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357.【ハル視点】予想外の絶景
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建物と建物の間を縫うように、俺達は四人並んで薄暗い路地を進んで行った。人がすれ違うのもやっとな狭い小道を抜けた瞬間、前を歩いていたアキトとカーディさんが不意に声を上げた。
「「うわぁー…」」
「二人とも、何かありましたか!?」
その声を聞くなり、クリスは慌てた様子で二人の後を追って走り出した。気配探知を使ったままだった俺は危険があるわけじゃないと分かっていた。だから落ち着いていられたんだが、クリスからすれば急な叫び声に驚いたんだろうな。
「って…これはっ…」
クリスの絶句するような声を聞きながら、俺は悠々と路地を抜けた。一気に開けた視界に飛び込んできたのは、雄大なレーウェ川の流れだった。
「ああ…これはすごいな…こんな場所があるなんてさすがに俺も知らなかったな」
屋台の近くまでは何度も来た事があるけれど、その店の裏側にこんな絶景があるなんて想像もしなかった。この辺りは住宅街が集まった場所だ。さっきの屋台以外に店らしき店も無いから、そもそも地元民以外が訪れるような場所では無いし、この辺りを散策した事は無かった。
穏やかな川の流れは、キラキラと太陽の光を反射して輝いている。今まで色々な場所の景色を見てきたけれど、これは本当に美しいと思える景色だな。
いやそれとも俺が変わったから、こんなにも美しく思えるんだろうか。素直に景色に感動するアキトと出会ってから、今まで何とも思っていなかった景色がより綺麗に見える気がするんだよな。
川を眺めながらそんな事をぼんやり考えていたら、アキトがぽつりと呟いた。
「すごい…綺麗な景色…」
「時間つぶしに川でも眺めてろって言ってたが…そういうレベルじゃないよな…これ?」
カーディさんの言葉に、クリスも川を見つめたまま答える。
「ええ、何なら観光客からお金を取れるぐらいの絶景だと思います」
そういう所は商人の考え方なんだなと、俺は思わず笑ってしまった。
「よっぽどカーディさんとクリスの言葉が嬉しかったんだろうな」
思わずそう声をかければ、カーディは不思議そうに俺を見つめてきた。あまり見つめないでくれ、クリスの視線が怖いから。
「え?でもあれだけ美味い店なら言われ慣れてるだろう?」
「いや、逆にいつも混んでるから、味の感想を言ってくれる客は少ないんじゃないか?」
そんな話を実家が人気の料理屋だという後輩騎士から聞いた事があったから、軽い気持ちでそう口にしたがクリスもカーディさんもなるほどと納得している。
「ああ、確かに。いつもは買ったらすぐに屋台の前から離れますね」
「あー…確かに次の客の邪魔になるからって、いつも受け取ったらすぐ離れるな。感想言った事ないかもしれない」
「褒められて嬉しくない人はいないだろう。しかもあんな風に裏表なく、心から褒められたらな」
あれだけ褒められたら、慣れていない店主には衝撃だったと思う。そう告げれば、俺の言葉は何故かクリスの琴線に触れたらしい。
「ええ、カーディには裏表なんて全くありませんからね!カーディが心からの感想を素直に伝えたからこそ、あの店主の心を動かしたんですね!つまりこの景色はカーディのおかげと言っても過言では…」
急に勢いづいてカーディさんの良さについて語りだしたクリスの口を、カーディさんは慣れた様子でパシリと片手で塞いだ。そのままキスでもするのかと言うぐらい、ぐいっと顔を近づける。
「クリス、そういうのは昨日で終わりにしたはずだ」
「むーむー」
「もう言うなよ?分かったか?」
ジロッと睨みつけながら低い声で尋ねるカーディさんに、クリスは口を塞がれたままこくこくと素直に頷いている。カーディさんの耳は真っ赤だし、クリスが満面の笑みなのがはたから見ていると少し面白い。
「面白い二人だな」
そう言いながら俺はアキトの隣に並ぶと、そっとその手を握った。二人のやりとりを見ていたら何となくアキトと手を繋ぎたくなった。ただそれだけの行動だったけど、アキトは嬉しそうに笑ってみせた。
「うん、お似合いの二人だね」
「まあな…でも、俺達だってお似合いの恋人同士だろう?」
悪戯っぽく笑いながらそう話しかければ、アキトはきょとんと俺の顔を見上げてきた。すぐに同意してくれるかと思ったのに、黙ったまま固まってしまったな。
アキトの元の世界では男性同士の恋愛は一般的では無いと言っていたから、もしかしてその影響でもあるんだろうか。生まれ持った考え方を変えるのは簡単な事ではないと知っているし、無理強いをするつもりはないけれど。
そんな事を考えていた俺に、アキトはにっこりと微笑んでから口を開いた。
「うん、俺達もお似合いだよね」
じっくり考えた上での答えが同意だった事が、たまらなく嬉しい。これからもアキトにふさわしいと周りにも認めさせられるように、頑張っていこうと俺は密かに決意を新たにした。
「「うわぁー…」」
「二人とも、何かありましたか!?」
その声を聞くなり、クリスは慌てた様子で二人の後を追って走り出した。気配探知を使ったままだった俺は危険があるわけじゃないと分かっていた。だから落ち着いていられたんだが、クリスからすれば急な叫び声に驚いたんだろうな。
「って…これはっ…」
クリスの絶句するような声を聞きながら、俺は悠々と路地を抜けた。一気に開けた視界に飛び込んできたのは、雄大なレーウェ川の流れだった。
「ああ…これはすごいな…こんな場所があるなんてさすがに俺も知らなかったな」
屋台の近くまでは何度も来た事があるけれど、その店の裏側にこんな絶景があるなんて想像もしなかった。この辺りは住宅街が集まった場所だ。さっきの屋台以外に店らしき店も無いから、そもそも地元民以外が訪れるような場所では無いし、この辺りを散策した事は無かった。
穏やかな川の流れは、キラキラと太陽の光を反射して輝いている。今まで色々な場所の景色を見てきたけれど、これは本当に美しいと思える景色だな。
いやそれとも俺が変わったから、こんなにも美しく思えるんだろうか。素直に景色に感動するアキトと出会ってから、今まで何とも思っていなかった景色がより綺麗に見える気がするんだよな。
川を眺めながらそんな事をぼんやり考えていたら、アキトがぽつりと呟いた。
「すごい…綺麗な景色…」
「時間つぶしに川でも眺めてろって言ってたが…そういうレベルじゃないよな…これ?」
カーディさんの言葉に、クリスも川を見つめたまま答える。
「ええ、何なら観光客からお金を取れるぐらいの絶景だと思います」
そういう所は商人の考え方なんだなと、俺は思わず笑ってしまった。
「よっぽどカーディさんとクリスの言葉が嬉しかったんだろうな」
思わずそう声をかければ、カーディは不思議そうに俺を見つめてきた。あまり見つめないでくれ、クリスの視線が怖いから。
「え?でもあれだけ美味い店なら言われ慣れてるだろう?」
「いや、逆にいつも混んでるから、味の感想を言ってくれる客は少ないんじゃないか?」
そんな話を実家が人気の料理屋だという後輩騎士から聞いた事があったから、軽い気持ちでそう口にしたがクリスもカーディさんもなるほどと納得している。
「ああ、確かに。いつもは買ったらすぐに屋台の前から離れますね」
「あー…確かに次の客の邪魔になるからって、いつも受け取ったらすぐ離れるな。感想言った事ないかもしれない」
「褒められて嬉しくない人はいないだろう。しかもあんな風に裏表なく、心から褒められたらな」
あれだけ褒められたら、慣れていない店主には衝撃だったと思う。そう告げれば、俺の言葉は何故かクリスの琴線に触れたらしい。
「ええ、カーディには裏表なんて全くありませんからね!カーディが心からの感想を素直に伝えたからこそ、あの店主の心を動かしたんですね!つまりこの景色はカーディのおかげと言っても過言では…」
急に勢いづいてカーディさんの良さについて語りだしたクリスの口を、カーディさんは慣れた様子でパシリと片手で塞いだ。そのままキスでもするのかと言うぐらい、ぐいっと顔を近づける。
「クリス、そういうのは昨日で終わりにしたはずだ」
「むーむー」
「もう言うなよ?分かったか?」
ジロッと睨みつけながら低い声で尋ねるカーディさんに、クリスは口を塞がれたままこくこくと素直に頷いている。カーディさんの耳は真っ赤だし、クリスが満面の笑みなのがはたから見ていると少し面白い。
「面白い二人だな」
そう言いながら俺はアキトの隣に並ぶと、そっとその手を握った。二人のやりとりを見ていたら何となくアキトと手を繋ぎたくなった。ただそれだけの行動だったけど、アキトは嬉しそうに笑ってみせた。
「うん、お似合いの二人だね」
「まあな…でも、俺達だってお似合いの恋人同士だろう?」
悪戯っぽく笑いながらそう話しかければ、アキトはきょとんと俺の顔を見上げてきた。すぐに同意してくれるかと思ったのに、黙ったまま固まってしまったな。
アキトの元の世界では男性同士の恋愛は一般的では無いと言っていたから、もしかしてその影響でもあるんだろうか。生まれ持った考え方を変えるのは簡単な事ではないと知っているし、無理強いをするつもりはないけれど。
そんな事を考えていた俺に、アキトはにっこりと微笑んでから口を開いた。
「うん、俺達もお似合いだよね」
じっくり考えた上での答えが同意だった事が、たまらなく嬉しい。これからもアキトにふさわしいと周りにも認めさせられるように、頑張っていこうと俺は密かに決意を新たにした。
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