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327.【ハル視点】高品質な魔物避け
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次の野営地の角へと移動しながら、俺は手に持ったままの薬草をちらりと見た。
今回魔物避けの香草の質を急に上げたのには、きちんとした理由がある。
護衛依頼である以上、今日の見張りは普通に考えれば俺とアキトが交代で行う事になる。まあ野営の予定は今日一日だけだから俺だけが徹夜をしても良いんだが、それはおそらくアキトが良しとしないだろう。
アキトは優しい上に気づかいまで出来る子だからな、交代じゃないなら二人で徹夜しようなんて言いかねない。いや言いかねないというか…間違いなくそう言うな。
「二人で徹夜しよう」
そう言うアキトの姿が、すぐに思い浮かんだ。
交代で見張りをするとなると、問題点が一つだけあった。アキトの魔法は攻撃力こそかなり高いが、接近戦にはどうしても向いていない。例え眠っていてもアキトの叫び声を聞いたら一瞬で飛び起きる自信はあるが、対策が出来る事ならしておきたい。
そこで大事な恋人の身の安全のためにと俺が用意したのが、普段使いのものとは違う高品質な魔物避けの薬草というわけだ。
これを使っておけば、アキトに近づける魔物は一気に減る。なんといってもこれはBランクにも効いたという薬草だからな。火をつけた時にエジの花の香りが一瞬だけするのが、上物の証拠だ。アキトは好きな香りかもしれないな。機会があれば、アキトにも嗅いでもらおう。
そんな事を考えつつ、俺は休憩所の四隅を順番に回っていった。それぞれの場所に作られたくぼみに火をつけた魔物避けを設置しながら、周りの気配をひたすらに探り続ける。
南方向にはウルフ系が四頭、まだ距離は遠いな。西の方角にはスライムの気配が五頭、いや…六頭か。気配からしてこれはヒュージスライムでは無いから危険は少ない。
それに人の気配も近くには無さそうだ。商売敵に狙われるかもと聞いていたが、少なくとも今日はその可能性は低いようだ。
周囲の安全確認をきっちりと終えた俺が合流する頃には、すでに休憩所の片隅には四つのテントが並んでいた。切り株に腰を下ろしたカーディさんとクリスの向かいに、アキトも座っているみたいだ。
「ただいま」
「ひゃっ」
ぼんやりとしていたアキトは可愛い声を上げると、バッと俺の方を振り返った。何か考え事でもしていたんだろうか?
「アキト?大丈夫?」
「大丈夫!ごめん、気を抜いてた…二人の護衛役なのに」
しょんぼりと肩を落として反省しているアキトの頭を、俺はぽんぽんと軽く撫でる。
「俺が周りを警戒してたんだから、少しぐらい気を抜いても良いんだよ」
あの魔物避けを設置した今、Bランク以下の魔物は入ってこれない。後は人間を警戒すれば良いだけだ。
「ん…ありがとう」
「はい、どういたしまして」
ハッと何かに気づいた顔をしたアキトは、にっこりと笑みを浮かべてから口を開いた。
「おかえりなさい、ハル」
「ただいま、アキト」
何の変哲もないただの森の野営地なのに、アキトがそう言ってくれるだけで肩の力が少し抜けた。アキトのおかえりの威力はすごいな。
「おかえりなさい、ハルさん」
「おかえり」
俺達の会話が一段落するのを待ってくれていたのか、クリスさんとカーディさんはそっと声をかけてきた。ああ、依頼人に報告をするのを忘れるなんて、俺らしくないな。二人はにこにこ笑って俺達を見ているから、気分を害した様子は無さそうだが報告は必要だろう。
「ああ、ただいま」
「どうでしたか?」
「周りに人の気配は無いし、魔物の気配はまだ遠いな」
一応ウルフ系とスライム系のいる方角を伝えれば、クリスさんはなるほどと頷いた。
「今回は魔物避けの薬草を良い物に変えておいたから、よほどの事が無い限り近づいてはこないだろうが…」
クリスさんは俺の言葉に片眉をくいっと上げたが、指摘はせずに口を開いた。
「ありがとうございます。では夕食にしましょうか」
今回魔物避けの香草の質を急に上げたのには、きちんとした理由がある。
護衛依頼である以上、今日の見張りは普通に考えれば俺とアキトが交代で行う事になる。まあ野営の予定は今日一日だけだから俺だけが徹夜をしても良いんだが、それはおそらくアキトが良しとしないだろう。
アキトは優しい上に気づかいまで出来る子だからな、交代じゃないなら二人で徹夜しようなんて言いかねない。いや言いかねないというか…間違いなくそう言うな。
「二人で徹夜しよう」
そう言うアキトの姿が、すぐに思い浮かんだ。
交代で見張りをするとなると、問題点が一つだけあった。アキトの魔法は攻撃力こそかなり高いが、接近戦にはどうしても向いていない。例え眠っていてもアキトの叫び声を聞いたら一瞬で飛び起きる自信はあるが、対策が出来る事ならしておきたい。
そこで大事な恋人の身の安全のためにと俺が用意したのが、普段使いのものとは違う高品質な魔物避けの薬草というわけだ。
これを使っておけば、アキトに近づける魔物は一気に減る。なんといってもこれはBランクにも効いたという薬草だからな。火をつけた時にエジの花の香りが一瞬だけするのが、上物の証拠だ。アキトは好きな香りかもしれないな。機会があれば、アキトにも嗅いでもらおう。
そんな事を考えつつ、俺は休憩所の四隅を順番に回っていった。それぞれの場所に作られたくぼみに火をつけた魔物避けを設置しながら、周りの気配をひたすらに探り続ける。
南方向にはウルフ系が四頭、まだ距離は遠いな。西の方角にはスライムの気配が五頭、いや…六頭か。気配からしてこれはヒュージスライムでは無いから危険は少ない。
それに人の気配も近くには無さそうだ。商売敵に狙われるかもと聞いていたが、少なくとも今日はその可能性は低いようだ。
周囲の安全確認をきっちりと終えた俺が合流する頃には、すでに休憩所の片隅には四つのテントが並んでいた。切り株に腰を下ろしたカーディさんとクリスの向かいに、アキトも座っているみたいだ。
「ただいま」
「ひゃっ」
ぼんやりとしていたアキトは可愛い声を上げると、バッと俺の方を振り返った。何か考え事でもしていたんだろうか?
「アキト?大丈夫?」
「大丈夫!ごめん、気を抜いてた…二人の護衛役なのに」
しょんぼりと肩を落として反省しているアキトの頭を、俺はぽんぽんと軽く撫でる。
「俺が周りを警戒してたんだから、少しぐらい気を抜いても良いんだよ」
あの魔物避けを設置した今、Bランク以下の魔物は入ってこれない。後は人間を警戒すれば良いだけだ。
「ん…ありがとう」
「はい、どういたしまして」
ハッと何かに気づいた顔をしたアキトは、にっこりと笑みを浮かべてから口を開いた。
「おかえりなさい、ハル」
「ただいま、アキト」
何の変哲もないただの森の野営地なのに、アキトがそう言ってくれるだけで肩の力が少し抜けた。アキトのおかえりの威力はすごいな。
「おかえりなさい、ハルさん」
「おかえり」
俺達の会話が一段落するのを待ってくれていたのか、クリスさんとカーディさんはそっと声をかけてきた。ああ、依頼人に報告をするのを忘れるなんて、俺らしくないな。二人はにこにこ笑って俺達を見ているから、気分を害した様子は無さそうだが報告は必要だろう。
「ああ、ただいま」
「どうでしたか?」
「周りに人の気配は無いし、魔物の気配はまだ遠いな」
一応ウルフ系とスライム系のいる方角を伝えれば、クリスさんはなるほどと頷いた。
「今回は魔物避けの薬草を良い物に変えておいたから、よほどの事が無い限り近づいてはこないだろうが…」
クリスさんは俺の言葉に片眉をくいっと上げたが、指摘はせずに口を開いた。
「ありがとうございます。では夕食にしましょうか」
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