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332.相談したい事
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確かにそう考えれば、俺はかなり幸運だと思う。同性同士の恋愛が普通に認められる世界で、大好きな人と恋人同士になれたんだから。
そうですねと同意を返した俺は、そのまま自然と夜空を見上げた。雲の切れ目から見えている星空は今日も息をのむほど綺麗だ。ハルに星空の綺麗さを教えてもらってから、すっかり野営の時の星空鑑賞が癖になってしまった。
周りから聞こえてくるる虫の声を聞きながら、俺はぼんやりと今一番気になってる事を思い浮かべた。ハルにも聞きにくいし、かと言って他の人に尋ねるのも恥ずかしい。そう思って誰にも相談できずにいたけど、カーディさんになら聞いてみても良い…のかな?
「えーと、俺…ハルが初めての恋人で」
「ああ、さっき聞いてて初恋なんだろうなって思ってた」
それなら話が早いかもしれない。
「だから恋愛の普通とかが全然分からないんですけど…その…」
本当に聞いて良いんだろうか。こんな事を突然相談されても、困らせてしまうだけなんじゃないかな。思わず言い淀んだら、カーディさんはちらりとテントの方を見てからそっと俺に顔を寄せてきた。もしハルとクリスさんが起きていても聞こえないように。そう言いたげな小声で俺の目を見てこっそりと囁いた。
「何か相談したい事でもあるのか?」
その気づかいに感謝しながら、俺も同じく声をひそめてカーディさんに答えた。
「あーえっと、相談、して良いのかなって事が…?」
「よし、何でも言ってくれ」
「えーと、あの…その体の関係についてなんですけど…聞いても良いですか?」
こんな事を聞いて本当に大丈夫かな?引かれないかなと悩みながらもそう口にすれば、カーディさんはびっくり顔でまじまじと俺を見つめてきた。
「え、もしかして、まだした事が無いとか?」
「あ、いえ、一度だけ!」
勢いだけで咄嗟に口にすれば、カーディさんはそうか勘違いしてすまんなと笑ってくれた。あ、こういう事を話しても、引いたりしないんだ。そう思うと少しだけ心が軽くなった。
「その一回が問題だったとか?痛かった?酷くされた?」
「いえいえいえ、そんな事は無いです。優しく、とっても丁寧に優しくしてもらいました」
あの時のハルは本当に優しかった。たくさん焦らされたような気はするけど、本当に最初から最後までとびきり優しくしてくれたと思う。ついつい色んなハルを思いだしてしまったせいで俺はボンッと赤くなったけれど、カーディさんはニヤニヤ笑うだけだった。
「そっか、それなら良かった」
「ただ二回目がまだなんですよ」
「ああ、そういう話か」
「俺も頑張って誘ってはみたんですよ?でも回復ポーションを連続して使えないからって断られちゃいまして…」
理由があっての事だから仕方ないとは分かってるけど、でもやっぱり誘いを断られたのは地味にショックだったみたいだ。
「それは、うん。大事にされてるんだなぁ」
カーディさんはそう言うと、心配はしてなかったけどホッとしたわとさらりと続けた。
「大事にされてるのは分かってるんですけど…」
大事にされている自覚なら間違いなくある。でもそれでも俺はハルと触れ合いたいし、もっと深く繋がりたいって思ってしまうんだよ。
「慣れるまではどうしても回復ポーション頼りになるからなぁ…」
「危険性とかも説明はしてもらったんですけど」
「それでも、アキトはしたいのか?」
もしその声に少しでも揶揄うような色があれば、俺は多分同意できなかったと思う。でもカーディさんは真剣な顔で、まっすぐに俺の目を見つめていた。だから俺も真剣な顔で視線を反らさずに答えた。
「したいです」
「そっか、じゃあ恋愛の大先輩として、俺が素敵な物をやろう」
「素敵な物?」
「何と副作用の無いポーションだ」
カーディさんが鞄から取り出したのは、半透明の水色の液体が入った瓶だった。模様も何も無い質素な瓶に詰められているその液体は、ふわりと淡い光を放っていた。
「え、そんなのがあるんですか?」
「今までは無かったぞ?ここ数年かけてストファー魔道具店で開発中のやつでな、いくつかの魔道具を使って成分を調整してあるんだ」
あんまり詳しい作り方は教えられないけど本当に副作用は無くなってるぞと、カーディさんはぴらりと一枚の紙を取り出した。
「開発中って言っても安全確認は終わってるからな?これが証拠、メロウさんの鑑定書な」
手渡された紙には商業ギルドによる成分調査の内容と、メロウさんの署名入りの鑑定結果が事細かく記載されているみたいだ。
「そろそろ売り出すんだけど、やっぱり新商品は信頼が必要だからなぁ」
鑑定書のコピーも渡しておくから、使う前には絶対にハルと一緒に確認してくれと念を押された。
「じゃあこれ渡しておくな。ほら、受け取ってくれ」
カーディさんが差し出してくる瓶をじっと見つめて、俺は固まってしまった。正直に言えばすっごく欲しい。だってこれさえあれば、ハルといつでも出来るって事だよね。でも、新商品を勝手に受け取るわけにもいかないだろう。
「えっと、でもそんなすごいもの受け取れません」
「そう言わずに受け取ってくれよ。これさえあれば、アキトの悩みを解決できるんだぞ?」
「……じゃあ、せめて代金は払わせてください」
いくらぐらいするんだろうと考えながらもそう口にすれば、カーディさんはそう言うと思ったと楽し気に笑った。
「残念だけど、まだ値段は未定だから受け取れないぞ?」
「ええー」
「よし、じゃあこうしよう。お試しって事で!」
ハルが鑑定書を見て良しって言ったら使ってみて、気になる所があったら教えてくれよとカーディさんは明るく続けた。
そうですねと同意を返した俺は、そのまま自然と夜空を見上げた。雲の切れ目から見えている星空は今日も息をのむほど綺麗だ。ハルに星空の綺麗さを教えてもらってから、すっかり野営の時の星空鑑賞が癖になってしまった。
周りから聞こえてくるる虫の声を聞きながら、俺はぼんやりと今一番気になってる事を思い浮かべた。ハルにも聞きにくいし、かと言って他の人に尋ねるのも恥ずかしい。そう思って誰にも相談できずにいたけど、カーディさんになら聞いてみても良い…のかな?
「えーと、俺…ハルが初めての恋人で」
「ああ、さっき聞いてて初恋なんだろうなって思ってた」
それなら話が早いかもしれない。
「だから恋愛の普通とかが全然分からないんですけど…その…」
本当に聞いて良いんだろうか。こんな事を突然相談されても、困らせてしまうだけなんじゃないかな。思わず言い淀んだら、カーディさんはちらりとテントの方を見てからそっと俺に顔を寄せてきた。もしハルとクリスさんが起きていても聞こえないように。そう言いたげな小声で俺の目を見てこっそりと囁いた。
「何か相談したい事でもあるのか?」
その気づかいに感謝しながら、俺も同じく声をひそめてカーディさんに答えた。
「あーえっと、相談、して良いのかなって事が…?」
「よし、何でも言ってくれ」
「えーと、あの…その体の関係についてなんですけど…聞いても良いですか?」
こんな事を聞いて本当に大丈夫かな?引かれないかなと悩みながらもそう口にすれば、カーディさんはびっくり顔でまじまじと俺を見つめてきた。
「え、もしかして、まだした事が無いとか?」
「あ、いえ、一度だけ!」
勢いだけで咄嗟に口にすれば、カーディさんはそうか勘違いしてすまんなと笑ってくれた。あ、こういう事を話しても、引いたりしないんだ。そう思うと少しだけ心が軽くなった。
「その一回が問題だったとか?痛かった?酷くされた?」
「いえいえいえ、そんな事は無いです。優しく、とっても丁寧に優しくしてもらいました」
あの時のハルは本当に優しかった。たくさん焦らされたような気はするけど、本当に最初から最後までとびきり優しくしてくれたと思う。ついつい色んなハルを思いだしてしまったせいで俺はボンッと赤くなったけれど、カーディさんはニヤニヤ笑うだけだった。
「そっか、それなら良かった」
「ただ二回目がまだなんですよ」
「ああ、そういう話か」
「俺も頑張って誘ってはみたんですよ?でも回復ポーションを連続して使えないからって断られちゃいまして…」
理由があっての事だから仕方ないとは分かってるけど、でもやっぱり誘いを断られたのは地味にショックだったみたいだ。
「それは、うん。大事にされてるんだなぁ」
カーディさんはそう言うと、心配はしてなかったけどホッとしたわとさらりと続けた。
「大事にされてるのは分かってるんですけど…」
大事にされている自覚なら間違いなくある。でもそれでも俺はハルと触れ合いたいし、もっと深く繋がりたいって思ってしまうんだよ。
「慣れるまではどうしても回復ポーション頼りになるからなぁ…」
「危険性とかも説明はしてもらったんですけど」
「それでも、アキトはしたいのか?」
もしその声に少しでも揶揄うような色があれば、俺は多分同意できなかったと思う。でもカーディさんは真剣な顔で、まっすぐに俺の目を見つめていた。だから俺も真剣な顔で視線を反らさずに答えた。
「したいです」
「そっか、じゃあ恋愛の大先輩として、俺が素敵な物をやろう」
「素敵な物?」
「何と副作用の無いポーションだ」
カーディさんが鞄から取り出したのは、半透明の水色の液体が入った瓶だった。模様も何も無い質素な瓶に詰められているその液体は、ふわりと淡い光を放っていた。
「え、そんなのがあるんですか?」
「今までは無かったぞ?ここ数年かけてストファー魔道具店で開発中のやつでな、いくつかの魔道具を使って成分を調整してあるんだ」
あんまり詳しい作り方は教えられないけど本当に副作用は無くなってるぞと、カーディさんはぴらりと一枚の紙を取り出した。
「開発中って言っても安全確認は終わってるからな?これが証拠、メロウさんの鑑定書な」
手渡された紙には商業ギルドによる成分調査の内容と、メロウさんの署名入りの鑑定結果が事細かく記載されているみたいだ。
「そろそろ売り出すんだけど、やっぱり新商品は信頼が必要だからなぁ」
鑑定書のコピーも渡しておくから、使う前には絶対にハルと一緒に確認してくれと念を押された。
「じゃあこれ渡しておくな。ほら、受け取ってくれ」
カーディさんが差し出してくる瓶をじっと見つめて、俺は固まってしまった。正直に言えばすっごく欲しい。だってこれさえあれば、ハルといつでも出来るって事だよね。でも、新商品を勝手に受け取るわけにもいかないだろう。
「えっと、でもそんなすごいもの受け取れません」
「そう言わずに受け取ってくれよ。これさえあれば、アキトの悩みを解決できるんだぞ?」
「……じゃあ、せめて代金は払わせてください」
いくらぐらいするんだろうと考えながらもそう口にすれば、カーディさんはそう言うと思ったと楽し気に笑った。
「残念だけど、まだ値段は未定だから受け取れないぞ?」
「ええー」
「よし、じゃあこうしよう。お試しって事で!」
ハルが鑑定書を見て良しって言ったら使ってみて、気になる所があったら教えてくれよとカーディさんは明るく続けた。
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