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429.クリスさんの決断
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まだまだ褒めたりないとクリスさんとカーディは言い張るし、できればもっと聞きたいなとハルまで一緒になって主張し始める。そんなカオスな状態に、俺は慌てて手を振りながら口を開いた。
「わー!この話は終わり!ここで終わりにしよう!ね?ね?」
必死で言いつのる俺に、三人は顔を見合わせてから仕方ないなと言いたげな苦笑を浮かべた。
「わかったよ、アキト。もう褒めない」
代表してカーディがそう言ってくれたから、俺はホッと息を吐いた。これで褒められ続けるという苦行からは逃げられそうだ。
「なあ、クリス」
ふうと一つ息を吐いたハルは、真剣な表情に変わるとクリスさんにちらりと視線を向けた。
「はい、どうしました?」
「こいつら、どうするつもりなんだ?」
「ああ、そうでしたね」
「依頼人が言うなら、捕縛でも…それ以外でも、俺は何でもするぞ?」
悪そうな笑みを浮かべてわざとらしくそう尋ねるハルは、やっぱりまだかなり怒ってるみたいだ。まあ、俺も怒ってはいるんだけど。
片手に剣を持ったまま放たれたその言葉を、男達は捕縛かそれとも死かと受け取ったみたいだ。震えながら身を寄せ合いつつ、縋るようにクリスさんに視線を向けている。
ハルとクリスさんの会話を聞きながら黙り込んでいたカーディは、その視線を遮るようにクリスさんの前に一歩進むと男達をじろりと睨みつけた。
「未遂とは言え、俺達を襲おうとしてたんだもんなぁ?当然覚悟はあるよな?」
元冒険者だけあって、カーディは筋肉質で大柄だ。そんなカーディが腰の剣に手をかけながら言い放った言葉に、男達は一瞬で顔色を変えた。
「ひっ…!」
「すまなかった…!」
「ご、ごめんなさい」
「こんな依頼、受けるべきじゃなかった!」
冒険者風の衣装の男達が必死になって口々に謝るのを、クリスさんは無表情なまま見つめていた。いつもニコニコしてるクリスさんが、こんなに無表情なのは初めて見たかもしれないな。整った顔立ちのクリスさんが無表情だと、何だか怖さがぐんと増すのはなんでだろう。
「ク、クリス・ストファー!話がしたい…」
震える声でクリスさんに声をかけたのは、依頼人だろう商人風の男だった。
「はい、何でしょうか?ムフィル商会の三男坊さん?」
あ、そこで満面の笑みを浮かべるんだ。商人の男は、大きく目を見開いて固まった。
「な……俺の事を…知っていたのか?」
「ええ、当然お名前もきちんと覚えてますが…聞きたいですか?」
「い、いや、結構だ」
「そうですか…それで言いたい事は何ですか?」
さりげなくハルとカーディが男を警戒する後ろで、俺もこっそりと魔力を練り上げた。もしクリスさんに手出しをするなら、足元に土魔法を打ち込んでやる。
「俺達の襲撃に気づいていたのに…それなのに、そこの二人に助けに行けと指示をしてくれたのか…?」
何で知ってるんだと言いたげに俺達の方を見たクリスさんに、俺はそっとハルを見る事で答えた。ハルは苦笑しながら、小さく片手をあげている。
「ええ、確かにそう言いましたが…それがどうかしましたか?」
「………ありがとう」
え、お礼言うんだ?そう思ったのは俺達だけじゃなかったみたいだ。雇われている男達もハルもカーディも、そしてクリスさんまで、その場にいた全員が呆然と商人風の男を見つめていた。
「もし襲撃犯だからと見捨てられていたら、俺達は誰も生きていなかった…だから、ありがとう」
「あなた面白い人ですね?」
「そうか?そんな事は初めて言われたな」
「あ、一つだけ先に教えておきますね。もしあなたが俺達の命を狙って依頼をしていたなら、私は絶対に助けませんでしたよ」
そこまでお人よしではないですと、クリスさんは笑って続けた。
「ああ、そんな事までバレていたのか…」
「ええ、情報は商人の命ですからね」
「俺の負けだな。俺の命はどうとでもしてくれ。ムフィル商会に賠償を求めても構わない」
ただもし許されるならこいつらの減刑はしてくれると嬉しいなんて付け加える男に、俺達は驚いてしまった。潔いというか、おもったより真面目な堅物だなというか。まあ、だから暴走して依頼なんかしたんだろうけど。
「そうですねぇ…まあ今回は私たちに被害は無いので、あなたを含めて全員見逃してあげます」
「クリス!それは…!」
「カーディ、最後まで聞いてから考えて」
「っ!…分かった」
「ただし今度私たちを狙ってきたら、それが命に関わる依頼であってもなくても全力で叩き潰します。ムフィル商会も当然潰しますし、あなたたちの命の保証もしません」
ああ、これはあなたたちにも適応しますからと、クリスさんは小さくなっている依頼を受けた男達を順番に見つめていった。
「記憶力には自信があるので、しっかりあなたたちの顔は覚えておきますからね」
「わー!この話は終わり!ここで終わりにしよう!ね?ね?」
必死で言いつのる俺に、三人は顔を見合わせてから仕方ないなと言いたげな苦笑を浮かべた。
「わかったよ、アキト。もう褒めない」
代表してカーディがそう言ってくれたから、俺はホッと息を吐いた。これで褒められ続けるという苦行からは逃げられそうだ。
「なあ、クリス」
ふうと一つ息を吐いたハルは、真剣な表情に変わるとクリスさんにちらりと視線を向けた。
「はい、どうしました?」
「こいつら、どうするつもりなんだ?」
「ああ、そうでしたね」
「依頼人が言うなら、捕縛でも…それ以外でも、俺は何でもするぞ?」
悪そうな笑みを浮かべてわざとらしくそう尋ねるハルは、やっぱりまだかなり怒ってるみたいだ。まあ、俺も怒ってはいるんだけど。
片手に剣を持ったまま放たれたその言葉を、男達は捕縛かそれとも死かと受け取ったみたいだ。震えながら身を寄せ合いつつ、縋るようにクリスさんに視線を向けている。
ハルとクリスさんの会話を聞きながら黙り込んでいたカーディは、その視線を遮るようにクリスさんの前に一歩進むと男達をじろりと睨みつけた。
「未遂とは言え、俺達を襲おうとしてたんだもんなぁ?当然覚悟はあるよな?」
元冒険者だけあって、カーディは筋肉質で大柄だ。そんなカーディが腰の剣に手をかけながら言い放った言葉に、男達は一瞬で顔色を変えた。
「ひっ…!」
「すまなかった…!」
「ご、ごめんなさい」
「こんな依頼、受けるべきじゃなかった!」
冒険者風の衣装の男達が必死になって口々に謝るのを、クリスさんは無表情なまま見つめていた。いつもニコニコしてるクリスさんが、こんなに無表情なのは初めて見たかもしれないな。整った顔立ちのクリスさんが無表情だと、何だか怖さがぐんと増すのはなんでだろう。
「ク、クリス・ストファー!話がしたい…」
震える声でクリスさんに声をかけたのは、依頼人だろう商人風の男だった。
「はい、何でしょうか?ムフィル商会の三男坊さん?」
あ、そこで満面の笑みを浮かべるんだ。商人の男は、大きく目を見開いて固まった。
「な……俺の事を…知っていたのか?」
「ええ、当然お名前もきちんと覚えてますが…聞きたいですか?」
「い、いや、結構だ」
「そうですか…それで言いたい事は何ですか?」
さりげなくハルとカーディが男を警戒する後ろで、俺もこっそりと魔力を練り上げた。もしクリスさんに手出しをするなら、足元に土魔法を打ち込んでやる。
「俺達の襲撃に気づいていたのに…それなのに、そこの二人に助けに行けと指示をしてくれたのか…?」
何で知ってるんだと言いたげに俺達の方を見たクリスさんに、俺はそっとハルを見る事で答えた。ハルは苦笑しながら、小さく片手をあげている。
「ええ、確かにそう言いましたが…それがどうかしましたか?」
「………ありがとう」
え、お礼言うんだ?そう思ったのは俺達だけじゃなかったみたいだ。雇われている男達もハルもカーディも、そしてクリスさんまで、その場にいた全員が呆然と商人風の男を見つめていた。
「もし襲撃犯だからと見捨てられていたら、俺達は誰も生きていなかった…だから、ありがとう」
「あなた面白い人ですね?」
「そうか?そんな事は初めて言われたな」
「あ、一つだけ先に教えておきますね。もしあなたが俺達の命を狙って依頼をしていたなら、私は絶対に助けませんでしたよ」
そこまでお人よしではないですと、クリスさんは笑って続けた。
「ああ、そんな事までバレていたのか…」
「ええ、情報は商人の命ですからね」
「俺の負けだな。俺の命はどうとでもしてくれ。ムフィル商会に賠償を求めても構わない」
ただもし許されるならこいつらの減刑はしてくれると嬉しいなんて付け加える男に、俺達は驚いてしまった。潔いというか、おもったより真面目な堅物だなというか。まあ、だから暴走して依頼なんかしたんだろうけど。
「そうですねぇ…まあ今回は私たちに被害は無いので、あなたを含めて全員見逃してあげます」
「クリス!それは…!」
「カーディ、最後まで聞いてから考えて」
「っ!…分かった」
「ただし今度私たちを狙ってきたら、それが命に関わる依頼であってもなくても全力で叩き潰します。ムフィル商会も当然潰しますし、あなたたちの命の保証もしません」
ああ、これはあなたたちにも適応しますからと、クリスさんは小さくなっている依頼を受けた男達を順番に見つめていった。
「記憶力には自信があるので、しっかりあなたたちの顔は覚えておきますからね」
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