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467.【ハル視点】灯りに照らされた夜の街
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まさか行先まで秘密にされるとは想像もしていなかった俺は、手を繋いだまま去っていく二人の背中をただ呆然と見送った。不意打ちで告げられた予想外の言葉に戸惑ってしまたけれど、目が合ったアキトは楽し気に笑っていた。
うん、アキトが楽しめているならそれで良いか。クリスが相手なら、変なところに連れて行かれるかもという心配も無いし。
一瞬でそう割り切った俺は、笑顔を浮かべてアキトに声をかけた。
「アキト、お店は内緒だってさ」
「だね。これはちゃんと追いかけないとだね、ハル」
二人してそんな事をおどけて話しながら、どちらからともなく自然と手を繋ぐ。
「見失わないようにしないと、クリスお勧めのお店に行けなくなるよ」
「それは嫌だなー」
クスクスと笑い合いながら、俺達は少し前を歩くカーディさんとクリスの背中を追って歩き出した。
いくつかの路地を抜けて少し大きな通りまで出ると、そこにはたくさんの人達が行き交っていた。
やっぱり夜の方がイーシャルは人が多いな。夜になると更に人が増えると知っている俺にとってはいつも通りの景色だったけれど、アキトは不思議そうな表情を浮かべていた。
「ね、ハル。何かさ、さっきよりも人が増えてない…?」
「ああ、ここイーシャルは夜も魅力的な街だからね。昼間は仮眠に当ててわざと夜になってから出歩くっていう旅人もいるくらいなんだよ」
そう説明すれば、アキトは興味深そうに行き交う人達を観察し始めた。
「あと、イーシャルはね、魔道具の灯りもトライプールよりも多いんだよ」
「あ、それは俺も思ってたよ」
きちんと数えた事は無いけれど、多分トライプールの二倍ぐらいはあるんじゃないかな。夜になっても明るい。ただそれだけの事だけど、治安も良くなったし行き交う人の数も増えたらしい。
「おーい次はこっちだって言ってるぞーちゃんとついて来れてるか?」
人が増えてきたのにどんどん離されていっている俺達に気づいて、カーディさんは心配そうに声を上げた。
「うん、大丈夫!」
手を振って答えたアキトの隣で、俺も笑顔で手を上げた。
周りを観察してるアキトが可愛くて、ついつい前を行く二人との距離を考えるのを忘れてたな。本気ではぐれてしまったら困ると、俺達はすぐに二人との距離を詰めた。
「ここからが大通りですよ」
「「うわぁ」」
角を曲がった瞬間、アキトとカーディさんの声が綺麗に重なった。
感嘆の声をあげた二人の視線の先にあるのは、底から光で照らし出されたこの街で一番大きな水路だった。内側から青白い光で照らされている水路は、なんとも幻想的な雰囲気を生み出している。
「これもこの街の名物の一つなんだよ」
水路を見つめながら、俺はこっそりとアキトに囁いた。
「は―…これだけ綺麗だったら、そりゃあ名物にもなるよね」
光に照らされている水面が風でゆらりと揺れると、反射した光もまたゆらゆらと揺れた。一心不乱に見つめているアキトの目にまでその光が映りこんでいて、視線が反らせなくなってしまった。
「この水路、カーディはきっと好きだと思ってました」
背後からはそんな二人の会話が聞こえてくるけれど、俺はそちらを見る事もなくただアキトの目を見つめていた。
「ああ、確かにこれは好きだなーどんっと派手な色じゃなくて控え目な光なのがまた、この街に合ってると思う」
「確かに派手な色だと雰囲気台無しになりそうです」
想像したのかふふと笑ったクリスに、カーディさんは急に真剣な声になって話しかけた。
「クリス、ところでこの光って…魔道具なのか?」
「ええ、これは照明の魔導具の応用なんですよ。普通の照明の魔道具と同じくロゲの魔石を使ってるんですが、そこに合わせる素材を変えてあって…」
「そうなのか、じゃあ…」
アキトを見つめたまま背後の会話を流し聞いていたんだが、気づけば二人のやりとりはどんどん専門的な話へと発展していた。恋人や伴侶に人気のこの幻想的な風景の中でする会話がそれかとは思ってしまったけれど、二人とも楽しそうだからまあ良いか。
そんな事を考えていると、俺と同じく背後の会話を聞いていたらしいアキトが不意に俺を見上げてきた。
目が合った瞬間は嬉しそうに笑ってくれたのに、アキトは次の瞬間にはぴたりと動きを止めてしまった。どうしたんだろう?顔色は悪くないななんて考えている間に、じわじわとアキトの頬が赤くなっていく。
ああ、俺に見つめられて照れているだけか。こんなに綺麗な顔立ちで男女問わずにモテそうなのに、初心な所も可愛いんだよな。
「ハル、夕陽の下のトリクの花も綺麗だと思ったけど、この光だと神秘的に見えるね!」
照れているのをごまかすように、明るい声で話しかけてくるアキトもすっごく可愛い。
「うん、確かにそうだね」
「綺麗だねー」
「ああ、アキトと一緒に見てるからか、今まで見たなかで一番綺麗に見えてるよ」
「なっ…え?」
「アキトと一緒だと、景色が変わって見えるんだ。これは俺の本心だよ?」
そおっと耳元に顔を近づけて囁けば、アキトはビクッと身体を揺らした。こういう反応まで俺好みなんだよなぁ。
うん、アキトが楽しめているならそれで良いか。クリスが相手なら、変なところに連れて行かれるかもという心配も無いし。
一瞬でそう割り切った俺は、笑顔を浮かべてアキトに声をかけた。
「アキト、お店は内緒だってさ」
「だね。これはちゃんと追いかけないとだね、ハル」
二人してそんな事をおどけて話しながら、どちらからともなく自然と手を繋ぐ。
「見失わないようにしないと、クリスお勧めのお店に行けなくなるよ」
「それは嫌だなー」
クスクスと笑い合いながら、俺達は少し前を歩くカーディさんとクリスの背中を追って歩き出した。
いくつかの路地を抜けて少し大きな通りまで出ると、そこにはたくさんの人達が行き交っていた。
やっぱり夜の方がイーシャルは人が多いな。夜になると更に人が増えると知っている俺にとってはいつも通りの景色だったけれど、アキトは不思議そうな表情を浮かべていた。
「ね、ハル。何かさ、さっきよりも人が増えてない…?」
「ああ、ここイーシャルは夜も魅力的な街だからね。昼間は仮眠に当ててわざと夜になってから出歩くっていう旅人もいるくらいなんだよ」
そう説明すれば、アキトは興味深そうに行き交う人達を観察し始めた。
「あと、イーシャルはね、魔道具の灯りもトライプールよりも多いんだよ」
「あ、それは俺も思ってたよ」
きちんと数えた事は無いけれど、多分トライプールの二倍ぐらいはあるんじゃないかな。夜になっても明るい。ただそれだけの事だけど、治安も良くなったし行き交う人の数も増えたらしい。
「おーい次はこっちだって言ってるぞーちゃんとついて来れてるか?」
人が増えてきたのにどんどん離されていっている俺達に気づいて、カーディさんは心配そうに声を上げた。
「うん、大丈夫!」
手を振って答えたアキトの隣で、俺も笑顔で手を上げた。
周りを観察してるアキトが可愛くて、ついつい前を行く二人との距離を考えるのを忘れてたな。本気ではぐれてしまったら困ると、俺達はすぐに二人との距離を詰めた。
「ここからが大通りですよ」
「「うわぁ」」
角を曲がった瞬間、アキトとカーディさんの声が綺麗に重なった。
感嘆の声をあげた二人の視線の先にあるのは、底から光で照らし出されたこの街で一番大きな水路だった。内側から青白い光で照らされている水路は、なんとも幻想的な雰囲気を生み出している。
「これもこの街の名物の一つなんだよ」
水路を見つめながら、俺はこっそりとアキトに囁いた。
「は―…これだけ綺麗だったら、そりゃあ名物にもなるよね」
光に照らされている水面が風でゆらりと揺れると、反射した光もまたゆらゆらと揺れた。一心不乱に見つめているアキトの目にまでその光が映りこんでいて、視線が反らせなくなってしまった。
「この水路、カーディはきっと好きだと思ってました」
背後からはそんな二人の会話が聞こえてくるけれど、俺はそちらを見る事もなくただアキトの目を見つめていた。
「ああ、確かにこれは好きだなーどんっと派手な色じゃなくて控え目な光なのがまた、この街に合ってると思う」
「確かに派手な色だと雰囲気台無しになりそうです」
想像したのかふふと笑ったクリスに、カーディさんは急に真剣な声になって話しかけた。
「クリス、ところでこの光って…魔道具なのか?」
「ええ、これは照明の魔導具の応用なんですよ。普通の照明の魔道具と同じくロゲの魔石を使ってるんですが、そこに合わせる素材を変えてあって…」
「そうなのか、じゃあ…」
アキトを見つめたまま背後の会話を流し聞いていたんだが、気づけば二人のやりとりはどんどん専門的な話へと発展していた。恋人や伴侶に人気のこの幻想的な風景の中でする会話がそれかとは思ってしまったけれど、二人とも楽しそうだからまあ良いか。
そんな事を考えていると、俺と同じく背後の会話を聞いていたらしいアキトが不意に俺を見上げてきた。
目が合った瞬間は嬉しそうに笑ってくれたのに、アキトは次の瞬間にはぴたりと動きを止めてしまった。どうしたんだろう?顔色は悪くないななんて考えている間に、じわじわとアキトの頬が赤くなっていく。
ああ、俺に見つめられて照れているだけか。こんなに綺麗な顔立ちで男女問わずにモテそうなのに、初心な所も可愛いんだよな。
「ハル、夕陽の下のトリクの花も綺麗だと思ったけど、この光だと神秘的に見えるね!」
照れているのをごまかすように、明るい声で話しかけてくるアキトもすっごく可愛い。
「うん、確かにそうだね」
「綺麗だねー」
「ああ、アキトと一緒に見てるからか、今まで見たなかで一番綺麗に見えてるよ」
「なっ…え?」
「アキトと一緒だと、景色が変わって見えるんだ。これは俺の本心だよ?」
そおっと耳元に顔を近づけて囁けば、アキトはビクッと身体を揺らした。こういう反応まで俺好みなんだよなぁ。
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