生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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459.夜の街

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 三人から温かい目で見つめられた俺は、居心地の悪さに身体を揺らした。

 ハルの視線には慣れてるから良いんだけど、問題はクリスさんとカーディだ。まるで可愛い弟を愛でるみたいな、そんな優しい視線がひどくくすぐったい。一人っ子の俺にとっては、全く馴染みの無い視線だった。

「では、さっそく行きましょうか」

 どんな反応をすれば良いのかと考え込んでいると、クリスさんがそう声をかけてくれた。

「ああ、行くか」
「はい!」
「うん、そろそろ腹も減ってきたし行こーぜ」

 黄昏の館の人に優しい笑顔と共に見送られて、俺達四人は夜のイーシャルの街へと繰り出した。

「それでクリス、今日はこれからどこに行くんだ?」
「それは内緒です」

 ハルの質問に、クリスさんは楽し気に笑いながら答えた。

「え?内緒って…」
「ハル、大丈夫だぞ。今日はクリスが責任もって案内するーって張り切ってたから」

 今日の道案内はクリスにまかせてやってくれと、カーディは明るい笑顔で付け加えた。

「ええ、任せて下さい」

 クリスさんはカーディの手をさらりと握ると、行きましょうかと足取りも軽く歩き出した。

 二人の背中を呆然と見つめていたハルは、次の瞬間楽し気に笑い出した。

「アキト、お店は内緒だってさ」
「だね。これはちゃんと追いかけないとだね、ハル」

 おどけて話しながら、どちらからともなく自然と手を繋ぐ。

「見失わないようにしないと、クリスお勧めのお店に行けなくなるよ」
「それは嫌だなー」

 クスクスと笑い合いながら、俺達は少し前を歩くカーディとクリスさんの背中を追って歩き出した。



 いくつかの路地を抜けて少し大きな通りまで出ると、そこには驚くほどたくさんの人の姿があった。

 今まで行った場所はどこも夜になると多少なりとも人が減ってたと思うんだけど、ここはむしろ行き来する人が一気に増えてるような気がする。これって俺の気のせいなのかな?

「ね、ハル。何かさ、さっきよりも人が増えてない…?」
「ああ、ここイーシャルは夜も魅力的な街だからね。昼間は仮眠に当ててわざと夜になってから出歩くっていう旅人もいるくらいなんだよ」

 そんなハルの説明にぐるりと視線を巡らせてみれば、確かに楽し気に街並みを眺めている人達の姿がちらほらと目についた。

 その甘い空気からして、どうやら伴侶や恋人と一緒にでかけている人が多いみたいだ。イーシャルってデートに人気の場所だったりするのかな。

「あと、イーシャルはね、魔道具の灯りもトライプールよりも多いんだよ」
「あ、それは俺も思ってたよ」

 イーシャルの街並みを照らす魔道具の灯りって、トライプールと比べても明らかに多いんだよね。赤いレンガの可愛らしい建物に暖色系の灯りがすごくよく似合ってるし、夜でも薄暗くて危険な感じがしないんだよね。だからこそ夜に出歩きたくなるのかもしれない。

「おーい次はこっちだって言ってるぞーちゃんとついて来れてるか?」
「うん、大丈夫!」

 人が増えてきたからか心配そうに振り返って声をかけてくれたカーディに、俺はゆるりと手を振って答えた。知らない間にちょっと距離が空いてたみたいだと、俺達は慌てて距離を詰めた。

「ここからが大通りですよ」
「「うわぁ」」

 角を曲がった瞬間、俺とカーディの声が綺麗に重なった。

 俺達の視線の先にあるのは、大通りを通っていると教えてもらったあの大きな水路だった。迷子にならないための目印にと教えられたあの水路が、今は水路自体が底から照らされたようにぼんやりと青白く光っていた。

 これって魔道具とか魔法を使って光らせてるのかな?いや、それともあの水路に使われてる素材が夜になって光るものだったりするとか?

 一体どういう原理で光っているのかなんて、俺には分からない。

 分からないけれど、それでも幻想的な風景についつい見とれてしまった。
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