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255.ウロス戦と感謝の言葉
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そこからは俺の魔法での援護なんて入る隙も無い程、ハルが一方的に圧倒していった。B級の魔物 対 C級の冒険者ですよね?って真顔で聞きたくなるぐらいには一方的だった。
突進攻撃をするウロスをひらりと避けては攻撃をしかけていくハルの動きに、俺はただただ見惚れるしか無かった。
「あ、あの!」
今はハルの戦闘を見るのに忙しいのに何だよと思いながら振り返れば、さっきまで縦横無尽に逃げ回っていたあの迷惑な冒険者三人組だった。
「何か?」
「さっきは俺達のために攻撃してくれてありがとう!」
へ?と首を傾げて固まってしまうぐらいには、意味が分からなかった。
「いえ、あの…」
貴方たちを助けたつもりなんてかけらも無いし、俺が助けたかったのは二人組の冒険者さんだけです。そう言う間もなく、男たちはぐいぐいと距離を詰めてくる。
「迷惑をかけた俺たちを助けてくれるなんて」
「天使みたいだ…」
「俺達に礼をさせてくれっ!」
暑苦しく詰め寄ってくる三人に、俺はぶんぶんと首を振りながら後ずさった。
「助けたつもりは無いので」
「いや、助かったよ」
「天使だ…」
「優しい上に謙虚だなんて!」
否定の言葉を返したら更に絡まれるなんて、もうどうしたら良いのか分からない。眠らせて静かにさせる魔法とか知ってたら使ってたかもしれないけど、そんな便利な魔法は知らないしどうしよう。
「お前達、アキトは俺の恋人だ…」
真後ろから聞こえてきた声にホッと息を吐く。ハルがいるならもう大丈夫だ。後ろを振り返れば、ハルはドサッと音を立てて担いでいたウロスの体を地面に下ろした。もう倒しきったんだとか、あの巨体を担いだ状態で移動できるのかとか聞きたい事は色々あったけど、ギロリと三人組を睨みつけたハルを見て飲み込んだ。
「アキトを口説くつもりなら…俺が相手になるぞ?」
ハルの低音での明らかな脅しに、ハルとウロスを交互に見つめていた三人は息を飲んだ。
「「「す、す…すみませんでしたー!」」」
そう叫ぶなり驚くほどのスピードで走り出すと、三人組はそのまま逃げて行ってしまった。あれだけ周りを巻き込みながら走り回ってたのに、まだ体力が残ってたんだ。ある意味すごいな。
「逃げ足だけは早いな…顔はしっかり覚えたけどな」
「ハル、怪我はしてない?」
さっきの三人組のせいで最後は見れてなかったからと尋ねれば、ハルは大丈夫だよと笑って答えてくれた。俺がホッと息を吐いた瞬間、後ろから声がかかった。
「すまない、ちょっと良いか?」
声をかけてきたのは、さっきの二人組の凛々しい女性だった。男性は一緒じゃないんだと視線を巡らせれば、すぐ近くの地面に座り込んでいた。
「助けてくれてありがとう。君たちがいなかったらハドリーは助からなかった」
「俺からも感謝を。リマを助けてくれてありがとう」
二人からの丁寧な礼の言葉に、俺達は顔を見合わせてから口を開いた。
「気にしないで下さい」
「ああ、俺達は自分のために戦っただけだ」
「しかし」
「ああ、俺からも礼を。アキトを庇うために気を引こうとしてくれていたよな」
「…役には立たなかったけどな」
苦笑を洩らした前衛らしき女性に、ハルは笑顔で首を振った。
「あの状況で、自分たちが標的に戻る覚悟で声を上げてくれたんだ。そんな事が出来る人はそう多く無い――誇って良いと思うよ」
二人は顔を見合してから、強張っていた顔にやっとうっすらと笑みを浮かべた。
「俺は槍使いのハドリーだ」
「私は剣士のリマ」
名乗りを上げてくれた二人に、俺達もすぐに答えた。
「俺は魔法使いのアキトです」
「戦士のハルだ」
「今日は無理だが、俺の怪我が治ったらご馳走させてくれるか?」
「気を使わなくて良いですよ?」
「いや、それぐらいはしたいんだ」
「頼む」
判断に悩んだ俺は、ちらりとハルを見上げた。こういう時、何て答えるべきなのか分からないからね。ハルは二人の真剣な目を見つめてから、おもむろに口を開いた。
「俺達は黒鷹亭を拠点にしてる」
「感謝する」
黒鷹亭に来ればやりとりが出来ると伝えたって事は、招待は受けるんだ。ハルの事だから気にしないでっていいそうだと思ったんだけど。
突進攻撃をするウロスをひらりと避けては攻撃をしかけていくハルの動きに、俺はただただ見惚れるしか無かった。
「あ、あの!」
今はハルの戦闘を見るのに忙しいのに何だよと思いながら振り返れば、さっきまで縦横無尽に逃げ回っていたあの迷惑な冒険者三人組だった。
「何か?」
「さっきは俺達のために攻撃してくれてありがとう!」
へ?と首を傾げて固まってしまうぐらいには、意味が分からなかった。
「いえ、あの…」
貴方たちを助けたつもりなんてかけらも無いし、俺が助けたかったのは二人組の冒険者さんだけです。そう言う間もなく、男たちはぐいぐいと距離を詰めてくる。
「迷惑をかけた俺たちを助けてくれるなんて」
「天使みたいだ…」
「俺達に礼をさせてくれっ!」
暑苦しく詰め寄ってくる三人に、俺はぶんぶんと首を振りながら後ずさった。
「助けたつもりは無いので」
「いや、助かったよ」
「天使だ…」
「優しい上に謙虚だなんて!」
否定の言葉を返したら更に絡まれるなんて、もうどうしたら良いのか分からない。眠らせて静かにさせる魔法とか知ってたら使ってたかもしれないけど、そんな便利な魔法は知らないしどうしよう。
「お前達、アキトは俺の恋人だ…」
真後ろから聞こえてきた声にホッと息を吐く。ハルがいるならもう大丈夫だ。後ろを振り返れば、ハルはドサッと音を立てて担いでいたウロスの体を地面に下ろした。もう倒しきったんだとか、あの巨体を担いだ状態で移動できるのかとか聞きたい事は色々あったけど、ギロリと三人組を睨みつけたハルを見て飲み込んだ。
「アキトを口説くつもりなら…俺が相手になるぞ?」
ハルの低音での明らかな脅しに、ハルとウロスを交互に見つめていた三人は息を飲んだ。
「「「す、す…すみませんでしたー!」」」
そう叫ぶなり驚くほどのスピードで走り出すと、三人組はそのまま逃げて行ってしまった。あれだけ周りを巻き込みながら走り回ってたのに、まだ体力が残ってたんだ。ある意味すごいな。
「逃げ足だけは早いな…顔はしっかり覚えたけどな」
「ハル、怪我はしてない?」
さっきの三人組のせいで最後は見れてなかったからと尋ねれば、ハルは大丈夫だよと笑って答えてくれた。俺がホッと息を吐いた瞬間、後ろから声がかかった。
「すまない、ちょっと良いか?」
声をかけてきたのは、さっきの二人組の凛々しい女性だった。男性は一緒じゃないんだと視線を巡らせれば、すぐ近くの地面に座り込んでいた。
「助けてくれてありがとう。君たちがいなかったらハドリーは助からなかった」
「俺からも感謝を。リマを助けてくれてありがとう」
二人からの丁寧な礼の言葉に、俺達は顔を見合わせてから口を開いた。
「気にしないで下さい」
「ああ、俺達は自分のために戦っただけだ」
「しかし」
「ああ、俺からも礼を。アキトを庇うために気を引こうとしてくれていたよな」
「…役には立たなかったけどな」
苦笑を洩らした前衛らしき女性に、ハルは笑顔で首を振った。
「あの状況で、自分たちが標的に戻る覚悟で声を上げてくれたんだ。そんな事が出来る人はそう多く無い――誇って良いと思うよ」
二人は顔を見合してから、強張っていた顔にやっとうっすらと笑みを浮かべた。
「俺は槍使いのハドリーだ」
「私は剣士のリマ」
名乗りを上げてくれた二人に、俺達もすぐに答えた。
「俺は魔法使いのアキトです」
「戦士のハルだ」
「今日は無理だが、俺の怪我が治ったらご馳走させてくれるか?」
「気を使わなくて良いですよ?」
「いや、それぐらいはしたいんだ」
「頼む」
判断に悩んだ俺は、ちらりとハルを見上げた。こういう時、何て答えるべきなのか分からないからね。ハルは二人の真剣な目を見つめてから、おもむろに口を開いた。
「俺達は黒鷹亭を拠点にしてる」
「感謝する」
黒鷹亭に来ればやりとりが出来ると伝えたって事は、招待は受けるんだ。ハルの事だから気にしないでっていいそうだと思ったんだけど。
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