349 / 1,103
348.迷路のような
しおりを挟む
予約投稿ミスってました…すみません。
この後0:00にも更新します。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
だんだんと人が増えていく街道をひたすら歩いていくと、ようやく船着き場の入口まで辿り着いた。
橋の上にある不思議な街への入口は、どうやら水色に塗装された可愛らしい木製のアーチみたいだ。
何だかテーマパークみたいだなと思いながら近づいていくと、アーチの左右には武装した衛兵さんがずらりと並んでいた。こんなに衛兵さんがいるのかと一瞬だけ驚いたけれど、水色と白色ベースの装備で統一してあるのがお洒落なせいか威圧感はあまり無い。
「ようこそ、船着き場へ」
「道に迷ったら衛兵にお声がけ下さいね」
「何か困った事があればこの装備の者へどうぞ」
「迷ったかもぐらいの時もお気軽に」
「お勧めのお店を知りたいとかにも対応しますよ」
爽やかな笑顔を振りまきながら愛想良く通行人に声をかける衛兵さん達の姿は、何だか本当にテーマパークの従業員みたいだ。周りの人達は楽しそうに物珍しそうにしている人から、慣れた様子でスタスタと歩いていく人まで様々だ。
「アキト、こっちだよ」
「うん」
アーチをくぐって中に入ると、すぐにたくさんの建物に囲まれた。周りの景色だけ見ていると、今自分たちが橋の上にいるなんて忘れてしまいそうだ。
ハルに誘導されるままに道を進みながら、俺はきょろきょろと辺りを見渡した。
ううん、これはまずいかもしれない。入口であんな風に声をかけるのも無理は無いと思うぐらい、道がかなり分かり難い。
橋の上に無理やり建築されているせいかそれぞれの建物が密集しているし、限りある広さを生かすためなのか高低差もかなりあるみたいだ。色んな所の建築様式の建物がごちゃまぜな街中は見ている分には楽しいけれど、目印になるものが圧倒的に少ない感じだ。
これは油断したら確実に迷子になるな。思わず遠い目をしてしまった俺の手を、ハルの手がきゅっと握りしめた。
「え…?」
「ここは迷いやすいから、手を繋ぐのが普通なんだよ?」
周りを見てごらんと促されて周囲を見回してみれば、本当に男女年齢を問わず連れと手を繋いで歩いている人がたくさんいるみたいだ。
「そうなんだ、迷子になるかと心配してたから助かるよ」
「もちろん、それだけじゃないんだけどね」
楽し気に話しかけてくるハルのその発言に、俺はゆるりと首を傾げた。それだけじゃないって事は他にも何か理由があるんだろうか。
「いつでも俺はアキトと手を繋ぎたいからね」
耳元に顔を寄せてそんな事を囁かれたら、俺にできる事なんて赤面する事ぐらいだよね。ハルと手をつなげるのはすごく幸せだけど、それをこんな人混みで伝える勇気は無い。
「この辺りは変わらないな」
「ええ、前に来た時も混んでましたね」
後ろから聞こえてきた会話に振り返れば、クリスさんとカーディの二人も当然のように手を繋いでいた。本当に手を繋ぐのが普通なんだな。
「そこの道を左に行けば大通りだよ」
ハルのおかげで、衛兵さんのお世話になる事は無さそうだな。俺は繋いだ手をきゅっと握り返すと、笑顔で大通りへと歩き出した。
大通りには事前にクリスさんに聞いていた通り、本当に色んな種類のお店が並んでいた。
雑貨屋や武器屋、防具屋に、薬屋などが並んだこの辺りは、冒険者や旅人向けのお店が集まってるのかな。中には魔道具屋もあったけど、クリスさんはちらりと見ただけで興味が無さそうな顔でスルーしていた。
買い物は後にしようと言われてなかったら、ここだけでかなりの時間を費やしてしまいそうだ。
不意に立ち止まったハルを見上げれば、そっと指だけで近くの路地を指差した。
「ここから裏通りに入るよ。アキト、絶対に手は離さないでね?」
「うん、分かった」
絶対に離さないよと付け加えれば、ハルは楽し気に笑ってくれた。
「カーディも、絶対に離さないでね?」
「ああ、分かってるって」
ここまで念を押されるほど、船着き場の裏通りは危険だったりするのかな。ちょっとだけそう心配になったけれど、物理的に危険と言うよりもとにかくややこしい道のせいでちょっとした迷路のようだった。
今来た道を戻れって言われても、自信が無いレベルの複雑さだな。
「アキト、帰り道は俺が分かってるから安心して」
「あ、ごめん、表情に出てた?」
「うん、眉間にくっきりしわが寄ってたよ」
クスクスと笑いながら、ハルは俺の眉間を指先で撫でた。うわぁ、急な触れ合いは止めてください。俺の心臓が持ちません。
この後0:00にも更新します。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
だんだんと人が増えていく街道をひたすら歩いていくと、ようやく船着き場の入口まで辿り着いた。
橋の上にある不思議な街への入口は、どうやら水色に塗装された可愛らしい木製のアーチみたいだ。
何だかテーマパークみたいだなと思いながら近づいていくと、アーチの左右には武装した衛兵さんがずらりと並んでいた。こんなに衛兵さんがいるのかと一瞬だけ驚いたけれど、水色と白色ベースの装備で統一してあるのがお洒落なせいか威圧感はあまり無い。
「ようこそ、船着き場へ」
「道に迷ったら衛兵にお声がけ下さいね」
「何か困った事があればこの装備の者へどうぞ」
「迷ったかもぐらいの時もお気軽に」
「お勧めのお店を知りたいとかにも対応しますよ」
爽やかな笑顔を振りまきながら愛想良く通行人に声をかける衛兵さん達の姿は、何だか本当にテーマパークの従業員みたいだ。周りの人達は楽しそうに物珍しそうにしている人から、慣れた様子でスタスタと歩いていく人まで様々だ。
「アキト、こっちだよ」
「うん」
アーチをくぐって中に入ると、すぐにたくさんの建物に囲まれた。周りの景色だけ見ていると、今自分たちが橋の上にいるなんて忘れてしまいそうだ。
ハルに誘導されるままに道を進みながら、俺はきょろきょろと辺りを見渡した。
ううん、これはまずいかもしれない。入口であんな風に声をかけるのも無理は無いと思うぐらい、道がかなり分かり難い。
橋の上に無理やり建築されているせいかそれぞれの建物が密集しているし、限りある広さを生かすためなのか高低差もかなりあるみたいだ。色んな所の建築様式の建物がごちゃまぜな街中は見ている分には楽しいけれど、目印になるものが圧倒的に少ない感じだ。
これは油断したら確実に迷子になるな。思わず遠い目をしてしまった俺の手を、ハルの手がきゅっと握りしめた。
「え…?」
「ここは迷いやすいから、手を繋ぐのが普通なんだよ?」
周りを見てごらんと促されて周囲を見回してみれば、本当に男女年齢を問わず連れと手を繋いで歩いている人がたくさんいるみたいだ。
「そうなんだ、迷子になるかと心配してたから助かるよ」
「もちろん、それだけじゃないんだけどね」
楽し気に話しかけてくるハルのその発言に、俺はゆるりと首を傾げた。それだけじゃないって事は他にも何か理由があるんだろうか。
「いつでも俺はアキトと手を繋ぎたいからね」
耳元に顔を寄せてそんな事を囁かれたら、俺にできる事なんて赤面する事ぐらいだよね。ハルと手をつなげるのはすごく幸せだけど、それをこんな人混みで伝える勇気は無い。
「この辺りは変わらないな」
「ええ、前に来た時も混んでましたね」
後ろから聞こえてきた会話に振り返れば、クリスさんとカーディの二人も当然のように手を繋いでいた。本当に手を繋ぐのが普通なんだな。
「そこの道を左に行けば大通りだよ」
ハルのおかげで、衛兵さんのお世話になる事は無さそうだな。俺は繋いだ手をきゅっと握り返すと、笑顔で大通りへと歩き出した。
大通りには事前にクリスさんに聞いていた通り、本当に色んな種類のお店が並んでいた。
雑貨屋や武器屋、防具屋に、薬屋などが並んだこの辺りは、冒険者や旅人向けのお店が集まってるのかな。中には魔道具屋もあったけど、クリスさんはちらりと見ただけで興味が無さそうな顔でスルーしていた。
買い物は後にしようと言われてなかったら、ここだけでかなりの時間を費やしてしまいそうだ。
不意に立ち止まったハルを見上げれば、そっと指だけで近くの路地を指差した。
「ここから裏通りに入るよ。アキト、絶対に手は離さないでね?」
「うん、分かった」
絶対に離さないよと付け加えれば、ハルは楽し気に笑ってくれた。
「カーディも、絶対に離さないでね?」
「ああ、分かってるって」
ここまで念を押されるほど、船着き場の裏通りは危険だったりするのかな。ちょっとだけそう心配になったけれど、物理的に危険と言うよりもとにかくややこしい道のせいでちょっとした迷路のようだった。
今来た道を戻れって言われても、自信が無いレベルの複雑さだな。
「アキト、帰り道は俺が分かってるから安心して」
「あ、ごめん、表情に出てた?」
「うん、眉間にくっきりしわが寄ってたよ」
クスクスと笑いながら、ハルは俺の眉間を指先で撫でた。うわぁ、急な触れ合いは止めてください。俺の心臓が持ちません。
261
お気に入りに追加
4,148
あなたにおすすめの小説
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。
主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
氷の華を溶かしたら
こむぎダック
BL
ラリス王国。
男女問わず、子供を産む事ができる世界。
前世の記憶を残したまま、転生を繰り返して来たキャニス。何度生まれ変わっても、誰からも愛されず、裏切られることに疲れ切ってしまったキャニスは、今世では、誰も愛さず何も期待しないと心に決め、笑わない氷華の貴公子と言われる様になった。
ラリス王国の第一王子ナリウスの婚約者として、王子妃教育を受けて居たが、手癖の悪い第一王子から、冷たい態度を取られ続け、とうとう婚約破棄に。
そして、密かにキャニスに、想いを寄せて居た第二王子カリストが、キャニスへの贖罪と初恋を実らせる為に奔走し始める。
その頃、母国の騒ぎから逃れ、隣国に滞在していたキャニスは、隣国の王子シェルビーからの熱烈な求愛を受けることに。
初恋を拗らせたカリストとシェルビー。
キャニスの氷った心を溶かす事ができるのは、どちらか?
【完結】別れ……ますよね?
325号室の住人
BL
☆全3話、完結済
僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。
ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる