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439.【ハル視点】アキトとの共闘
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狙いを定めて放ったつぶてを全て叩き落とされたアキトは、驚きに目を見張りながらそっと口を開いた。
「え、今のって…土魔法…だよね…?」
アキトがぽつりとそう呟いた瞬間、ファーレスウルフの周りにいくつもの土塊が浮かび上がった。一瞬の空白の後、未だに呆然としているアキトめがけて、ファーレスウルフは全ての土塊を一斉に発射した。
土魔法で攻撃をされたから、土魔法で反撃する。その行動は俺の予想通りだった。だが例えそれが予想通りであっても、怒りは湧いてくるんだな。
よくもアキトを狙ったな。
俺は土塊とアキトの間に、剣を構えたまま飛び出した。
「ハルッ!?」
心配そうな声が耳に届いたけれど、俺は躊躇わずに剣を振るった。
そんなに心配しなくても大丈夫だよ、アキト。
こいつの魔力制御も確かに大したものだが、今は素早く発動する事を意識したせいかかなり単調な攻撃になってる。こんな攻撃が俺に当たるわけが無いし、アキトにも絶対に当てない。
ファーレスウルフの放った土塊を全て真っ二つに両断し終えると、俺は油断なく剣を構えたまま、わざと挑発的な笑みを浮かべてみせた。
ファーレスウルフは知能もかなり高いからな。こんな分かりやすい挑発も、きちんと通じるだろう。
「……次はこっちの番だな。俺の目の前でアキトを狙った事を絶対に後悔させてやる」
ぼそりと呟いた俺は、気合を入れなおすとすっと剣を構えた。隣に立っていたアキトも既に魔力を練り上げ終えていて、土魔法のつぶてを用意している。本当に頼りになるな。
まだファーレスウルフが動かない事を確認して、俺はそっと口を開いた。
「アキト、ファーレスウルフはフォレストウルフの進化系で、土魔法が使えるBランクの魔物なんだ」
しかもBランクの中でもかなり強い魔物だよと伝えれば、アキトは納得顔で頷いてくれた。
ファーレスウルフは土魔法での遠距離攻撃を繰り出してくる上に、狼種らしい爪や牙を使った近距離攻撃も得意だ。今回は場所が街道だからまだましだが、森の中にいる時だとあの擬態能力のせいで一瞬も目を離せない相手だ。
「確かに、これは強いね」
「ああ、でも…アキトと俺、二人ならいける!」
俺は力強くそう叫ぶと、アキトには何の指示を出さずにただまっすぐに駆け出した。
細かい指示なんて無くても、アキトならきっと大丈夫だ。こんな風に相手を信じて誰かと共闘したのなんて、一体いつぶりだろうな。
少しワクワクしながら駆け出した俺の意を、アキトは正しく汲み取ってくれた。
「いけっ!」
そんな声と共に放たれたつぶては、周りのやつらにはさっきと同じ土魔法に見えたかもしれない。だが俺には分かった。細かい魔力操作をせずに放たれたそのつぶて達は、ファーレスウルフにあっさりと迎撃されていく。
これはおそらくファーレスウルフの意識を俺だけに集中させないためだろうな。当たらないのは想定済みの攻撃だ。
そう予想しながらファーレスウルフめがけて駆けていると、足が急に軽くなった。一気に速度があがり、あっという間に目前にファーレスウルフが迫る。
ああ、このふわりと温かく感じる魔力は、アキトの補助魔法だな。
そうか。土魔法はあえて人目を引くために声を上げながら発動し、補助魔法は無言で素早く発動したのか。無詠唱が使えるアキトならではの作戦だな。
うん、さすがアキトだ。
剣の柄を握る手にぐぐっと力を込めて、俺はファーレスウルフに切りかかった。
「はぁっ!」
アキトのおかげで戦いやすい。高揚する気持ちのままに切りかかったが、それでも緑の体毛に浅い傷しかつかなかった。くそ、想定よりも硬いな。
「ちっ…浅いっ!」
俺がそう叫んで距離を取った瞬間、ファーレスウルフはすぐさま土塊を空中に浮かべた。土魔法での追撃が来るな。今回も全て切り捨ててやると意気込んだ俺の耳に、アキトの声が飛び込んできた
「今度は俺の番だね!」
「え、今のって…土魔法…だよね…?」
アキトがぽつりとそう呟いた瞬間、ファーレスウルフの周りにいくつもの土塊が浮かび上がった。一瞬の空白の後、未だに呆然としているアキトめがけて、ファーレスウルフは全ての土塊を一斉に発射した。
土魔法で攻撃をされたから、土魔法で反撃する。その行動は俺の予想通りだった。だが例えそれが予想通りであっても、怒りは湧いてくるんだな。
よくもアキトを狙ったな。
俺は土塊とアキトの間に、剣を構えたまま飛び出した。
「ハルッ!?」
心配そうな声が耳に届いたけれど、俺は躊躇わずに剣を振るった。
そんなに心配しなくても大丈夫だよ、アキト。
こいつの魔力制御も確かに大したものだが、今は素早く発動する事を意識したせいかかなり単調な攻撃になってる。こんな攻撃が俺に当たるわけが無いし、アキトにも絶対に当てない。
ファーレスウルフの放った土塊を全て真っ二つに両断し終えると、俺は油断なく剣を構えたまま、わざと挑発的な笑みを浮かべてみせた。
ファーレスウルフは知能もかなり高いからな。こんな分かりやすい挑発も、きちんと通じるだろう。
「……次はこっちの番だな。俺の目の前でアキトを狙った事を絶対に後悔させてやる」
ぼそりと呟いた俺は、気合を入れなおすとすっと剣を構えた。隣に立っていたアキトも既に魔力を練り上げ終えていて、土魔法のつぶてを用意している。本当に頼りになるな。
まだファーレスウルフが動かない事を確認して、俺はそっと口を開いた。
「アキト、ファーレスウルフはフォレストウルフの進化系で、土魔法が使えるBランクの魔物なんだ」
しかもBランクの中でもかなり強い魔物だよと伝えれば、アキトは納得顔で頷いてくれた。
ファーレスウルフは土魔法での遠距離攻撃を繰り出してくる上に、狼種らしい爪や牙を使った近距離攻撃も得意だ。今回は場所が街道だからまだましだが、森の中にいる時だとあの擬態能力のせいで一瞬も目を離せない相手だ。
「確かに、これは強いね」
「ああ、でも…アキトと俺、二人ならいける!」
俺は力強くそう叫ぶと、アキトには何の指示を出さずにただまっすぐに駆け出した。
細かい指示なんて無くても、アキトならきっと大丈夫だ。こんな風に相手を信じて誰かと共闘したのなんて、一体いつぶりだろうな。
少しワクワクしながら駆け出した俺の意を、アキトは正しく汲み取ってくれた。
「いけっ!」
そんな声と共に放たれたつぶては、周りのやつらにはさっきと同じ土魔法に見えたかもしれない。だが俺には分かった。細かい魔力操作をせずに放たれたそのつぶて達は、ファーレスウルフにあっさりと迎撃されていく。
これはおそらくファーレスウルフの意識を俺だけに集中させないためだろうな。当たらないのは想定済みの攻撃だ。
そう予想しながらファーレスウルフめがけて駆けていると、足が急に軽くなった。一気に速度があがり、あっという間に目前にファーレスウルフが迫る。
ああ、このふわりと温かく感じる魔力は、アキトの補助魔法だな。
そうか。土魔法はあえて人目を引くために声を上げながら発動し、補助魔法は無言で素早く発動したのか。無詠唱が使えるアキトならではの作戦だな。
うん、さすがアキトだ。
剣の柄を握る手にぐぐっと力を込めて、俺はファーレスウルフに切りかかった。
「はぁっ!」
アキトのおかげで戦いやすい。高揚する気持ちのままに切りかかったが、それでも緑の体毛に浅い傷しかつかなかった。くそ、想定よりも硬いな。
「ちっ…浅いっ!」
俺がそう叫んで距離を取った瞬間、ファーレスウルフはすぐさま土塊を空中に浮かべた。土魔法での追撃が来るな。今回も全て切り捨ててやると意気込んだ俺の耳に、アキトの声が飛び込んできた
「今度は俺の番だね!」
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