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366.ハルの弁解
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ぎゅぎゅっと俺の体を抱きしめたハルは、そのまま両腕の中に俺を閉じ込めたままかすかに震える声で話し出した。
「アキト、ごめん。傷つけてごめん。誤解させてごめんね。これは正真正銘俺と血の繋がった実の兄なんだ…」
「ねえ、さすがにお兄ちゃん捕まえてこれ扱いはひどくない?」
ハルのお兄さんは苦笑しながらもそう言っていたけれど、ハルはそちらには見向きもせずに続けた。完全に無視された状況だけど、何故かお兄さんは楽し気にハルを観察している。
「うちの家族は昔からこういう触れ合いが多い家なんだ。それが当然だと思って育ってきたから、その…家族に対してだけは咄嗟に拒否できないというか…いや、こんなのはただの言い訳だな。悪いのは間違いなく俺だ」
本当にごめんなさいと更に言葉が降ってきた。
「あの…」
「先にこれだけは言っておきたいんだけど――相手が例え誰であっても、俺は身内とアキト以外には絶対にこんな風に簡単に抱き着かせたりしないからね?」
ハルはそう言うなり、必死な表情で目線を合わせてきた。
「俺の剣と、それにアキトに誓って約束する」
「あのさ…ハル?」
「アキトが嫌だって言うなら、身内にだってもう抱き着かせないようにするから、だから…別れるなんて言わないで?」
見上げれば紫の綺麗な瞳が、心配そうに揺れながら俺を見下ろしていた。
「さっきから言おうと思ってたんだけど」
「…うん」
なんでハルは断罪されるみたいな空気感なんだろう。俺から別れるなんて言うわけ無いのに。
「まさかお兄さんだと思わなかったから、ハルの元恋人とかなのかなとは疑ってたけど、別れたいなんて言わないよ?だって今の恋人は俺だし」
例えどれだけ二人がお似合いに見えても、ハルが俺の事を大事に思ってくれている事実は変わらないんだから俺はもっと堂々としないとな。
「アキト…ありがとう」
もう一度きゅっと抱きしめてから俺を解放したハルは、そのまま俺の手を握りしめた。初対面のお兄さんの前だけど、手を離すつもりはないみたいだ。
「はー変われば変わるもんだね」
俺達がひと段落するまで待ってくれていたウィリアムさんは、楽し気に笑って俺とハルを観察していた。
「自分でもびっくりだよ」
「そうだろうね。それよりハルの大事な人、紹介してくれないの?」
そう言って悪戯っぽく笑った笑顔がハルにそっくりで、本当に兄弟なんだなぁと感じた。
「俺の世界で一番大事な人、アキト ヒイラギだ」
幸せそうに笑いながらそんな風に紹介されて、俺は慌てて口を開いた。
「アキトです。よろしくお願いします」
咄嗟にでたのはそれだけだったけれど、お兄さんは笑って手を振ってくれた。
「こちらこそよろしく。ちなみに俺は二番目だよーよく母親似って言われるんだ。目の色だけ父親に似たんだけどね」
柔らかく笑うウィリアムさんの綺麗な紫色の目は、本当にハルにそっくりだ。さっきは動揺してたからお揃いの目の色ってだけで嫉妬しちゃったけど、落ち着いてみれば確かに血のつながりを感じる。
「あの、誤解してすみませんでした」
「いやいや、アキトくんが謝る必要は無いよ」
「そうだよ、本当にごめんね」
「ハルももう謝らなくて良いから」
まだ謝りそうなハルの口を思わず手で押さえれば、ハルは驚いた顔をしてからふにゃりと笑みを浮かべた。
「…ハル、アキトくん」
「はい」
「ウィル兄、どうした?」
「二人のこれからに祝福を」
真剣な表情を浮かべたウィリアムさんから不意に告げられた祝福の言葉に、俺とハルは顔を見合わせた。お互いのびっくり顔を見つめていたら、じわじわと嬉しさが胸いっぱいに広がった。
「ありがとうございます」
「ありがとう」
俺とハルの重なった返事に、ウィリアムさんはにっこりと笑みを浮かべた。
「どういたしまして。二人は息もぴったりだね」
「アキト、ごめん。傷つけてごめん。誤解させてごめんね。これは正真正銘俺と血の繋がった実の兄なんだ…」
「ねえ、さすがにお兄ちゃん捕まえてこれ扱いはひどくない?」
ハルのお兄さんは苦笑しながらもそう言っていたけれど、ハルはそちらには見向きもせずに続けた。完全に無視された状況だけど、何故かお兄さんは楽し気にハルを観察している。
「うちの家族は昔からこういう触れ合いが多い家なんだ。それが当然だと思って育ってきたから、その…家族に対してだけは咄嗟に拒否できないというか…いや、こんなのはただの言い訳だな。悪いのは間違いなく俺だ」
本当にごめんなさいと更に言葉が降ってきた。
「あの…」
「先にこれだけは言っておきたいんだけど――相手が例え誰であっても、俺は身内とアキト以外には絶対にこんな風に簡単に抱き着かせたりしないからね?」
ハルはそう言うなり、必死な表情で目線を合わせてきた。
「俺の剣と、それにアキトに誓って約束する」
「あのさ…ハル?」
「アキトが嫌だって言うなら、身内にだってもう抱き着かせないようにするから、だから…別れるなんて言わないで?」
見上げれば紫の綺麗な瞳が、心配そうに揺れながら俺を見下ろしていた。
「さっきから言おうと思ってたんだけど」
「…うん」
なんでハルは断罪されるみたいな空気感なんだろう。俺から別れるなんて言うわけ無いのに。
「まさかお兄さんだと思わなかったから、ハルの元恋人とかなのかなとは疑ってたけど、別れたいなんて言わないよ?だって今の恋人は俺だし」
例えどれだけ二人がお似合いに見えても、ハルが俺の事を大事に思ってくれている事実は変わらないんだから俺はもっと堂々としないとな。
「アキト…ありがとう」
もう一度きゅっと抱きしめてから俺を解放したハルは、そのまま俺の手を握りしめた。初対面のお兄さんの前だけど、手を離すつもりはないみたいだ。
「はー変われば変わるもんだね」
俺達がひと段落するまで待ってくれていたウィリアムさんは、楽し気に笑って俺とハルを観察していた。
「自分でもびっくりだよ」
「そうだろうね。それよりハルの大事な人、紹介してくれないの?」
そう言って悪戯っぽく笑った笑顔がハルにそっくりで、本当に兄弟なんだなぁと感じた。
「俺の世界で一番大事な人、アキト ヒイラギだ」
幸せそうに笑いながらそんな風に紹介されて、俺は慌てて口を開いた。
「アキトです。よろしくお願いします」
咄嗟にでたのはそれだけだったけれど、お兄さんは笑って手を振ってくれた。
「こちらこそよろしく。ちなみに俺は二番目だよーよく母親似って言われるんだ。目の色だけ父親に似たんだけどね」
柔らかく笑うウィリアムさんの綺麗な紫色の目は、本当にハルにそっくりだ。さっきは動揺してたからお揃いの目の色ってだけで嫉妬しちゃったけど、落ち着いてみれば確かに血のつながりを感じる。
「あの、誤解してすみませんでした」
「いやいや、アキトくんが謝る必要は無いよ」
「そうだよ、本当にごめんね」
「ハルももう謝らなくて良いから」
まだ謝りそうなハルの口を思わず手で押さえれば、ハルは驚いた顔をしてからふにゃりと笑みを浮かべた。
「…ハル、アキトくん」
「はい」
「ウィル兄、どうした?」
「二人のこれからに祝福を」
真剣な表情を浮かべたウィリアムさんから不意に告げられた祝福の言葉に、俺とハルは顔を見合わせた。お互いのびっくり顔を見つめていたら、じわじわと嬉しさが胸いっぱいに広がった。
「ありがとうございます」
「ありがとう」
俺とハルの重なった返事に、ウィリアムさんはにっこりと笑みを浮かべた。
「どういたしまして。二人は息もぴったりだね」
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