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381.腕輪の謎

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 その場に立ち尽くしていた俺の手を取ると、ハルはそっとソファへと誘導してくれた。さっきのプロポーズの衝撃と、不意打ちで見せられたハルのあまりの格好良さに、まだ俺の心臓はドキドキしたままだ。

 窓の前にあるソファに、ぴったりと二人並んで腰を下ろす。

 窓から差し込む太陽の光を反射して、貰ったばかりの腕輪がキラリと光った。ちらりと視線を向ければハルの手にもお揃いの腕輪がハマっているのが、照れくさいような誰彼かまわず自慢したいようなそんな気分だ。

 綺麗な腕輪をまじまじと見つめていると、自然と笑みが浮かんでしまった。しかも太陽にかざすようにして自分の腕輪を見つめていると、ハルがまた幸せそうに笑ってくれるんだ。だから余計にニコニコしてしまうんだ。

 多分俺、今人生で一番幸せだと思う。

「ハル、この腕輪大事にするね。ありがとう」
「俺こそ貰ってくれてありがとう」

 爽やかに笑って答えたハルの返事に、意表をつかれてしまった俺はぱちぱちと目を瞬いた。ありがとう、どういたしましてじゃないんだ。でもここでありがとうと言ってくれるのも、何だかハルらしい気もするな。

「それにしても、こんなに早くこの腕輪が役に立ってくれるとは思ってなかったよ」
「あ、そうだ!さっきから気になってたんだけどさ…これっていつ用意したの?」

 だって俺最近は基本的に、ずーっとハルと一緒にいたと思うんだよね。こんなものを用意できるようなそんなお店には行ってなかったと思うんだ。それとも普通の雑貨屋とかで、裏取引みたいにして手に入れた物だったりするんだろうか。

 いやでもこの腕輪には俺達の瞳の色が入ってるんだから、既製品とかじゃなくて注文して作って貰ったオーダーメイドだと思うんだよね?

 一体いつの間にどうやって用意してくれたのかと好奇心でワクワクしながら尋ねれば、ハルはそっと目を反らした。

「あー…それね…本当に聞きたい?」
「え?なんで?そんなに言い難い事?」
「えーと…引かれないかなーって俺が心配なだけなんだけど…ね」
「え、いつ用意してくれたのかってだけの話なのに、引くような事なの?」
「うーん…どうだろう?アキトなら笑って許してくれる…のかな?」
「分からないけど、そんな事言われたら逆に気になる…」

 素直にそう伝えれば、言い難そうにしながらもハルは口を開いてくれた。

「俺のためにあの魔法を使ってくれたアキトが、眠ってた間…なんだ」
「あの魔法って…騎士団の?」

 毒で苦しんでたハルに魔法を使った時の話だよねと尋ねれば、ハルはすぐに頷いた。

「うん、アキトのおかげで目覚めた後…その…結婚済みの騎士達から情報収集してね。すぐに仕上げてくれるっていう所に依頼したんだ。だから冒険者として二人で活動した時には、もう持ってたって事になる」
「へーそうなんだ?」

 それってつまりハルはそんなに前から、俺と伴侶になる事を考えてくれてたって事だよな。そう思えば引くどころか素直に嬉しい。

「あのさ…アキト、本当に引かないの?」
「ん?なんで引くの?むしろ俺は嬉しいと思うけど」

 心底不思議に思ってそう尋ねた俺に、ハルはあーと急に大きな声を出した。

「え、どうしたの急に?大丈夫?」
「いや、驚かせてごめん。大丈夫だよ。ただアキトの器の大きさを忘れてたなーと思ってね」
「別に俺は器が大きいとか無いと思うんだけどな」

 生まれつき幽霊が見える以外は、むしろ自分は平凡だと思う。ハルみたいに格好良く無いし、ハルみたいにすっごく強くもないし、器だってきっとハルの方が大きいと思うんだ。

「いいや!恋人になってすぐに伴侶の腕輪を用意するーなんて奴は、普通なら重すぎるとか、その執着が怖いとか言われるものだよ?」

 我ながら言われても仕方ない状況だとは思うけどねと、ハルは自嘲気味に続けた。

「普通とか関係ある?俺はハルがそんなに前から俺と伴侶になりたいって思ってくれてたって知れてすっごく嬉しいよ!」

 にっこりと笑って告げればハルはぐっと唸ってから、顔を赤面させたままうつむいてしまった。格好良いのに、こういう可愛い所も最近は見せてくれて嬉しいんだよな。俺はなでなでとハルの頭を撫でた。

「あー…そうだ…アキトは男前なんだよなぁ」

 ぼそぼそと口の中で何かを呟いたハルは、頬を赤くしたままそれでも幸せそうに笑ってくれた。
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