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414.【ハル視点】温かい気持ち
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既に伴侶持ちの兄弟や同僚達から、話には聞いた事があった。
伴侶候補の儀式をした。一言そう言えば、報告した友人や仕事仲間はもちろん、ただ報告の場に居合わせただけの見知らぬ人にまで盛大にお祝いをされるんだ――と。
そういうものなんだと幸せそうに語るのを、自分には関係ないと聞き流してきたんだけどな。
はからずも今の俺達は、まさに人がたくさんいる場所で伴侶候補の儀式の報告をした事になるわけだ。
「すまない、話が聞こえたんだが…」
そう前置きをして声をかけてきたのは、アキトの後ろの席に座っていた老紳士だった。
「お二人は伴侶候補の儀式をしたんだってね?おめでとう」
「「ありがとうございます」」
お礼の言葉を口にしたアキトと俺の言葉が、ぴったりと重なった。それだけで老紳士は既に息がぴったりだなと楽し気に笑っている。隣に座っていたのはおそらく彼の伴侶なのだろう。その男性も、ふふと控え目に笑ってから口を開いた。
「僕からも、おめでとう。二人がずっと幸せでありますように」
見知らぬ人に祝われると聞いた時はもっと冷やかしのような感じなのかと思っていたんだが、これはそういうのとは全然違うな。本当に心から祝福してくれているのが伝わってきて、じんわりと胸が暖かくなってくる。
「「ありがとうございます」」
アキトと二人でお二人にお礼を言うと、近くのテーブルの人達からも口々にお祝いの言葉が届けられる。
「伴侶候補おめでとう」
「幸せになー」
「お似合いの二人だと思うよ」
「おめでとうー!」
俺達の邪魔にならないようにと配慮しながらも、祝いの言葉を届けてくれる姿に自然と笑みがこぼれた。
全員にお礼の言葉を述べてから椅子に座りなおすと、カーディさんがアキトになあと声をかけた。
「ん?」
「ハルさんとアキトさえ良ければなんだけど…」
「うん?」
「どうしたんだ?」
「腕輪、もっとちゃんと見せてくれないか?」
ワクワクした様子のカーディさんのお願いに、アキトはちらりと俺に視線を向けてきた。
アキトに似合うようにとこだわった腕輪なんだから、むしろぜひ見て欲しいくらいだ。そう思いながらも、俺はアキトに選択肢を委ねた。
「俺は良いけど、アキトは?」
「俺ももちろん良いよ」
腕輪が見やすいようにと考えたのか、アキトはテーブルの上に乗せた手をぐいっとカーディさんの方へと伸ばした。
「触らないから安心してね」
そんな言葉を明らかに俺に向けて口にしたカーディさんに、思わず苦笑してしまった。
「私も良いですか?」
律儀に尋ねてくるクリスに、アキトは笑ってどうぞと答えた。ちらりと俺の方も確認してくるクリスに、俺は軽く頷きを返した。
「うん、見れば見るほど良い腕輪だなー!」
アキトにも俺にもすごく似合ってると、カーディは笑顔で褒めてくれた。
「石も良いですね。お二人にぴったりの色で…」
「だろう?それはかなりこだわったからな」
クリスはこっそりと俺にだけ聞こえる小さな声で、よりによってシャドウバードの魔石にバイオレットシャークの魔石とは驚きですねと呟いた。
「クリス、アキトに石の価値は言うなよ?」
「言うわけがないでしょう?気持ちは分かりますからね」
「ああ、なるほど。クリスも相当こだわったんだろう?」
「当然でしょう」
そんな風に俺とクリスがこそこそと石について語り合っている隣で、アキトはカーディさんとのんびりと会話を楽しんでいた。
「俺達のはこれだ!」
そんな声につられるように視線を向ければ、カーディさんは自分の腕輪をアキトに見せている所だった。
伴侶候補の腕輪と伴侶の指輪をつけているのは知っていたが、そういえばあまり観察した事は無かったな。俺も興味を持って覗いてみれば、そこにある腕輪は俺達のものよりも少し幅広で、表面には細かい図形がびっしりと彫りこまれていた。
「すごい、格好良いね!」
「クリスが自分で模様を描いて作ってもらったらしいんだよ」
「え、そうなの!?」
「全て自分でというわけじゃないんです。これは魔道具作りで使う魔法陣から発想を得てるんですよ」
「それでもすごいです!」
「ありがとう」
「あとはこっちだな」
カーディさんの手が、はまっている指輪を軽く撫でるように動いた。その愛おしそうな触れ方に、俺も早くアキトの指に指輪を贈りたいなと思ってしまった。
「あ、私のも見てください!」
自慢したいですと言いきったクリスも、カーディさんの隣にすっと手を並べる。
カーディさんの指輪についている灰色の石は、アッシュベアの魔石だな。クリスの指輪についている緑の石は多分ドライアドの涙と呼ばれる宝石…だと思う。
クリスも人の事は言えないなと苦笑してしまった。
「すごいね」
「こっちは模様は俺が選んだんだけど、石はクリスが譲らなくてな」
もっと小さい石でも良いと俺は思ったんだけどと笑うカーディさんの横で、誰が見ても分かるぐらいでないと意味が無いでしょうとクリスがボソリと呟いた。
うん、その気持ちはすごく良く分かる。
伴侶候補の儀式をした。一言そう言えば、報告した友人や仕事仲間はもちろん、ただ報告の場に居合わせただけの見知らぬ人にまで盛大にお祝いをされるんだ――と。
そういうものなんだと幸せそうに語るのを、自分には関係ないと聞き流してきたんだけどな。
はからずも今の俺達は、まさに人がたくさんいる場所で伴侶候補の儀式の報告をした事になるわけだ。
「すまない、話が聞こえたんだが…」
そう前置きをして声をかけてきたのは、アキトの後ろの席に座っていた老紳士だった。
「お二人は伴侶候補の儀式をしたんだってね?おめでとう」
「「ありがとうございます」」
お礼の言葉を口にしたアキトと俺の言葉が、ぴったりと重なった。それだけで老紳士は既に息がぴったりだなと楽し気に笑っている。隣に座っていたのはおそらく彼の伴侶なのだろう。その男性も、ふふと控え目に笑ってから口を開いた。
「僕からも、おめでとう。二人がずっと幸せでありますように」
見知らぬ人に祝われると聞いた時はもっと冷やかしのような感じなのかと思っていたんだが、これはそういうのとは全然違うな。本当に心から祝福してくれているのが伝わってきて、じんわりと胸が暖かくなってくる。
「「ありがとうございます」」
アキトと二人でお二人にお礼を言うと、近くのテーブルの人達からも口々にお祝いの言葉が届けられる。
「伴侶候補おめでとう」
「幸せになー」
「お似合いの二人だと思うよ」
「おめでとうー!」
俺達の邪魔にならないようにと配慮しながらも、祝いの言葉を届けてくれる姿に自然と笑みがこぼれた。
全員にお礼の言葉を述べてから椅子に座りなおすと、カーディさんがアキトになあと声をかけた。
「ん?」
「ハルさんとアキトさえ良ければなんだけど…」
「うん?」
「どうしたんだ?」
「腕輪、もっとちゃんと見せてくれないか?」
ワクワクした様子のカーディさんのお願いに、アキトはちらりと俺に視線を向けてきた。
アキトに似合うようにとこだわった腕輪なんだから、むしろぜひ見て欲しいくらいだ。そう思いながらも、俺はアキトに選択肢を委ねた。
「俺は良いけど、アキトは?」
「俺ももちろん良いよ」
腕輪が見やすいようにと考えたのか、アキトはテーブルの上に乗せた手をぐいっとカーディさんの方へと伸ばした。
「触らないから安心してね」
そんな言葉を明らかに俺に向けて口にしたカーディさんに、思わず苦笑してしまった。
「私も良いですか?」
律儀に尋ねてくるクリスに、アキトは笑ってどうぞと答えた。ちらりと俺の方も確認してくるクリスに、俺は軽く頷きを返した。
「うん、見れば見るほど良い腕輪だなー!」
アキトにも俺にもすごく似合ってると、カーディは笑顔で褒めてくれた。
「石も良いですね。お二人にぴったりの色で…」
「だろう?それはかなりこだわったからな」
クリスはこっそりと俺にだけ聞こえる小さな声で、よりによってシャドウバードの魔石にバイオレットシャークの魔石とは驚きですねと呟いた。
「クリス、アキトに石の価値は言うなよ?」
「言うわけがないでしょう?気持ちは分かりますからね」
「ああ、なるほど。クリスも相当こだわったんだろう?」
「当然でしょう」
そんな風に俺とクリスがこそこそと石について語り合っている隣で、アキトはカーディさんとのんびりと会話を楽しんでいた。
「俺達のはこれだ!」
そんな声につられるように視線を向ければ、カーディさんは自分の腕輪をアキトに見せている所だった。
伴侶候補の腕輪と伴侶の指輪をつけているのは知っていたが、そういえばあまり観察した事は無かったな。俺も興味を持って覗いてみれば、そこにある腕輪は俺達のものよりも少し幅広で、表面には細かい図形がびっしりと彫りこまれていた。
「すごい、格好良いね!」
「クリスが自分で模様を描いて作ってもらったらしいんだよ」
「え、そうなの!?」
「全て自分でというわけじゃないんです。これは魔道具作りで使う魔法陣から発想を得てるんですよ」
「それでもすごいです!」
「ありがとう」
「あとはこっちだな」
カーディさんの手が、はまっている指輪を軽く撫でるように動いた。その愛おしそうな触れ方に、俺も早くアキトの指に指輪を贈りたいなと思ってしまった。
「あ、私のも見てください!」
自慢したいですと言いきったクリスも、カーディさんの隣にすっと手を並べる。
カーディさんの指輪についている灰色の石は、アッシュベアの魔石だな。クリスの指輪についている緑の石は多分ドライアドの涙と呼ばれる宝石…だと思う。
クリスも人の事は言えないなと苦笑してしまった。
「すごいね」
「こっちは模様は俺が選んだんだけど、石はクリスが譲らなくてな」
もっと小さい石でも良いと俺は思ったんだけどと笑うカーディさんの横で、誰が見ても分かるぐらいでないと意味が無いでしょうとクリスがボソリと呟いた。
うん、その気持ちはすごく良く分かる。
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