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275.イチャイチャとは
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ひとしきり転がってなんとか気持ちを落ち着けて、俺はやっと動きを止めた。頬はまだ熱いから、顔は枕に埋めたままだ。ハルはそんな俺に近づいてくると、そっとベッドの端へと腰かけた。
「ちなみにアキトの思う恋人のイチャイチャって、例えば何?」
どこまでも甘い声に誘われるように、俺は躊躇いながらも口を開いた。
「手を繋いだり――」
そう口に出して言うなり、ハルの手が伸びてきて俺の手をきゅっと握りこんだ。俺とは全く違うごつごつした骨の感触が伝わってくる。剣だこらしき凹凸には、ハルのこれまでの努力がにじみ出ている。手すら格好良いんだからすごいよなぁ。
「それで、他には?」
「キス、したり――?」
ハルは転がったままの俺のつむじに、チュッと音を立てて軽いキスを落としてくれた。つむじにキスも、そりゃあ嬉しいよ。嬉しいけど、俺が欲しいのはそこじゃない。うつ伏せだった体をコロンと転がして仰向けになると、俺はハルをじっと見上げた。
「…口にして」
気づけばこぼれ落ちていた俺のおねだりに、ハルは幸せそうに笑って頷いた。ああ、こんな直球のおねだりをしても、ハルは本当に引かないんだな。
ゆっくりと近づいてきたハルの唇は、俺の唇にそっと重なった。ついばむような軽いキスを何度も何度も贈ってくれるハルに、俺はうっすらと誘うように唇を開いた。昨夜覚えたばかりの深いキスを欲しがる仕草だ。俺の意図をきっちりと理解したハルは、すぐに舌を絡めてくれた。
キスしてる顔が見てみたいなと閉じていた目を開けば、ハルもじっと俺を見つめていた。欲望をはらんだギラギラした目に、一気に体温が上がった気がした。
「んっ…」
昨日もこんな目で見られてたのかなと想像したら、もう駄目だった。こんなの我慢できる筈が無い。
「っ!ハル!」
そっと手を伸ばしたけれど、ハルは俺の腕を避けるとぎこちなく視線を反らした。
「アキト、ごめん。その…今日は止めておこう?」
さっきまであんなにイチャイチャしてたのに、セックスするのは駄目なの?一瞬だけ突き放されたような気分になったけど、俺はまっすぐにハルを見つめた。
ハルの愛情は疑いようがない。恋愛初心者の俺でも分かるぐらい、ハルの目には愛おしさが込められてた。あれだけ甘やかしてくれてたのに、セックスだけはしないなんてきっと何か理由があるんだ。そう考えた俺は、勝手に色々と想像するのは止めて率直にハルに尋ねた。
「なんで?」
ハルは尋ねれば必ず答えてくれる。そんな信頼もあったからね。ハルはそんな俺の反応がよっぽど予想外だったのか、大きく目を見開いたまま俺を見つめていた。
「怒らないんだね」
「何か理由があるんでしょ?」
ふにゃりと笑ったハルは、ちゃんと説明するねと前置きをしてから話し出した。
「まだ抱かれる事に慣れてないアキトの体は、回復薬を使わないと翌日は動けなくなると思うんだ」
「うん、そうだろうね」
初めてなのにあれだけ何回もしたんだから、もし回復薬が無かったらきっと立ち上がる事もできなかったと思う。今日は一日ベッドの住人だっただろうな。
「問題はその回復薬なんだ」
「回復薬が?」
「使いすぎると効きにくくなる体質の人もいるし、逆に効きすぎて中毒状態になるなんて体質の人もいるんだ」
昨夜も回復薬を使った後は、俺の体調に変化が無いかこっそりと観察してたんだって。何も知らずにスヤスヤ寝てたんだけど、じゃあハルはあんまり寝れてなかったって事か。
「迷惑かけてごめんね」
「いや、俺のせいだし。それに寝てるアキトを見つめるのは楽しいから良いんだけど」
「楽しいって…まあ良いや」
「でも、連日使うのはさすがに危険すぎる」
「だから、今日は止めておこうに繋がるのか」
「怪我のせいで連日使う必要があるとかなら躊躇はしないんだけど、そんな理由でアキトの体に負担をかけるのは自分が許せないから」
ハルはそう言うと、申し訳なさそうに俺を見つめた。
「アキトから恋人らしいイチャイチャって言われて調子に乗ったんだ、ごめんね」
深いキスまではしないつもりだったのに、我を忘れてしまったと謝られてしまった。
「いや、その俺もごめん。知らなかったとはいえ誘っちゃったし」
「今日は無理だけど…また誘って欲しいな」
「それはもちろん」
ハルは俺が何を言っても引かないんだって分かったから、恥ずかしくてもちゃんと誘うよ。イチャイチャしたいって言っただけでこんなに喜んでくれるんだもんな。
「その代わり、今日は手を繋いで寝ようか」
「っ!それ良いね!」
距離のあったベッド同士を移動させてくっつければ、まるで大きな一つのベッドみたいになった。寝転がったままの俺の隣に、ハルもころりと寝転がる。すっと差し出された手をきゅっと握り返せば、ハルの目が幸せそうに蕩けた。
「おやすみ、ハル」
「おやすみ、アキト」
「ちなみにアキトの思う恋人のイチャイチャって、例えば何?」
どこまでも甘い声に誘われるように、俺は躊躇いながらも口を開いた。
「手を繋いだり――」
そう口に出して言うなり、ハルの手が伸びてきて俺の手をきゅっと握りこんだ。俺とは全く違うごつごつした骨の感触が伝わってくる。剣だこらしき凹凸には、ハルのこれまでの努力がにじみ出ている。手すら格好良いんだからすごいよなぁ。
「それで、他には?」
「キス、したり――?」
ハルは転がったままの俺のつむじに、チュッと音を立てて軽いキスを落としてくれた。つむじにキスも、そりゃあ嬉しいよ。嬉しいけど、俺が欲しいのはそこじゃない。うつ伏せだった体をコロンと転がして仰向けになると、俺はハルをじっと見上げた。
「…口にして」
気づけばこぼれ落ちていた俺のおねだりに、ハルは幸せそうに笑って頷いた。ああ、こんな直球のおねだりをしても、ハルは本当に引かないんだな。
ゆっくりと近づいてきたハルの唇は、俺の唇にそっと重なった。ついばむような軽いキスを何度も何度も贈ってくれるハルに、俺はうっすらと誘うように唇を開いた。昨夜覚えたばかりの深いキスを欲しがる仕草だ。俺の意図をきっちりと理解したハルは、すぐに舌を絡めてくれた。
キスしてる顔が見てみたいなと閉じていた目を開けば、ハルもじっと俺を見つめていた。欲望をはらんだギラギラした目に、一気に体温が上がった気がした。
「んっ…」
昨日もこんな目で見られてたのかなと想像したら、もう駄目だった。こんなの我慢できる筈が無い。
「っ!ハル!」
そっと手を伸ばしたけれど、ハルは俺の腕を避けるとぎこちなく視線を反らした。
「アキト、ごめん。その…今日は止めておこう?」
さっきまであんなにイチャイチャしてたのに、セックスするのは駄目なの?一瞬だけ突き放されたような気分になったけど、俺はまっすぐにハルを見つめた。
ハルの愛情は疑いようがない。恋愛初心者の俺でも分かるぐらい、ハルの目には愛おしさが込められてた。あれだけ甘やかしてくれてたのに、セックスだけはしないなんてきっと何か理由があるんだ。そう考えた俺は、勝手に色々と想像するのは止めて率直にハルに尋ねた。
「なんで?」
ハルは尋ねれば必ず答えてくれる。そんな信頼もあったからね。ハルはそんな俺の反応がよっぽど予想外だったのか、大きく目を見開いたまま俺を見つめていた。
「怒らないんだね」
「何か理由があるんでしょ?」
ふにゃりと笑ったハルは、ちゃんと説明するねと前置きをしてから話し出した。
「まだ抱かれる事に慣れてないアキトの体は、回復薬を使わないと翌日は動けなくなると思うんだ」
「うん、そうだろうね」
初めてなのにあれだけ何回もしたんだから、もし回復薬が無かったらきっと立ち上がる事もできなかったと思う。今日は一日ベッドの住人だっただろうな。
「問題はその回復薬なんだ」
「回復薬が?」
「使いすぎると効きにくくなる体質の人もいるし、逆に効きすぎて中毒状態になるなんて体質の人もいるんだ」
昨夜も回復薬を使った後は、俺の体調に変化が無いかこっそりと観察してたんだって。何も知らずにスヤスヤ寝てたんだけど、じゃあハルはあんまり寝れてなかったって事か。
「迷惑かけてごめんね」
「いや、俺のせいだし。それに寝てるアキトを見つめるのは楽しいから良いんだけど」
「楽しいって…まあ良いや」
「でも、連日使うのはさすがに危険すぎる」
「だから、今日は止めておこうに繋がるのか」
「怪我のせいで連日使う必要があるとかなら躊躇はしないんだけど、そんな理由でアキトの体に負担をかけるのは自分が許せないから」
ハルはそう言うと、申し訳なさそうに俺を見つめた。
「アキトから恋人らしいイチャイチャって言われて調子に乗ったんだ、ごめんね」
深いキスまではしないつもりだったのに、我を忘れてしまったと謝られてしまった。
「いや、その俺もごめん。知らなかったとはいえ誘っちゃったし」
「今日は無理だけど…また誘って欲しいな」
「それはもちろん」
ハルは俺が何を言っても引かないんだって分かったから、恥ずかしくてもちゃんと誘うよ。イチャイチャしたいって言っただけでこんなに喜んでくれるんだもんな。
「その代わり、今日は手を繋いで寝ようか」
「っ!それ良いね!」
距離のあったベッド同士を移動させてくっつければ、まるで大きな一つのベッドみたいになった。寝転がったままの俺の隣に、ハルもころりと寝転がる。すっと差し出された手をきゅっと握り返せば、ハルの目が幸せそうに蕩けた。
「おやすみ、ハル」
「おやすみ、アキト」
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