349 / 1,179
348.迷路のような
しおりを挟む
予約投稿ミスってました…すみません。
この後0:00にも更新します。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
だんだんと人が増えていく街道をひたすら歩いていくと、ようやく船着き場の入口まで辿り着いた。
橋の上にある不思議な街への入口は、どうやら水色に塗装された可愛らしい木製のアーチみたいだ。
何だかテーマパークみたいだなと思いながら近づいていくと、アーチの左右には武装した衛兵さんがずらりと並んでいた。こんなに衛兵さんがいるのかと一瞬だけ驚いたけれど、水色と白色ベースの装備で統一してあるのがお洒落なせいか威圧感はあまり無い。
「ようこそ、船着き場へ」
「道に迷ったら衛兵にお声がけ下さいね」
「何か困った事があればこの装備の者へどうぞ」
「迷ったかもぐらいの時もお気軽に」
「お勧めのお店を知りたいとかにも対応しますよ」
爽やかな笑顔を振りまきながら愛想良く通行人に声をかける衛兵さん達の姿は、何だか本当にテーマパークの従業員みたいだ。周りの人達は楽しそうに物珍しそうにしている人から、慣れた様子でスタスタと歩いていく人まで様々だ。
「アキト、こっちだよ」
「うん」
アーチをくぐって中に入ると、すぐにたくさんの建物に囲まれた。周りの景色だけ見ていると、今自分たちが橋の上にいるなんて忘れてしまいそうだ。
ハルに誘導されるままに道を進みながら、俺はきょろきょろと辺りを見渡した。
ううん、これはまずいかもしれない。入口であんな風に声をかけるのも無理は無いと思うぐらい、道がかなり分かり難い。
橋の上に無理やり建築されているせいかそれぞれの建物が密集しているし、限りある広さを生かすためなのか高低差もかなりあるみたいだ。色んな所の建築様式の建物がごちゃまぜな街中は見ている分には楽しいけれど、目印になるものが圧倒的に少ない感じだ。
これは油断したら確実に迷子になるな。思わず遠い目をしてしまった俺の手を、ハルの手がきゅっと握りしめた。
「え…?」
「ここは迷いやすいから、手を繋ぐのが普通なんだよ?」
周りを見てごらんと促されて周囲を見回してみれば、本当に男女年齢を問わず連れと手を繋いで歩いている人がたくさんいるみたいだ。
「そうなんだ、迷子になるかと心配してたから助かるよ」
「もちろん、それだけじゃないんだけどね」
楽し気に話しかけてくるハルのその発言に、俺はゆるりと首を傾げた。それだけじゃないって事は他にも何か理由があるんだろうか。
「いつでも俺はアキトと手を繋ぎたいからね」
耳元に顔を寄せてそんな事を囁かれたら、俺にできる事なんて赤面する事ぐらいだよね。ハルと手をつなげるのはすごく幸せだけど、それをこんな人混みで伝える勇気は無い。
「この辺りは変わらないな」
「ええ、前に来た時も混んでましたね」
後ろから聞こえてきた会話に振り返れば、クリスさんとカーディの二人も当然のように手を繋いでいた。本当に手を繋ぐのが普通なんだな。
「そこの道を左に行けば大通りだよ」
ハルのおかげで、衛兵さんのお世話になる事は無さそうだな。俺は繋いだ手をきゅっと握り返すと、笑顔で大通りへと歩き出した。
大通りには事前にクリスさんに聞いていた通り、本当に色んな種類のお店が並んでいた。
雑貨屋や武器屋、防具屋に、薬屋などが並んだこの辺りは、冒険者や旅人向けのお店が集まってるのかな。中には魔道具屋もあったけど、クリスさんはちらりと見ただけで興味が無さそうな顔でスルーしていた。
買い物は後にしようと言われてなかったら、ここだけでかなりの時間を費やしてしまいそうだ。
不意に立ち止まったハルを見上げれば、そっと指だけで近くの路地を指差した。
「ここから裏通りに入るよ。アキト、絶対に手は離さないでね?」
「うん、分かった」
絶対に離さないよと付け加えれば、ハルは楽し気に笑ってくれた。
「カーディも、絶対に離さないでね?」
「ああ、分かってるって」
ここまで念を押されるほど、船着き場の裏通りは危険だったりするのかな。ちょっとだけそう心配になったけれど、物理的に危険と言うよりもとにかくややこしい道のせいでちょっとした迷路のようだった。
今来た道を戻れって言われても、自信が無いレベルの複雑さだな。
「アキト、帰り道は俺が分かってるから安心して」
「あ、ごめん、表情に出てた?」
「うん、眉間にくっきりしわが寄ってたよ」
クスクスと笑いながら、ハルは俺の眉間を指先で撫でた。うわぁ、急な触れ合いは止めてください。俺の心臓が持ちません。
この後0:00にも更新します。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
だんだんと人が増えていく街道をひたすら歩いていくと、ようやく船着き場の入口まで辿り着いた。
橋の上にある不思議な街への入口は、どうやら水色に塗装された可愛らしい木製のアーチみたいだ。
何だかテーマパークみたいだなと思いながら近づいていくと、アーチの左右には武装した衛兵さんがずらりと並んでいた。こんなに衛兵さんがいるのかと一瞬だけ驚いたけれど、水色と白色ベースの装備で統一してあるのがお洒落なせいか威圧感はあまり無い。
「ようこそ、船着き場へ」
「道に迷ったら衛兵にお声がけ下さいね」
「何か困った事があればこの装備の者へどうぞ」
「迷ったかもぐらいの時もお気軽に」
「お勧めのお店を知りたいとかにも対応しますよ」
爽やかな笑顔を振りまきながら愛想良く通行人に声をかける衛兵さん達の姿は、何だか本当にテーマパークの従業員みたいだ。周りの人達は楽しそうに物珍しそうにしている人から、慣れた様子でスタスタと歩いていく人まで様々だ。
「アキト、こっちだよ」
「うん」
アーチをくぐって中に入ると、すぐにたくさんの建物に囲まれた。周りの景色だけ見ていると、今自分たちが橋の上にいるなんて忘れてしまいそうだ。
ハルに誘導されるままに道を進みながら、俺はきょろきょろと辺りを見渡した。
ううん、これはまずいかもしれない。入口であんな風に声をかけるのも無理は無いと思うぐらい、道がかなり分かり難い。
橋の上に無理やり建築されているせいかそれぞれの建物が密集しているし、限りある広さを生かすためなのか高低差もかなりあるみたいだ。色んな所の建築様式の建物がごちゃまぜな街中は見ている分には楽しいけれど、目印になるものが圧倒的に少ない感じだ。
これは油断したら確実に迷子になるな。思わず遠い目をしてしまった俺の手を、ハルの手がきゅっと握りしめた。
「え…?」
「ここは迷いやすいから、手を繋ぐのが普通なんだよ?」
周りを見てごらんと促されて周囲を見回してみれば、本当に男女年齢を問わず連れと手を繋いで歩いている人がたくさんいるみたいだ。
「そうなんだ、迷子になるかと心配してたから助かるよ」
「もちろん、それだけじゃないんだけどね」
楽し気に話しかけてくるハルのその発言に、俺はゆるりと首を傾げた。それだけじゃないって事は他にも何か理由があるんだろうか。
「いつでも俺はアキトと手を繋ぎたいからね」
耳元に顔を寄せてそんな事を囁かれたら、俺にできる事なんて赤面する事ぐらいだよね。ハルと手をつなげるのはすごく幸せだけど、それをこんな人混みで伝える勇気は無い。
「この辺りは変わらないな」
「ええ、前に来た時も混んでましたね」
後ろから聞こえてきた会話に振り返れば、クリスさんとカーディの二人も当然のように手を繋いでいた。本当に手を繋ぐのが普通なんだな。
「そこの道を左に行けば大通りだよ」
ハルのおかげで、衛兵さんのお世話になる事は無さそうだな。俺は繋いだ手をきゅっと握り返すと、笑顔で大通りへと歩き出した。
大通りには事前にクリスさんに聞いていた通り、本当に色んな種類のお店が並んでいた。
雑貨屋や武器屋、防具屋に、薬屋などが並んだこの辺りは、冒険者や旅人向けのお店が集まってるのかな。中には魔道具屋もあったけど、クリスさんはちらりと見ただけで興味が無さそうな顔でスルーしていた。
買い物は後にしようと言われてなかったら、ここだけでかなりの時間を費やしてしまいそうだ。
不意に立ち止まったハルを見上げれば、そっと指だけで近くの路地を指差した。
「ここから裏通りに入るよ。アキト、絶対に手は離さないでね?」
「うん、分かった」
絶対に離さないよと付け加えれば、ハルは楽し気に笑ってくれた。
「カーディも、絶対に離さないでね?」
「ああ、分かってるって」
ここまで念を押されるほど、船着き場の裏通りは危険だったりするのかな。ちょっとだけそう心配になったけれど、物理的に危険と言うよりもとにかくややこしい道のせいでちょっとした迷路のようだった。
今来た道を戻れって言われても、自信が無いレベルの複雑さだな。
「アキト、帰り道は俺が分かってるから安心して」
「あ、ごめん、表情に出てた?」
「うん、眉間にくっきりしわが寄ってたよ」
クスクスと笑いながら、ハルは俺の眉間を指先で撫でた。うわぁ、急な触れ合いは止めてください。俺の心臓が持ちません。
272
お気に入りに追加
4,204
あなたにおすすめの小説
悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
*
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。
桜月夜
BL
前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。
思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。

その捕虜は牢屋から離れたくない
さいはて旅行社
BL
敵国の牢獄看守や軍人たちが大好きなのは、鍛え上げられた筋肉だった。
というわけで、剣や体術の訓練なんか大嫌いな魔導士で細身の主人公は、同僚の脳筋騎士たちとは違い、敵国の捕虜となっても平穏無事な牢屋生活を満喫するのであった。

不遇聖女様(男)は、国を捨てて闇落ちする覚悟を決めました!
ミクリ21
BL
聖女様(男)は、理不尽な不遇を受けていました。
その不遇は、聖女になった7歳から始まり、現在の15歳まで続きました。
しかし、聖女ラウロはとうとう国を捨てるようです。
何故なら、この世界の成人年齢は15歳だから。
聖女ラウロは、これからは闇落ちをして自由に生きるのだ!!(闇落ちは自称)

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

婚約破棄されたショックで前世の記憶&猫集めの能力をゲットしたモブ顔の僕!
ミクリ21 (新)
BL
婚約者シルベスター・モンローに婚約破棄されたら、そのショックで前世の記憶を思い出したモブ顔の主人公エレン・ニャンゴローの話。
竜王陛下、番う相手、間違えてますよ
てんつぶ
BL
大陸の支配者は竜人であるこの世界。
『我が国に暮らすサネリという夫婦から生まれしその長子は、竜王陛下の番いである』―――これが俺たちサネリ
姉弟が生まれたる数日前に、竜王を神と抱く神殿から発表されたお触れだ。
俺の双子の姉、ナージュは生まれる瞬間から竜王妃決定。すなわち勝ち組人生決定。 弟の俺はいつかかわいい奥さんをもらう日を夢みて、平凡な毎日を過ごしていた。 姉の嫁入りである18歳の誕生日、何故か俺のもとに竜王陛下がやってきた!? 王道ストーリー。竜王×凡人。
20230805 完結しましたので全て公開していきます。
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる