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348.迷路のような

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予約投稿ミスってました…すみません。
この後0:00にも更新します。

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 だんだんと人が増えていく街道をひたすら歩いていくと、ようやく船着き場の入口まで辿り着いた。

 橋の上にある不思議な街への入口は、どうやら水色に塗装された可愛らしい木製のアーチみたいだ。

 何だかテーマパークみたいだなと思いながら近づいていくと、アーチの左右には武装した衛兵さんがずらりと並んでいた。こんなに衛兵さんがいるのかと一瞬だけ驚いたけれど、水色と白色ベースの装備で統一してあるのがお洒落なせいか威圧感はあまり無い。

「ようこそ、船着き場へ」
「道に迷ったら衛兵にお声がけ下さいね」
「何か困った事があればこの装備の者へどうぞ」
「迷ったかもぐらいの時もお気軽に」
「お勧めのお店を知りたいとかにも対応しますよ」

 爽やかな笑顔を振りまきながら愛想良く通行人に声をかける衛兵さん達の姿は、何だか本当にテーマパークの従業員みたいだ。周りの人達は楽しそうに物珍しそうにしている人から、慣れた様子でスタスタと歩いていく人まで様々だ。

「アキト、こっちだよ」
「うん」

 アーチをくぐって中に入ると、すぐにたくさんの建物に囲まれた。周りの景色だけ見ていると、今自分たちが橋の上にいるなんて忘れてしまいそうだ。

 ハルに誘導されるままに道を進みながら、俺はきょろきょろと辺りを見渡した。

 ううん、これはまずいかもしれない。入口であんな風に声をかけるのも無理は無いと思うぐらい、道がかなり分かり難い。

 橋の上に無理やり建築されているせいかそれぞれの建物が密集しているし、限りある広さを生かすためなのか高低差もかなりあるみたいだ。色んな所の建築様式の建物がごちゃまぜな街中は見ている分には楽しいけれど、目印になるものが圧倒的に少ない感じだ。

 これは油断したら確実に迷子になるな。思わず遠い目をしてしまった俺の手を、ハルの手がきゅっと握りしめた。

「え…?」
「ここは迷いやすいから、手を繋ぐのが普通なんだよ?」

 周りを見てごらんと促されて周囲を見回してみれば、本当に男女年齢を問わず連れと手を繋いで歩いている人がたくさんいるみたいだ。

「そうなんだ、迷子になるかと心配してたから助かるよ」
「もちろん、それだけじゃないんだけどね」

 楽し気に話しかけてくるハルのその発言に、俺はゆるりと首を傾げた。それだけじゃないって事は他にも何か理由があるんだろうか。

「いつでも俺はアキトと手を繋ぎたいからね」

 耳元に顔を寄せてそんな事を囁かれたら、俺にできる事なんて赤面する事ぐらいだよね。ハルと手をつなげるのはすごく幸せだけど、それをこんな人混みで伝える勇気は無い。

「この辺りは変わらないな」
「ええ、前に来た時も混んでましたね」

 後ろから聞こえてきた会話に振り返れば、クリスさんとカーディの二人も当然のように手を繋いでいた。本当に手を繋ぐのが普通なんだな。

「そこの道を左に行けば大通りだよ」

 ハルのおかげで、衛兵さんのお世話になる事は無さそうだな。俺は繋いだ手をきゅっと握り返すと、笑顔で大通りへと歩き出した。



 大通りには事前にクリスさんに聞いていた通り、本当に色んな種類のお店が並んでいた。

 雑貨屋や武器屋、防具屋に、薬屋などが並んだこの辺りは、冒険者や旅人向けのお店が集まってるのかな。中には魔道具屋もあったけど、クリスさんはちらりと見ただけで興味が無さそうな顔でスルーしていた。

 買い物は後にしようと言われてなかったら、ここだけでかなりの時間を費やしてしまいそうだ。

 不意に立ち止まったハルを見上げれば、そっと指だけで近くの路地を指差した。

「ここから裏通りに入るよ。アキト、絶対に手は離さないでね?」
「うん、分かった」

 絶対に離さないよと付け加えれば、ハルは楽し気に笑ってくれた。

「カーディも、絶対に離さないでね?」
「ああ、分かってるって」

 ここまで念を押されるほど、船着き場の裏通りは危険だったりするのかな。ちょっとだけそう心配になったけれど、物理的に危険と言うよりもとにかくややこしい道のせいでちょっとした迷路のようだった。

 今来た道を戻れって言われても、自信が無いレベルの複雑さだな。

「アキト、帰り道は俺が分かってるから安心して」
「あ、ごめん、表情に出てた?」
「うん、眉間にくっきりしわが寄ってたよ」

 クスクスと笑いながら、ハルは俺の眉間を指先で撫でた。うわぁ、急な触れ合いは止めてください。俺の心臓が持ちません。
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