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466.【ハル視点】まさかの寝坊
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「ハル、起きて!」
突然耳に飛び込んできたアキトの慌てた声に、俺は即座に飛び起きた。すぐに周囲を警戒して気配を探ってみたけれど、とりあえず差し迫った危険は無さそうだ。
「アキト!?どうしたの?」
例え危険が無くても、焦っている理由がある筈だ。落ち着けと自分に言い聞かせながらそう尋ねた瞬間、俺はふと気づいた。
さっきアキトは俺に向かって『起きて』と言ったよな?
「クリスさんとカーディさんとのごはんの約束!」
「え…俺…寝てたのか?嘘だろ…?」
「嘘じゃないよ、俺もハルも二人とも寝てた!時間過ぎちゃってる?」
俺は大急ぎで時計の魔道具を取り出すと、すぐに今の時間を確認した。ああ、どうやらもう少しは余裕がありそうだ。
「良かった。アキト、時間は、まだギリギリ大丈夫みたいだよ」
そう告げれば、アキトはふうーと一気に肩の力を抜いた。
「そっか…良かったー!」
起こすと約束していたのに眠ってしまっていた俺を、アキトは少しも責めなかった。それどころか時間が分からなかったから慌ててごめんねと、何故か謝られてしまった。
「ううん、起こすって約束したのに…眠っちゃってた俺が悪い。寝てるアキトの顔を近くで見たいなって思って、隣に寝転がったのが間違いだったよ」
その直後から記憶が無いから、多分すぐに寝落ちしたんだろうな。申し訳ない気持ちで一杯になりながらそう続けた俺に、アキトはブンブンと激しく首を振った。
「いやいや、二人とも疲れてたってだけなんだから、ハルは悪くないよ」
「ありがとう」
アキトは優しいな。でも例えアキトが許してくれても、約束を守れなかったのは事実だ。静かに反省していると、アキトは明るい声で話しかけてきた。
「ねえ、ハル。それよりさ…ほんのちょっとの時間しか眠ってないとは思えないぐらい、すごく身体が軽くなった気がしない?」
俺が気落ちしてると思って、あえて笑顔で声をかけてくれたんだろうな。
「…うん。そう言われれば、俺もそうだな」
アキトの優しい気づかいを無駄にしないように、俺はうっすらと笑みを浮かべて答えた。
「そうだよね!疲れが取れたらお腹も減ってきた気がするし」
「ああ、そうだな」
「よし、じゃあ用意して行こ!時間ギリギリなんでしょう?」
さっとベッドから立ち上がったアキトは、そう言いながら俺の目の前に手をさし伸べてくれた。このままこの手をぐいっと引っ張って抱きしめたい衝動を何とか抑え込んで、俺はアキトの手を借りて起き上がった。
「そうだな、急ごうか」
仮眠したせいで乱れた服装と髪型を大急ぎで整えてから、俺達はすぐに部屋を後にした。
約束していた時間ちょうどに待ち合わせ場所へと辿り着けば、もうクリスとカーディさんはそこで俺達の到着を待っていた。
「待たせてすまない」
「すみません」
「いえ、時間ちょうどですから気にしないで下さい」
クリスはそう言うと、優しく笑ってくれた。
「そうだぞー俺達は明日からの予定相談してたし気にしなくて良い……って、何かアキトの顔色が良くなった気がするな?」
カーディさんって意外に目敏いんだな。まあクリスもそうだなって顔でアキトを観察してるから、疲れてるのに気づいてはいたんだろうけど。
「え、待って。俺って…そんなに顔色悪かったの?」
驚いた様子のアキトがじっと見つめれば、カーディさんもクリスもこくりと頷いてみせた。当然の流れで向けられた視線に、俺もこくりと頷きを返す。
「今はだいぶ元気そうだけどなー何かあった?」
「えっと、多分ちょっと部屋で仮眠したからかな?今はだいぶ疲れが取れた気がする」
元気だよと主張するアキトの姿に、気づけば自然と笑みを浮かべていた。
「では、さっそく行きましょうか」
「ああ、行くか」
「はい!」
「うん、そろそろ腹も減ってきたし行こーぜ」
黄昏の館の店主に優しい笑顔で見送られて、俺達四人は夜のイーシャルの街へと繰り出した。
「それでクリス、今日はこれからどこに行くんだ?」
「それは内緒です」
俺の質問に、クリスは楽し気に悪戯っぽく笑いながら答えた。
「え?内緒って…」
どこに行くのかぐらいは教えて欲しいんだがとクリスを見つめても、返ってくるのは楽し気な笑顔だけだった。
「ハル、大丈夫だぞ。今日はクリスが責任もって案内するーって張り切ってたから」
今日の道案内はクリスにまかせてやってくれと、カーディさんは明るい笑顔で付け加えた。
「ええ、任せて下さい」
クリスはそう言うとカーディさんの手をさらりと握り、行きましょうかと足取りも軽く歩き出した。
突然耳に飛び込んできたアキトの慌てた声に、俺は即座に飛び起きた。すぐに周囲を警戒して気配を探ってみたけれど、とりあえず差し迫った危険は無さそうだ。
「アキト!?どうしたの?」
例え危険が無くても、焦っている理由がある筈だ。落ち着けと自分に言い聞かせながらそう尋ねた瞬間、俺はふと気づいた。
さっきアキトは俺に向かって『起きて』と言ったよな?
「クリスさんとカーディさんとのごはんの約束!」
「え…俺…寝てたのか?嘘だろ…?」
「嘘じゃないよ、俺もハルも二人とも寝てた!時間過ぎちゃってる?」
俺は大急ぎで時計の魔道具を取り出すと、すぐに今の時間を確認した。ああ、どうやらもう少しは余裕がありそうだ。
「良かった。アキト、時間は、まだギリギリ大丈夫みたいだよ」
そう告げれば、アキトはふうーと一気に肩の力を抜いた。
「そっか…良かったー!」
起こすと約束していたのに眠ってしまっていた俺を、アキトは少しも責めなかった。それどころか時間が分からなかったから慌ててごめんねと、何故か謝られてしまった。
「ううん、起こすって約束したのに…眠っちゃってた俺が悪い。寝てるアキトの顔を近くで見たいなって思って、隣に寝転がったのが間違いだったよ」
その直後から記憶が無いから、多分すぐに寝落ちしたんだろうな。申し訳ない気持ちで一杯になりながらそう続けた俺に、アキトはブンブンと激しく首を振った。
「いやいや、二人とも疲れてたってだけなんだから、ハルは悪くないよ」
「ありがとう」
アキトは優しいな。でも例えアキトが許してくれても、約束を守れなかったのは事実だ。静かに反省していると、アキトは明るい声で話しかけてきた。
「ねえ、ハル。それよりさ…ほんのちょっとの時間しか眠ってないとは思えないぐらい、すごく身体が軽くなった気がしない?」
俺が気落ちしてると思って、あえて笑顔で声をかけてくれたんだろうな。
「…うん。そう言われれば、俺もそうだな」
アキトの優しい気づかいを無駄にしないように、俺はうっすらと笑みを浮かべて答えた。
「そうだよね!疲れが取れたらお腹も減ってきた気がするし」
「ああ、そうだな」
「よし、じゃあ用意して行こ!時間ギリギリなんでしょう?」
さっとベッドから立ち上がったアキトは、そう言いながら俺の目の前に手をさし伸べてくれた。このままこの手をぐいっと引っ張って抱きしめたい衝動を何とか抑え込んで、俺はアキトの手を借りて起き上がった。
「そうだな、急ごうか」
仮眠したせいで乱れた服装と髪型を大急ぎで整えてから、俺達はすぐに部屋を後にした。
約束していた時間ちょうどに待ち合わせ場所へと辿り着けば、もうクリスとカーディさんはそこで俺達の到着を待っていた。
「待たせてすまない」
「すみません」
「いえ、時間ちょうどですから気にしないで下さい」
クリスはそう言うと、優しく笑ってくれた。
「そうだぞー俺達は明日からの予定相談してたし気にしなくて良い……って、何かアキトの顔色が良くなった気がするな?」
カーディさんって意外に目敏いんだな。まあクリスもそうだなって顔でアキトを観察してるから、疲れてるのに気づいてはいたんだろうけど。
「え、待って。俺って…そんなに顔色悪かったの?」
驚いた様子のアキトがじっと見つめれば、カーディさんもクリスもこくりと頷いてみせた。当然の流れで向けられた視線に、俺もこくりと頷きを返す。
「今はだいぶ元気そうだけどなー何かあった?」
「えっと、多分ちょっと部屋で仮眠したからかな?今はだいぶ疲れが取れた気がする」
元気だよと主張するアキトの姿に、気づけば自然と笑みを浮かべていた。
「では、さっそく行きましょうか」
「ああ、行くか」
「はい!」
「うん、そろそろ腹も減ってきたし行こーぜ」
黄昏の館の店主に優しい笑顔で見送られて、俺達四人は夜のイーシャルの街へと繰り出した。
「それでクリス、今日はこれからどこに行くんだ?」
「それは内緒です」
俺の質問に、クリスは楽し気に悪戯っぽく笑いながら答えた。
「え?内緒って…」
どこに行くのかぐらいは教えて欲しいんだがとクリスを見つめても、返ってくるのは楽し気な笑顔だけだった。
「ハル、大丈夫だぞ。今日はクリスが責任もって案内するーって張り切ってたから」
今日の道案内はクリスにまかせてやってくれと、カーディさんは明るい笑顔で付け加えた。
「ええ、任せて下さい」
クリスはそう言うとカーディさんの手をさらりと握り、行きましょうかと足取りも軽く歩き出した。
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