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303.依頼の詳細説明
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「あと、私の肩書を聞いても態度を変えなかったのも、珍しいですから」
あ、それは俺がストファー魔道具店を知らなかったからですとは言えないよね。さすがにそれが失礼過ぎるのは分かるから、俺は何も言わずにただ黙り込んだ。
あの時は確か数日してからハルに教えてもらったんだよね、ストファー魔道具店は実は有名なお店なんだよって。あれからだいぶ経ったけど今でも魔道具のお店に行った事は無いから、詳しい事は分からないままだ。ごめんなさい。
「ああ、アキトは肩書で人を判断しないからな」
「私がサブマスと知っても態度は変わらなかったですね、アキトさんは」
「そうなんですか?さすがですね」
何か俺が黙ってる間に、勝手にすごい人扱いされている気がする。そんなんじゃないですと訂正しようとしたけれど、俺が口を開く前にハルが真剣な顔で口を開いたので流れてしまった。どうしよう。
「アキトはともかく俺とは面識はないわけだが、そこは良いのか?」
真剣な表情のハルをちらりと見て、クリスさんは不敵に笑ってみせた。
「自分が信頼している相手の信頼している相手なら、私は信じてみる事にしてるんですよ」
「信頼している相手…というのは聞いても大丈夫か?」
「ええ、もちろん。メロウさんとレーブンさんですよ」
「ああ、レーブンにも聞いたのか…ちなみに俺の身分については?」
「今のあなたはただの冒険者。先ほどハルさんと名乗られましたよね?以前の話は必要ないと思いましたが違いますか?」
クリスさんはそう言い切ると、にっこりと笑ってみせた。あ、クリスさんもやっぱり知ってはいるんだ。騎士のハロルドの事も知ってるけど、今は冒険者のハルとして扱いますよって事だよね。
「いや、それで問題ない」
ちなみにカーディさんは、何の話だろうと言いたげな不思議そうな顔をして二人のやりとりを見つめていた。カーディさんは多分知らないんだろうな。
「今回の目的地はどこだ?」
「目的地はイーシャル領で、目的は私の親戚に会うのと商売の材料の購入です」
ぽんぽんと飛び出すハルの質問に、クリスさんもすらすらと答えていく。
「日程ははっきりとは指定されていませんが、イーシャル領までの移動中とあちらでの滞在、さらにトライプール領に戻ってくるまで宿泊費は依頼人持ちだそうですよ」
「そうなのか…野宿の予定は?」
「イーシャル領までなら、野宿はあっても一度ですね。それ以外は宿を取るつもりです」
「宿の手配はまかせて良いそうですよ」
メロウさんも横からしっかり情報を増やしていってくれてるんだけど、護衛依頼が初めてな俺にはそれが良い条件なのかどうかすら分からない。白熱するやりとりをぼんやりとただ聞き流してていると、不意に目があったカーディさんににっこりと笑いかけられた。
「こういうやりとりはクリスの方が得意だから、俺はさっぱり分からないんだ」
三人の話を邪魔しないようにと気づかったのか、カーディさんはひそひそと小声で話しかけてきた。
「あ、俺もです。ハルが頼りになるからって甘えちゃってて…」
俺も同じく、ひっそりと小声で答えた。
「まあ、頼れる伴侶で助かってるけどな」
「自分も何かで役立ちたいって思いますよね」
しみじみと答えれば、カーディさんはふふと楽し気に笑って続けた。
「出会った頃よりも今の方が、アキトは幸せそうだな?」
「ええ、今すごく幸せなので。大好きな人と恋人同士になれましたから」
「それは良い事だな」
「お二人はあの時と変わらず幸せそうですね?」
「ああ、クリスがいてくれればそれだけで俺は幸せなんだ」
「あ、それは俺も分かります」
カーディさんもこの世界の人らしいしっかりした体格だけど、中身は何だかほんわかした雰囲気の人なんだな。ちょっと食堂と酒場で話したぐらいだと気づかなかったけど、すごく話しやすくて癒し系な人だ。
「もしこの依頼を受けてくれる事が決まったら、アキトとは色々話したい事があるんだ」
「もしかして…恋人自慢ですか?」
「ああ、俺は伴侶自慢、アキトは恋人自慢でどうだ?」
「いいですね!」
カーディーさんになら俺もいろんなことを話せそうだ。それに俺がのろけても、絶対笑ってのろけ返してくれると思うんだ。ハルの事が自慢できるめったにない機会かもしれない。俺はワクワクしながら大きく頷いた。
ふと気づけば、室内はしんと静まり返ってた。
話してる間に話が終わったのかなと何げなく視線を向けたら、クリスさんとハルが両手で顔を隠してうつむいていた。え、何があったの?俺とカーディさんは、慌ててメロウさんに視線を向けた。
「あの?」
「どうしたんだ?」
「ああ、驚かせてしまってすみません。お二人のやりとりが可愛すぎると呟いてから二人揃ってこの状態です」
呆れた顔のメロウさんが、すぐにそう教えてくれた。小声で話してたのにばっちり聞こえてたのか。でも可愛いやりとりなんてしてないよね?俺とカーディさんは二人で顔を見合わせた。
「お気になさらずに。元に戻るまでは放っておきましょう」
あっさりとそう言い切ったメロウさんは、腰につけていた鞄から果実水を取り出すと俺とカーディさんの前にそっと置いてくれた。
「よければどうぞ」
あ、それは俺がストファー魔道具店を知らなかったからですとは言えないよね。さすがにそれが失礼過ぎるのは分かるから、俺は何も言わずにただ黙り込んだ。
あの時は確か数日してからハルに教えてもらったんだよね、ストファー魔道具店は実は有名なお店なんだよって。あれからだいぶ経ったけど今でも魔道具のお店に行った事は無いから、詳しい事は分からないままだ。ごめんなさい。
「ああ、アキトは肩書で人を判断しないからな」
「私がサブマスと知っても態度は変わらなかったですね、アキトさんは」
「そうなんですか?さすがですね」
何か俺が黙ってる間に、勝手にすごい人扱いされている気がする。そんなんじゃないですと訂正しようとしたけれど、俺が口を開く前にハルが真剣な顔で口を開いたので流れてしまった。どうしよう。
「アキトはともかく俺とは面識はないわけだが、そこは良いのか?」
真剣な表情のハルをちらりと見て、クリスさんは不敵に笑ってみせた。
「自分が信頼している相手の信頼している相手なら、私は信じてみる事にしてるんですよ」
「信頼している相手…というのは聞いても大丈夫か?」
「ええ、もちろん。メロウさんとレーブンさんですよ」
「ああ、レーブンにも聞いたのか…ちなみに俺の身分については?」
「今のあなたはただの冒険者。先ほどハルさんと名乗られましたよね?以前の話は必要ないと思いましたが違いますか?」
クリスさんはそう言い切ると、にっこりと笑ってみせた。あ、クリスさんもやっぱり知ってはいるんだ。騎士のハロルドの事も知ってるけど、今は冒険者のハルとして扱いますよって事だよね。
「いや、それで問題ない」
ちなみにカーディさんは、何の話だろうと言いたげな不思議そうな顔をして二人のやりとりを見つめていた。カーディさんは多分知らないんだろうな。
「今回の目的地はどこだ?」
「目的地はイーシャル領で、目的は私の親戚に会うのと商売の材料の購入です」
ぽんぽんと飛び出すハルの質問に、クリスさんもすらすらと答えていく。
「日程ははっきりとは指定されていませんが、イーシャル領までの移動中とあちらでの滞在、さらにトライプール領に戻ってくるまで宿泊費は依頼人持ちだそうですよ」
「そうなのか…野宿の予定は?」
「イーシャル領までなら、野宿はあっても一度ですね。それ以外は宿を取るつもりです」
「宿の手配はまかせて良いそうですよ」
メロウさんも横からしっかり情報を増やしていってくれてるんだけど、護衛依頼が初めてな俺にはそれが良い条件なのかどうかすら分からない。白熱するやりとりをぼんやりとただ聞き流してていると、不意に目があったカーディさんににっこりと笑いかけられた。
「こういうやりとりはクリスの方が得意だから、俺はさっぱり分からないんだ」
三人の話を邪魔しないようにと気づかったのか、カーディさんはひそひそと小声で話しかけてきた。
「あ、俺もです。ハルが頼りになるからって甘えちゃってて…」
俺も同じく、ひっそりと小声で答えた。
「まあ、頼れる伴侶で助かってるけどな」
「自分も何かで役立ちたいって思いますよね」
しみじみと答えれば、カーディさんはふふと楽し気に笑って続けた。
「出会った頃よりも今の方が、アキトは幸せそうだな?」
「ええ、今すごく幸せなので。大好きな人と恋人同士になれましたから」
「それは良い事だな」
「お二人はあの時と変わらず幸せそうですね?」
「ああ、クリスがいてくれればそれだけで俺は幸せなんだ」
「あ、それは俺も分かります」
カーディさんもこの世界の人らしいしっかりした体格だけど、中身は何だかほんわかした雰囲気の人なんだな。ちょっと食堂と酒場で話したぐらいだと気づかなかったけど、すごく話しやすくて癒し系な人だ。
「もしこの依頼を受けてくれる事が決まったら、アキトとは色々話したい事があるんだ」
「もしかして…恋人自慢ですか?」
「ああ、俺は伴侶自慢、アキトは恋人自慢でどうだ?」
「いいですね!」
カーディーさんになら俺もいろんなことを話せそうだ。それに俺がのろけても、絶対笑ってのろけ返してくれると思うんだ。ハルの事が自慢できるめったにない機会かもしれない。俺はワクワクしながら大きく頷いた。
ふと気づけば、室内はしんと静まり返ってた。
話してる間に話が終わったのかなと何げなく視線を向けたら、クリスさんとハルが両手で顔を隠してうつむいていた。え、何があったの?俺とカーディさんは、慌ててメロウさんに視線を向けた。
「あの?」
「どうしたんだ?」
「ああ、驚かせてしまってすみません。お二人のやりとりが可愛すぎると呟いてから二人揃ってこの状態です」
呆れた顔のメロウさんが、すぐにそう教えてくれた。小声で話してたのにばっちり聞こえてたのか。でも可愛いやりとりなんてしてないよね?俺とカーディさんは二人で顔を見合わせた。
「お気になさらずに。元に戻るまでは放っておきましょう」
あっさりとそう言い切ったメロウさんは、腰につけていた鞄から果実水を取り出すと俺とカーディさんの前にそっと置いてくれた。
「よければどうぞ」
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