生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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347.【ハル視点】船着き場に到着

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 船着き場を目指して歩いていくと、次第に人が増えてきた。川のこちら側から船着き場に行くには、必ず通る街道に入ったからな。

 俺はアキトと並んで歩きながら、周りの気配や視線を一通り探ってみた。よし、不自然にこちらを見ている視線は無さそうだな。敵意も殺意も感じない。

「さっきのアキトの反応見てたら、そういえば俺も初めてレーウェ川の船着き場に来た時は、驚いたなぁって思いだしたわ」

 後ろを歩いていたカーディさんはそう言うと、楽し気に笑いだした。

「ああ、私も驚きましたね」
「一瞬街が浮いてるように見えるんだよなぁ」
「分かります。落ち着いたら、今度はこの橋はどうやって建てたのかが気になって気になって…」
「いや、それは多分クリスだけだぞ?」
「え…?」

 背後から聞こえてくる二人の何とも気の抜ける会話に、アキトはクスクスと楽し気に笑っている。時間を無駄にしてしまったかもと気にしていたようだが、どうやら二人の会話のおかげで罪悪感は無くなったみたいだな。

 俺は後ろの二人ののんびりとした会話に、心の中で称賛の拍手を送った。
 
「それで、これからどうするんだ?」

 二人の会話がひと段落するのを待ってから、俺は後ろを振り返ってそう尋ねた。

「ああ、まだ時間はあるので…折角なら船着き場を散策しませんか?」

 クリスはそう言うと、俺と同じく振り返っていたアキトに向けて話しかけた。

「船着き場には、それはもう色んなお店があるんですよ」

 魔物の多いこの世界では欠かせない武器屋や防具屋、更には色んな領の料理が楽しめる飲食店や屋台、荷物の一部を販売して旅費を稼ぐための商人達の市場なんてものまであるんだとクリスは楽し気に続けた。

 カーディさんはそんなクリスの横から、トライプールの街とはまた違った楽しさがあるぞとアキトに話しかけている。

 最初は真面目に説明を聞いていたアキトだったが、気づけばわくわくそわそわとし始めているみたいだ。そういう年相応の反応も、たまらなく可愛いんだよな。

「それは楽しそうですね!」
「えーと、四人行動で良いのか?」

 カーディさんの質問に、俺とクリスは視線を交わしてから大きく一つ頷いた。

「その方が安全だから、四人で回ろう」

 この船着き場には、船を守る目的もあって衛兵がたくさんいる。おそらくトライプールよりも衛兵の数は多いだろう。だがクリスの商売敵とやらがいる可能性もあるからな。油断はできるだけしない方が良いだろう。

「ハルさん、アキトさん。気になる店があれば遠慮なく言ってくださいね」
「ありがとうございます」
「とりあえず大通りを行くとして…他に行きたい場所はあるか?」

 頭の中でどう回るかを考えながら尋ねてみれば、カーディさんがゆるりと手を上げてから口を開いた。

「あー俺は川魚の串焼きは食べたいなー」
「私も久々に食べたいです」

 美味しいんですよね、あれと笑って同意するクリスの声を聞きながら、俺はちらりとアキトへと視線を向けた。

「確かアキトは魚好きだったよね?」
「うん、魚は好きだよ!」

 川魚かぁと嬉しそうなアキトのためにも、特に美味しい店を選ばなくては。使命感にかられながら、俺はクリスに尋ねた。

「じゃあ決まりだな。どの店にする?」
「それなら、二番通りから裏道に入った場所にある屋台が美味しいですよ」

 クリスの言葉に、俺は片眉を上げて答える。

「俺が思ってたのもそこだな」

 よし俺とクリスの意見が一致した店なら、きっとアキトも気に入ってくれる筈だ。俺は笑顔でアキトを振り返ると、行こうかと声をかけた。
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