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314.護衛依頼へ出発
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この世界の長距離移動は、何日かかるなんてはっきりとした予定を組む事はできないらしい。電車とか飛行機とかみたいな、到着時間が分かる移動手段じゃないんだから当然と言えば当然だよね。
俺としてはハルと一緒にいられるから問題は無いんだけど、いつ帰って来れるかが分からないってのはちょっと困る。
レーブンさんには依頼を受けたとちゃんと報告をしてから、いない間の宿代も先払いさせてもらった。払わなくても勝手に誰かに貸したりはしないぞと言われたけど、そこは甘えて良い所じゃないとなかば無理やり払わせてもらった。
依頼のために必要なものを買いそろえて回るのも楽しかったし、全ての用意が終わった時には何だか旅行前日みたいなワクワク感があった。
出発の日の朝、早朝に起きだした俺達は出発準備を整えると、黒鷹亭の部屋を出た。速すぎるせいか人が全くいない廊下を進み、階下へと下りていく。
「おはよう、アキト、ハル」
普段通りに受付カウンターの前に腰を下ろしていたレーブンさんは、そう言って微笑みかけてくれた。
「おはようございます、レーブンさん」
「おはよう、レーブン」
「早くに起こしてしまってごめんなさい」
「いや、俺はいつもこの時間には起きてるからな」
あっさりとそう答えたレーブンさんは、普段から朝食の仕込みのために早起きしてるんだと続けた。本当にそうなのか、それとも俺達が気にしないようにそう言ってくれてるのか。どっちだろうと考えていると、レーブンさんはカウンターに四つの包みを並べた。
「これは差し入れの飯だ、持っていけ」
俺はその言葉に驚いて、まじまじとその包みを見つめた。こんな早くに四つもお弁当を作ってくれたって事?
「良いのか?」
「ああ、お前らの分と、クリスとカーディの分だ。一緒に食え」
「レーブンさん、ありがとうございます!」
「ありがとう」
レーブンさんは俺とハルののお礼の言葉に、照れくさそうに手を振って答えにかえた。
「アキト、ハル」
「はい」
「なんだ?」
まっすぐに俺達の目を見据えて、レーブンさんは口を開いた。
「無事に帰ってこいよ」
「はい!いってきます!」
「いってくる」
「ああ、いってこい」
帰る場所があるって、本当に嬉しい事だな。レーブンさんへのお土産は、絶対に買うぞと決意しながら、俺達は待ち合わせ場所である南門へと急いだ。
「えーと…まだ来てないかな?」
「ああ、まだみたいだな」
ぐるりと見渡してみた広場は、人も少ない上にまだ屋台すら並んでいなかった。さすがにこれだけ人がいなければ、見落とす事は無いだろう。
「屋台が無いと広いねぇ」
「ああ、広いな」
大門が見渡せる場所にあるベンチに腰を下ろして、俺達は自然と手を握り合った。街の外では繋げないんだから、今のうちに充電しておかないと。
「緊張してる?」
「いや、それが全然してないんだよね」
「そうなのか」
「ハルと一緒だからじゃないかな?」
「それは光栄だな」
「昨日までは旅行前みたいなワクワク感だったんだけど…」
「うん」
「レーブンさんの無事に帰ってこいって言葉で気が引き締まった気がする」
「…そうだな。俺も気が引き締まったよ」
「さすがレーブンさんだね」
「そう、だな…でもやっぱり他の奴を褒められるとやっぱり妬けるな」
「えーレーブンさんも駄目なの?」
クスクスと笑い合いながら話していると、クリスさんとカーディさんが道の向こうから歩いてきた。当然のように手を繋いでいるのが、俺達とお揃いだ。
カーディさんは使い込んだ冒険者装備に身を包んでいるが、クリスさんは商人が良く使うシンプルだが上質なマントを羽織っている。
「お待たせしてすみません」
「すまない」
「いや、まだ時間前だ」
「気にしないで下さい」
何日もかけて移動するの予定なのに荷物がびっくりするぐらい少ないのは、魔道収納鞄のおかげだろうな。異世界のすごい所だな。
「じゃあ行こうか」
俺としてはハルと一緒にいられるから問題は無いんだけど、いつ帰って来れるかが分からないってのはちょっと困る。
レーブンさんには依頼を受けたとちゃんと報告をしてから、いない間の宿代も先払いさせてもらった。払わなくても勝手に誰かに貸したりはしないぞと言われたけど、そこは甘えて良い所じゃないとなかば無理やり払わせてもらった。
依頼のために必要なものを買いそろえて回るのも楽しかったし、全ての用意が終わった時には何だか旅行前日みたいなワクワク感があった。
出発の日の朝、早朝に起きだした俺達は出発準備を整えると、黒鷹亭の部屋を出た。速すぎるせいか人が全くいない廊下を進み、階下へと下りていく。
「おはよう、アキト、ハル」
普段通りに受付カウンターの前に腰を下ろしていたレーブンさんは、そう言って微笑みかけてくれた。
「おはようございます、レーブンさん」
「おはよう、レーブン」
「早くに起こしてしまってごめんなさい」
「いや、俺はいつもこの時間には起きてるからな」
あっさりとそう答えたレーブンさんは、普段から朝食の仕込みのために早起きしてるんだと続けた。本当にそうなのか、それとも俺達が気にしないようにそう言ってくれてるのか。どっちだろうと考えていると、レーブンさんはカウンターに四つの包みを並べた。
「これは差し入れの飯だ、持っていけ」
俺はその言葉に驚いて、まじまじとその包みを見つめた。こんな早くに四つもお弁当を作ってくれたって事?
「良いのか?」
「ああ、お前らの分と、クリスとカーディの分だ。一緒に食え」
「レーブンさん、ありがとうございます!」
「ありがとう」
レーブンさんは俺とハルののお礼の言葉に、照れくさそうに手を振って答えにかえた。
「アキト、ハル」
「はい」
「なんだ?」
まっすぐに俺達の目を見据えて、レーブンさんは口を開いた。
「無事に帰ってこいよ」
「はい!いってきます!」
「いってくる」
「ああ、いってこい」
帰る場所があるって、本当に嬉しい事だな。レーブンさんへのお土産は、絶対に買うぞと決意しながら、俺達は待ち合わせ場所である南門へと急いだ。
「えーと…まだ来てないかな?」
「ああ、まだみたいだな」
ぐるりと見渡してみた広場は、人も少ない上にまだ屋台すら並んでいなかった。さすがにこれだけ人がいなければ、見落とす事は無いだろう。
「屋台が無いと広いねぇ」
「ああ、広いな」
大門が見渡せる場所にあるベンチに腰を下ろして、俺達は自然と手を握り合った。街の外では繋げないんだから、今のうちに充電しておかないと。
「緊張してる?」
「いや、それが全然してないんだよね」
「そうなのか」
「ハルと一緒だからじゃないかな?」
「それは光栄だな」
「昨日までは旅行前みたいなワクワク感だったんだけど…」
「うん」
「レーブンさんの無事に帰ってこいって言葉で気が引き締まった気がする」
「…そうだな。俺も気が引き締まったよ」
「さすがレーブンさんだね」
「そう、だな…でもやっぱり他の奴を褒められるとやっぱり妬けるな」
「えーレーブンさんも駄目なの?」
クスクスと笑い合いながら話していると、クリスさんとカーディさんが道の向こうから歩いてきた。当然のように手を繋いでいるのが、俺達とお揃いだ。
カーディさんは使い込んだ冒険者装備に身を包んでいるが、クリスさんは商人が良く使うシンプルだが上質なマントを羽織っている。
「お待たせしてすみません」
「すまない」
「いや、まだ時間前だ」
「気にしないで下さい」
何日もかけて移動するの予定なのに荷物がびっくりするぐらい少ないのは、魔道収納鞄のおかげだろうな。異世界のすごい所だな。
「じゃあ行こうか」
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