし、中の果肉の色もバラバラみたいだ。
うーん、どれが何味なのかなんて一々聞けないぐらいの種類があるな。
赤、白、黄色、緑、水色、紫、青にオレンジ。色とりどり過ぎて味の想像もできそうにない。どうしようかなと悩んでいると、子どもたちが楽し気に飴の袋を握りしめて屋台から離れていった。
「お兄さんたち、うちは初めて?」
「ああ」
「そうです」
「自分の好みの果実飴だけを買うって人ももちろんいるんだけど…こういうのも用意してあるんだけど、どうかな?」
そう前置きをした店員さんが教えてくれたのは、あえて色んな味を混ぜて販売しているというコーナーだった。
「なるほど、この売り方は面白いな」
「これなら楽しんで色々食べれそう」
俺とハルの感想を聞いて、店員さんは嬉しそうに笑ってくれた。
「一応ね、色で味が分かるようにって説明の紙もつけてあるのよ」
自慢げに教えてくれた店員さんの言葉に、俺はすぐにハルを見上げた。
「アキトが選んで良いよ」
「えーっと、じゃあ…」
見た目もキラキラしてて綺麗だからお土産にもできそうだし、これなら依頼中とかにも気軽に食べれそうだよね。疲れた時の甘い物ってありだと思うんだ。
悩んだ末に俺はお土産用にいくつかの小袋入りと、自分たち用には大きめの瓶詰めの果物飴をいくつか選んだ。
そんなにいっぱい?と店員さんにはちょっと驚かれてしまったけれど、ハルはそれぐらい買っておいて良いと思うよと笑って頷いてくれた。
屋台を後にした俺達は、道の隅っこで買ったばかりの袋を取り出した。
「どれにする?」
「俺はこの黒いのにしようかな」
「あ、じゃあ俺はこの黄色のにする」
口に入れただけでもふわりと果物の香りが広がった事に、俺は素直に驚いた。
「ん、美味しいね」
「果実飴は舐めても良いけど、噛んでも美味しいよ」
ハルはそう言うと、口の中に放り込んだ飴を軽く嚙み砕いてみせた。こんなに硬そうなのに?と思いながらも軽く歯を当ててみると、薄い飴のコーティングはパリッと簡単に砕けてしまった。途端にぶわりと広がった果汁は本当に生の果物みたいなジューシーさだった。
「わっ、美味しいっ!?」
「驚いた?」
「うん、俺のはさっぱり酸味のある果物みたいだ」
「そうなんだ?黒は思ったよりも甘いな」
店員さんのつけてくれた紙を覗き込んで、二人で黄色と黒の説明を探すのもなんだか宝探し気分ですごく楽しかった。
果物飴はもっと買っても良かったかもしれないな。
そのハルがここまで言うんだよ?
果物飴を買う事は、俺の中では既に決定事項だ。
「ハル、行こう!お勧めの味があったら教えてね」
「うん、分かった」
ハルに手を引かれて、俺はゆっくりと賑わっている屋台の方へと近づいて行った。
「ねーこれいくらー?」
「それは500グルだよ」
「こっちのは?」
「それは750グル」
「じゃあこれはー?」
「そっちは1000グルだね」
はしゃぐ子どもたちの質問に優しく答えていた女性は、俺たちに気づくとすぐに柔らかい笑みを浮かべた。
「いらっしゃい、ゆっくり選んでね」
子どもたち以外にもたくさんのお客さんがいるのに、ちゃんと全員を見てるんだな。この人すごいな。
感心しながらぺこりと会釈を返した俺は、遠慮なく目の前の飴へと視線を向けた。
遠くから見た時は全くの正体不明だったあの謎の四角は、近くで見ると薄い飴でコーティングされている事がようやく分かった。それぞれの飴の色も違うし、中の果肉の色もバラバラみたいだ。
うーん、どれが何味なのかなんて一々聞けないぐらいの種類があるな。
赤、白、黄色、緑、水色、紫、青にオレンジ。色とりどり過ぎて味の想像もできそうにない。どうしようかなと悩んでいると、子どもたちが楽し気に飴の袋を握りしめて屋台から離れていった。
「お兄さんたち、うちは初めて?」
「ああ」
「そうです」
「自分の好みの果実飴だけを買うって人ももちろんいるんだけど…こういうのも用意してあるんだけど、どうかな?」
そう前置きをした店員さんが教えてくれたのは、あえて色んな味を混ぜて販売しているというコーナーだった。
「なるほど、この売り方は面白いな」
「これなら楽しんで色々食べれそう」
俺とハルの感想を聞いて、店員さんは嬉しそうに笑ってくれた。
「一応ね、色で味が分かるようにって説明の紙もつけてあるのよ」
自慢げに教えてくれた店員さんの言葉に、俺はすぐにハルを見上げた。
「アキトが選んで良いよ」
「えーっと、じゃあ…」
見た目もキラキラしてて綺麗だからお土産にもできそうだし、これなら依頼中とかにも気軽に食べれそうだよね。疲れた時の甘い物ってありだと思うんだ。
悩んだ末に俺はお土産用にいくつかの小袋入りと、自分たち用には大きめの瓶詰めの果物飴をいくつか選んだ。
そんなにいっぱい?と店員さんにはちょっと驚かれてしまったけれど、ハルはそれぐらい買っておいて良いと思うよと笑って頷いてくれた。
屋台を後にした俺達は、道の隅っこで買ったばかりの袋を取り出した。
「どれにする?」
「俺はこの黒いのにしようかな」
「あ、じゃあ俺はこの黄色のにする」
口に入れただけでもふわりと果物の香りが広がった事に、俺は素直に驚いた。
「ん、美味しいね」
「果実飴は舐めても良いけど、噛んでも美味しいよ」
ハルはそう言うと、口の中に放り込んだ飴を軽く嚙み砕いてみせた。こんなに硬そうなのに?と思いながらも軽く歯を当ててみると、薄い飴のコーティングはパリッと簡単に砕けてしまった。途端にぶわりと広がった果汁は本当に生の果物みたいなジューシーさだった。
「わっ、美味しいっ!?」
「驚いた?」
「うん、俺のはさっぱり酸味のある果物みたいだ」
「そうなんだ?黒は思ったよりも甘いな」
店員さんのつけてくれた紙を覗き込んで、二人で黄色と黒の説明を探すのもなんだか宝探し気分ですごく楽しかった。
果物飴はもっと買っても良かったかもしれないな。
173
お気に入りに追加
4,204
あなたにおすすめの小説
悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
*
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。
桜月夜
BL
前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。
思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。

その捕虜は牢屋から離れたくない
さいはて旅行社
BL
敵国の牢獄看守や軍人たちが大好きなのは、鍛え上げられた筋肉だった。
というわけで、剣や体術の訓練なんか大嫌いな魔導士で細身の主人公は、同僚の脳筋騎士たちとは違い、敵国の捕虜となっても平穏無事な牢屋生活を満喫するのであった。

不遇聖女様(男)は、国を捨てて闇落ちする覚悟を決めました!
ミクリ21
BL
聖女様(男)は、理不尽な不遇を受けていました。
その不遇は、聖女になった7歳から始まり、現在の15歳まで続きました。
しかし、聖女ラウロはとうとう国を捨てるようです。
何故なら、この世界の成人年齢は15歳だから。
聖女ラウロは、これからは闇落ちをして自由に生きるのだ!!(闇落ちは自称)

婚約破棄されたショックで前世の記憶&猫集めの能力をゲットしたモブ顔の僕!
ミクリ21 (新)
BL
婚約者シルベスター・モンローに婚約破棄されたら、そのショックで前世の記憶を思い出したモブ顔の主人公エレン・ニャンゴローの話。
竜王陛下、番う相手、間違えてますよ
てんつぶ
BL
大陸の支配者は竜人であるこの世界。
『我が国に暮らすサネリという夫婦から生まれしその長子は、竜王陛下の番いである』―――これが俺たちサネリ
姉弟が生まれたる数日前に、竜王を神と抱く神殿から発表されたお触れだ。
俺の双子の姉、ナージュは生まれる瞬間から竜王妃決定。すなわち勝ち組人生決定。 弟の俺はいつかかわいい奥さんをもらう日を夢みて、平凡な毎日を過ごしていた。 姉の嫁入りである18歳の誕生日、何故か俺のもとに竜王陛下がやってきた!? 王道ストーリー。竜王×凡人。
20230805 完結しましたので全て公開していきます。

公爵家の五男坊はあきらめない
三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。
生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。
冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。
負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。
「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」
都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。
知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。
生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。
あきらめたら待つのは死のみ。
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる