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294.【ハル視点】メロウとの会話
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アキトは俺の方に小さく手を振って、部屋から出ていった。
「ハルさんは、ここでお待ちくださいね」
分かってるだろうけどついてくるとは言うなよと言いたげなメロウの言葉に、俺は小さく頷きを返した。
ランクが上がる度に行われるあの質問には、どんな理由があっても他者の立ち合いは許されない。必ずギルド職員と冒険者の一対一で行われるものだからな。まあ幽霊だった時は勝手に立ち会っていたんだが、それは例外という事で良いだろう。
それにしても、がっつく年上は嫌われる――か。助言として受け取っておくなんて軽く答えてはみたけれど、その言葉がやけに耳に残っていた。
これでも理性を総動員して、自分の欲望を抑え込んでいるんだけどな。そう考えると自然と苦笑が漏れた。
アキトに無理をさせたくない一心で、昨夜だってギリギリの所で我慢した。本当なら黒鷹亭の部屋から一歩も出ずに、二人で蜜月を過ごしたいぐらいなんだが。
そんな事をぼんやりと考えていると、メロウとアキトの気配が近づいてくるのが分かった。
「お待たせしました、ハルさん」
メロウの言葉にいやと返せば、メロウの後ろからアキトがひょこっと顔を出した。
「ハル、ただいま」
ただいまと言われれば、おかえりと返す。それを二人の日常にしたいと言われたのは、とても嬉しかった。だからすぐにおかえりと答えたかったけれど、ここにはメロウがいる。
正直に言えば抱きしめてる所やキスをしている所を見られるより、俺にとっては恥ずかしいんだが。
「…おかえり、アキト」
どれだけ恥ずかしくても、アキトの期待に背く事はできない。俺は照れながらも何とかそう答えた。メロウはそんな俺たちのやりとりを、何も言わずにただじっと見つめていた。
「アキトさんのギルドカードです、確認して下さいね」
向かい合わせに座ったメロウは、アキトの前にそっとギルドカードを差し出した。カードを受け取ったアキトは、興味深そうにまじまじと見つめている。
「本当にC級って書いてある…」
ほらと見せてくれたカードには、アキトC級の文字とハルC級の文字が並んでいた。お揃いだと呟いたアキトを、今すぐ抱きしめたいと思った。
「ええ、おめでとうございます、アキトさん」
「ありがとうございますっ!」
「おめでとう、アキト」
「ありがと、ハル」
嬉しそうな笑顔に惹かれるように、俺はそっとアキトの頭を撫でた。メロウの前だからとすぐに止められるかと思ったが、予想に反してもっとと言いたげに頭を差し出してくる。
人前で抱きしめるのは駄目なのに、撫でられるのは良いのか。アキトの中の線引きはよく分からないが、可愛いからまあ良いか。
そっと優しく撫で続ければ、アキトはふにゃりと笑みをこぼした。そのふんわりとした笑顔がたまらなく愛おしい。
「それにしても、ハルさんとは長い付き合いですが…」
撫でられることに夢中なアキトを愛でていると、メロウがそっと小声で話しかけてきた。
「ん?」
「こんなに浮かれた姿は…初めてみますね」
「ああ――俺も、驚いてるよ」
いや、きっと誰よりも俺本人が一番驚いてると思う。ずっと誰にも本気になれなかったのに、こんなに夢中になれる相手がいるなんてな。
アキトの事は可愛がりたいし、大切にしたいし、俺が持てる力全てを使って守りたい。騎士としての義務感以外でそんな風に思うのは、生まれて初めての事だ。
「幸せそうで何よりです」
メロウはそう言うと、楽し気に笑ってみせた。目の前でイチャイチャされているのに、そう言えるメロウって実はすごい奴なのかもしれない。
「ああ、これからもっと幸せになる予定だ」
「アキトさんと一緒なら、きっとなれるでしょうね」
メロウはあっさりとそう答えてくれた。そうだな、アキトと一緒に幸せになるんだ。
「――ありがとう、メロウ」
俺がお礼を言ったのと、アキトがハッと我に返ったのは同時だった。一瞬でボンッと赤くなったアキトに気づいた俺は、すぐに頭から手を離した。
「ごめんね」
「いや、えっと嬉しかったんだけど、恥ずかしい…だけ、です」
「じゃあまた二人きりの時に」
約束だよと笑みを浮かべれば、アキトは慌てて目を反らしながらもこくんと小さく頷いてくれた。照れるアキトも可愛いな。
「あの、メロウさんも、ごめんなさい」
「あ、いえ、私の事は気にしないでください」
恥ずかしそうなアキトの謝罪を、メロウはさらりと受け入れた。さっきまで俺達のイチャイチャを楽し気に観察してたようには見えないな。
「ハルさんは、ここでお待ちくださいね」
分かってるだろうけどついてくるとは言うなよと言いたげなメロウの言葉に、俺は小さく頷きを返した。
ランクが上がる度に行われるあの質問には、どんな理由があっても他者の立ち合いは許されない。必ずギルド職員と冒険者の一対一で行われるものだからな。まあ幽霊だった時は勝手に立ち会っていたんだが、それは例外という事で良いだろう。
それにしても、がっつく年上は嫌われる――か。助言として受け取っておくなんて軽く答えてはみたけれど、その言葉がやけに耳に残っていた。
これでも理性を総動員して、自分の欲望を抑え込んでいるんだけどな。そう考えると自然と苦笑が漏れた。
アキトに無理をさせたくない一心で、昨夜だってギリギリの所で我慢した。本当なら黒鷹亭の部屋から一歩も出ずに、二人で蜜月を過ごしたいぐらいなんだが。
そんな事をぼんやりと考えていると、メロウとアキトの気配が近づいてくるのが分かった。
「お待たせしました、ハルさん」
メロウの言葉にいやと返せば、メロウの後ろからアキトがひょこっと顔を出した。
「ハル、ただいま」
ただいまと言われれば、おかえりと返す。それを二人の日常にしたいと言われたのは、とても嬉しかった。だからすぐにおかえりと答えたかったけれど、ここにはメロウがいる。
正直に言えば抱きしめてる所やキスをしている所を見られるより、俺にとっては恥ずかしいんだが。
「…おかえり、アキト」
どれだけ恥ずかしくても、アキトの期待に背く事はできない。俺は照れながらも何とかそう答えた。メロウはそんな俺たちのやりとりを、何も言わずにただじっと見つめていた。
「アキトさんのギルドカードです、確認して下さいね」
向かい合わせに座ったメロウは、アキトの前にそっとギルドカードを差し出した。カードを受け取ったアキトは、興味深そうにまじまじと見つめている。
「本当にC級って書いてある…」
ほらと見せてくれたカードには、アキトC級の文字とハルC級の文字が並んでいた。お揃いだと呟いたアキトを、今すぐ抱きしめたいと思った。
「ええ、おめでとうございます、アキトさん」
「ありがとうございますっ!」
「おめでとう、アキト」
「ありがと、ハル」
嬉しそうな笑顔に惹かれるように、俺はそっとアキトの頭を撫でた。メロウの前だからとすぐに止められるかと思ったが、予想に反してもっとと言いたげに頭を差し出してくる。
人前で抱きしめるのは駄目なのに、撫でられるのは良いのか。アキトの中の線引きはよく分からないが、可愛いからまあ良いか。
そっと優しく撫で続ければ、アキトはふにゃりと笑みをこぼした。そのふんわりとした笑顔がたまらなく愛おしい。
「それにしても、ハルさんとは長い付き合いですが…」
撫でられることに夢中なアキトを愛でていると、メロウがそっと小声で話しかけてきた。
「ん?」
「こんなに浮かれた姿は…初めてみますね」
「ああ――俺も、驚いてるよ」
いや、きっと誰よりも俺本人が一番驚いてると思う。ずっと誰にも本気になれなかったのに、こんなに夢中になれる相手がいるなんてな。
アキトの事は可愛がりたいし、大切にしたいし、俺が持てる力全てを使って守りたい。騎士としての義務感以外でそんな風に思うのは、生まれて初めての事だ。
「幸せそうで何よりです」
メロウはそう言うと、楽し気に笑ってみせた。目の前でイチャイチャされているのに、そう言えるメロウって実はすごい奴なのかもしれない。
「ああ、これからもっと幸せになる予定だ」
「アキトさんと一緒なら、きっとなれるでしょうね」
メロウはあっさりとそう答えてくれた。そうだな、アキトと一緒に幸せになるんだ。
「――ありがとう、メロウ」
俺がお礼を言ったのと、アキトがハッと我に返ったのは同時だった。一瞬でボンッと赤くなったアキトに気づいた俺は、すぐに頭から手を離した。
「ごめんね」
「いや、えっと嬉しかったんだけど、恥ずかしい…だけ、です」
「じゃあまた二人きりの時に」
約束だよと笑みを浮かべれば、アキトは慌てて目を反らしながらもこくんと小さく頷いてくれた。照れるアキトも可愛いな。
「あの、メロウさんも、ごめんなさい」
「あ、いえ、私の事は気にしないでください」
恥ずかしそうなアキトの謝罪を、メロウはさらりと受け入れた。さっきまで俺達のイチャイチャを楽し気に観察してたようには見えないな。
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