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418.川上と川下の船着き場
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お昼を少し過ぎた頃、俺達の乗った船は無事に目的地に到着した。船酔いも無くて快適な船旅だったし、ハルとの思い出もいっぱいできた。いつかまたこの船に乗りたいなと思いながら船を下りたんだけど、目の前の景色に俺は何度も瞬きを繰り返した。
「ああ、やっぱりそうなりますよね」
「そういえば俺もなったなぁ」
クリスさんとカーディの声を聞きながら、俺は隣に立っているハルをじっと見上げた。
「戻ってきた?」
「いや、戻ってきてないよ」
俺の馬鹿みたいな質問にも、ハルは優しい声でそう答えてくれた。
窓からも甲板からも景色は見てたから、川を下ってたのは知ってる。それでもそう聞きたくなるぐらい、目の前の景色があまりにも船に乗り込んだ船着き場に似てたんだ。
「アキト、とりあえず建物から出ようか」
「うん」
あ、そうか。この建物が船に乗るために作られた建物だから、どうしても似てしまうのかな。というか、川上と川下で同じ建物を建てたのかもしれないよね。そう思って建物から出た俺は、今度はポカンと口を開けたまま固まってしまった。
目の前にあるのは色んな建築様式の建物がごちゃまぜで、分かり難すぎる複雑な道がいっぱいあるらしい街だった。
「えーっと…俺達ここまで移動してきたよね?」
「うん、してきたね」
それは保証すると三人が頷いてくれる。
「でもここってさ……ちょっとそっくり過ぎない?」
「そっくりだな」
「ええ、かなり似てますよね」
「かなりというか相当?アキト、俺も最初は戸惑ったよ」
あ、ハルも戸惑った事があるんだ。それを聞いてちょっとだけホッとした。
「なんでこんなに似てるの?」
「船着き場同士で張り合ってるから、かな」
苦笑しながら説明してくれたハルによると、この二つの船着き場はそれぞれ違う人が取り仕切ってるんだって。顔役の二人は別に仲が悪くは無いけれど、それでもお互いに対抗意識があるんだそうだ。
色んな建築様式の建物があって面白いんだと聞いたら、もう一つの船着き場もそれを作ったし、道には迷うけどその分新しい発見が出来るんだと聞いたら、それならうちにもと複雑な道を作ったんだって。
「はぁー…なるほど」
つまりスケールの大きい意地の張り合いが、今もまだ続いてると。
「乗船手続き用の建物に絵が入ったと思ったら、すぐにもう片方にも絵が入りましたからね」
「ああー俺は店の数が均衡してるって聞いたなー」
クリスさんとカーディも楽し気にそんな事を教えてくれた。
「ちなみに昔は、どちらも船着き場って呼ばれてたんだよ」
「ええーでもそれは、さすがに分かり難いよね…」
「うん、かなり分かり難かったよ」
それで今は、川上の船着き場とか川下の船着き場とか呼ばれてるらしい。なんで街の名前をちゃんと考えないんだろう?
「そろそろ移動しようか」
「うん」
ハルの手を握って歩き出したけれど、本当に見れば見るほどそっくりだな。同じ川なんだから当然かもしれないけど、お店で売ってる魚もほとんど一緒なんだよね。まじまじと観察しながら歩いていると、手がくいっと引っ張られた。
「アキト、こっち」
「あ、ごめん。ぼーっとしてた」
「ここは危険じゃないから良いんだけどね、人は多いから気をつけて」
ハルに優しく手を引かれて、船着き場と同じぐらいややこしい高低差のある街中を俺は進んでいく。
「お腹はまだ空いてない?」
「俺はまだ空いてないな」
クリスさんとカーディのおかげで、朝がすっごく豪華だったからね。
「アキトはお腹空いてないって」
ハルはクリスさんを振り向くと、そう声を上げた。
「私もまだいらないですね。カーディは?」
「んー俺もそんなに空いてない」
「そうか。それなら屋台で買った果物とかでも良いかな?珍しい果物とかもあったりする筈だよ」
ハルの提案に、俺とカーディはワクワクしながら思いっきり頷いた。
「ああ、やっぱりそうなりますよね」
「そういえば俺もなったなぁ」
クリスさんとカーディの声を聞きながら、俺は隣に立っているハルをじっと見上げた。
「戻ってきた?」
「いや、戻ってきてないよ」
俺の馬鹿みたいな質問にも、ハルは優しい声でそう答えてくれた。
窓からも甲板からも景色は見てたから、川を下ってたのは知ってる。それでもそう聞きたくなるぐらい、目の前の景色があまりにも船に乗り込んだ船着き場に似てたんだ。
「アキト、とりあえず建物から出ようか」
「うん」
あ、そうか。この建物が船に乗るために作られた建物だから、どうしても似てしまうのかな。というか、川上と川下で同じ建物を建てたのかもしれないよね。そう思って建物から出た俺は、今度はポカンと口を開けたまま固まってしまった。
目の前にあるのは色んな建築様式の建物がごちゃまぜで、分かり難すぎる複雑な道がいっぱいあるらしい街だった。
「えーっと…俺達ここまで移動してきたよね?」
「うん、してきたね」
それは保証すると三人が頷いてくれる。
「でもここってさ……ちょっとそっくり過ぎない?」
「そっくりだな」
「ええ、かなり似てますよね」
「かなりというか相当?アキト、俺も最初は戸惑ったよ」
あ、ハルも戸惑った事があるんだ。それを聞いてちょっとだけホッとした。
「なんでこんなに似てるの?」
「船着き場同士で張り合ってるから、かな」
苦笑しながら説明してくれたハルによると、この二つの船着き場はそれぞれ違う人が取り仕切ってるんだって。顔役の二人は別に仲が悪くは無いけれど、それでもお互いに対抗意識があるんだそうだ。
色んな建築様式の建物があって面白いんだと聞いたら、もう一つの船着き場もそれを作ったし、道には迷うけどその分新しい発見が出来るんだと聞いたら、それならうちにもと複雑な道を作ったんだって。
「はぁー…なるほど」
つまりスケールの大きい意地の張り合いが、今もまだ続いてると。
「乗船手続き用の建物に絵が入ったと思ったら、すぐにもう片方にも絵が入りましたからね」
「ああー俺は店の数が均衡してるって聞いたなー」
クリスさんとカーディも楽し気にそんな事を教えてくれた。
「ちなみに昔は、どちらも船着き場って呼ばれてたんだよ」
「ええーでもそれは、さすがに分かり難いよね…」
「うん、かなり分かり難かったよ」
それで今は、川上の船着き場とか川下の船着き場とか呼ばれてるらしい。なんで街の名前をちゃんと考えないんだろう?
「そろそろ移動しようか」
「うん」
ハルの手を握って歩き出したけれど、本当に見れば見るほどそっくりだな。同じ川なんだから当然かもしれないけど、お店で売ってる魚もほとんど一緒なんだよね。まじまじと観察しながら歩いていると、手がくいっと引っ張られた。
「アキト、こっち」
「あ、ごめん。ぼーっとしてた」
「ここは危険じゃないから良いんだけどね、人は多いから気をつけて」
ハルに優しく手を引かれて、船着き場と同じぐらいややこしい高低差のある街中を俺は進んでいく。
「お腹はまだ空いてない?」
「俺はまだ空いてないな」
クリスさんとカーディのおかげで、朝がすっごく豪華だったからね。
「アキトはお腹空いてないって」
ハルはクリスさんを振り向くと、そう声を上げた。
「私もまだいらないですね。カーディは?」
「んー俺もそんなに空いてない」
「そうか。それなら屋台で買った果物とかでも良いかな?珍しい果物とかもあったりする筈だよ」
ハルの提案に、俺とカーディはワクワクしながら思いっきり頷いた。
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