335 / 1,179
334.朝の目覚め
しおりを挟む
翌朝、自然と目を覚ました俺は、ぼんやりと寝ぼけたまま緑色の天井を見つめた。緑色の天井というかこれは緑色の布かな。何で緑色の布なんだろうとぼんやりと考えていた俺は、ハッと目を覚ました。
そうだ、これは俺のテントの色だ。いくらハルとクリスさんが見張りをしてくれてるっていっても、ちょっと油断しすぎだろう、俺。
慌ててテントから出ていけば、まだカーディの姿は無かった。
「あ、おはよう、アキト。まだ寝てて良かったのに」
「おはよう、ハル。目が覚めちゃって」
「おはようございます、アキトさん」
「クリスさん、おはようございます」
二人はまったりと飲み物を飲みながら見張りをしていたらしく、手招きされて近づいていけばすぐに俺にもコップが差し出された。
「はい。今朝は少し冷えるから、これ飲んで」
「ありがと」
花の香りのする温かいお茶は、寝起きの体にしみ込むようだった。
「クリスも、もう少し飲むか?」
「ああ、頂きます」
あ、何だかこの二人の距離も一気に縮まったみたいだ。ハルの呼び方にさん付けがなくなってるし、クリスさんの話し方も何だか柔らかい雰囲気な気がする。
「何か二人も仲良くなった?」
「ああ、クリスはカーディさんにしか興味が無いから、アキトに惚れられる心配が無いからね」
さらりとそう言ったハルは、惚気たせいで興味を持たれたら困るからと笑ってるんだけど、そんな人がそうそういるとは思えないんだけどな。
「私も一緒ですよ。同じ理由で惚気もろくに出来なかったので…本当に楽しい見張りの時間でした」
「色々と情報交換もできたしな」
「さすがにハルさんは情報通でしたね」
「クリスもだろう」
二人とも満足そうな所を見ると、見張りの時間はかなり有意義だったみたいだ。三人で飲み物を楽しみながら今日の予定を確認していると、ばさりと音が聞こえた。
三人の視線が集中した先、カーディはテントをめくったまま俺達の方を真顔で見つめていた。
「……おはよう」
「カーディ、おはよう。今日は自分で起きれたんだね」
「…うるさい」
いつも笑顔のカーディは、そう言うなり不服そうにクリスさんを睨みつける。え、見た事無いぐらい機嫌が悪そうなんだけど、これって大丈夫なの?
密かに慌ててしまった俺に、ハルはこっそりと耳打ちをした。
「さっき聞いたんだけど、カーディさんは寝起きが悪いらしいよ」
「あ、そうなの?」
そういう事か。そういえば、俺の友人にもいたなぁ。起こされてもなかなか起きれないし、朝はどうしても気分が上がらないって言ってたっけ。
「ほら、これ飲んで」
鞄から取り出した飲み物をクリスさんが飲ませると、カーディはパチパチと瞬きをしてからふわりと笑みを浮かべた。さっきまでの不機嫌顔とのギャップがすごいんだけど。
「起きたかい?カーディ」
「ああ、おはよう、クリス」
「おはよう、カーディ」
ついばむようなキスを交わしてから、俺たちの視線に気づいたのかカーディは照れくさそうに頭をかいた。
「あー…みっともない所を見せたなぁ。俺はどうしても朝が無理でな」
「いやいや、体質なら仕方ないよ」
「ああ、気にするな」
ハルと二人でそうフォローの声を上げたけれど、カーディはまだ恥ずかしそうにしていた。ハルはちらりとクリスさんを見てから、口を開いた。
「そういう所も可愛いんだっていう伴侶から、楽しみを奪わないでやってくれないか?」
「あっ、ばらさないで下さいよ!」
「ああ、悪いな、ついうっかり?」
慌てるクリスさんにそう答えたハルは、少しも悪びれた様子が無い。それなら私にだって考えがありますからねと言い返していたクリスさんに、カーディはきゅっと抱き着いた。
「…クリス」
「はいっ!?」
「ありがとう。この体質も悪くないって、今初めて思ったわ」
「…いつもは頼れるカーディが、私に頼ってくれる滅多にない機会だから…本当に可愛いと思ってるからね」
まっすぐに目をみて伝えたクリスさんに、カーディはふふと幸せそうに笑い返した。
「ああ、ありがとう。あと、ハルもありがとな」
「え?俺?」
「俺のために、クリスの情報を教えてくれたから」
「ああ、どういたしまして」
そうだ、これは俺のテントの色だ。いくらハルとクリスさんが見張りをしてくれてるっていっても、ちょっと油断しすぎだろう、俺。
慌ててテントから出ていけば、まだカーディの姿は無かった。
「あ、おはよう、アキト。まだ寝てて良かったのに」
「おはよう、ハル。目が覚めちゃって」
「おはようございます、アキトさん」
「クリスさん、おはようございます」
二人はまったりと飲み物を飲みながら見張りをしていたらしく、手招きされて近づいていけばすぐに俺にもコップが差し出された。
「はい。今朝は少し冷えるから、これ飲んで」
「ありがと」
花の香りのする温かいお茶は、寝起きの体にしみ込むようだった。
「クリスも、もう少し飲むか?」
「ああ、頂きます」
あ、何だかこの二人の距離も一気に縮まったみたいだ。ハルの呼び方にさん付けがなくなってるし、クリスさんの話し方も何だか柔らかい雰囲気な気がする。
「何か二人も仲良くなった?」
「ああ、クリスはカーディさんにしか興味が無いから、アキトに惚れられる心配が無いからね」
さらりとそう言ったハルは、惚気たせいで興味を持たれたら困るからと笑ってるんだけど、そんな人がそうそういるとは思えないんだけどな。
「私も一緒ですよ。同じ理由で惚気もろくに出来なかったので…本当に楽しい見張りの時間でした」
「色々と情報交換もできたしな」
「さすがにハルさんは情報通でしたね」
「クリスもだろう」
二人とも満足そうな所を見ると、見張りの時間はかなり有意義だったみたいだ。三人で飲み物を楽しみながら今日の予定を確認していると、ばさりと音が聞こえた。
三人の視線が集中した先、カーディはテントをめくったまま俺達の方を真顔で見つめていた。
「……おはよう」
「カーディ、おはよう。今日は自分で起きれたんだね」
「…うるさい」
いつも笑顔のカーディは、そう言うなり不服そうにクリスさんを睨みつける。え、見た事無いぐらい機嫌が悪そうなんだけど、これって大丈夫なの?
密かに慌ててしまった俺に、ハルはこっそりと耳打ちをした。
「さっき聞いたんだけど、カーディさんは寝起きが悪いらしいよ」
「あ、そうなの?」
そういう事か。そういえば、俺の友人にもいたなぁ。起こされてもなかなか起きれないし、朝はどうしても気分が上がらないって言ってたっけ。
「ほら、これ飲んで」
鞄から取り出した飲み物をクリスさんが飲ませると、カーディはパチパチと瞬きをしてからふわりと笑みを浮かべた。さっきまでの不機嫌顔とのギャップがすごいんだけど。
「起きたかい?カーディ」
「ああ、おはよう、クリス」
「おはよう、カーディ」
ついばむようなキスを交わしてから、俺たちの視線に気づいたのかカーディは照れくさそうに頭をかいた。
「あー…みっともない所を見せたなぁ。俺はどうしても朝が無理でな」
「いやいや、体質なら仕方ないよ」
「ああ、気にするな」
ハルと二人でそうフォローの声を上げたけれど、カーディはまだ恥ずかしそうにしていた。ハルはちらりとクリスさんを見てから、口を開いた。
「そういう所も可愛いんだっていう伴侶から、楽しみを奪わないでやってくれないか?」
「あっ、ばらさないで下さいよ!」
「ああ、悪いな、ついうっかり?」
慌てるクリスさんにそう答えたハルは、少しも悪びれた様子が無い。それなら私にだって考えがありますからねと言い返していたクリスさんに、カーディはきゅっと抱き着いた。
「…クリス」
「はいっ!?」
「ありがとう。この体質も悪くないって、今初めて思ったわ」
「…いつもは頼れるカーディが、私に頼ってくれる滅多にない機会だから…本当に可愛いと思ってるからね」
まっすぐに目をみて伝えたクリスさんに、カーディはふふと幸せそうに笑い返した。
「ああ、ありがとう。あと、ハルもありがとな」
「え?俺?」
「俺のために、クリスの情報を教えてくれたから」
「ああ、どういたしまして」
287
お気に入りに追加
4,204
あなたにおすすめの小説
悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
*
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。
桜月夜
BL
前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。
思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。

その捕虜は牢屋から離れたくない
さいはて旅行社
BL
敵国の牢獄看守や軍人たちが大好きなのは、鍛え上げられた筋肉だった。
というわけで、剣や体術の訓練なんか大嫌いな魔導士で細身の主人公は、同僚の脳筋騎士たちとは違い、敵国の捕虜となっても平穏無事な牢屋生活を満喫するのであった。

不遇聖女様(男)は、国を捨てて闇落ちする覚悟を決めました!
ミクリ21
BL
聖女様(男)は、理不尽な不遇を受けていました。
その不遇は、聖女になった7歳から始まり、現在の15歳まで続きました。
しかし、聖女ラウロはとうとう国を捨てるようです。
何故なら、この世界の成人年齢は15歳だから。
聖女ラウロは、これからは闇落ちをして自由に生きるのだ!!(闇落ちは自称)
竜王陛下、番う相手、間違えてますよ
てんつぶ
BL
大陸の支配者は竜人であるこの世界。
『我が国に暮らすサネリという夫婦から生まれしその長子は、竜王陛下の番いである』―――これが俺たちサネリ
姉弟が生まれたる数日前に、竜王を神と抱く神殿から発表されたお触れだ。
俺の双子の姉、ナージュは生まれる瞬間から竜王妃決定。すなわち勝ち組人生決定。 弟の俺はいつかかわいい奥さんをもらう日を夢みて、平凡な毎日を過ごしていた。 姉の嫁入りである18歳の誕生日、何故か俺のもとに竜王陛下がやってきた!? 王道ストーリー。竜王×凡人。
20230805 完結しましたので全て公開していきます。

婚約破棄されたショックで前世の記憶&猫集めの能力をゲットしたモブ顔の僕!
ミクリ21 (新)
BL
婚約者シルベスター・モンローに婚約破棄されたら、そのショックで前世の記憶を思い出したモブ顔の主人公エレン・ニャンゴローの話。
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

公爵家の五男坊はあきらめない
三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。
生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。
冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。
負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。
「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」
都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。
知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。
生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。
あきらめたら待つのは死のみ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる